FFXV 泡沫の王   作:急須

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長くなりましたので分けます。


神話の巨神 前編

「テメェいつか目にもの見せてやるからなぁ…。」

「なんだかんだ言って寝られてたじゃない。うなされてたけど。」

 

ぐったりと、ガソリンスタンドに併設されたショップの椅子に倒れ臥すメディウムを面白そうに眺めるアーデン。

今は日が昇り始めた早朝。

宣言通り狭い中に成人男性二人の兄弟が寄り添って寝ていたのだがモービル・キャビンのトラウマは早々払拭できるものでもなく散々うなされ、ノクティスを起こしては悪いと夜明け前に起きて外に出た。

 

寝ていたはずのアーデンはメディウムが起きる頃にはすでに外でコーヒーを飲んでいたが、確信犯が悠々と寛いでいることに苛立ち、懐に隠していた投げナイフを投擲した。

武器召喚ができない環境を常に想定しているメディウムは買っておいた半袖の上着の内側に、ベルトのホルダーをつけていたのである。

しかし、予想できていたのかアーデンは難なくかわしにこやかにコーヒーを飲むかと聞かれてしまった。

 

飛んで行ったナイフを武器召喚で呼び寄せ、諦めたようにコーヒーを奢ってもらい今に至る。

よく考えればナイフに魔力が宿っていたので感知すること自体アーデンには容易いのだ。

アーデンを本気で倒したいなら真正面からタイマン張るしかない。

 

「ディザストロはまだおやすみ?」

「オルティシエまではそう考えてる。その後はあんたの命令で好きにしてくれ。」

「そう。神凪は水神の誓約を終わらせたら用済みになるからーー殺すね。」

 

なんでもないことのようにルナフレーナの殺害予告をするアーデンにメディウムは伏せていた顔を上げる。

その言葉の真偽を図ろうと目を見つめるがいつも通りの飄々とした態度だ。

嘘でも本当でもない、やろうとしているという事実しかないのだろう。

 

「いるとまずいのか?」

「神凪の一族が生きていると完全に夜とはいかないね。」

「そんなこと言ったら俺はどうするんだ。王家も昼を支えている。」

「君の立場は微妙だからね。生かしておいても昼を支えられるほどの力はないよ。」

 

言外にレイヴスも殺害すると言っている。

神凪の力を少しでも有している者全てに生きていては困るということか。

既に力を失ったテネブラエの女王は眼中にないだろうが現代の神凪であるルナフレーナと少しだけ力のあるレイヴスは放っておけないだろう。

一日中夜である日がやってくる。

それは星の病が完全に世界を覆い尽くすことと同義なのだ。

 

「生かすって選択肢はないのか。」

「生かしてほしい?」

 

アーデンにとって完全に夜であると言うこと自体に意味はない。

シガイが喜ぶだろうがそれだけ。

ルシス王家そのものに復讐をしたいアーデンには関係のないことだ。

だから、生かす選択への余地はある。

 

「ああ、完全に夜ってのは俺は嫌だ。」

「俺の物なのに夜が嫌いって、言うようになったね。」

「夜が嫌いなんじゃなくて、ずっと夜なのが嫌なのさ。夕日が見られなくなる。」

「夕日が好きなんて聞いたことないけど?」

「言ったことないからな。」

 

観察能力の高いアーデンは俺の好みをよく把握している。

人間誰しも好きなものは自然と見てしまうものでその視線の先にあるものをアーデンは把握して統計して分析する。

二十年も一緒にいればその理解度も他者の追従を許さないほどとなるだろう。

 

そのアーデンが知らない、メディウムの夕日が好きと言う発言にいつものつかみどころのない笑みから一転目を細めて無表情になる。

滅多に見られない本気の観察顔にくつくつと笑うと不機嫌そうに眉を寄せた。

 

「あの要塞の中じゃ夕日なんて見られないし、移動はもっぱら朝か夜だろ。知らないのも無理はないさ。」

「好きなのにほとんど見たことないものじゃないか。」

「なんで好きなのか教えようか。」

 

窓のないジグナタス要塞の中では夕日など見られないし、そもそも外に出ること自体が稀。

今は好きなだけ見られるが外に出てからではなく昔から好きだと言う。

その理由を表情から読めないアーデンはいつもの食えない微笑みに戻ってその理由を問う。

 

