FFXV 泡沫の王   作:急須

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奪還作戦と邂逅

暗闇に紛れながら着々と魔導兵を撃破していくノクティスは、大きな照明のついた柱にぶら下がる。

 

日が沈んだ夜、イグニスの指示通り潜入したが巡回のために動き回るツーマンセルの魔導兵しかおらず、よく離れるため撃破は容易だった。

赤外線センサーで塞がれた感知ゲートも本来必要だろうセキュリティパスワードが必要なく、タッチ一つで解錠。

魔導兵器もろくに動いていない。

 

最初は好都合だと嬉々として撃破し続けていたが、最重要撃破目標である魔導兵強化装置までほとんど障害がない。

奇襲に適した魔法を扱えるルシス王族にしてみれば散歩のよう。

怪し過ぎる基地内に頭を滅多に使わないプロンプトでさえ罠だと考えついてしまい、一旦偵察を行っていた。

 

背後の山のような斜面に沿うように作られたアラケオル基地の出入り口から少し奥にレガリア。

斜面側の最奥に魔導兵強化装置が設置されている。

位置取り的には一度レガリア付近に向かい、その先のゲートを解錠して強化装置を破壊という手筈だったのだがどうも雲行きがあやしい。

 

ゲームで言えばイージーモード。

意図的に難易度が下げられている気がしてならない。

 

分かることを報告するために地上に降り立ち、積まれたコンテナの裏で息をひそめる三人に近寄る。

すでに周辺の魔導兵は背後からのシフトキルで一掃してコンテナ裏に隠してあるため発見される可能性は少ない。

 

「…で、やっぱり罠っぽいよな。」

「理由がわからない。レガリアの持ち主をわざわざ待っているとは考えにくい。」

「あの宰相が手を回しているって可能性が高いだろうな。」

「やっぱりあのおじさん?簡単にしてくれている感じ?」

「それならばレガリアを持っていくという行為の説明がつかない。取り返させるつもりなのに持っていくとは明らかに無駄な行為だ。」

 

見える限りで残っている魔導兵の配置と基地内の様子を聞いたイグニスが頭を悩ませる。

最初の作戦ではひっそりと魔導兵を全滅させ眠っている魔導兵を起こさないようにレガリアに乗り込み、撤退する予定だった。

 

作戦通りにいかない場合に備えて複数のマジックボトルを用意し、各所にばらまいて爆破。

相手の注意をそらしているうちに撤退ということも考えて準備もしてきた。

しかしこの警備では手前の魔導兵を破壊しただけで撤退できる。

エンジンに反応して向かってくる魔導兵もいないのではないか。

 

しかし、魔導兵強化装置を破壊しなければこれからこの周辺で魔導兵に襲われた時不利になる可能性が高い。

どちらにしろ破壊するべきなのだが果たしてどうするべきか。

 

「…なぁ。その無駄か無駄じゃないかって考えがそもそも違うんじゃねぇか?」

「どういうことだ?」

 

王としての発言なのか慎重なノクティスの発言にイグニスは眉を寄せる。

宰相や軍師のように、現場というよりは頭脳を使う方が多い人間は統計的に損得で物事を考える。

しかし、ノクティスはそうではないのかもしれないと仮説を立てた。

 

「戦争でも一定数いるだろ?遊びで戦争がしたいやつ。」

「映画とか小説でいう戦争馬鹿みたいなの?」

「そうそれ。戦争じゃねぇけど、俺たちが基地攻略できるかできないかをゲームにしてるんじゃねぇかなって。」

「…帝国の宰相は狂人の類だという仮説か。一理ある。」

 

ノクティスの考えは決して的外れではない。

憎悪の部分だけで言えばアーデンは狂人の部類に当てはまり、ゲーム感覚という感性ではディザストロと予想し合う様がまさにそれ。

常識では考えられない狂人の思考回路の可能性を考えていなかったイグニスは別の考え方だと受け入れた。

 

