※メディウム・ルシス・チェラムがシガイこそが神であり六神は邪神であると信仰する危ないやつ設定。
泡沫の王には確実にない設定。
本編とは一切関係ありません。
・概要
六神は邪神だと一刀両断。シガイこそが神であり六神こそが病であると断言する。
シガイ化することは人間の至高の喜びではあるが広める側のメディウムは半シガイ化にとどまっている。
シガイの王であるアーデンは神様。それはもう神様。愛してる。LOVE。
アーデン側は懐いてくる同じ存在として大事にしているがうるさったいと思う方が強い。
・メディウム
バハムートに止められることなく自殺するに至った。
レギスが救うこともできず意識不明の重体で発見され数日後に息を引き取る。
もともと知名度が低いのも相まってノクティスの生誕でその存在ごと葬り去られた。
墓所はレギスの一存で王城の中庭に作られた。
遺体を燃やすなど考えられなかったレギスは土葬をしている。
イフリートにメディウムの存在を教えられたアーデンによって遺体は後々ひっそりと持ち去られる。
死体のシガイ化実験の第一サンプルとして半シガイ化蘇生。
記憶はあるが心底どうでもよく、愛すると誓ったアーデンの手駒として生きる。
ノクティスのことは名前しか知らない。
荘厳なグランドピアノの音色が"牢獄"に響き渡る。
全身真っ黒な神父服の男は高級そうな黒い革靴でペダルを踏み、白手袋で覆った長い指で調べを紡ぐ。
止めるものが誰もいないこの牢獄はこの男の懲罰房。
男の名は
神を捨てて科学と理論に生きるはずが無様にも新たな神の寝床にされた愚かなニフルハイム帝国の最新兵器である。
なぜ懲罰房にいるのかと言うと、先日の戦争で亡国となったルシス王国の王様を文字通り"食べてしまった"からである。
家族は一緒にいるべきだと言う良心からの行動だったのだが神と崇め奉るアーデンにしこたま怒られた。
クリスタルに庇護された王族もシガイ化するのかと言う実験が全てお陀仏だと散々嬲られて懲罰房に放り込まれることに。
実験自体はただの暇つぶしだったアーデンにとっては激怒といより体裁的な躾である。
待てのできない犬を叱りつけるのと同じ要領でその体に宿るシガイの寄生虫を暴走させた。
ついでに適当に鞭を打った。
三日三晩叫び苦しんだが、神から与えられる罰ならばと対して抵抗もせずに躾を受けて今に至る。
超回復の支援があるため、躾の跡は残っていないが通常の人間なら痛みのあまりショック死しているレベル。
不気味なほどにピンピンしている男は自室に設置されていたグランドピアノを持ち込んで、日々の退屈をしのいでいた。
簡単に逃げ出せる男にとって懲罰房とはただの飾りである。
一応の監視があっても彼らなど一瞬で殺せてしまうのだから。
止まないレクイエムのようで激情を表す旋律を奏で続ける男の耳に牢獄の扉に手をかける音が届く。
およそ人間の速さとは思えない指の動きを急速に止めて、ダンッという不協和音を奏でた。
唐突に演奏を止められ、指を打ち付けられたピアノの悲鳴のような音を無視して男は立ち上がり入り口へと小走りに近寄る。
主人のお出迎えだ。
「ピアノを持ち出したってね。」
「はい。職務がないため有意義な創作をすることにいたしました。」
「ここに来てから四日間ずっと弾いてたと報告がきているよ。」
「はい。私には休息時間が必要ありませんので。人のように過ごす必要はありません。」
「君の元の体は人間だから休んだ方が万全の体調で力が出る。次からは人のように九時間は眠りなさい。」
「承知いたしました。職務がある場合はそちらを優先します。」
「それでいい。では行こう。仕事の時間だよ。」
生物兵器No.〇一は神たるアーデンに付き従う。
歩きながら報告書を渡され、ざっと目を通した。
ルシス王国王都銃撃戦から丸々一週間。
逃亡したと推測されるルシス王国の王子ノクティス・ルシス・チェラムの存在がレスタルムにて確認された。
捕縛命令が下っているがアーデンからの指示で捕縛はしなくても良い。
代わりに彼がイオスという世界を背負う圧倒的な王者となるべく、クリスタルと六神の加護を手にするサポートをするのが任務となる。
神からの命令であれば文句を言うつもりはないが、六神という文字で男は顔をしかめた。
シガイの王こそが神であると考える男にとっては嫌な任務と言えた。
観察眼に優れているアーデンがくすりと笑って意地悪く指摘する。
「嫌なら他の任務を当てがおうか?」
「いえ、主人からのご命令であるならば如何なるものでも完璧にこなして見せましょう。子供のお守り程度どうということはない。」
「そう?ならいいけど。」
難しい顔で任務の概要を頭に叩き込んだ生物兵器No.〇一に与えられたのは一般的な服と剣。
移動用の大型バイク。
"イチ"と言う名前。