「あんたの色彩だろ。夕日って。」

 

どこかぼやけて爛々と輝く黄色の夕日が二つ。

くすんで行く赤い空が沢山。

ほらな、と笑うメディウムにアーデンは無言でデコピンをかます。

額を抑えてうずくまるメディウムの頭に手を置いてぐしゃぐしゃにかき混ぜだ。

 

幻影とはいえ同じ色を宿すことがあるメディウムの方が夕日に近いだろうに。

討ち果たさねばならない男の色が好きなど変な王子様なことで。

口には出さないが。

しかしメディウムが好きならば夜だけの世界じゃなくてもいいか、となぜそんなことを思ったのかもわからない理由で神凪を殺す案は止めることにした。

 

「そんなわけで、夜しかないのは困るわけだ。」

「でも神凪が死ねば王様が絶望してくれるんだよね。」

「生きてりゃそれでいい。代わりに俺があんたに殺されかけようか?」

 

いとも容易く自分の命を賭けるメディウムにアーデンは笑う。

たしかに、メディウムでもいい顔が見られるであろう。

たが死なれると困る。

メディウムはそれがわかっていて"殺される"ではなく"殺されかける"ことを提案していた。

 

「弟君のためならなんでもするね。」

「兄だからな。なんならオルティシエの後も付いて行って帝都までご案内する役割も担おう。」

「んー、テネブラエまででいいよ。そのあとは迎えに行くからさ。要塞で監禁されてて。」

「うわあ最悪。」

「どうせシガイだらけになるしさ。監禁されていた方が安全だし。」

 

帝都がシガイに沈む。

当たり前のようにそう言いのけるアーデンをメディウムは咎めない。

本当にその通りになることをよく知っている。

事態はすでに避けられないほど進んでいる。

 

「だからさ、早く真の王様を作ってね。ディア。」

「…仰せのままに。」

 

完全に朝日が昇りきった外はとても明るく、起きてきたのかイグニスとグラディオラスがこちらに向かってきていた。

物騒な会話は周りに聞こえないように防音魔法を周囲にかけていたのだがその魔法も解いたところで、眠そう後ろからついてくるプロンプトとノクティスも見えた。

 

壁に寄りかかる長身の怪しい男と椅子に座りながらコーヒーを飲む王子という不思議な構図になっていることに気づいた過保護ノクティスは眠そうな目をカッと見開いてこちらにかけてくる。

 

「グッドモーニング。」

「おはようむさ苦しい四人組。よく寝られたか。俺は悪夢だった。」

「いねぇと思ったら何のんきにコーヒー飲んでんだ!」

「奢ってもらった。」

 

馬鹿らしいほど朗らかに挨拶するアーデンと続いて皮肉たっぷりに挨拶するメディウム。

隣にいるはずの兄がいないと思えば胡散臭い男にコーヒーを奢ってもらったという発言にひくりと顔がひきつる。

言葉を発せなくなったノクティスの代わりに保護者イグニスがカチャリと眼鏡をあげ、グラディオラスはあーあとこれから起こることに諦めたように笑い、プロンプトがヒェッと一歩下がる。

 

「知らない人について行ってはいけません。メディ。」

「おお、お堅い眼鏡の人が愛称で呼んでくれるとは嬉しいねぇ。」

「真面目に聞いているのですか。」

「敬語も取ってくれると真面目に聞くかもしれないなぁ。」

「自分がどれだけ大切な人間が理解しているのですか。」

「イヤってほど理解しているつもりさ。お前らより外で過ごしている時間は長いんだぜ?」

 

その言葉にイグニスは何も言えなくなる。

ノクティスのように母親を鬱陶しがる子供のような態度に見えてのらりくらりと返して話を混ぜ返す様はなんだか悪戯っ子のようだ。

 

メディウムにとってアーデンはもう一つの家族であり知らない人では決してないのだが彼らは知らない話だ。

小さい子供を叱る母親のようなイグニスに真面目に取り合わないメディウムは飲みきったコーヒーをゴミ箱に投げ入れ、立ち上がる。

 

「ほれ、起きたなら出るぞ。目的地は逃げないが時間は有限だからな。」

 

