FFXV 泡沫の王   作:急須

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合流

メディウムはルシス国内でもここまで暑い街はレスタルムだけだろうな、とショップで服を買いながら遠い目をしていた。

 

レスタルムに着き次第唯一のホテル、リウエイホテルにてルナフレーナは待っていてもらおうとした時ロビーにいたアミシティア家の執事、ジャレットとタルコットを発見。

事情を聞けば王都から脱出し、今はホテルで生活中。

グラディオラスの妹イリスもいるということで女性同士意気投合できるかと、ジャレット達と同室でルナフレーナは泊まってもらうことにした。

一人部屋にさせるわけにもいかずかといって自分と二人というのもどうかと思っていたところで非常に助かった。

 

モービル・キャビンでは取れない疲れもあるだろうとさっさと預け、メディウムは食材と服を求めて街へと繰り出していた。

きっちりと寝ているルナフレーナよりほとんど寝ずに三日ほど警戒していたメディウムの方が疲労は大きいのだがズキズキと痛む身体では寝る前に鬱になる、と痛みを紛らわせるためにも外に出た。

 

例の赤いオープンカーにガソリンを入れてカーテスの大皿方面のパーキングに停めた際、赤髪の無精髭おじさんが視界にチラッと見えた気がしたが無視して服を物色していた。

相変わらず熱を吸収しやすい黒い服ばかり探してしまうがこれはもう癖としか言いようがないなと、黒の半袖の上着とVネックのTシャツ、黒いジーパンを揃えた。

ルナフレーナには白いワンピースとレースの上着、ヒールで申し訳ないが靴はやめて置いた。

長期的に見れば帝国の副官の安月給ではギルが足りなくなりそうだ。

 

本格的にモブハントでも始めようかとホテルに戻る細道に差し掛かったところで、グイッと横に引っ張られる。

抵抗する前に誰だかわかっていたメディウムはされるがままに細道へと連れ込まれた。

 

「ーー抵抗してくれないと心配になっちゃうなぁ。」

「三十路手前の男を裏路地に連れ込むのはあんたぐらいだろ。アーデン。」

 

暑苦しい服装のままレスタルムにいるアーデンを嫌そうな顔でみるメディウム。

見ているだけで暑苦しいと言いたげに着ている整備士のジャンパーをパタパタとあおいだ。

 

「車はパーキングに置いた。返すわ。」

「優秀な副官でなにより。で、指輪は?」

「あいつらは今王の墓巡り中。もうすぐ戻ってくるだろうからその時に神凪経由で渡す。」

「そう。神凪に随分入れ込んでいるみたいだけど。」

「いっ…おい、まだ落ち着いてないんだ。つまむな。」

 

状況報告をつつがなくしているというのに、アーデンはするりとシャツの中に手を入れて一番酷い脇腹をつまむ。

痛覚が曖昧になっているアーデンとは違ってはっきりとあるメディウムは顔をしかめて声を上げる。

それでも通常の人間よりは鈍感になっているが。

 

「死なれちゃ困るんだよね。ほら。」

「…いらねぇよ。俺はシガイにはならん。」

 

でろりとアーデンの舌を伝って垂れる黒い液体、もといシガイの元凶たる寄生虫が現れるがメディウムは顔をそらして拒否する。

傷の治療もできるがそれ以前にシガイ化してしまう。

アーデンのように寄生虫の自然治癒能力を極限まで高めれば不老不死になれるのだろうが、それではシガイの王と変わらない。

メディウムとアーデンの中ではメディウムがシガイになることを"堕ちる"ことだと認識し、堕ちることを望むアーデンと拒否し続けるメディウムという構図が出来上がっていた。

 

「残念。じゃあこれで我慢して。」

「いぅっ…だか、ら!つまむ、な!」

 

グリグリと悪化させるようにつまむアーデンに抵抗しようとするが、冷たい魔力の感触にケアルがかけられていることを認識する。

徐々に治療されているがこれは盛大に跡が残りそうだ。

すでに人の肌だとわからないほど無残な体になっているが、死守していた腕や首元にまで及び始めている。

隠し続けているノクティス達にバレるのも時間の問題か。

 

「それじゃ、王様が戻ってきたら展望台に連れてきてよ。巨神が呼んでるって。」

「あ!おい!」

 

治療が終わった瞬間にさっさと何処かへ行ってしまうアーデンを呼び止めようと手を伸ばすが、瞬きした次の瞬間には消えていた。

何がしたかったのかさっぱりわからないアーデンに首を傾げつつ、治療された腹部をよくみると爪が立てられたような痕が上から付けられている。

何かに苛立っていたのか、抉られるようになり、ケアルで治されて既に痕が消せないほど。

 

