FFXV 泡沫の王   作:急須

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神話の巨神 後編

五分にも満たない休息だが、いくらか落ち着いてきた三人は先に進むべく立ち上がる。

先程メディウムが放った試練という言葉を思い出したノクティスはエレメントの残量を確認する兄に声をかける。

 

「そういや兄貴、試練とか言ってたよな。」

「俺じゃなくて巨神な。試練ってのはまあ腕試しだ。巨神に実力を示せればいい。」

「六神全部と戦わなきゃならないのか。」

「それはない。神も性格あるらしいし六神だって全部現世にいるわけじゃないんだ。長くなるが今聞きたいか?」

「いやいい。神話とか現世とかその辺の話も帰ってから聞くわ。腕試しならわかりやすいしな。」

 

戦えと要求しているのならば遠慮はいらないだろう。

シンプルで考えなくていい物事だなと気合いを入れるノクティスとグラディオラスに苦笑いを返した。

別に殺し合いをするわけではないし万が一の時は抱えて逃げればいいか、と先に進もうとしたところでメディウムの足が止まる。

 

どうしたのかと口を動かす前に、人差し指を唇に当てて黙るようにジェスチャーで伝えられた。

どうやら何かが聞こえているらしい。

 

「…厄介だな。魔導エンジンの音がする。」

「この状態でよく聞こえたな。」

 

パチパチと燃え盛るメテオの熱と騒ぎ立てる野獣の声がこだまする環境では遠くの音は拾いにくい。

メディウムの耳には親しんだ音であったがために、場所と状況に違和感を覚え、気づけたと言える。

慣れ親しんだ音は存外遠くでも聞き分けられるものなのだ。

 

警戒を高めたところでノクティスの上着に入った携帯が鳴る。

着信音からしてイグニスからだ。

 

「どうした?」

「ーーノクト、揚陸艇がーー見えたーーそちらにーーってる!ーー気をつけてーー」

 

電波が悪いのかブツリと音を立てて途切れ、上空を見ると確かに揚陸艇が確認できた。

メディウムの言っていた魔導エンジンの音の元はあの揚陸艇だろう。

 

「揚陸艇が飛べてるってことはこの先にひらけた場所があるな。」

 

飛行戦艦や移動軍事基地の様にある程度の広さを確保する必要のない垂直離着陸が可能な揚陸艇だがやはり大きさがあるため魔導兵を降下させるにしても広さを重視する。

数で押す戦法も下ろす場所がなければ実行できない。

少数できている可能性もあるが確実に十体は投下しなければ真価は発揮できないだろう。

 

「魔導兵を追っ払って少し会話を試みたい。頭痛くなるかもしれないが、耐えられるか。」

「平気だ。聞きたいことでもあるのか?」

「穏便に済ませられないかなぁって。無理そうだけど試みて見ないと気が済まん。」

「じゃあさっさと片付けますか!」

 

頭痛による鬱憤を晴らす気でノクティスはマジックボトルを取り出す。

中身の赤く輝く光からすればそこら中にある炎のエレメントを詰め込んだようだ。

ノクティスは先へ進むと少しだけ出っ張り、開けたところに固まる魔導兵に向かって三つのマジックボトルを投げつけた。

扇状に投げられたファイラのボトルは見事に三体の魔導兵に命中。

巻き込まれて撃破された魔導兵を中心に轟々と燃え上がり、岩場から数台の魔導兵が落下した。

 

綺麗に全滅させたことでスッキリしたのか笑顔でサムズアップ。

まだ燃え盛る岩場だが気にすることなく氷を地面に敷き詰め、メディウムは声を張り上げる。

 

「落第者で申し訳ないが一つ問いたい!!試練は戦う以外はないのか!!」

 

降って来たことによってとても近くなった距離。

巨神は頭を裂くような頭痛をもたらす咆哮を上げ、メディウムに向かってその豪腕を叩きつける。

その大きさたるや迫力とともに死を悟りそうになるが近くにいたノクティス達も軌道上、当たってしまう。

俊敏性がかけるその腕の軌道を読み切り、メディウムが持ちうる一番硬い大剣でその腕を思いっきり殴った。

 