キリキリ動け、とイグニスの肩を叩いてアーデンの車へと向かうメディウムにグラディオラスは苦笑いしプロンプトは感嘆の声を上げる。

ノクティスは兄を叱る気にもなれずため息をついた。

どうやらイグニスはノクティスにも十分甘いがメディウムにも甘いようだ。

話の趣旨がずれても指摘せず最終的に押し黙るぐらいには。

 

「イグニス、有耶無耶にされたね。」

「あの人はつかみどころがないからな。話を混ぜ返して有耶無耶にしたかと思えば他人に聞くときはばっさりくる。全然関係ないところで図星をついて黙らせる天才だな。」

「…メディは年上であることと俺より有能であることが大きすぎてノクトのように叱るのは難しい。甘いというより負けを認めさせられるようなものだ。」

「兄貴たち悪いな。」

「聞こえてるぞー?」

 

車に乗ろうとしながら振り返り、好き放題言う奴らだなーと笑うメディウムは特に気にした様子もない。

よく見れば運転席にアーデンがすでに座っている。

置いてかれてはまずいと、ノクティス達も急いでレガリアに乗り込んだ。

 

 

 

 

 

レスタルムで市民の噂になっていたがカーテスの大皿への入り口は帝国軍が陣取っていた。

どうやって侵入しようかと頭を巡らせ始めたイグニスだが、前に止まる車の主アーデンがゲートに向かって声を張り上げる。

 

「おーい!俺だよ俺!ここ開けて!」

 

そんなもんで開くか、とノクティスが小さく突っ込みを入れたが予想に反してゲートはすんなり開いた。

移動中の車内でイグニスが語ったアーデンという男は帝国軍の関係者の中に心当たりがあるという話は案外的外れではないかもしれない。

あちらの車内に居るメディウムをみると既に助手席から降りて、ゲートの中に足を踏みいれようとしていた。

 

「俺こう見えて顔が広いんだよね。ちょっとやることあるからここでお別れ。あとは君達で頑張って。」

「帰るの?」

「そう。じゃあねメディウム君。また今度二人きりでドライブでもしようか。」

「ああ。機会があればな。」

「させねぇよ!」

 

ノクティス達に怪しい言葉を残してアーデンは来た道を戻っていった。

先に行くしかないノクティス達は車を進め、帝国軍の基地内だというのに悠々と歩くメディウムは見ながら進むというので、レガリアで追い越していく。

 

進める道もガタガタで揺れに揺れたが、細道のようになった場所の前で止め四人は車から降りた。

見て回って居るメディウムをしばらく待つと車内が突然光りメディウムが現れた。

よくみると後部座席の真ん中側の足元に短剣が転がっていた。

イグニスもグラディオラスも気づかないうちに置かれていたらしい。

メディウムは緊急脱出用にとって置いたが移動ようになってしまったと笑いながらコートのホルダーにしまった。

 

基地の中はほとんど何もなく兵器らしいものも門番らしい魔導兵以外はなく、中継地点か侵入制限用のものだろうとメディウムはノクティス達に報告した。

銃器と弾薬の保有量と空き箱の数から見て一度撤収して補給して居る可能性も高い。

頭脳担当のイグニスが、ならば早めに探索を済ませようと提案して、さっさと奥へと進む。

 

少し進めばカーテスの大皿内部となり祭壇のように出っ張った岩場の先にノクティス達の探し物の一つがあった。

 

「あれ、王様のお墓じゃない!?」

「こんなところにもあったんだな。」

「俺が来た時はもうちょい屋根あったんだが見事に吹っ飛んでいるな。」

「お力をお借りしなければならないな。ノクト。」

「だな。」

 

初めてここを訪れた時なぜかついてこなかったアーデンを思い浮かべ苦笑いをメディウムがこぼしたが帝国軍を警戒した四人には気づかれなかった。

歴代王の手には大太刀のようなファントムソードが握られており、メディウムが説明を始める。

 

「夜叉王の刀剣。二千年前、神凪とともに星を護ったと言い伝えられる、ルシス最初の王様の武器だ。」

「帝国はなぜこれをそのままにして置いているんだ。」

「さあな。神話を知らないか、別のところで力が動いているか。都合がいいのは確かだな。」

 

