FFXV 泡沫の王   作:急須

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振り回されて

晴れ渡る空。心地よい風。

 

俺はなぜか白いラインが特徴の赤いオープンカーで連れまわされていた。

運転しているのはもちろんアーデン。

仕事の話が終わったと思ったら即座に車に押し込められ、運転中ニヤニヤとこちらを見てくる。

余計に腹立たしい。

 

「いい加減どこに向かうか教えてもらいたいんだが?」

 

荒野の中をオープンカーでドライブしたいなら一人でしていただきたい。

語尾を荒くしながら問うと相変わらずのムカつく顔でニヤニヤするだけ。

俺で遊んでそんなに楽しいのか。

 

「...調印式までそれなりに日はあるが、あまり目立つ行為は避けたいのだが。」

「ディアは目立つからね。」

「あんたが一番目立つんだよ。その羽根と無駄に着込んだ服をどうにかしろ。」

 

190cmもの長身でそれだけ着込んでいるとさらに暑苦しい。

もう少しスマートになれないのか。

かく言う俺は、ブーツとジーパン。

半袖シャツの上に袖をまくった膝下まである革のコート。全て黒という暑いんだか寒いんだかわからないスタイルだ。

 

銀色のネックレスは母親の形見。ルシス王家の紋章が薄く掘られており、幻覚の魔法がかけられている。

今は書類上でも息子なので赤毛に暗いオレンジ色の目になっているだろう。

 

これで弟たるノクトを誤魔化せるかはわからないが使命のため。

印象を変えるために、長い間放置し伸びに伸びていた髪をウルフカットにまでしたのだ。

ちなみにバッサリ切ったのはアーデンの野郎である。

 

車に乗る前に使命のためさっさとやってしまおうと腰に携えた剣でサクッと切ろうとしたら、面白そうだからとアーデンがやりたいと言い出した。

適当すぎて後で整えなければならないほどバッサリ行かれた。

今はなんとか整えてある。

ハサミ持っててよかった。絶対髪傷んでるけど。

 

最悪の場合コートについたフードで顔を隠すことにした。

出会わなければ良いのだが遠目でもばれたくないのが兄としての優しさだ。

 

「...ん?潮の匂い?」

 

面倒臭くなって思考を放棄し、寝てる間に着くだろうと目を閉じていたが風が変わったことで鼻についた匂いに目を開ける。

周りを見れば荒野を抜けて緑が見え始めている。

少し先に見えるのは不思議な形をした島。神影島だ。

そうなれば考えられるのは一つ。

 

「おいまさか、ガーディナに向かってるんじゃ!」

「えぇ?今気づいたの?父親にあって気が緩んじゃったんじゃない?」

「ぐっ...汚名は後で返上するとして、早くおろせ!ガーディナにはっ!」

「ノクティス王子御一行でしょ?」

 

わかっててわざわざ有無を言わさず乗せやがったのか!

たしかに、レギス王にあってから気が緩んでいた。

死と隣り合わせといっても過言ではないアーデンの側であることは重々承知のはず。

だからこそ先を見越してあらゆることに先手を打ってきた。

 

ノクトのことだから調子に乗ってエンストを起こしてハンマーヘッドのシドのじいさんにお世話になっていることは容易に予想できるし、金もそこまで持たせてないので稼ぎながらキャンプでもするだろうと、早めの出立をコル将軍を通して提案していたが。

 

距離的に一日もかからず到着する場所。

王都の調印式が始まるまでの暇つぶしにリゾートなんて殊勝なことするアーデンではない。

ノクト達と鉢合わせてしまう可能性を考えて早めに先回りしているはずだ。

 

全く車を止める気のないアーデンに、こうなったらシフト魔法で飛び降りようと武器召喚しようとするが一向に出現しない。

焦ってアーデンを見るとその手には赤く光り耳障りな音を出す魔法の妨害装置の小型版。

数時間しか使用できない上に近場でなければならない欠陥品だが今の状態では効果絶大だ。

 

