FFXV 泡沫の王   作:急須

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※メディウム・ルシス・チェラムがゲーム大好きギャンブラーだったらという息抜き設定。
本編でゲーム好きはあるかもしれないが此処までじゃない。
泡沫の王には確実にない設定。

本編とは一切関係ありません。

・概要
ディザストロ・イズニアが存在しない世界線。
家出も自殺もしない代わりにゲームがないといきていけない。
アーデンおじさんとは後々関わり合いになり頭のネジが飛んでいる者同士息が合ったり同族嫌悪だったりするかもしれない。
ノクティス達とは生まれた時からの付き合いで非常に仲がいい。
大学まで卒業しているため頭はいい。

左手の親指に黒曜石のリング。中指にプラチナ。
右手の中指にアクアマリン。薬指にラピスラズリ。
計四つの指輪をつけている。どれも願掛けで立て爪なしの機能性を重視。



ボツ設定 ゲーム脳

カチッカチカチッと近代的な音が自宅の一室に響く。

備え付けのルシス製高級テレビのすぐそばに、接続したルシスが誇るゲーム会社の据え置きゲーム機と古い作品のリマスター版パッケージが置かれていた。

 

「ぐすっ…やっぱ名作は色褪せねぇなぁ…ぐすっ…。」

 

何故だか同じ会社だなーとか同じFFなんとかシリーズだなーとか七番めぐらいの作品だよなーとか思ってしまうがそんなことは気にせず不朽の名作を楽しむ。

懐かしいと思ってしまうポリゴンと背景そのままに動き、色々な場所に入れる自由度。

特に意味のない場所まで進んでしまう。

お陰で昨日の仕事終わりから一歩も外へ出ていない。

そろそろお腹が空いたな、と三徹目で真っ黒になったクマと血走った目を引っ掻いていると扉からノックが聞こえてきた。

 

「開いてる。」

 

画面から目を離さず返答をすれば、ガチャリと遠慮がちに扉が開け放たれた。

足音や布ずれの音からして人数は二人。

よく鍛えられた人間の足音だが兵士とは違い余裕がある。

そしてこの部屋に入る勇気がある奴が三人で、二人一緒に入ってくるのは一組しかいない。

 

「おー。よく来やがりましたな。ノクティス様とイグニス君。」

「玄関の鍵開いてるし。こんなことだろうと思った。」

「徹夜はお体に悪いと何度申し上げれば良いのですか。メディウム王子。」

 

インソムニアの高級住宅街。

城勤めのお役人達が住まう区域に全くもってに合わないアパートの一室。

下級公務員などが住まうその場所をメディウム王子は根城にしていた。

かの王子は今年で二十五を迎える。

正式な役職として重役を担っており護衛も付けずにセキュリティもないこんなアパートに住んでいい人ではない。

 

しかし、城は人が多いだとか引きこもりたいだとかゲームさえあればいいだとかゲームが一日六時間しかできない二十四時間したい休みくれだとか口を開けばゲームゲーム。

仕事だけはできるのに身も心も現金もゲームに捧げてしまっているどうしようもない引きこもりだった。

 

「おーおー、誰も俺を王子サマーなんて思ってねぇよ。イグニス君は真面目だなぁ?」

「仕事は完璧なんだけどなぁ。」

「完璧な人間なんざいねぇってこった。寧ろダメな一面がある方が人間らしい。どーよ?」

「あなたの場合はただの堕落です。」

 

キツく眉を釣り上げたイグニスに空笑いを返して再び画面に没頭する。

ノクティスのゲーム好きは一重にメディウムの影響なのだが、生活に支障が出るほどになりたいとは思わない。

本人は幸せらしい。

生活に必要最低限な家具と謎のこだわりを見せる寝心地バツグンな寝具以外は配線だらけのゲーム機にソフトにテレビにパソコンにとズラッと並べられている。

環境はどんな高スペック要求ゲームでも何不自由なくできるレベル。

できないゲームが出現すればその時最新の技術を持ち出して改造していく。

無駄に才能がある兄は無駄なところに使っていた。

 