グラディオラスの疑問にメディウムは考えうる可能性をあげる。

どちらにせよ都合がいいのだといえば、怪しいがその通りだろうとイグニスが頷いた。

 

説明を聞きながらも、ノクティスは刀剣へと手を伸ばしその力を借り受ける。

武器は宙へ浮きノクティスを貫いてその周りを飛んだ。

あるべき場所へ帰るかのような自然な動きだった。

 

「よし、あとは巨神に会いたいところだが…。」

 

そこで、大きな揺れが五人を襲う。

それと同時にメディウムとノクティスが激しい頭痛に苛まれた。

頭を内側から裂くような痛みに周りを気にする余裕をなくしたノクティスは足元の岩に亀裂が走ったことに気がつかない。

危ないと判断していち早く退避したイグニスとプロンプトだが、王を守らんとグラディオラスがノクティスに駆け寄る。

 

しかし、ギリギリのところで間に合わず崩れた王の墓とともにメディウムとノクティスが斜面となった岩場を滑り落ちた。

召喚獣の言葉を理解していたことで痛みが軽減していたメディウムはノクティスを守ることを優先しノクティスの腕を引っ張り自分の腕の中に閉じ込め、上着に忍ばせた短剣を斜面に突き立てる。

勢いを少しずつ減らしたことが功を奏でて崖下ギリギリのところで留まった。

 

斜面を滑って降りて来たグラディオラスが痛みに顔を歪める二人に声をかける。

 

「おい!大丈夫か!!」

「いって…なんとか…?」

「ギリギリだったな…。立てるかノクト。」

「ああ。サンキュ、兄貴。」

 

起き上がったところでグラディオラスが呆然として居ることに気づく。

何を見て居るのだと視線の先を追うと、そこには――神が存在していた。

 

滑って落ちたことでだいぶ近づいたのだろう。

はるか昔より燃え続けるメテオの熱を肌で実感する。

そしてその下に見える圧倒的な存在。

 

「あれが巨神だ。」

 

鉱石と一体化したような灰色の体と何かを訴えかけるような金色の目がノクティス達を捉えていた。

 

「二度目にしては随分手洗い歓迎だなぁ。」

 

茶化すようなメディウムの発言にグラディオラスは冷や汗を流す。

神という存在に一度出会って居ることは神凪の使命の話の流れで察していたが、格が違う相手に対して一歩も臆さないその気概。

人間など羽虫程度でしかないだろう神を堂々と立って見据えて居る。

 

「巨神タイタン。神話から今に至るまでメテオを支え続けてきた。本物の神様だ。」

「あれが俺を呼んでいるってことか…いっ!」

 

巨神が何かを発する度にノクティスの頭痛はズキズキと強くなっていく。

メディウムも同じような痛みを感じて居るが顔をしかめるだけで佇まいは変わらない。

 

「何か言ってんのか?」

「何言ってっかわかんねえよ!兄貴はなんかわかるか!?」

「痛いのはわかるがカッカするな。もっと近くに来いってさ。そこの道の先なら繋がってるんだろうな!」

 

メディウムの問いに巨神が何かを発しノクティスはまた痛みを感じるが対話をする兄がいると言うことにいくらか気分が楽になる。

自分にはただ痛いだけだがその意味を通訳できる存在のおかげで多少は理解を示せた。

それに痛いからと周りに当たり散らすのは王らしくないと思い直す。

尊敬する兄は堂々と神と渡り合い、王の盾だと自負して居るグラディオラスは真っ先に助けに来てくれた。

 

子供のように当たり散らす自分が恥ずかしくなりノクティスは真っ直ぐと立つ。

 

「繋がってるからはよしろってさ。せっかちな男は嫌われるぜ!」

 

冗談なのか本気なのか真顔で巨神に怒鳴るメディウムに思わずグラディオラスが吹き出した。

巨神は何も言わない。

 

「無視かよ。戻るに戻れないしな。どうする王様。」

 

降りてきた斜面を見るがとてもじゃないが登っていける角度ではない。

先程のような強烈な痛みではないが、小さな痛みがノクティスの頭を蝕んで居るときに登るのは確実に危険だ。

そう判断したところで上に残ったイグニスとプロンプトが声を張り上げる。

 