「オルティシエ行きの船を停止させる手続き。頼んだでしょ。それの確認。」

「あんたが出向く必要なんてっ!」

「面白いから。今もほら。そんなに焦って、マヌケだねぇ。」

 

返す言葉もない。ルシス王家に復讐するためだけに世界を闇に包まんとする輩だ。

俺が今ここで焦れば焦るほど笑って愉しむことだろう。

少しでも仕返しする気概があるなら次の手を考える方が建設的だ。

 

冷静になろうと、目を閉じる俺をやはり愉しそうに見つめている。

手の上で転がされるオモチャはいつ見ても面白いものなのだろうか。

アーデンについて考えれば考えるほど頭が混乱することは目に見えているので、頭の外に除外する。

頭の回転の速さで競うとか冗談ではない。

 

使命のためには完璧にメディウム・ルシス・チェラムとディザストロ・イズニアを分ける必要がある。

このままでは不十分の可能性が大いにある。

ならば顔のどこかにもっと目立つ幻覚を付け足すべきか。

しかしアーデンのように声まで変えられないし。

 

そんなことを考えている間に、ガーディナ渡船場についてしまった。

 

「残念。時間切れ。」

「...たのしそーですね?」

 

パーキングエリアに、レガリアの姿はない。

やはりハンマーヘッドでお世話になっているのだろう。

今晩はここに泊まるとして、はてさて何ができるか。

 

「じゃ。ちょっとお仕事してくるから。好きにしてて。明日の朝、桟橋集合ね。」

「あ!おい!」

 

スタスタとどこかに歩いていったと思ったら、瞬きした瞬間にいなくなってしまった。

残されたのは車と小銭しかない俺。

ギルはあるにはあるがここの宿に泊まれるほどではない。

モービル・キャビンは昔、アーデンにトラウマを植え付けられているので正直使いたくない。

 

「せめてお小遣い置いてけよ...。」

 

片手で頭を抑える。

柔らかい南風と晴れ晴れとした青い海を盛大に汚したい気分だ。

車は運転できるのでレストストップまで戻れないこともないが、そうすると朝集合とはいかない。

結果として野宿である。

それかオールナイト。つまり徹夜。

 

緊急用に、武器召喚と同じ要領でキャンプ用品が召喚できるのが幸いだ。

食事くらいはここで食べられる資金はある。

...ルナフレーナ様の救出を考えれば徹夜は避けたい。

 

結果、野宿。

 

ため息をなんとか飲み込んで、せめてもの思いで車を見ると運転席に一枚のコイン。

 

「神凪就任記念硬貨?」

 

かなり前に配られた記念硬貨をなぜあいつが。

配られたといってもテネブラエの人々ぐらいのはずだ。

一度ルナフレーナ様にお会いした時に恥ずかしそうに見せてくれたことがある。

アーデンについて探れば探るほど謎が深まるばかり。

 

何を背負って何に生きているかぐらいは聞かされたが、まれに不可解な行動をする。

この記念硬貨に一体なんの意味があるのだろうか。

 

ーープルルルルルル

 

初期設定の着信音がけたたましく鳴り響いた。

野宿という現実に多少の気分が沈んでいる俺は荒々しく電話に出た。

 

「どちら様ですか?」

「ーー何を苛立っている。」

「うわぉ。こりゃまた珍しいお声で。知り合いの白髪の人にそっくり。」

「ーー今どこにいる。アーデンも見当たらない。」

 

電話の主は今まさに考えていたルナフレーナ様の兄レイヴス・ノックス・フルーレ。帝国軍准将クラスだが、属国のテネブラエ出身のため扱いはあまり良くない。

 

頭のお堅い連中よりアーデンに遊ばれていることの方が多い俺と同じ存在だ。

頻度的には断然俺なのだが。

メディウムとディザストロが同一人物だと知っている数少ない者でもある。

 

