FFXV 泡沫の王   作:急須

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戻ってノクティスサイド。


雷神の啓示

仕事のためにチョコボに乗ってアラケオル基地に走り続けている頃。

メディウムと別れたノクティス達は忠告通り、チョコボで林を駆け抜けていた。

道に沿って敷かれた封鎖戦線であるという予想は的確に当たり、林をチョコボで抜ければ野獣にも追いつかれずにフォッシオ洞窟へと到着できた。

岩が重なってできた空洞のような場所だったが見えたと同時に落雷するという分かりやすい肯定で迷わず来られた。

 

「兄貴のメールによると中はシガイだらけで、手付かずだから気張ってけ…だってよ。」

「メディは踏破したわけじゃないんだ。」

「お?何だこの画像。蛇か?」

「ナーガのシガイだな。"生息が目撃されているフォッシオ洞窟のボス"…まるでゲーム感覚だな…。」

「兄貴にとっちゃこんな洞窟ゲームと変わらないってことだろ。…こんだけ力を手に入れたってのに、兄貴にまだ追いつけない。」

 

今持てる力が手に入れられる力の全てではないが、神の力一つでメディウムと大きな格差があるはず。

しかし、まだ遠く及ばない背中があることにノクティスは悔しそうに拳を握る。

勝てる可能性すら浮かばないあの兄はどんな鍛え方をして来たのか想像もつかない。

 

「じゃあ追いつくためにも頑張らなくちゃね!」

「そうだな。軍師としても負けていられない。」

「守られてばっかじゃ王の盾なんて名乗れねぇしな。」

 

想い想いに気合いを入れる仲間たちを見てノクティスも腹に力を込める。

一番の戦力とも言えるメディウムがいなくてもこれまで野獣を倒して来られたし、王の墓までたどり着けた。

巨神のような拳で語り合う啓示はごめんだが、問答無用で雷を打たないのを見る限り比較的温厚そうだ。

 

チョコボを撫でながら降りてお礼を言い、雨でずぶ濡れなのも構わず洞窟の前に立つ。

 

「よっし。行くか。」

 

ノクティスの掛け声を合図に全員が洞窟へと挑んだ。

 

 

 

 

 

 

巨神に比べればフォッシオ洞窟など取るに足らなかった。

 

狭い洞窟に突如現れるシガイ、驚いて叫ぶプロンプトなど大体の洞窟で体験できることが多発するが、敵の強さ自体はなんてことない。

三日月型で浮遊するインプと呼ばれるシガイが鬱陶しいがファントムソードの扱いを巨神戦で学習したノクティスの相手ではなかった。

 

ファントムソードはどれもクセが強いが強力。

巨神戦では全てを召喚したが、一本だけを武器召喚と同じ要領で喚び出せることが発覚した。

扱いにくい上に生命力を吸われるとメディウムに教えられたが真の王ゆえか、少し休めばきっちり元通り。

火傷を負ったり魔力消費が激しかったりはしなかった。

 

順調に洞窟を進む最中、異変が起こった。

 

「ねぇ、なんか寒気しない?」

「寒気?雨で冷えたのか?」

「ノースリーブだもんな。俺の上着羽織るか?」

「ずぶぬれの上着羽織ってもかわらねぇよ。」

 

露出した両腕をさするプロンプトにイグニスが心配そうに聞く。

多少は袖のある上着を着ているノクティスは脱いで渡そうとするが、グラディオラスに最もなことを突っ込まれた。

 

戦闘という命がけの運動をしているため、他の三人は体温を気にしていないがプロンプトだけは寒さとは違う悪寒を感じていた。

ねっとりと絡みつくような、冷たい鱗を思わせる視線。

具体的に伝えようとプロンプトは言葉を探す。

 

「視線みたいなのも感じる!ねちっこいっていうか、冷たいっていうか?」

「そのお前の足に絡んでるのみたいなのか?」

「そうそう!こんな蛇みたいなのってうそぉぉぉっ!?」

「プロンプトっ!」

「あの大きさはナーガだったみたいだな!」

 

洞窟の道に空いた大きな空洞から、人の顔を有し巨大な蛇の胴をウネウネと動かして去って行くナーガが見えた。

すぐに追いかけようとするがシフト魔法が使えても降りられないような高さの穴。

穴の下にある空洞はどうやら道の先にあるらしく、プロンプトはそこまで連れ去られたようだ。

 

魔法が使えるノクティスや訓練を積んできたグラディオラス、イグニスならまだしも近接戦闘がからっきしで拳銃が獲物のプロンプトはまずい。

迫り来るシガイをシフト魔法で避けながらノクティス達はプロンプトの叫び声が聞こえる方向を目指す。

 