最初のうちは寝具以外は全てにおいてゲーム機だった。

食事すらもとらずに仕事以外は画面にかじりつき。

クマだらけに常に目が血走り申し訳程度に撫で付けられたボサボサの髪を見兼ねたレギスの頼みで送り込まれたイグニス、グラディオラス、ノクティスにガミガミ怒鳴られながら今に至る。

放っておくとまた配線だらけだが火事を起こさないように割ときっちり整頓されている。

出来れば生活もまともにしていただきたい。

 

「メディウム様に外交のお仕事が回ってきました。場所はオルティシエ。出立は三日後になります。日程はこちらに。」

「あ?俺有給一ヶ月とったはずなんですけども?」

「この戦時中に何やってんだ兄貴。」

「消化したことにはなりませんのでそのまま溜まります。別の時に消化してください。」

 

つい三ヶ月ほど休みなしで死ぬ気で働かされたメディウムはほとんど消化していなかった有給をとった。

公務員に有給とかあるの?と思うが休日出勤救済制度がルシスにはある。

ホワイト政府。

 

「うえぇ…三日でこの名作のやりこみまでできねぇよ…。」

「寝ろよ!あと飯食え!三日で外交の準備しろって意味でゲーム三日で終わらせろって意味じゃねぇよ!」

「俺は有給全部ゲームに費やすって決めてんの!七百二十時間ゲームすんの!」

「死ぬわ!」

 

そう言いつつ手は止まらない。

コントローラーを意地でも離そうとしない。

魂までもゲームに捧げている。

 

「三日分も溜めておきます。」

「オーケーわかったすぐ寝ようおやすみすやぁ。」

「うわぁ…。」

 

それはもう光の速さと表すのが適切だった。

 

流れるようにセーブポイントまで走り抜け、迷いない動作でセーブし、ゲームを終了して本体を切る。

使わないコンセントは全て抜き去り、そのままの流れで布団に入って気絶と言う名の睡眠を取り始めた。

知らぬ人が見たら困惑すること請け合いだ。

 

「なんでこんな兄貴になっちまったんだろ…。」

「理由がある故に陛下も強く言えないんだ。」

「むずむずすんな。」

 

おきた時に食べられるように買ってきた食材で料理を始めるイグニス。

病的なまでに青白くクマで顔が台無しな兄の寝顔を眺めるノクティス。

どうしてこんなことになってしまったのか。

理由は聞かされているがどこか隠されていてノクティスは詳しく分からなかった。

 

 

 

 

 

切るのも億劫で、伸びに伸びた黒髪をポニーテールへと結び真っ黒なコートに身を包む。

イグニスによる三日間の懸命な処置によりツヤツヤのストレートをたなびかせる。

顔色もすっかりよくなりクマも綺麗さっぱり無くなった。

父の王冠を少し小さくした角のような小冠をつけ、母の形見である銀のネックレスに首を通した。

引き締まった筋肉を見せつけるかのようにピッシリとしたスーツ故に、長いポニーテールがよく映える。

完璧な王子。

メディウム・ルシス・チェラム此処に爆誕である。

 

「ネトゲあるある、ステータス割り振りシステムって異様に悩まねぇ?」

「全てを台無しにするから口を開かないで下さい。」

「ほんと、いつ見ても不思議だ。部屋にいるときと大違い。」

「口さえ開かなきゃぁな。」

 

イグニス、ノクティス、グラディオラスが口々に好き勝手の感想を吐く。

素材はあのレギスの息子でノクティスの兄という事実上整った顔と言う保証付き。

綺麗にしてさえいれば美丈夫へと変貌する。

当の本人はなんでもいいから早く終わらせてFなんたらシリーズの七作目あたりでチョコボ育成計画を進めたいとシラけた顔で迎えの車を待った。

三人はメディウムがすっぽかさないように監視兼お見送りである。

 

「引き篭もりのくせになんでそんな筋肉ついてんだよムカつく。」

「ゲームしながら鍛えることなど俺レベルになれば造作もない。」

「変なところで全力出すなぁ。」

 

カラカラと快活に笑うグラディオラスとは時たまゲームでパーティーを組む。

グラディオラスと進める様に別のデータを作るほどメディウムは彼を気に入っていた。

ゲームセンスもなかなかのものである。

ワイワイと騒がしくしているとレガリアを運転するコル将軍と王の剣所属のニックスが現れた。

 

