FFXV 泡沫の王   作:急須

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※メディウム・ルシス・チェラムがゲーム大好きギャンブラーだったらという息抜き設定。
本編でゲーム好きはあるかもしれないが此処までじゃない。
泡沫の王には確実にない設定。

本編とは一切関係ありません。

・概要
ディザストロ・イズニアが存在しない世界線。
家出も自殺もしない代わりにゲームがないといきていけない。
アーデンおじさんとは後々関わり合いになり頭のネジが飛んでいる者同士息が合ったり同族嫌悪だったりするかもしれない。
ノクティス達とは生まれた時からの付き合いで非常に仲がいい。
大学まで卒業しているため頭はいい。

左手の親指に黒曜石のリング。中指にプラチナ。
右手の中指にアクアマリン。薬指にラピスラズリ。
計四つの指輪をつけている。どれも願掛けで立て爪なしの機能性を重視。
義手になった時からリングをネックレスにして首から下げている。



ボツ設定 ゲーム脳 その5

水都オルティシエ。

遠くにはタイタン、気絶した弟、守られたお姫様。

眼前に迫りくる大口を開けたリヴァイアサンに両腕を広げた男は嬉しそうに口角を上げる。

 

「さぁ、参加費お支払いのお時間だ。お好みの箇所はどちらですかぁ?」

 

水神は賭け事の内容など知らない。

ただ怒りに任せて暴れた先に居た男に食らいついただけなのだろう。

片足が荒波に攫われる感覚にぐらりと揺らぎ、バランスを崩した体が塩水に浸された瓦礫に落ちていく。

遠くでお姫様の劈く様な悲鳴が聞こえるが、何をそうあわてる必要があるのだろうか。

タイタンと王子様がいればそんな悲鳴を上げることもないのに。

 

「あはぁ!最高の日だ!」

 

全身の血が抜け落ちる感覚はアルコールに浸された低迷感に似ている。

視界が黒一色に染まる感覚は徹夜明けの萎む視界に酷似している。

そうやって、メディウムは掛け金の先に美しい日常を見つめるのだ。

早く、一日でも早く、またあの美しさを彼らに届けるために。

 

「今日のゲームはスタイリッシュアクションゲームですかぁ!すもーきんせくしーすたいるですかぁ?すもーきんしっくすたいるですかぁ?そーれーとーもぉ」

 

ケラケラと笑う彼は片足になった自身など顧みず、水神へと声高に叫ぶ。

再び嚙みつかんと迫りくるその鱗に刃を向け、血走った眼を歪めた。

 

死に(S)晒せ(S)水神(S)野郎ですかぁ!」

 

突き立てた刃は鱗を貫通し、その肉を引き裂いていく。

地割れの如き悲鳴を上げる水神が上空へと逃げるように身を捻じり、剣ごと引き攫われたメディウムは片足をリヴァイアサンの眼球に乗せ、嘲笑うかのように踏みつける。

さらに悲鳴を上げる声をかき消すような狂った笑い声が水都を血と海水で汚していた。

 

「テメェが喰った足に踏みつけられる感覚はどぉでちゅかぁ?えぇ?お寝坊さんのリヴァイアサンよぉ!」

 

格ゲーマーもかくやという煽りっぷりを発揮し、これでもかと突き刺さった剣を抉る様に捻る。

片足を代償にお姫様の生存を手に入れたゲーマーに、もはや怖いものはないのである。

今回の賭けは神の干渉ではなく、アーデンとの個人的な取引。

どれだけいたぶってもルール違反にはならない。

 

理不尽にも与えられる暴力を神が大らかな心で甘受してくれるのならば、メディウムの横暴な暴力も存分に振るえるというものなのだが、生憎神は優しくない。

当然、やられっぱなしどころか数十倍のしっぺ返しが来るものである。

 

「なぁに言ってんのか分からねぇよ!」

 

咆哮を上げたリヴァイアサンが海へとメディウムごと潜り込む。

濁流にのまれながらも決して剣からは手を離さないメディウムは息を止めて水中ジェットコースターを堪能する。

メディウムからすれば最高に愉快なイベントに他ならない。

 

しかし、本人の意志と打って変わって出血量に応じて力は抜けていく。

止血もろくにしていない状況で水流に晒されれば、当然失血死は免れないわけで。

朦朧とする意識の中、メディウムは数分に渡るライディングの中ついにその手を離すことになる。

後に残るのは、剣を突き刺したまま浮き上がるリヴァイアサンのみ。

 

「メディウム様!!」

 