使命のために、お互いの家族を見捨てるという点でもどこか似通っている。

ルシスがテネブラエを見捨てたことに対する怒りもあるが今は仲良くやっている。

というよりも俺だけ好意的に接してくれている。

テネブラエの事に関しては、あれはどうしようもない、最善の選択だったとわかっているのに理解できないものだ。

 

それはさておき、どうやらアーデンを探している様子。

あいつは携帯を持っていても俺しか番号を知らない。

俺経由で探そうとしたが俺もどこにもいないと。

結果的に俺の携帯にかけることにしたのだろう。

 

「残念ながらアーデンとはさっき別れたばっかり。どこにいるのかもさっぱりだ。」

「ーーお前でも構わん。」

「おまけの俺に頼るような急ぎのご用事で?」

「ーー調印式でのルナフレーナについてだ。」

 

その言葉ににやける頬を抑え込む。

なるほど、アーデンが何を企んでるかはわからないが妹は助けだしたい崇高なお兄様精神か。

しかし、ルナフレーナ様はレイヴスに引き渡すことはできない。

神凪の使命を果たさせなければならないからだ。

 

だが、これはことをスムーズに進めさせるチャンスでもある。

レイヴスに上手いことルナフレーナ様誘導と、指輪回収をしてもらって守護者...いや友人のゲンティアナに引き渡す。

後方支援をこちらから行えば苦労せず完遂できる。

 

「お兄様も大変だね。そうだな。こういうのはどう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう。野宿したんだ。」

「いっぺん死んでこいアーデン。」

 

桟橋の前にある円型に設置されたソファーにぐったりと横たわる俺。

対するアーデンは馬鹿にするような笑みで桟橋に立つ。昨日と変わらない佇まい。

しかし時間はすでに夕方。沈みゆく太陽が綺麗な海に映り込む。朝集合とはなんだったのか。

レイヴスとの作戦会議後は暗くなってからも続き、標にいってもテントがやっと。

 

寝袋を召喚してなんとかしのいだが、こんなことになったのは全部アーデンのせいだと無性にムカついた。

日が昇り始めた早朝に、海岸でひしめき合うカニという名の魚介に溢れ出るヘイトをぶつけ、解体して煮て食べた。

 

何気にうまかったが魔力も体力も考えずに暴れまわったため、桟橋にたどり着く前にへばった次第である。

いつもバレないように魔法を自粛しなければならないため、ここぞという時に使いまくる癖はこういうことが起こるから困る。

 

しかし、待てども待てどもアーデンは来ない。

流石に不審に思って電話をかけるが応答なし。

致し方なく暇を潰すためにハンターの依頼をいくつも受けてもう一度暴れまわりヨレヨレの状態で報酬をもらった夕方ごろにアーデンがやってきたのである。

 

グロッキー状態の俺にアーデンは容赦なく蹴りをかましてきた。

しかも鳩尾。何か出そうになった。

綺麗な海にぶちまけるところだった。

目眩を起こしてさらに悪化したが、なんとか立ち上がる。

わりとふらふらだ。

 

「おいてくよ。」

 

俺を御構い無しにさっさと歩いていく。

お前が俺をここにおいていかなければこんなことにはならなかったんだ...!

 

手持ちのポーションで回復するかわからないがとりあえず飲んで、ついでに胃薬も飲んでおく。

外していたネックレスを付け直し、フードも忘れず。

なぜ朝からこんな目に。

人の腹を蹴るとかどういうことなんだ。暴力反対。

 

ポーションによって持ち直してきた体を起こして、アーデンの背中を追うと見覚えのある四つの顔。

一瞬体が固まるが、気配を消して様子を観察する。

 

「残念なお知らせです。」

「はぁ?」

 

聴く者を惹き付ける低音が四人に向けられた。

困惑するような声を上げる一番バレたくない青年から隠れなければ。

これ幸いと無駄に長身な後ろに隠れようとしたが、アーデンが俺に帽子を被せてくる。

動く手による視線誘導で発見されてしまった。

フードで見えはしないがいつか殺すという眼光を飛ばすがそんなこと知ったことではないと前に進んでいく。

 