「お迎えにあがりました。メディウム王子。」

「おーし。ちょっくら王様にひのきの棒強請ってくるわ。ステータスゲーでギャンブルなんて無理ゲーにならないこと祈っとこ。」

「ちょっと何言ってるかわからない。」

 

ケタケタと独特の笑い声をあげながらメディウムはレガリアに乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷるぷる。僕は悪い王子じゃないよ。」

「は?」

「ニックス。メディウム様は"初めて見る顔だな。よろしく頼む。"と仰っている。」

「通訳ありがとうコル。でも普通に喋るから安心して。」

 

ふざけた様に両手を震わせていたメディウムは思わぬ通訳に苦笑いをこぼし、前方に座るニックスにずいっと顔を近づける。

後ろの座席から伸びてきた美しい顔にニックスは若干腰が引けた。

ケタケタと笑いながら話を進める。

 

「改めて初めまして。護衛よろしくな。英雄ニックス・ウリック。」

「なっ!知って…!」

「ごつい男の護衛で申し訳ないが我慢してくれ。オルティシエには二日の滞在でさっさと帰ってくる。コルは定期船までの見送り。合ってるよな?」

 

肯定するコルとニックスに満足げに席に戻る。

警護のためにオープンカーではなく屋根があるので少々手狭だが、王子特権で後部座席を占領だ。

武器召喚と同じ原理で携帯ゲーム機を召喚したメディウムは澄まし顔でドラゴンでクエストなソフトを起動する。

 

「王子、車内でのゲームは車酔いの原因になる。」

「俺がそんなミス犯すと思うかー?酔い止めなら飲んできた。」

 

コルは諦めた様に肩を落としてハンドルを握りなおす。

メディウムの噂話を聞いていたニックスは噂通りのゲーム好きに疑問を呈した。

 

「メディウム様はゲームを好まれるのですか?」

「好む?チッチッチ。言葉が足りないぜ。愛してる、だ。あいらぶげーむ様々だ。」

 

なぜだかおかしい言葉の羅列だがふざけている様で大真面目な顔がミラーに映る。

隣のコルが思いっきり顔をしかめるのが視界の端に映った。

何か不味い質問をしてしまったのかもしれない。

顔が引きつり始めたニックスに構わず、メディウム(ゲーマー)は雄弁に語る。

 

「俺にとっては人生さえゲームさ。」

 

勉強、トレーニング、剣技、魔法、産まれ、今の肩書き、性格、生き様。

揺り籠から墓場まで。

それはすべて数値化されないだけのゲームだと、メディウムは仰々しく語る。

 

「そして人生というルーレットを回すギャンブル。ステータスによって進めるマスが決まるクソゲー極まりない博打。イカサマ騙し合い殺し合い奪い合いなんでもござれの大博打だ。」

 

最初から持ち合わせるカードは(ディーラー)のご機嫌次第。

産まれからさらに持ち合わせる才能のカードを引いてゲームスタート。

親というルール説明の妖精さんを糧にいざギャンブル。

進める道は最初から分岐だらけ。

どれでもお好きな道をどうぞ?

 

「俺は最初からロイヤルストレートフラッシュ!四種類の大国から選ぶ手札で大当たりだ!だがまだまだ奇跡は終わらない。ワイルドポーカーが始まった。そこで俺はジョーカーとフォーカードの大当たり!ファイブカードの出来上がりだ!見事に第一王子の座に収まった。」

 

道化師の様に高らかに語るメディウムはただのゲーム好きでは片付けられない。

戦慄するニックスに歪んだ漆黒の瞳を投げかける。

 

「だが同じ手札を当てた奴が俺の六年後に現れた。みんなも御存知俺のきゃわいい弟ノクティスだ。」

 

夢見る乙女の様に優しく微笑む裏でどす黒い瞳がぐるりと上向く。

 

「俺達二人には(ディーラー)からある要望を出された。」

 