ルナフレーナの悲痛な悲鳴が水都に木霊する。

目的の分からない第一王子の蛮行に振り回される彼女は、しかしてその背に持った業の深さを理解している。

成し遂げようとしている何かの為に、彼は己の命を投げ出しているのだと。

リヴァイアサンに立ち向かった理由も、片足を差し出した理由も分からない。

 

けれど、結果として彼は気絶したノクティスを庇い、水中に沈んで行ったことになる。

目覚めてくれとその肩を揺することしかできないルナフレーナは血の滲む水面をただ見つめていた。

どうして、どうしてなのだろうか。

あの第一王子は一体どうしてあんなにも狂ってしまったのだろうか。

何を目的にして、何を喜んで、彼は声高に笑うのだろうか。

 

「ルナフレーナ!」

 

遠くで己の身を案ずる兄の声が聞こえる。

一瞬振り返ったその刹那、腕の中に眠る王子がピクリとその指先を跳ねさせた。

救助も来た、王子も目覚めた。

時間稼ぎと呼ぶにふさわしい一方的な蹂躙はここに成り立ってしまったのだ。

 

「どうして……メディウム様……」

 

沈んで行った人が答えを告げてくれるわけもない。

ただ釈然としない事実と、答えの見えない裏切り者が水の中に消えていった。

 

 

 

 

「うぇ、げほっ、ごっほ……ひでぇ目にあった」

 

ずるり。

水を含んで重い身を引きずって、メディウムは顔をしかめる。

オルティシエの端まで流されてしまった彼は、瓦礫の端に掴まりなんとか漂流をしている真っ最中。

一応将軍の体を取っている彼を回収せんと揚陸艇がやってきているのを視界の端に収め、やっと起き上がった真の王を遠くから眺めた。

 

「うんうん。立派に成長しているようで何より。レベルはいくつかねぇ。経験値は溜まっているんだろうなぁ」

 

しみじみと弟の成長を祝うと共に、自身の無くした足を見る。

流されている間に治療を施したその足は、今回の賭けの代償だ。

予定では残った一本ずつの足と腕も消え去るはずなので順調に処刑への道を歩んでいる証拠でもある。

実に素晴らしい。

 

「そうだろう?最終ボスさんよ」

「自分の体を破壊してご機嫌なドMをわざわざ回収しに来たお優しい人に対して放つ言葉じゃないね」

「ははぁん。人じゃない奴に言われても適応されねぇから意味ねぇなぁ」

「馬鹿らしい。屁理屈の塊だね」

 

両腕を引っ張られて引き上げられたメディウムの鼻先に差し出されたのは、新品の義足。

既に両手両足分制作されたうちの一本を預けていたのだが、約束通りソレを差し出しに来たのだろう。

ご機嫌に受け取ったゲーマーは濡れた足をそのままにガチャガチャと義足を試している。

 

「もうオルティシエには用もないし俺はさっさと離れるけど、君はどうするの」

「そりゃあ次なるマップでしょうよ。目指すは帝都ってね」

「ふーん。言っておくけど送って行かないよ」

「知ってまぁす。自分で揚陸艇捕まえるから大丈夫でぇす。コックピット型のゲーム筐体を乗りこなしていた俺には朝飯前よ」

「君が運転するわけじゃないけどね」

 

義足の調子は頗るいいらしい。

上機嫌に飛んだり跳ねたりしている彼は、アーデンの言葉など気にも留めないかのようにぐるぐると義足の足首を回した。

濡れた装備をその辺に投げ捨て、乾いた新しい服に身を包みながらニコニコと笑う彼はひどく不気味だ。

たった今片足がなくなったばかりだというのにどうでもいいかのように振舞う姿が見る者に違和感と狂気を与える。

 

「さぁて、次はレイヴス君にちょっかいかぁ。どういう反応してくれるかな」

 

嬉しそうに細められる瞳の先に映るのは、次に跳ね飛ばす予定の腕。

既に定められたシナリオ通りにいけば、彼はその四肢を失い、人間の尊厳を亡くして、己の命すらも失くす。

家畜のように扱われているはずなのに、最初から勝ち戦だとでも言いたげに上機嫌な彼はただ嬉しそうに次なる犠牲を撫でるのだ。

 

「クリスタルなボーイになる日も近いなぁ」

 

からり、と喉の奥から絞り出すような笑い声が揚陸艇に木霊する。

馬鹿らしいと背を向けるアーデンに見せつけるような大笑いを満たして、狂気と驚喜を乗せた揚陸艇は水都を後にした。

 

 

 

 

 

 

