FFXV 泡沫の王   作:急須

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入れるところ間違えていたので修正


Chapter05 暗雲
一時の休息


揚陸艇の中。

血液が足りず頭の上からつま先まで冷えるような感覚に不快感を覚えながらも壁際に座り込む。

ボロボロの五人の中でも特に重症なメディウム以外は細かい切り傷のみで手当てすれば後にも残らないだろう。

重症といっても欠損や骨折ほどではない打撲と失血。

きちんと食事をとって数日休めば輸血の必要もなく自己回復するレベルだった。

 

しかし、敵国の揚陸艇の中というのも相まって殺伐とした雰囲気。

危険地帯を抜けたといっても帝国軍に捕まっているのと変わらない状況がそうさせていた。

アーデンの目的を知るメディウムからすれば捕らえるわけがないのだが四人は帝国の内部など知らない。

赤毛の不審者は声をかければいいものを不躾にもじろじろと観察し四人に失望の目線を送っている。

彼のお眼鏡に叶う王と従者というのは非常にハードルが高い。

なりたての王ではそのハードルの高さを知ることすらままならないだろう。

 

ふわふわする不快感の中で、自分が動かなければダメかとため息をつきながら声を出す。

気力も尽きかけ弱々しいのは致し方ない。

 

「安全な場所におろしてくれるんだよな。アーデン宰相様。」

「もちろん。レスタルムの方面は軍がいるから湿地の方になるけどね。ところで、治療薬いる?メディウム君。」

「…いらねぇよ。」

「そう。残念。」

 

軽口を叩いたが特に気にする様子もなく返答され、治療薬はいるかと聞かれた。

警戒した四人はアーデンを睨みつけノクティスはメディウムのそばを離れずプロンプトも支えるように隣に座り、グラディオラスとイグニスは三人を守るように直線上に立つ。

 

ポーションではなく治療薬と言い換えたことに四人は違和感を覚えていないようだがその正体を理解したメディウムはいつものようにいらないと返した。

治療薬とはシガイの寄生虫のことを指しているのだろう。

生憎、まだ人間でいたい。

 

「…帝国の人…なんだよね。」

「帝国人がみんな悪いみたいな言い草だ。」

「あ!いや…その…。」

「みんな悪くはねぇけど、あんたは悪そうだ。基本嘘つきっぽい。」

「ええ?俺嘘ついたことないと思うけど。」

 

王都を襲った帝国の宰相という立場の人間だがアーデンのいうとおりすべての帝国人が戦争をしているわけではないし王都を襲撃したのだって軍の一部ほど。

ほとんど魔導兵だが。

しかし決して的外れではない指摘にプロンプトはどうすればいいかわからず黙り込む。

そこにノクティスが助け舟を出した。

 

嘘つきっぽいという曖昧だがその通りであろう雰囲気を持つアーデンは、自分は嘘をついた覚えはないと主張する。

二十年来の付き合いのメディウムもたしかに重要なことで嘘をつかれた覚えはない。

代わりに真実を伝えられたこともない。

 

「ああ。ついたみたい。じゃあね。王子様達。精々頑張って。」

 

チョコボポスト・ウイズの近くの森で降ろされた五人は本当に何もしなかったアーデンを不思議に思いつつ安静にしなければならないメディウムのためにモービル・キャビンで休むこととなった。

 

 

 

 

 

 

「レガリアがないとはなぁ。」

「シドニーに連絡入れたが周辺の工場に運ばれたかもしれないから探してくれるらしい。」

「まあ、持ってったのが帝国軍の可能性もあるな。」

「またあのおじさんが助けてくれたりしないかな?」

「アーデン宰相かぁ?」

「やめてくれ…。期待できるはずがない。」

「だよねー。どうしよっか。軍師様二人。」

 

カーテスの大皿から逃げた翌日の日が差し込む昼下がり。

モービル・キャビンの前で立ち話をする男五人。

血だらけの服を捨てて買っておいた服の二着目を身につけて刃こぼれした刀達の整備をするメディウムはなくなったレガリアと今後の予定について頭を巡らせる。

そもそも敵地のど真ん中に置いていったのが悪いので餅は餅屋ということでハンマーヘッドのシドニーに任せた。

シドの方にも頼みたかったのだが船の修理で忙しく、断られてしまったのだ。

 