本当に何がしたかったのかわからないアーデンに疑問符を浮かべながらもリウエイホテルへと急いだ。

 

 

 

 

 

「メディウム様!」

「ただいま、タルコット。これをルナフレーナ様にお届けしてきてくれるか。」

「はい!あ、ノクティス様達が戻られましたよ!メディウム様のお部屋にご案内しました!」

「ありがとうな。」

 

ジャレットと共にロビーにいたタルコットが元気よく挨拶をして、二人で階段を上っていく。

ノクティスとは違い、滅多に人前に出ないメディウムも王子として尊敬しているタルコットはお礼を言われてとても嬉しそうだった。

 

メディウムは一人部屋を引き払い五人部屋を一部屋とってノクティスたちを迎えに部屋へと戻る。

扉を開けると久々の顔ぶれがいた。

 

「兄貴!」

「ご無事でなによりです。メディウム様。」

「お前らも元気そうで。五人部屋とってきた。ここじゃ狭いし部屋を変えよう。いろいろ聞きたいんだろう。」

 

どこかホッとしたような声を上げるノクティスと丁寧に頭を下げるイグニス、グラディオラス、ぎこちないが真似をするプロンプト。

それを片手で制し、指先で回していた鍵をイグニスに渡した。

とった部屋はイリス達がいる四人部屋の向かいの部屋だ。

 

「さて、話す前に着替えさせてくれ。」

「おう。ルーナは?」

「イリス達と同室。一人よりか安全だろう。モニカでも呼ぼうかと思ったんだが別の方に手配した。」

「別の?」

「まあそういったもの含めて待てって。ついでに昼飯の材料がある。イグニス、頼めるか?」

「分かりました。すぐにご用意します。」

 

面倒臭そうにノクティスを一度黙らせイグニスに食材を渡してさっさと脱衣所に入ってしまう。

久々に見た兄は疲労が隠せずフラフラとした足どりだった。

大丈夫なのかと四人が顔を見合わせた時、脱衣所でバタンッと何かが倒れる音。

すぐさまノクティスが駆けつける。

遠慮なしに扉を開くと上着だけ脱いだメディウムが倒れ込んでいた。

 

「兄貴!大丈夫か!?」

「…あぁ、すまん。ちょっと疲れていただけ…。」

 

顔色は真っ青になり立ち上がることも困難になり目の焦点が合わなくなっていた。

グラディオラスが抱え上げベッドに寝かせることで一度落ち着いたが、ほとんど意識がないメディウムの汚れた服を着替えさせようとしたイグニスの手が止まる。

 

不思議に思った三人がメディウムをみるが、あまりの光景に息を飲んだ。

 

シャツを脱がせた体は生きているのが不思議なほどの損傷。

古いものから新しいもの、命に関わるものからちょっとした傷まであらゆるものが身体中に存在する。

治療をしようとノクティスが手を伸ばすがイグニスに止められた。

これはすでに完治した後でもう施せる処置がないのだ。

 

プロンプトに指示を出し濡れたタオルで全身を拭いて、自身で買ってきたのであろう服に着替えさせる。

汚れた服はところどころ戦闘の後でほつれて居るため捨てることとなった。

 

「どうなってんだよ…兄貴の体は…。」

「わからない。二十年に渡る外の生活の影響にしては酷すぎる。意図的に付けられたとしか思えない。」

「メディウム様、普通に動けてたよね…。」

「うまいこと必要な筋肉の部分が避けられている。内臓も無事なのだろうが…。」

 

すっかり意識を手放し、小さく呼吸して眠るメディウムの手をノクティスは握る。

メディウムはノクティスが尊敬する兄だ。

誰よりも先を行き自分を可愛がり外の世界を幼き頃から二十年渡り歩き情報戦においてルシスを何度も救った。

単に兄が優秀で誇りに思えるような兄なのだと思っていた。

 

認識が甘かった。

兄は文字通り血反吐を吐いて外の世界を生き抜いてきたのだ。

 

傷のほとんどは刃物が多いが一番新しい傷は人間の爪痕だった。

それもつい先ほど付けられた、真新しいもの。

誰かが兄をここまで傷つけている。

 

唯一残った家族を、喪う事を何よりも恐れていたノクティスの怒りは見えない誰かへと向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

窓から暖かい夕日が差し込み鼻をくすぐる香ばしい匂い。

お腹が減ったメディウムはそろそろと起き上がる。

体の痛みがなくなり、寝不足でふわふわしていた頭がスッキリした。

ノクティス達と部屋を移動したところまでは覚えているのだがそこから先が記憶にない。

体を見ると買ってきた着替えを着ていた。

 

着替え…誰が?