国の宰相にそんな人物を据えていいのか甚だ疑問だが、確かにあのアーデン・イズニアが宰相についてから帝国の動きがおかしくなっていると聞く。

ここ数年はそれが顕著。

ないこともない仮説というものであった。

 

「ゲーム感覚であればレガリアを取り返せる可能性は高いが…その場合強化装置を破壊できるか?」

「強化装置の前に見たことない魔導兵器もあった。あれがボス戦ってやつだと思う。」

「えぇ!?それ勝てるかな…。」

 

あらゆる情報が欲しいと今まで出て来た文面や会話を思いだすイグニスは、はたととある内容を思いだす。

目的はレガリアの奪還と今後のための魔導兵強化装置の破壊。

その両立のために行える手。

 

「避雷針…神々に願え…!そうか!」

「イグニス?」

 

二通目のメディウムのメールに書かれた避雷針というキーワードは雷雨が晴れた時点で大して意味のない内容だと思っていた。

避雷針とは建物の自体に落雷するのを避けるために設置する高い柱で、避ける雷と言う割にわざわざそちらに雷を寄せる。

 

そして神々に願えという三通目のグラディオラスに送られたメール。

なぜ神頼みを提案するのかてんで分からなかったが合点がいった。

雷神に文字通り神頼みをすればいいのだ。

 

「ノクト。雷神に頼みごとは出来るか。」

「やって見なきゃわかんねぇけど…。何を頼むんだよ。」

 

 

 

 

イグニスがもう一度立て直した作戦は実に大胆なものだった。

運には決して任せない彼が初めてすべてを運に任せた。

 

まず四人はレガリア周辺の魔導兵をひっそりと撃破。

暗闇や死角に潜み、レガリアを見ているプロンプトとイグニスはそこでパーティーアウト。

 

先に進むのは機動力と戦闘力を重視してノクティスとグラディオラス。

大剣ではどうしても動きが大振りになり音が出てしまうため後方からの警戒に徹していたが、起動しているであろう駆動音を発する機体が一体のみになったところでノクティスとともに魔導兵強化装置が見える見張り台へと移動した。

 

眉間にしわを寄せてイグニスに要求された神頼みを実行しようと、ノクティスは真剣に空を見つめた。

 

「出来そうか?」

「なんか足りないっていうか。何かをしなきゃいけない気がする。」

 

神頼みの影響か、雨雲が去ったはずの上空にごろごろと轟くような音が響く。

確かに通っている神頼みに驚きはしたがこれが真の王かと、支える盾は冷静にあたりを観察する。

手伝うにしても何かが足りないとは一体。

 

「等価交換とかか?」

「何を差し出しゃいいんだよ。」

「メディのやつは歴代王の力を使う代わりに魔力を差し出していたよな。」

「…あれは魔力と一緒に命も差し出している気がするけど魔力なら確かに丁度いいか。」

 

血反吐を吐く兄の姿を思い出してノクティスはさらに眉間にしわを寄せるが早速実行してみせる。

はるか昔と言うほどではないが、小さい頃世話をしたカーバンクルに魔力を渡すと面白いとかでメディウムに魔力譲与の方法を教わったことがあった。

その際、決して多くを持っていかれないように小さな扉に隙間を開けるイメージを持つことが大切らしい。

そうしなければ全てを持っていかれるとかで口を酸っぱくして教えられた。

 

教え通りに少量の魔力を上空へと散らすと雷鳴が一層強くなる。

ノクティスの瞳がいつか見たような紫色へと光り輝くと同時。

巨大な老人のような雷神が目の前に現れ、ノクティスをじっと見つめた。

グラディオラスは言葉を失い、巨神とは違う厳かな雷神に一歩下がる。

逆に冷静なノクティスは小さくうなずいて魔導兵強化装置をみた。

 

雷神は心得たようにノクティスの頭を大きな指先でそっと撫でると手にもつ杖を強化装置の前に配置された魔導兵器に突き立てる。

神の力の一端は凄まじく、魔導兵器は爆音をあげて粉々に砕け焼けるようにひしゃげた魔導兵強化装置が出来上がってしまった。

 