生物兵器は機密中の機密で外にその名が漏れ出ているとは考えにくいがメディウムという名はルシス王国では名乗らない方がいい。
わかる人間にはわかってしまう名前だ。
新しい名前を考えるにあたって、面倒臭かったアーデンはナンバーをそのまま名前にしてしまった。
不思議な名前だと思われるだけでまさか兵器だとは思うまい。
なんせ頭の中がお花畑の王子一行についていくだけの簡単なお仕事である。
「今日からイチと名乗りなさい。真名は決して明かさないこと。いいね。」
「はい。承知しました。任務遂行のため暫し主人の元を離れます。決して怪我をなさいませぬよう。」
「君もね。揚陸艇でアラケオル基地までバイクと共に送る手配をしてある。頼んだよ。」
「必ずやご期待に応えましょう。」
移動のために揚陸艇の格納庫へと向かう。
生物兵器は舌なめずりをしてどう任務達成まで歩もうかと道筋を立てた。
アラケオル基地にはレイヴスが待ち構えていた。
彼を救助したところ、不思議な力を宿している上に身体能力が飛躍的に上がっており王都銃撃戦で命を落としたグラウカの後釜にぴったりだった。
つまるところ、将軍まで昇格したのである。
メディウム改めイチのことはシガイを宿した半屍人の生物兵器としか知らないため、不遜な態度で話しかけて来た。
「報告は聞いた。王子の捜索に駆り出されたそうだな。」
「宰相様たってのご命令です。」
「虐殺兵器を人探しに投入するなど何を考えているのだか。おい、一般人の殺戮などしたら貴様は即座に切り捨てる。いいな。」
「承知しました。肝に命じておきます。」
どうやら王都で助けられたとは知らないらしい。
人間の生活に溶け込めるように嫌光性を克服し、自立思考を持たせたシガイ兵器のプロトタイプは非常に貴重である。
生物兵器は未だNo.〇三までしか稼働段階まで調整できていない。
それをいともたやすく切り捨てると豪語するレイヴスに将軍の器は違うな、と内心鼻で笑いつつ口では業務的な肯定の意だけ発した。
「それでは業務に取り掛かります。人間に溶け込むため今後は"イチ"とお呼びください。」
「…なんだその適当な名前は。」
「宰相様から頂きました。」
ピクリとレイヴスが片眉をあげる。
メディウムとは生物兵器No.〇一と別につけられた個体IDのようなもの。
それを使えない理由があるのはなんとなく察したのだろうが、名前の適当さに大いに呆れて携帯を取り出した。
何をする気だと目で手元を追うと、電話帳を開いてアーデンに電話をかけるようだ。
「不満はありません。」
「主人からの命令に逆らわないように教育されているからだ。あと俺が呼びたくない。」
「この程度のことで主人に迷惑をかけたくはありません。」
「俺が勝手にやっている。貴様が慌てることではない。」
取りつく島もない。
繋がってしまった電話口に主人の声が聞こえる。
「ーーあれ。どうしたの。」
「偽名の適当さに苦情を入れる電話だ。もっと考えて名前をつけてやれ。」
「ーーえぇ、面倒じゃん。」
「名はそのものを表す。イチなどと言う業務上の名称をそのまま名前にするな!」
「ーーそんなに言うなら君がつけてあげなよ。俺が許可するからさ。」
「そうさせてもらう!」
どうでも良さげなアーデンの態度になぜか苛立たしげなレイヴス。
感情のままに電話を切ってしまったようだ。
耳の良い男は微妙な顔でレイヴスを見た。
呼び名などなんだっていい気がするしわざわざ改名する意味がわからないが職場で余計な摩擦は産みたくない。
甘んじてレイヴスが考える名を受け入れることにした。
「聞こえていたか。」
「はい。名をつけてくださると。」
「そうだ。イチなどと言うふざけた名前から…そうだな、ディザストロというのはどうだ。」
「それは殺戮兵器の厄災という意味合いでしょうか。」
「事実が並べ立てられているがその通りだ。それと…いや、なんでもない。その名で任務に当たれ。くれぐれもサボるなよ。」
「承知いたしました。」
レイヴスから貰った名前は存外まともである。
言葉としては不吉だが半屍人の男には関係ない。
言いかけた言葉が気になるが言わないならば問い詰めるだけ無駄である。
ぴったり九十度に腰を曲げて挨拶をし、赤いバイクにまたがって最初の目撃情報であるレスタルムへと向かった。
バイクとお揃いのヘルメットをかぶりながら街中を見渡す。
たどり着いたレスタルムは王都の次に発展しているルシスの街。
目的の人物の目撃情報は太ったカメラマンからだと書かれていたが金に目がない商売人の相手をするぐらいならば自前の足で探したほうが早い。
行くならばホテルかとあたりをつけてヘレメットを外そうと手にかけたところで、後ろから声をかけられた。
「うわぁ!すっごい!バイクだ!」
「王都の外じゃ初めて見るな。」