どんな動作にも重心がある。

その重心をわずかに外にずらすことに成功したその一撃はすんでのところで三人から逸れた。

 

「腕一本で相手してやるから打ち倒してみろってさ!無茶言うぜ!」

「とにかく走れ!戦うにしても狭すぎだ!」

 

まだ続く道を全速力で駆け抜ける。

巨神の腕は後ろから道を崩しながら迫って来ていた。

メディウムが雷を撃ち放ったり炎を地面に張り巡らせているが一向に止まる気配はない。

岩を削り取る天災のような腕を止めるには全く威力が足りなかった。

 

通れる場所が限られた場所で腕と戦える適度な高さとひらけた場所などそうそうないはずなのだがルナフレーナと一度訪れた時に見つけた広い場所を思い出す。

あそこならシフト魔法もマジックボトルによる高威力魔法を使っても退避する余裕があるだろう。

 

しかしせまってくる手から逃げ、ついたところは崖。

もはや逃げ道がない。

 

「くそっ!逃げらんねぇぞ!」

「グラディオ!左斜め下に広い空間がある!お前さんをそこに投げ込むから上手いこと着地しろよ!」

「お前らはどうするんだ!」

「このムカつく巨神に一撃ぶち込んでから行く!」

「兄貴だけにやらせるかよ!散々頭痛めつけやがって!」

 

武器召喚で大剣を構えた王族二人はシフト魔法で脱出できる。

グラディオラスが止まっても邪魔になるならば先に降りて安全を確保する方が良い。

そう判断したメディウムは受け身をとったグラディオラスを氷の滑走路に放り投げる。

 

大柄な男を持ち上がらずとも投げたメディウムは正確に氷の上に落とし、滑り落ちて行くグラディオラスを見届けた。

それと同時に迫り来る巨神の腕を見据える。

横から迫ってくるその手のひらの重心めがけて二つの大剣が振り抜かれた。

軌道をずらした手のひらはそのままの状態でもう一度迫ってくる。

メディウムは真剣な顔で今の一撃で砕けはせずとも刃はダメになったであろう大剣を構え直し、ノクティスに笑いかけた。

 

「良いかノクト。三十秒が限界だ。ーーしっかり見とけよ!」

 

何をする気だと言う前にメディウムの体がブレる。

全身が紫の炎に包まれ、その周りには赤紫のファントムソードが舞った。

コルの言っていた模倣品のファントムソードは兄の呼び声に答え、その身を代償に力を振るう。

 

ぐらりと兄の体が揺らぎ十一の剣が一斉に牙を剥いた。

 

それはまさに兵器。

昔自分を守ったレギスとはまた別物。

戦うために生み出された模倣品は意志を持って巨神の腕を捉える。

魔法を併用したものなのか時には雷を放ち時には爆風を上げ時には冷気を撒き散らす。

紫に輝く兄は常時シフト魔法で巨神に張り付き鬼神の如き表情で口から血を流している。

 

コルの言っていた命を削るファントムソード。

自分はまた家族に助けられている。

溢れ出る血を吐き出しながらもメディウムは攻撃の手を緩めず、巨神の手のひらをグラディオラスのいる広い空間へと落とした。

 

これが王の力。

模倣品であの威力であれば自分はどれほどの力が出せるのか。

その力の強さとそれを操る兄の技量と身を削ることも厭わない姿に身が震えた。

 

しかし、戦うなら巨神の腕が落ちた今がチャンスだとノクティスはエンジンブレードを巨神の腕へと突き立てた。

 

自然と広い地に降りたノクティスに当たらぬようにファントムソードが退けられ宣言通り三十秒で剣は砕けて消えた。

魔力切れと体力の限界なのか、空中にいたメディウムが受け身もとらずに落下し始めた。

持ち直した巨神の腕が力尽きた兄に迫っている。

 

地面へとぶつかる前に間一髪のところでグラディオラスが受け止め、巨神の腕をノクティスのファントムソードが受け止めた。

兄を守りたい一心で発動したが存外うまく行くもので兄の半数にも満たない四本のファントムソードを巨神へと向ける。

鬼神の如き兄に圧倒されたがそれ以前に、命を削る切り札を使わせた罪はノクティスの中でとても重い。

 