 

疑問が頭をよぎったところで見られて余計な心配かける体なのを思い出し、仕切られた扉を開けてリビングをみる。

四人が丁度夕食を食べようとしていた。

何食わぬ顔で準備をしているため若しや気にしない方向で行ってくれるのかと淡い期待を持つ。

 

「メディウム様も召し上がりますか?」

「あ、ああ。もらう。」

 

白身魚の辛味あんかけです。と眼鏡をあげて説明を始める。

ノクティスがニグリス湖で釣ったウィードバラマンディに魚介の臭みを消し風味豊かにするケディアジンジャーで味を整え、ほのかな甘みとケディアジンジャーとの相性が抜群なスイートペッパーをふんだんに使った一品。

白身魚特有のふんわりした味わいに辛味のあんかけが絡まり絶妙な美味しさを醸し出している。

 

しばらく男飯だったメディウムはすっかり落ち着いてしまい、イグニスにされるがままに世話を焼かれた。

甲斐甲斐しく世話を焼くイグニスに気を取られているうちにグラディオラスが反対側を固め、ノクティスが正面を陣取りプロンプトがイグニスの補助に回る。

 

ノクティス達はメディウムが倒れた後、今はゆっくり休ませておくという案で一旦まとまり、盛大に甘やかすという計画を立てていた。

その際ルナフレーナともばったり出会い、ノクティスとプロンプト、ルナフレーナがレガリアを飛ばしてニグリス湖で釣りへと赴きイグニスとグラディオラスで買い物へと出た。

釣りに行った三人はほとんどデートも変わらない甘酸っぱい光景だったとのちにプロンプトが語った。

白いワンピースを選んだメディウムにノクティスはキャラを忘れて拝み倒したいという黒歴史もできた。

 

閑話休題。

 

食後のエボニーコーヒーで漸く世話から解放された頃には時すでに遅し。

このまま追求されずに話せること話せるだけまくし立ててトンズラしようとしたメディウムを両脇のイグニスとグラディオラスがガッチリ抑える。

いつのまにか部屋から出てルナフレーナを伴ったプロンプトがやってきたところでメディウムは悟った。

この甘やかしは捕らえるためのフェイク。

実際には全力で甘やかしていたのだろうがその後に捕らえやすくするための罠だったのだ。

 

「飯で釣るとはなかなかやるな…ノクト。」

「簡単に引っかかるほど集中切らしてたんだろ。」

 

負け惜しみを口にしたが当然のように正論を切り返された。

言い返せないメディウムはグッと押し黙り、ノクトを見る。

 

「ルナフレーナ、未来の旦那様は随分ずる賢くなったな。」

「お手本たるお兄様がずる賢いのかもしれませんね。」

 

あ、まずい。静かに怒っている。

 

モービル・キャビンで休もうとしないメディウムは外で寝ているから大丈夫だと言って二時間も寝ていない事を黙っていた。

車の移動とはいえ、野獣との戦闘や安全なルートの確保のために常に剣を握っていたメディウムが突然倒れたと聞いたルナフレーナはとても怒っていた。

 

「ていうか、感動的な再会をさせようとこっそり暖めておいたのに!白いワンピースのルナフレーナはノクトのドストライクだろ!?あわよくばデートとかしちゃったんだろ?」

「なっ!兄貴が倒れてそれどころじゃなかった!」

「でも釣りデートはしてたよね。」

「ほれみろ!若い青二才は恋と欲望に忠実だな!初デートが釣りとかルナフレーナに愛想つかされても知らんぞ!」

「うっせぇ!夕飯の魚釣りに行っただけだ!プロンプトもいただろ!?」

 

メディウムの要らぬ優しさである感動の再会は台無しになったが、結果的に釣りデートはしていた、とプロンプトが恨めしそうにいう。

そこに便乗したメディウムが馬鹿にしたようにノクティスをからかうが、恋には疎いノクティスは顔を真っ赤にして反論らしい言葉も返せなかった。

隣のルナフレーナもすっかりリンゴのように真っ赤だ。

 

「おいノクト。ふざけてねぇで真面目にやれ。」

「メディウム様もしっかり答えていただきます。」

「…タラシゴリラと堅物眼鏡。」

 

メディウムによる不名誉なあだ名にイグニスはピクリと眉をあげグラディオラスはヒクリと頬をあげる。

ノクティスとプロンプトは思いっきり吹き出し、ルナフレーナも口元を押さえて笑いをこらえている。

 

「はぁ、逃げないから抑えるのやめろ。コーヒーが飲めない。」

「兄貴もエボニーコーヒー飲めるのか。」

「好き好んで飲みはしないが慣れ親しんだ味だな。」

 