メディウムが帝都を目指した理由。

それは、レイヴスがルナフレーナを保護したのち、真っすぐに帝都へと向かうのだと理解していた故である。

 

「やっほぉ。ご・ぶ・さ・た!」

「……裏切り者が何の用だ」

「そりゃあ君もでしょうよ」

 

ピクリ、とレイヴスの眉根が動く。

一緒にしないで欲しいと言われたら流石に泣きまねを慣行するところであったが、彼は自分の立場を正しく理解しているらしい。

僅かに唇を噛みしめ、ギロリとメディウムを睨みつける。

 

「お前のように使命すらも投げ出した覚えはない」

「耳が痛いお話で」

 

ニフルハイム帝国の将軍に就任後、レイヴスと幾度にもわたる衝突を重ねてきたうちに、メディウムは彼が使命そのものを投げ出しているわけではないのだと知った。

ただルシスを恨むと同時に世界の安寧を願っているだけで、その矛盾と戦うただ一人のシスコンである。

ゲームキャラで言えば厄介なことこの上ない攻略対象の後方彼氏面タイプである。

この場合は後方兄貴面であろうか。

 

「うーん、好感度ゲージがマイナス言っちゃってるからなぁ」

「……それで、将軍殿が何用だ」

「ああ、そうだ。忘れてた」

 

義手に加えて義足になっている足を一瞬見たレイヴスに軽く微笑みを浮かべ、メディウムはその背にある建造物を親指で指す。

背後にあるはジグナタス要塞。

軍部の中心地であるソレの前で彼はレイヴスを待ち構えていたのである。

 

「いやね、今から帝都にシガイを放つからさ。君も早く逃げた方がいいよってわざわざ教えに来てあげたの。え、もしかして俺、いい上司過ぎ?」

「……は?」

 

思考が停止した。

この男が何を言っているのかが分からなかった。

帝都にシガイを放つ、確かそう言ったように聞こえた気がした。

何を馬鹿なことを言っているのだろうか。

そんなことをすれば市街地に住む人々はどうなる。

この街で生活する数百万人の民はどうなるというのだ。

 

「お前は、何を言っているんだ」

「え?だからぁ、シガイを市街に解き放つっていうギャグセンスのかけらもないことをするので、急いで逃げた方がいいよって」

「住民の避難は!?」

「え?してないよ?餌なくなっちゃうじゃん。するわけないよ」

「餌……?餌だと……!?」

 

言葉の意味を理解できない。

当たり前のことを言うかのように首を傾げる狂人を理解できない。

彼はシガイを解き放つと言い、この帝都に住む住人を餌だと尊大にも言い放ったのだ。

まるでそれが当然かのように、狂った人間は虐殺を事実として語っているのである。

 

「そんなことが許されるはずがないだろう!!」

「別に許可なんていらないし。虐殺しますいいですかって聞いていいですよって答えるNPCなんているわけないじゃん」

 

だから勝手に殺しに行くんでしょう?

当然の帰結だと彼は語り、当たり前のようにジグナタス要塞へ向かおうとする。

その歪さに耐えきれなくなったレイヴスは、声を荒げ、とうとうその手に持っていた剣をメディウムへと構えた。

 

「行かせるものか!」

「……あっそ」

 

振りかぶる剣が狙うは生身の腕。

既に片腕と片足を失っている彼であれば、当然避けるか守るか、抵抗するかの三択を迫られる。

故に切りかかり、戦闘に持ち込もうとレイヴスは目論んでいた。

ただ、その考えは大きく外れることになる。

 

「ああ、腕が欲しいんだよね。はいどーぞ」

「は?」

 

当然のように、その腕が振り下ろされる剣の前に差し出された。

びしゃり、と頬に生暖かい感触が飛び散る。

ぼとり、と音を立てて落ちていくその肉体が、酷く気味が悪い。

何の抵抗もなく、何の衝撃もなく、彼の腕が地に落ちたのだ。

 

「これでもういいでしょう。はい、早く帝都から逃げなよ」

 

斬られた本人は、もう自分の腕にすら興味がないのか、最初から持っていたらしい義手をなくなった腕に差し込むと再びジグナタス要塞へと踵を返す。

地へと落ち、鮮血を広げる肉塊が酷く滑稽だった。

 

「狂ってる……」

「そいつはどうも。嬉しい誉め言葉で。ジョーカーにぴったりだ」

 

ゆったりと振り返った道化がケラケラと笑う。

狂人が歩む道の先へと追いかけられるほどレイヴスは精神の強い人間ではない。

ただただ血だまりを進み、鏖殺を心待ちにする彼を吐き気と共に見送ることしかできなかった。

 

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