「三人とも無事か!!」

「怪我とかない!?」

「大丈夫だ!怪我とかもしてない!」

「グラディオ、兄貴。進もう。」

「よし。登るのは無理そうだが進める道がある!巨神に呼ばれているみたいだし、お前らも別の道から降りてこい!なんとか合流しよう!」

「わかった!気をつけてくれ!」

「ええ!?降りられる!?てか合流できるの?」

「気合いでなんとかしろ!」

「メディ意外と脳筋!?」

 

少しふらつくノクティスを支え、先に進むメディウムは刃先がダメになった短剣をホルスターにしまう。

グラディオラスが先導して道を確認しながら進むが所々小さな炎が上がっていてとても熱い。

頭痛と暑さで集中力が欠けそうだがなんとか歩けるまで回復したノクティスはグラディオラスにも礼を言う。

 

「サンキューなグラディオ。真っ先に助けようとしてくれて。」

「王の盾だからな。…さっきまでイラついていたのに部下を誉めることができるとは王様らしくなったじゃねぇか。」

「神の力とか王家の力とかいろんなもんがよくわからなくてこんがらかるし頭いてぇし暑いしでイライラするわ。でもそれをグラディオに当たるのはお門違いってやつだろ。全部知っているのに説明しない兄貴が悪い。」

「ああ、まあ。そこついちゃう?」

「…正直俺は最初から信用してねぇ。王都を取り戻すだけじゃなくてデケェ話に巻き込もうとしているように見える。闇を打ち倒すってのは帝国かと思ったがよく考えりゃそれなら神様が出張るわけない。」

「とりあえず巨神には会うけど、ちゃんと後で説明しろよ。王様には包み隠さず報告する義務が臣下にはある。たぶん。」

 

いって仕舞えば何も言わずにどんどん自分たちを何かに巻き込むメディウムは敵ではないのかと思ってしまう。

 

しかし、先程同じような痛みを感じていたはずなのに体を張って助けてくれた。

今も優しい兄は痛いはずなのに微塵も感じさせない動きで先を先導している。

その行動で、兄は敵ではないとノクティスは信じていた。

 

メディウムはノクティスの疑心の目に気づいていだ。

当然の帰結だろうしその判断は間違いではない。

家族であろうと裏切るものは裏切るし信じられないものは信じられない。

だがそれでも信じようとしてくれる弟の心に暖かな笑顔を向ける。

 

「そうだな。包み隠さず報告する義務なんてないが、家族には包み隠さず相談する権利がある。色々隠し事が多すぎて何から相談するか迷うがな。」

「おう。弟だからな。いくらでも相談しろ。」

「そうする。その時はみんなにも聞かせるよ。答えられればだがな。」

 

やはり全ては話そうとしない兄だがそれでも少し話してくれると約束してくれた。

ノクティスはそれで十分だとうなずいてグラディオラスにも兄を信じてくれと頼んだ。

少しだけ敵の可能性を疑っていたグラディオラスだが真っ直ぐなノクティスの言葉に了承する。

 

妹と一年に一度しか会えずに二十年近く過ごしたらと考えると寒気がする。

こうやって少しずつ歩み寄ろうとする彼らの行動はきっと大きな溝を乗り越えてお互いに信頼しているからこそできることだ。

巨神に会うまでの行動で見極めようとグラディオラスは心に決めた。

 

「ここに住む野獣も気が立っている。慎重に進もう。」

「あんまり前に出すぎんなよ。兄貴。いてぇのは一緒なんだから。」

「わかっているよ。お前もな。いつでも守るから安心して進め。暑さと痛さがなければ絵でも描きたい景色なんだがなぁ。」

 

軽口を叩きながらメディウムの言葉にノクティスも同意する。

描きたいではなく描いた絵を見たい方だが、自然にできた岩のアーチや燃え盛る地面と飛び交う野獣は幻想的だ。

メディウムの淡く優しい水彩画ならより美しく描かれることだろう。

 

「描くのはいいが終わってからにしてくれよ。こっちなら進めそうだ。」

 

グラディオラスが指し示した道は壁を背にして横歩きすればなんとか通れる幅の細道。

頭痛に苛まれながら通るとかシャレにならない。

しかし他に道もないので比較的元気なグラディオラスが先導していく。

 