隕石を支え続けるほどの巨神の一撃はいくらオリジナルのファントムソードの方が強いとはいえ四本では耐えきれない。

嫌な音をあげる武器はじりじりと押され始めていた。

 

「ノクトっ!魔力を回せっ!刃先に回せば威力が上がる!」

 

血を吐き出しながらも助言をするメディウム。

普段は吐血するほどではないのだが炎が首元にまで及び喉の粘膜を裂いた。

すぐにケアルを回して修復しているが鉄のような味の血液で溺死など冗談ではないと、溢れた血を全て吐き出す。

口元から喉元まで血だらけになりながらも回復して来た魔力で片手剣を召喚した。

 

ノクティスの魔力と四本のファントムソードでは耐えきれない。

支えてくれていたグラディオラスを押し退け、なんとか具現化できた四本をノクティスのファントムソードとともに叩きつけた。

ふらつく手で片手剣を後方へ投げ飛ばしシフト魔法をギリギリで使用。

逃げ遅れたノクティスはグラディオラスが引っ張って退避させた。

命がいくつあっても足りないと悪態をつきつつも後方へと下り打開策を見出すべく頭を巡らせる。

 

そんな時、ギリギリの戦いを繰り広げる三人の元に待ち望んだ声が届いた。

 

「ノクト!!」

「お待たせ!ってメディ!?それ大丈夫!?」

「ゲッホッ…なんとか治った。見た目派手だが大したことねぇよ。」

 

イグニスとプロンプトが合流し、口元が血だらけのメディウムに軽くホラーだとプロンプトが悲鳴をあげる。

吐血するほど喉を裂けば死んでもおかしくないのだが気合でなんとかしたメディウムはふらつきながらも武器を構える。

 

「無事だったか!」

「途中で帝国軍が来たりしたけど、こっちの方がヤバそうだね!」

「メディが重症か。まだ戦えるのか。」

「当たり前だろ。つってもジリ貧だ。軍師殿、策はないか。」

 

尊敬するメディウムという軍師が自分を頼ってくれている。

イグニスはどこか歓喜の思いを湧かしながらも状況を打破するべく注意深く巨神を観察する。

迫り来る腕を避けながらノクティスが情報を伝える。

 

「兄貴の魔法じゃ効かなかった。マジックボトルに詰めてない純正の魔法。エレメントを直で動かしてたから威力は期待できないやつ。」

「期待できなくて悪かったな!ボトル一個や二個じゃ通用しないのなんて神様しかいないだろ!」

「わかった。ノクト、その力は?」

「王の力を全部召喚した。兄貴の真似だがあと数分が限界。」

「俺もあと一回なら…。」

「兄貴は召喚して重症だ。自傷が思いの外ヤベェのがよくわかった。二度と使わせたくない。」

「わかった。大事な頭脳担当だ。容易に死なせはしない。メディも使わない方針でいいな!」

 

迫り来る巨神の拳を避けながらイグニスが指示を出す。

勝てる力なのに使うなと言われ、少しだけ不機嫌そうにしているがもう一度使えば大事な場面で使える時間が減る。

緊急用の手段でもあるためメディウムは渋々頷いた。

 

「このままだと決定打にはならんがそこはどうするんだ!軍師後輩!」

「氷のエレメントを詰めたマジックボトルはどのぐらいお持ちですか!」

「氷?ああなるほど!それならこいつを使いな!」

 

一言で作戦を悟ったメディウムは明らかに異常なほどの爆発物だと思われるマジックボトルを投げよこす。

慌てて受け取った三人がこれはなんだとメディウムに聞いた。

面白いおもちゃを自慢するようにニヤリと笑うその表情から嫌予感しかしない。

 

「俺の知りうる限り最高のブリザガだ!こいつぶち込むなら後ろに下がっていた方が賢明だ!ノクト!その腕の動きを止められるか!?」

「なんとかいける!」

「入れ替わりで打ち込む!本気出すから下がれよ!」

 

再び振り下ろされ勢いがついたタイタンの腕をノクティスが四本のファントムソードを叩きつけることで加速させていく。

殺しきれない勢いを有した腕は強い地鳴りと衝撃を与えたがその一瞬を見逃さずメディウムが召喚した剣を投げつけた。

 