代車をシドニーに提案されたが男五人が乗れる車など外の車ではほとんどなく、レガリアの王族仕様になれた四人には考えられなかったらしく丁重に断った。

しばらくは徒歩となるが致し方なく、連絡待ち。

 

「貧血はとりあえず収まったがしばらく安静なんだろ?」

「当たり前だ。二度とあの技使うんじゃねぇぞ。」

「へいへい。となるとモブハントで稼ぎながら次なる移動手段、チョコボの確保だ。」

「ええ!?チョコボ!!乗りたい!!」

 

本当に嬉しそうに大声を出すプロンプトに耳が痛くなったメディウムだが貸し出しが現在は停止されていて、とある野獣を倒さねば難しいことを説明する。

合流する前にチョコボポストの店主ウイズに聞いたスモークアイというベヒーモスのことである。

レガリアを取りに行った四人を待つ間に聞いたところ、正式にモブハントとして依頼を出しているそうだ。

ベヒーモスさえいなくなればチョコボの貸し出しを再開できるという。

 

「俺は動けないが、四人でなんとかなるだろ。てな訳で金稼ぎと移動手段確保。俺は安静にしつつハンマーヘッドの連絡待ち。異議は?」

「なるほどな。いい腕試しになる。」

「見習わなくてはな…。」

「軍師の先輩っていうかあらゆる状況において先輩だよねー。俺はもちろん異議なし!」

「絶対安静だからな!」

「年長者だし。ここからほど近い場所だよ。モービル・キャビンは嫌だけどいるから。はい依頼書。」

「なら異議なし。ちゃっかり受けてるし。」

 

鎖骨から首裏にかけて新たにできた火傷の跡を見ながらノクティスは再び安静にしろと念を押す。

相当なトラウマとなったのか金輪際ファントムソードを使わないことを誓わされた。

口約束なので本気で危ないときは破る誓いとなるがノクティスが嫌がるのならばほいほいと使うのはやめる気でいた。

 

ちゃっかり受諾済みの依頼書をノクティスに渡して、刃こぼれした片手剣と大剣を武器召喚で取り出して白いテーブルに並べる。

一通り手入れを施しても鈍器程度にしか使えなくなったそれらをまだ手入れする気のようだ。

ウイズ特製のチョコボサンドをかじりながら真剣に見るメディウムに、この様子なら本当に動かないだろうと信じ四人はスモークアイ討伐へと向かった。

 

肉眼で捉えられないほど離れて行ったことを確認し、メディウムは大剣と短剣を撫でる。

片手剣は奇跡的に刃こぼれしなかったがだいぶ傷んでしまった。

シドに修理を頼みたいがカエムの岬に行かねばなるまい。

その前に雷神の啓示を行うのだが、雷神は案外面倒な行動をしなければならないらしく、案内はルナフレーナがゲンティアナに一任した。

風穴あけたフォッシオ洞窟を正面から踏破する前に封印を解かねばならずその封印を解く鍵を現在準備中。

 

携帯に表示された天気予報の限りでは雨雲がこちらに向かってきているらしいのでもうすぐだろう。

 

「ーーで。レガリアはどこに運ばれたんだ。」

「ありゃ。バレてた?」

「隠れる気もないくせに。四人は気づかなかったみたいだけどさ。」

 

武器から視線を外さずにさも当たり前のように声をかければ、あっさり姿を現したアーデンは座るメディウムの横に立つ。

プロンプトが笑いながらこぼした助けてくれそうなおじさんは会話が始まる前にすでにそこにいた。

しかし、幻覚魔法で景色に溶け込んでいたため四人は気づかなかったようだ。

 

王族のノクティスならば魔法の流れで感知できるかもしれないがそこは経験の差。

基本的に魔法は発動した瞬間は大きな魔力の流れがある。

しかし、発動している状態のものは一定の流れになってしまい、感知が難しくなる。

治療のためにケアルを行使することが多いメディウムは魔法の感覚が鋭利になり、魔力そのものに反応できるのだが経験の薄いノクティスには難しいだろう。

 

「新しい火傷が付いていたのが気になって見にきちゃった。使ったんでしょ。アレ。」

「とうとう服じゃ隠せない首元だ。燃え尽きる日も近そうだな。」

 