洞窟を駆け抜けた先は、鍾乳洞が多くある幻想的な空間。

しかし、それ以上にインプが大量にいる。

ノクティス達が抜けてきた道から見える、真ん中の広場のような場所にプロンプトが取り残され、じわじわとシガイに追い詰められていた。

 

作戦など考えている暇などなく、ノクティスは剣を投げて何度かシフトし襲いかからんとするインプにシフトブレイク。

プロンプトの応戦で弱っていたインプはあっけなく朽ち果てたが、気にすることなく他のインプが襲いかかってくる。

 

「とりあえず!大丈夫か!」

「大丈夫!!さっきのがボスってやつ!?」

 

プロンプトに接近させないようにインプをいなしながら安否を確認するが存外元気なようだ。

射線に入らないように立ち回っているところに、坂道を下って追いついてきたイグニスとグラディオラスが後ろからインプを殲滅し始めた。

こうなって仕舞えば後は簡単に倒しきれた。

 

 

 

「ーーさすがに肝が冷えたぞ…。」

「もう二度とあんな目には会いたくないよ!子供を探してるとか言ってたし…。」

「シガイが喋ったのか?」

 

ひと段落したところでグラディオラスとイグニスもきちんと合流しプロンプトの容態を見るが目立った外傷はなかった。

しかし"子供を探している"と喋ったというナーガが気になったイグニスは顎に手を当てて考え込む。

 

一般的なシガイは言葉を発したりはしない。

先日聞いたシガイは寄生虫という説を信じるならば元は別の種であり、その種が人の言葉を喋れなければそもそも発生しているという考えにはならない。

メディウムは特に言わなかったが人の言葉を喋れるシガイというと元の生物は。

 

嫌な予感が湧き、イグニスは意味もなく眼鏡をあげる。

 

「メールで送られてきた一般的なナーガより特殊個体の可能性がある。ノクト、もう一度見せてくれ。」

「おお。これか。プロンプトを連れ去ったのもこれだよな。」

「見せないでよぉ!!」

 

添付された写真は遊び心なのかどこにでも売っているブロードソードの写真と合成され、大体の大きさを把握できる。

ノクティスやプロンプトを怖がらせるために大きさの比較ができるようにわざわざ編集したような文面が書かれているが思わぬ場面で役に立った。

どう考えても一般的なナーガよりも一回りほど大きい。

 

イグニスは希望的観測だが、人の言葉を理解したシガイ、元は別種の野獣であると結論付けた。

この件についてはメディウムに直接聞きたい疑問であり、ナーガを倒さねば先には進めない。

ノクティス達を無駄に不安にさせるような発言は控えた。

 

「お?これナーガの詳細情報だな。」

「"洞窟の最深部に潜む個体が多く、目的のものが最深部ならば生かして尾行するのも手"…か。えげつないこと考えるな、兄貴。」

 

実際に何度か喋らない個体のナーガに遭遇したことのあるメディウムは実験のように生かして尾行したことがある。

総じて最深部に向かったがどういう習性なのかまでは把握できなかった。

因みにその際はモブハントの一環でナーガの退治を請け負ったらしく、既に尾行されたナーガは息絶えている。

 

「でもすごく楽ちんだよね。通れる道限定だけど。俺をここに置いてったナーガはあっちに行ったよ!絶対戦いたくないけどね!」

「下がっててもいいが俺たちが目離した隙にまた攫われるかもしれないぜ?」

「逃げられなくなったんだけどぉ!?」

 

去っていったナーガが通ったと思われる道を指差し、プロンプトが駆けていく。

戦いたくはないが目的が目的のため戦闘を避けることも難しい。

グラディオラスが笑いながらプロンプトの背中を強く叩き、先頭を歩く。

誰かを守るためのグラディオラスの背を見て恐怖に焦っていた心が落ち着いてきたプロンプトは召喚した銃を強く握りしめた。

 

 

 

 

 

ーー私の子供、しらない?ーー

 

シガイを撃退しながら進んだ先は少し開けた場所でいかにも決戦のバトルフィールドのようになっていた。

奥に進む道が二つあり、しゃがめば通れる道と歩いて通れる道どちらに進むか悩んでいると濁り彷徨う、暗い音がこだまする。

四人は辺りを見渡し、のそりと蛇の胴を引きずるように現れたナーガを見る。

 

人の顔の部分からチロチロと二枚に別れた舌を出し、ナーガは再度問う。

 

ーーねぇ。私の子供、知らない?ーー

 

ノクティスは無意識にプロンプトを見てナーガを指差し、口パクで"子供はお前っていっていいか?"と聞く。

冗談ではないとプロンプトが激しく首を振ったのを見て苦笑いし、ナーガの問いに答えた。

 

「知らない。」

 

ーーなら、あなた達を私の子供に!!ーー

 

大きく咆哮したナーガが四人に襲いかかってくる。

事前に立てた作戦はナーガの弱点を的確につく氷魔法を使った戦闘方法。

 