「船、乗りに来たんでしょ?」

「そうだけど...。」

「うん、出てないってさ。今日は調印式だし。停戦の影響かなぁ。」

 

白々しく言っているが、まるで事実であるかのようだ。

実際は俺に根回しして止めさせているのだから見事な自作自演。

流石の俺も脱帽だ。今帽子とれば最悪な事態になるのだが。

 

なにより、アーデンは軽蔑とも侮蔑とも取れる視線を彼らに向けている。

ついでに俺には哀れみの視線。

何か手に持っているのか弄ぶように指を動かしている。

ついてこいという合図も含めて。

俺は犬か。

 

「待つの嫌なんだよねぇ。帰ろうかと思って、さ。」

 

言い切る前に彼らに何かを投げつける。

巨躯の男が守るようにコインをとると、眉をひそめてアーデンに軽口を叩く。

 

「停戦記念のコインでも出たか?」

「え?そんなの出るの?」

「でねぇよ。」

 

停戦の調停もしてないのにコインなんて出るか。

心の中でツッコミを入れるが、冷戦は続く。

こんなに夕方の美しいリゾート地で寒々とした空気が漂うとなんとも居心地が悪い。

 

「お小遣い。」

 

嘲笑うアーデンの行動は俺にはなんとなくわかるが、彼らにはただの怪しいおじさん。

投げた時に見えたが、あの銀色のコインは昨日俺もみた神凪就任記念硬貨。

その存在を知らない彼らは、守るように巨躯の男が前に出ると、威嚇するように吠える。

その姿にさらに侮蔑の視線が強くなる。

 

「おい。あんたなんなんだ。」

「見ての通り。一般人。」

 

「「ねーわ。」」

 

思わず声が出てしまった。

声がかぶった青年がこちらを凝視している。

完全なる俺のミス。背中に嫌な汗が流れそうだ。

ボロを出さないことに関しては一級品である自負はあったのだが、やはり弛んでいるのか。

初歩的なミスが多すぎる。

 

「なーにしてんの。おいてくよ。」

 

先を行くアーデンが愉快そうに嗤いながら俺に声をかける。

 

「...船、乗りたいなら船着き場にいる男の人、頼りな。何か頼まれるだろうけど、話はしてくれる、かもよ。」

 

精一杯の低い声で、それだけいうと走って追いかける。

帽子を手にとって思いっきりアーデンに投げつけたが上手いことキャッチされた。

思わず助言をしてしまったが、バレてないだろうかと内心冷や汗ダラダラだ。

 

きっちり締めていたコートを思いっきり開いてばさばさと扇ぐ。

これを見越して桟橋集合にしたのは予想がついていたが、直接的な対面は予想していなかった。

せめて裏方的な様子見だと思ったが。

 

何よりきになるのがアーデンのあの侮蔑は真の王とは思えないノクトへ。

哀れみは真の王になれなかった俺へ。

まさかこの男に哀れまれる日が来るとは思いもよらなかった。

基本追い込んで潰して遊ぶ姿しか見たことがない。

 

「大事に囲われた王様と死ぬために放り出された王様。似た者同士だねぇ?」

「...あんたと同じなんて思ったことは一度もねぇよ。」

 

いつもの、のらりくらりとした姿から目をそらす。

辛さも、悲しみも比べ物にならない。

 

それを哀れんだりはしないし、同情もしない。

それが俺の、アーデンとの付き合い方で使命を全うするための布石。

過去が変われば、ただの上司と部下か友人かただの知り合いか。仲良くなれたのだろうか。

 

「さぁ、行こう。大事なものを全部壊しに。俺だけの生贄?」

「...ああ。行こう。未来の、ために。」

 

綺麗な空に暗雲が流れ始める。

暗い未来に足を止めてはならない。

なにもなくなっても前に進む足さえあれば、前が見える目さえあれば進み続けなければならない。

なにを犠牲にしても。

 

それが俺の、使命だから。

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