どこからか現れた二枚のトランプカードを目の前に出される。

王位継承権を掛けたギャンブル。

たった二枚のカードでそれぞれに与えられる使命が決まってしまうとんでもないゲームだった。

実際に引いたのはメディウムだけでノクティスは残り物だったが、どちらにしろ意味合いは変わらない。

 

「さあ、ニックス。引いてみろ。」

 

ケタケタと壊れた人形の様に嘲笑うメディウムの狂気に当てられてニックスは震える。

冷や汗を流すコルに助けを求めるが猫の尻尾を踏んだのはお前だ、と首を振られた。

こんなのは猫ではない。

お伽話のドラゴンでさえも裸足で逃げ出す狂ったモンスターだ。

 

「ほら。引けよニックス。どうせお前のステータスじゃぁ引くカードは決まってる。」

 

何も出来ずにいるニックスの鼻先につくほど二枚のカードを見せつけてくる。

震える手を懸命に動かして、ニックスは無我夢中に一枚のカードを引き抜いた。

それが左か右か覚えてはいない。

ただジョーカーと書かれた道化師のカードをただ呆然と見つめた。

 

「それは当時俺が引いたカード。そしてもう一枚が…。」

 

スペードのキングが見せつけられる。

どう考えても負けたのはニックス。

つまり当時のメディウムだ。

 

「残り物には福があるとはこのことだ!王位継承権は見事ノクティスの手に渡った!ジョーカーを引いた俺は首を傾げた。じゃあ自分は何をすればいいのかってな。」

 

(ディーラー)はせせら笑う。

"言い忘れていたがこのゲームの掛け金は人生だ"と。

メディウムのジョーカーは生きている限り神々と自国の王に永遠の忠誠を誓うカードだった。

晴れてメディウムは王位継承権を剥奪され、王兄として肩身狭く生きることが決定した。

こんなカード二枚で人間の人生を決めていいわけない、と正義感を振りかざして吠えた。

 

「だが、更にムカつくものがあった。そのあと聞いた弟に与えられたものが俺はすこぶる気に入らない。」

 

怒気を撒き散らす。

あんな物で王位継承権を剥奪されてはたまらない。

チンケなカード二枚で弟に道を与えてしまった自分が許せない。

 

「俺は(博打野郎)を許さない。俺の愛してるゲームで俺の愛してる弟を縛っている。その事実があるだけで気が狂いそうだ!」

 

焦点の合わない瞳は此処にいない宿敵を見据える。

好き勝手な理由で世界を引っ掻き回しているのは誰なのか。

病か神か。

"そんな些細なこと"はどうだっていい。

メディウムにとって愛しているゲームを利用し弟を最悪の道に突き落とした自分と神に狂うほどの憎悪と溶けるほどの殺意を持つ。

 

人生はゲームだ。

 

どこまでも続く死ぬまでのゲーム。

賭け金さえあればいくらでも戦える。

アナログゲームでもデジタルゲームでも構わない。

賭けるものさえあればなんだって出来る。

ステータスを上げれば無数に道が増える。

なのにただ一つの勝利がどこにも存在しない。

 

「あっはははははっ!馬鹿らしいだろう!無様だろう!たかが遊びに人生を賭ける姿はまさに滑稽な道化師だ!ジョーカーに相応しい!」

 

俺は決してゲームをやめない!

好きだから!愛しているから!

これが俺の人生だから!

クソッタレな神に人生と言う名のゲームで勝つまで!

 

賭け金は命。

愛と憎悪でルーレットを回す。

そして最後は一騎打ち。

 

「盤面にはキングもクイーンもルークもナイトもビショップさえいらない。ポーンさえあれば俺は(世界)を殺してみせる。」

 

そのためにまだ、人生のゲームを降りない。

憎しみで身を燃やしながらも死というゲームオーバーを選ばない。

 

「ニックス。好むなんて言葉じゃ片付けられない。俺はゲーム(人生)を愛してるんだ。」

 

落ち着いた様に深呼吸をしたメディウムの瞳は穏やかに揺れる。

一度同じ話を聞いたことがあるコルは疲弊した顔でため息をつく。

 

異常な空気が車内を包む中ニックスは何も言えずにただジョーカーを見つめ続けた。

 

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