「おらぁっ!」

 

まず、ノクティスが特攻しナーガの噛みつき攻撃をパリィ、次いで反撃に入る。

 

「グラディオ!」

「任せろ!」

 

シフト魔法で次の攻撃の前に離脱。

怯み、若干の隙間ができたところにグラディオラスが割り込み大剣による薙ぎ払い。

近接戦に持ち込んだ場合ナーガも近接で応戦してくるため噛みつきや尻尾による薙ぎ払いをローリングで回避。

 

広場の中央付近まで誘い込み、グラディオラスは盾を構える。

 

「どんとこい!」

 

「いっくよー!」

「うまく逃げ切ってくれ!」

 

グラディオラスに注目したことで完全にノーマークになったイグニスとプロンプトが、事前に生成したメディウム特製レシピ、三連ブリザラを思いっきり投げつけた。

 

盛大に爆発し中心地から極寒の地を思わせる冷気を放つが、予め中心地に誘導する事で逃げ場が用意されている。

グラディオラスは若干服や毛先が凍ったようだがうまいこと抜け出していた。

追撃と言わんばかりにもう二発投げたところで、弱り切り激昂したナーガが獣の咆哮をあげる。

 

しかし叫びは途中で命とともに切れることとなった。

 

「さいっ!ご!」

 

シフトブレイクでナーガの首を狙ったノクティスが凍りついたその首を切断したのだ。

たとえ生命力の強いシガイでも首を切断されれば絶命する。

ドロドロとした黒い液体を撒き散らし、ナーガの巨体は地に伏した。

 

「よっし。やっぱ俺つえーわ。」

「ノクトさいきょー!」

「メディのおかげもあるな。」

「"あなたの氷河期に。ブリザラレシピ"、威力半端ねぇな。」

「名前ふざけてるけどすごかったねー!」

 

弱点属性の記載とご丁寧に持っている材料で作れる氷魔法のレシピまで載せられたメールが作戦の軸となった。

兄はその場にいなくても、必ず助けになるようなものを置いていく。

追いつけない背中は相変わらずだが、頼りになる兄に後で礼を述べようと人知れず微笑んだ。

 

「ノクトー!こっちが奥じゃないかな!」

 

暗い洞窟から早く出たい一心でプロンプトが歩ける道へ進む。

ナーガの習性を考えるとそちらが最深部なのだろう。

ボス戦をクリアしたからと気をぬくことなく先に進むと、白い木のようなものが天井に空いた穴から差し込む光と雨に打たれていた。

 

これが祠かとノクティスが近づき、手をかざすと同時に落ちる強い魔力の落雷。

全身に響き渡るような高純度の魔力とそれに付随する神の力。

託すような巨神とは違う、預けるような雷神の啓示。

ノクティスの瞳は紫に輝き白い木のようなものに紫に輝く稲妻がまとわりつく。

 

同時に何かの映像が頭に流れた。

 

「ルーナ…兄貴?」

 

それは、とんでもない映像だった。

 

罰当たりにも雷神に呪詛を吐き、フォッシオ洞窟の裏側へと回り込み祠の近くに兄特製ファイラをぶち込み、回りくどいことするから壊されるんだザマァ見ろと高笑いをあげる兄と思わしき背中。

その背中を致しかたない犠牲だったとお淑やかに微笑むルナフレーナ。

 

一瞬のホワイトアウトの後、誓約を行うルナフレーナが現れ何事かをつぶやく兄の姿。

雷神の杖のようなものが兄の前にあらわれビリビリと雷を発するが気にもとめず知らんぷりする兄。

 

最初と最後が衝撃的すぎて重要な部分が全く頭に入ってこなかったが誓約を行ってくれたルナフレーナの姿のようだった。

 

頬を裂くような轟音とともに帯電していた雷が去り、確かな力がノクティスの掌に収まる。

それは、白い木のようなものの枝。

触ればつるりとしていて木というより岩というほどにしっかりしていた。

巨神の金色の砂のようにこれも啓示の証なのだろう。

 

「…兄貴は神様を怒らせる天才なんだって改めて自覚したわ。」

「あの人雷神も怒らせたのか。」

「温厚な雷神に説教されてるのが見えた。」

「えぇ…時々思うんだけどメディって怖いもの知らずだよね…。」

 

呆れたような三人の言葉を背に、ノクティスは洞窟の壁を触る。

一箇所だけハリボテのような空洞音が響き、塞いであった大きめの岩をグラディオラスとともにどかすと人一人這って出られる穴が見つかった。

 

「この穴開けて怒られたらしい。でもこれで早く出られるな。」

「この後はレガリア奪還だが一度休息を取りたいな。」

 

イグニスの提案に三人は賛同し、レガリアの場所へと移動してからキャンプが決定した。

 

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