「腕置いてけぇぇぇぇ!!」

 

直球すぎる要求を叫びながらその腕に片手剣を叩きつける。

こちらを見る金色の巨神をみてぞわぞわと背筋を駆け巡る本能。

自然と緩む口元の感覚に悪い癖が出たと内心呆れつつも狂ったように笑い声をあげる。

視界の端でファントムソードの限界が来たのか後方に飛びのくノクティスが見えた。

 

長い間味わうことのなかった死闘。

戦うことを滅多に許されない鬼神の如き狂戦士は今己を殺そうとするその存在に脳内麻薬ように溢れ出る歓喜を抑えきれない。

 

メディウムの悪い癖とは命を掛け合う戦いに度し難いほど楽しくなってしまう思考回路だ。

その癖が出てしまう瞬間は自分が死にかけの状態でアーデンの本気の顔のような金色の目を見た時。

今目の前で殺さんとしてくる金色の目を見てしまったメディウムは無意識にアーデンを重ね、痛む身体を無理やり動かして本能のまま生存をもぎ取らんと駆け抜ける。

 

生き残るために身につけた一瞬で思考を放棄し本能のままに戦う狂戦士が今この場で引き出されてしまっていた。

 

「ノクト、大丈夫!?」

「俺は大丈夫だ!けど兄貴が!」

 

駆け寄ってきたプロンプトがポーションをぶちまける。

入れ替わるように巨神の腕に張り付いたメディウムはなぜか笑い声をあげながら腕を避けつつ攻撃を繰り返している。

先ほどまで冷静にみていたメディウムに一体何があったのかは知らないがとんでもないことになっているのは確かだ。

 

「今の一瞬で何があったのかさっぱりだな!!」

「よくわかんないけどスプラッタ映画のヤバいやつみたいになってるよね!?」

「ついでに悪いお知らせだ!帝国が来ているぞ!」

 

焦ったような強い声に振り返ると、帝国軍の魔導兵が揚陸艇から次々に音を立てて降りる姿が見えた。

自分達をどうにかするつもりでやって来たのかと構えるが何やら様子が違う。

発熱しているようにも見える槍状の兵器を装備し、一斉にそれらをタイタン向けて射出。

人間に突き刺したら爆破しないミサイルのような兵器であっても巨神相手ならば爪楊枝のようなもの。

 

しかし、槍を受けたタイタンは苦しみ悶えるように腕を振り魔導兵に叩きつける。

金色の目線から逸れた瞬間に理性が戻って来たメディウムはやってしまった後悔とドン引きされているであろう仲間達への後ろめたさで急いで後方へと下がる。

 

「なにあれ!?」

「対神武器だ。まさかお目にかかる日が来ようとはな!」

「メディ!戻ってきた!」

「すげぇヤベェ奴になってたけどなんだったんだ!」

「できれば忘れてくれ!外の世界を生き抜くための防衛本能がでただけだ!だから忘れてくれ!!」

 

メディウムの見たことがないというより、使用する瞬間を見る日がくるとは思わなかったという口ぶりにイグニスは槍を凝視する。

神話の存在というのは一般人にとってはあくまで伝承であり現実にいるとは誰も信じていない。

しかし、帝国軍は怖いもの知らずにも程があるが対神の武器を作っていたというのか。

 

そしてその神を苦しめるに足る武器を作ってしまったというのか。

 

「汚名は戦場で晴らす!腕をぶっ壊すぞ!今のうちに投げつけろ!」

 

メディウムの指示にイグニスは思考をすみに追いやって先ほど渡されたマジックボトルを握る。

帝国軍の魔導兵がさした槍を払うために手をついたところでイグニスが合図とともにボトルを投げた。

続いてプロンプト、グラディオラスがお手製ブリザガを投げ込んでいく。

 

もはや爆発にも近い氷の塊は巨神の腕に取り付き、芯から凍らせる。

 

「狙うは一点。筋は見えた。遅れるなよ愚弟。」

「スプラッタハッピーもな!」

「だから忘れろってばぁぁぁぁ!!」

 