「おや、このバイクにご興味が?」
「あ!突然ごめんなさい…。」
「構いませんよ。私も観光ですので様々な方々と会話できるのは実に有意義です。」
今の会話で王都に住んでいた人間なのを把握し、服で王都警護隊だと認識した。
金髪の子供のような男は兵士らしくはないがきちんと制服を着ているし、横の大柄の男は歴戦の戦士のようだが少し世情に疎そうだ。
大型のフォルムを重視した赤いバイクは帝国製だが彼らにはわかるまい。
ヘルメットをそのままに会話を続ける。
「ディザストロと申します。」
「プロンプトです。」
「グラディオラスだ。バイクで旅を?」
「はい。宿を探しているのですが土地勘がなく困っていたところでした。」
「そうなんですか。俺たちもこれからホテルに戻るところなんで一緒に行きませんか?」
「迷わなくていいとは思うが。」
「おや。それはありがたい。是非。」
バイクのエンジンを切ってヘルメットを括り付ける。
念のために盗難防止の重力魔法をかけて二人に向き直った。
歩きながら話そうとホテルへ向かうために駐車場を出る。
プロンプトはオッドアイが気になるようでチラチラと見てきた。
見かねたグラディオラスが突っ込む。
「そんなに気になるなら聞けよ。」
「だ、だって聞きづらいじゃん!」
「何を聞かれても気にしませんよ。」
「うっ。じゃ、じゃあそのカッコいい目は元々ですか?」
気味が悪いと兵士達に囁かれたことはあるがかっこいいと言われるとは思わなかった。
神と同じ瞳と髪の色を気に入っているディザストロは、プロンプトは良い子だと微笑み、機嫌よく答えた。
「そうでしょうそうでしょう。生まれつきではありませんがカラーコンタクトではなく自前です。結構気に入っているんです。」
「目の色が変わることってあるんだなぁ。」
「その綺麗な赤い髪もですか?」
「ところどころ赤毛が混じるようになりましたがとっても好きな色です。ちょっとした事故の影響ですよ。」
事故の影響と聞いて二人の顔がこわばったが、褒められて上機嫌なディザストロを見て胸を撫で下ろす。
聞いてはいけない話題と言うわけではなさげだ。
スキップでもしそうなほど楽しげなディザストロの腰にダガーが携えられていることにグラディオラスが気づく。
戦う者のようだ。
「旅してるって言ってたが、ハンターも?」
「はい。生活費は必須ですから。」
旅とハンターは嘘ではないが予め用意されたカンペである。
ドッグタグは帝都にもあるメルダシオ協会で作ってもらった。
戦うという面では生物兵器として十分にこなせる。
白兵戦メインでモデリングされているのもあるが、現地調達ができない環境でも体内にいるシガイの能力で爆発的な身体能力が持てる。
多少体の一部がもげても修復可能なのだからそこら辺の人間より強い。
体が砕け散っても核である寄生虫が生きていれば復活が可能。
代わりに記憶がなくなるが、寄生虫に刻み込まれた記憶以降がなくなるのみで業務に支障はない。
ルシスの王子改め王の護衛に向いているとも言えた。
「なんで旅を?」
「実は故郷が帝国でして。ルシスを見て回る旅から帰ろうと思っていたところに戦争と封鎖が被ってしまいました。」
「えぇ!?て、て…もがっ!」
「大声出すな!…マジな話か?」
「おや?生まれがどこであれ同じ人間だと思うのですが、違いますか?」
「ち、違わないけど…。」
あっけらかんと打ち明けたのには訳がある。
王都警護隊が王子の護衛をしているのは聞いていたが彼らがその護衛である可能性が浮上した。
見れば見るほど特徴が一致しているのである。
ならば先に帝国軍所属である可能性を消そうと先手を打った。
帝国の一般人であると植えつければそうやすやすと認識は外れまい。
強いて嘘を上げるならば"人"ではなく"屍"であるということだが。
「ここじゃあんまりその話はしないほうがいいな。戦時中だ。」
「これはこれはご丁寧に。以後気をつけます。」
オッドアイの双眼を鋭く歪めた。
つかみどころのないのらりくらりとした態度と何を考えているかわからない表情にプロンプトとグラディオラスは寒気を覚えた。
警戒されてしまったことを感知したが大して気に留めていない。
彼らの旅に同行するより行く先々の危険を排除していた方が楽だからだ。
勿論彼らの能力アップも神が望まれているので程々に。
国を救うための戦いで敵側にコントロールされ尽くしている彼らは実に滑稽だ。
だが今は兵器の牙を隠す時。
密に、絡みつくように、神のために水槽の中を泳がせるのが仕事だ。
「ああ、そうだ。楽器屋などはこの街にありますか?」
「楽器?どうだろう。ジャレット達なら知ってるかな。」
「聞いてみるか。」
呑気に話をするお遊戯に付き合いながら神父はいつ導いてあげようかと微笑ましく見守った。