襟首に手を忍び込ませたアーデンは新しい火傷を撫でる。

ファントムソードの召喚はこれで三度目。

オリジナルとは違い一つの武器としては扱えない模倣品はアーデンのオリジナル魔法。

アーデン自身は不老不死の身であるため火傷などできた瞬間に治療する上、自分より後の世代の若造の王など取るにならない。

メディウムのようにわざわざ正面切って力を借りつつ模倣するのではなく文字通り力を盗んで模倣していた。

 

神経を保護する皮膚が薄くなり、感覚が鋭くなっている火傷部分を触られたことで眉間にシワがよるが抵抗することなく好きにさせた。

 

「探しているレガリアってやつは軍事基地にあるよ。でもちょっと天気が悪いみたいでね。移動基地で運ぶ予定なんだけど危なくて今は待機中。」

「こっちはまだ晴れだが帝国側がひどい雷雨か。随分都合がいい。帝国はレガリアをどうする気で?」

「さあね。高級車だし。売りさばいたりするんじゃない。それより防犯意識しっかりしなよ。車のキー差しっぱなしだったってさ。」

「ノクトだな…。」

 

教えてくれないかとも思ったがどうでも良さげに移動基地を教えてくれた。

晴れても雨でも一度補給のためにチョコボポストとレスタルムを直線で結んだ間の広い土地に着陸して補給することになるらしい。

戦争で作られた丁度いいコンクリートの壁があるらしく、標も近くにある。

雷神がいる限りこちらもしばらく雨は止まないため焦らず啓示を済ませられるだろう。

あとで防犯意識の薄い愚弟を叱りつけることも忘れずに。

 

「にしても巨神は流石に苦戦したか。こりゃまたひどい。」

「地震起こすような神の一撃を食らって刃こぼれで済ませたのは凄くないか。王都の武器と外の武器の格差を思い知らされたけどさ。」

 

王都製の大剣とレギスから授かったエンジンブレードは手入れすれば問題なく扱えるほどの損傷しかなかった。

力技が傷のせいでできない分武器の扱いだけは。

神の力を手に入れオリジナルのファントムソードを振るえるノクティス相手でも勝てるほどの実力を有してこそ兄と胸を張って言えるような気がしていた。

 

「普通に話しているが、こんなところで油売っていていいのか?」

「首脳部も研究機関も俺がいなくても回る。移動基地で帝都に一旦帰るつもりだったし。ディアがいないと要塞にいても暇なんだよね。」

「だからってルシス領にいるなよ。」

 

刃こぼれした武器を消して立ち上がる。

そろそろ横にならなければ気持ち悪くなりそうだとモービル・キャビンに足を踏み入れたところで何かを投げつけられた。

後頭部に直撃してぽとりと落ちたのは中身が硬い斜めがけの背負い袋。

見覚えのあるグレーの背負い袋を拾い上げて中身を確認すると、予想通り一冊のスケッチブックといくつかの絵の具と筆だった。

武器召喚でキャンプ用品や釣り道具が召喚できるのと同じ要領で呼び出せるメディウムの水彩画セットである。

 

「ついでに届け物。」

「…なんでわざわざ。」

「気まぐれ。」

「ふーん…ありがとう?」

「どういたしまして。」

 

くすくすと笑っていたかと思うと次の瞬間には消えていた。

傷の様子見と届け物のためだけに話しかけてくるアーデンの行動はさっぱりわからない。

まだ何か入っているかもしれないと中身をもう一度改めると使ったことのない新品な橙色の絵の具が入れられていた。

そこには付箋で"夕日"とだけ書かれていた。

これで夕日でも描いていろ、ということなのだろうか。

 

スケッチブックにはジグナタス要塞から見える帝都の景色やテネブラエのフェネスタラ宮殿、アコルドのオルティシエなどがあるがよく良く考えてみればルシス王国王子なのにルシス領の絵が一枚もない。

訪れたことは年に一度必ずあるはずなのに一枚も描いたことがなかったのか。

 

首を傾げながらも絵の道具を持ってしまった以上描きたくなりこのまま眠れなくなったメディウムは、チョコボポストにいるヒナチョコボを描くことにした。

 

横から見ていたウイズがその絵を気に入り調子に乗ったメディウムが貧血で気持ち悪くなるまでヒナチョコボとチョコボの絵を描き続け、真っ青な顔になったところで戻った四人に連行されたのは余談である。

もちろんしこたま怒られた。

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