「絶対落ちるなよ。」

「わかったから早く行けって。これ以上痛くなる前に進もう。」

「命綱ぐらい用意しとけよマジで。」

 

ゆっくりと確認しながら進むグラディオラスを急かしたくなるが彼は安全のために行動してくれているのだと考えゆっくり深呼吸していく。

落ち着いてきた頭痛に安堵し、先に進もうと足を進めると突如きつい頭痛と大きな地震が襲いかかってきた。

 

「ここでかっ!」

「チッ!早くしろしか言えねぇのかデカブツ…!ってうおあ!?」

 

何度も同じ言葉を繰り返す巨神に若干の苛立ったメディウムは舌打ちをしながら文句をこぼすと同時にタイタンの腕がこちらに迫ってくる。

思わず悲鳴をあげたが目前のところで指が通り過ぎた。

 

「兄貴が挑発するからっ!」

「ええ!?矮小な不届き者に今ここで裁くついでに試練を行うとか鬼畜か!心狭っ!?」

「兄貴嫌われすぎだろ!てかなんだよ試練って!」

「俺も気になるが今は進むことに集中しろ!」

 

 グラディオラスとノクティスは先程以上に壁に重心を傾け、ノクティスの身体を掴もうともがく巨神から逃げようと進む。

あの腕に掴まれたら、ひとたまりもない。

だいたいメディウムの軽口が原因なのだが早く啓示を行いたいのだろう巨神はノクティスもつかまんと腕を何度も伸ばしてくる。

その度に岩が削れ、どんどん迫ってきていた。

 

「グラディオ!安全なところとかないか!」

「もうすぐ先にある!」

「ならノクトをそこまで投げ飛ばせ!アシストするからぶん投げろ!」

「了解!」

「ええ!?ちょおおおおっ!」

 

メディウムの指示に一瞬どうするか迷いそうになるが考える時間はないと足を踏み外しながらも思いっきり投げる。

腕を捕まれ、安全地帯まで飛んだノクティスに続いて体制を崩したグラディオラスをメディウム氷の魔法で造形した滑り台で受け止めて流し、足場を崩しながら迫ってく巨神の腕がメディウムの目前まで迫っていたが氷にシフト魔法を使ってグラディオラスの上に雪崩れ込んだ。

 

「ナイスクッション。」

「お、重い…。」

 

腕はここまで届かないようで氷は崩れ去ったがとりあえず一息つけそうだ。

 

「魔法ってああいう使い方もできるのか…。」

「造形は案外簡単だがエレメントの消費が激しくてな。お勧めできない方法だがまあこういう時は役に立つ使い方だ。」

 

マジックボトルに詰めた方が戦闘のときは楽だといってグラディオラスの上から退き、進める道を観察する。

潜れば通れそうな道を発見し、グラディオラスを先頭に先を進んでいく。

巨神の視界から外れたのか声も遠くなり頭痛もだいぶ落ち着いてきた。

 

「兄貴って意外と豪快だな。」

「繊細な計算みたいなのが得意だと思っていたが存外肝が据わっているな。ぶん投げろっていう思い切った判断は嫌いじゃないぜ。」

 

一旦休憩することにした三人はその場に座り込み、先程投げられたノクティスはジト目でメディウムに嫌味を言い魔法で助けられたグラディオラスは同じ王に仕える仲間として徐々にメディウムを認めていく。

 

あの場で一番危ない後ろにいたメディウムは自分より先にノクティスとグラディオラスの安全を確認してから行動した。

危機的状況で王を最優先事項にするその度胸はグラディオラスと通じるものがあった。

 

「おう。一緒に過ごしてない分信頼がないだろうが俺のたった一人の弟を守ることに関しちゃ譲れねぇからな。王の盾だろうがバシバシ使ってく。」

「そうしてくれ。王も守るとか信頼してくれって言われるより弟を守りたいから利用するって言われた方がよっぽど信用できる。」

 

メディウムの言葉に偽りはないと信じたグラディオラスはメディウムに手を差し出す。

その手を力強く握り返した。

グラディオラスの中で疑念に思っていたノクティスが尊敬する怪しい兄王子が、ただ弟を心配する同僚になった瞬間だった。

 

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