帝国側の雪山に設置されたとある研究所ではすべての自動販売機がエボニーコーヒーである。

今はもう行くこともないだろう研究所を思い出してため息をつき、解放したイグニスとグラディオラスの頭を盛大に撫で回した。

メディウムにとってはまだまだ未熟者の二人の間からするりと抜け、設置されたソファーに座るとノクティスへと向き直る。

 

「で、何が聞きたい。答えられるならなんでも答えよう。」

「まずは別れた日から何があったかだ。」

「王都にいたな。襲撃の時はルナフレーナを探して奔走。光耀の指輪を持ったルナフレーナを連れて王都を脱出させてからレギス陛下の元へ向かった。クレイラス宰相も探した。…すでに手遅れだったがな。」

 

襲撃の様子はあえて伏せた。

ガーディナで一度出会っていることも。

ノクティス達は深く聞かず話を促す。

 

「次の朝にルナフレーナと合流。神凪の使命を果たすために護衛と道案内。今に至るってわけだ。別のところじゃコル将軍とは連絡を取ってないが、モニカとは一度連絡して隠れ家を用意してもらっている。イグニスは知っているだろ。カエムの岬だ。」

「三十年前帝国との戦時中にオルティシエに向かうため、レギス陛下が使われていた隠れ岬…ですね。」

「そう。ずっとホテル暮らしってわけにもいかないし王の墓所はまだまだある。危険地帯にルナフレーナは連れていけない。グラディオラスの家族もいられる。隠れ家はそういったことに対して最適の案だと思う。ついでに暇なシドのじいさんにも連絡して船の修理を頼んだ。三十年前のだが使えるらしい。俺がやってきたのは以上だ。」

 

色々と伏せたがこれ以上伝えることはないとコーヒーを飲む。

 

イグニスは素直に感心していた。

軍師である自分を軽々と超える準備を王都から出てルナフレーナも守りながら四日。

一人で手配しているその手腕と人徳、やるべきことを把握し次の手にかかる素早さ。

まだまだ学ぶことの多い未熟者だと痛感していた。

 

グラディオラスははっきりと口にされた父の死を自分なりに飲み込んだ。

王の盾としてしっかりと役目を果たしたのだろう。

だがそれでもダメだった。

分かっていたことだがそれでもやはり心がささくれ立つ。

 

ルナフレーナは悲しく怒っていた。

自分のためだけではなく他のところでも動き回っていた。

その疲労は計り知れない。

守り抜いてくれたメディウムに深く感謝し隠し続けたことに怒った。

少しでも気づけなかった自分が腹立たしかった。

 

プロンプトは場違いな思いでいた。

自分だけ蚊帳の外と思うような王に対するそれぞれの思惑。

メディウムの鋭い視線は心を見透かすような、冷たい物だった。

 

それぞれの思いが交差する中ノクティスは口を開く。

 

「兄貴は、これからどうする。」

 

ノクティスの言葉にメディウムはコーヒーを置いて立ち上がる。

ノクティスの側へとよるとゆっくりと傅いた。

最初から決めていた、と優しく微笑んで臣下の忠義を示す。

 

「王の側に。」

 

ノクティスはただ頷いた。

家族としてではなく王の臣下として仕えることを決めたメディウムに悲しくもあったがそれが彼の生き方なのだろうと認めた。

たった一人の家族がいなくなるより臣下でもそばにいてくれる方がずっといい。

 

「で、兄貴。その傷跡は誰に付けられた。」

「トラウマの話も聞きたい!です!」

 

傅いたままのメディウムの足を踏みつけその頭を両手でしっかりとホールドする。

場の空気で流されてくれないかなと思っていたことが流されてくれなかった。

突然元気になったプロンプトが余計なことを思い出させた。

できれば黙っていて欲しかった。

 

「ど、どっちの話も女性に聞かせるものじゃない、かなぁって。」

 

ルナフレーナがいることを理由に逃げようとするがノクティスが後で詳細を伝えることを固く約束してルナフレーナにご退場いただいていた。

無駄に連携した動きで逃げ道がどんどん塞がれていく。

これは非常にまずい。

全て赤毛のおじさんの仕業なのだがそれを伝えるわけにはいかない。

 

「で?誰の仕業だ?」

「あ、いや。どっちも同一人物の仕業っていうか、どうしようもない事故ばかりというか。」

「痛めつけるのが趣味の同一人物とつるんでいたってことだよな?」

「どんなドSなのそれ…。」

 

根掘り葉掘り聞かれる前になんとか濁すことで脱出できないかとはかるが出口は他の三人に塞がれている。

せめて誰だかわからないようにしようと、絶対に口を割らない戦法で朝まで耐えきった。

 




やっと合流しました。
次回から一緒に行動します。おじさんに絡まれます。
南無三。
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