メディウムの悲痛な叫びとともに巨神を支えるその腕に切り込む。

その後をコンマ一秒遅れることなく夜叉王の刀剣を持ったノクティスが貫いた。

凍った部分を粉々に砕き腕を失ったことで少し倒れた巨神は一度その金の目を瞑るとノクティスへ訴えかけるように見つめた。

 

 

 

 

 

「か、勝てた…?」

 

冷気の残った場所を呆然と見つめる。

腕を破壊されたタイタンはノクティスをしばらく見つめたかと思うとメディウムを見て小さく何事かを告げる。

最初は険しい顔でタイタンの言葉を聞いていたが次第に眉間のしわを解いてメディウムが誇らしげに笑う。

 

「ーー自慢の弟だからな。」

 

真の王。

その存在を認めその力を信じた巨神はどこか微笑んだかのように唸り声をあげ巨体を金色の粒子に変えていく。

 

事態が飲み込めない三人はどうなっているのかわからず困惑するが。

力を授かったことでその意味を少し理解し、小さく頷く。

何を言っていたのか、ノクティスにはわからないが何かを託された。

その考えを肯定するかのように金色の粒子はどこかへと消え最後のいくばくかの飛礫がノクティスの手の中に消えた。

 

「巨神、なんて言ってたんだ。」

「ああ。あとで教えてやるよ。とりあえず満足だってさ。」

 

去っていた巨神は兄に力を使わせ傷つけたがそれは自分の力不足も原因であるし、そもそも腕一本砕いた。

それであいこだとノクティスは巨神への怒りを解いた。

 

「それでだ。このカーテスの大皿を出たいんだが。すまん。限界。」

 

清いほど笑顔でバタンッとメディウムが倒れた。

その顔は真っ青であり意識はあるが立ち上がれない状態のようだ。

明らかに出血のしすぎと力の使いすぎだった。

メディウムを抱えようとグラディオラスが背負う。

 

しかし、背負いきる前に四人は強烈な地響きにみまわれた。

 

「メテオの熱!?」

「巨神がいなくなって、支えがなくなってるんだ!」

 

そこかしこから溶岩が吹き上がり、熱いというより溶かされてしまう危険性が色濃くなる。

グラディオラスは急いでメディウムを背負いあげ、四人で周りを確認するが脱出出来そうなルートは見当たらない。

 

「ど、どうしよう!?」

「戦うこと自体が想定外だ!どうしようもないぞ!」

 

神に認められたところでデッドエンドなど冗談ではない。

なんとか逃げられないかとあたりを懸命に見回したところでぐったりとしていたメディウムがもそもそと顔を上げる。

 

「魔導…エンジン…。」

「メディのやつが魔導エンジンの音がするとか言ってやがる!」

「どんな耳してるの!?この状況でよく聞こえるね!?てかマジで!?」

「冗談とかじゃねぇだろうな!」

「いや、本当にそうらしい。揚陸艇だ!」

 

帝国軍の揚陸艇が一隻、ノクティスたちの前に浮かぶ。

ここで助けに入る帝国人。

もはや一人しか思い浮かばない四人の答えは大当たりだった。

 

「おーい!無事?」

 

飄々とした態度は変わらず、しかし明確な敵と判断せざるを得ない状況でその男は嗤う。

 

「俺の名前さ。別に長くて略してたんじゃないんだよね。」

「アーデン・イズニア…。帝国の宰相っ!」

「そうなんだよ。でも今は助けに来たんだ。」

 

どう考えても罠にしか聞こえない。

今この場を逃げおおせても帝国軍の揚陸艇。

相手は帝国軍の宰相。

はいそうですかと信じられる相手ではない。

 

「ここで捕まえたりしないよ。どうするの?選択肢は二つ。生きる?」

 

四人の返事はない。

 

「なんだよ。死ぬの?」

 

与えられた選択肢は実質一つ。

ノクティス達に死ぬという選択肢はない。

 

「ここでは死ねない。行こう。いいな、ノクト!」

「…っ!ーーわかった。」

 

一抹の不安を抱えながらも、ノクティス達は揚陸艇へと乗り込んだ。

 

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