簡潔に表現してしまっているがその姿は圧巻の一言。

人類とは明らかに違う巨神の荒々しさとも違う"神"という存在を間近でみてしまった気がした。

どれだけ言葉を尽くしても語彙力があっても表現できない現象。

それが神なのだとグラディオラスは柄にもなく考えた。

 

その神を呼んだ守るべき王は存外冷静で、すげぇという一言のみでさっさと撤退の為に見張り台から降りようとしている。

少し前のノクティスならば興奮気味に歓喜の声を上げ騒ぎ倒すだろうが作戦中であることを自覚し、王として勤めて冷静でいようとしている。

内心ではあまりにもかっこいいというか衝撃的な光景で、それを行える自分という存在に狂喜乱舞していたのだがうまいこと隠せていた。

 

 

 

 

 

レガリアへと戻り、さっさと撤退しようと四人が合流したその時。

一人の男が近づいてきていた。

その男は鞘から剣を抜き、ノクティスへと真っ直ぐ斬りかかる。

内心浮かれていて注意力が散漫していたノクティスに代わり常に警戒していたグラディオラスがすんでのところで受け止める。

 

しかし、その剣の重さは今まで受け止めて来たどの剣よりも重い。

あまりの衝撃に片膝をついた。

 

「レイヴス!?」

 

「ーー兄とは大違い。これが王とは。」

 

振り抜いた剣に対抗するグラディオラスを片手で制し、空いた義手の手で開いた腹を殴りつける。

人とは思えないような音を出しながら巨体をもつグラディオラスを後方に置かれたレガリアに叩きつけ、鼻で笑う。

慌ててプロンプトが駆け寄り、盾の代わりに王によるイグニスとファントムソードを纏うノクティス。

 

なぜレイヴスがここにいるのか。

そもそも神凪の一族である彼がノクティス達に敵対する理由は。

 

「帝国の将軍になったんだってな。」

 

挑発するようなノクティスの物言いにレイヴスは冷めたように見つめる。

ノクティスにしてみれば実の妹であるルナフレーナと道を違えルシス王国を陥れる敵。

しかし、レイヴスは明確に支える主をすでに定めそのためだけに今を生きている。

将軍という役職も全ては主の、王のため。

 

「ルーナに対する裏切りじゃないのか!?」

「貴様こそ。真の王になるなど馬鹿げたことを。兄の方が。メディウムの方が王にふさわしいのではないのか!!」

 

兄に裏切られるなど背筋が凍る思いだろう。

ルナフレーナを思うノクティスの言葉にレイヴスは言い返す。

本心からの想いだが痛いところをついているはず。

しかし、ノクティスは動じず真っ向からその言葉を受け止めた。

 

「相応しくなくても、兄貴は俺に託してくれた。その意味を俺は重く受け止めている。」

 

レイヴスは奥歯を噛みしめる。

メディウムは決して縦に頷かなかったが弟がどれほど無能か再確認すれば頷くかもしれないと思っていたが本気で託していた。

そしてノクティスもまた真剣に受け止め兄の期待に応えられるように必死に前を向いている。

 

否定ばかりを続けてきたレイヴスはお互いを認め合い成長していくというその事実が気に入らない。

もう一度その首に斬りかかろうと剣を構え直したその時、鋭い発砲音。

 

ガキンッと音を立てて地面から跳ね返った鉛玉はレイヴスの足元に穴を開けて飛んでいく。

全員が射線をたどってその人物を見ると、いつぞやガーディナで見たことのある黒フードの男が白い外套と完全な武装をしてやってきた。

帝国兵の新手かと戦闘体勢に入るが、その男は構えたアサルトライフルをそのまま背負いレイヴスに近づく。

 

戸惑ったレイヴスは自然に掴まれた腕を払うことができず引っ張られ入れ違うように赤毛のおじさんがやってくる。

四人が予想していた、というより誰もが予想できていた人物のご登場であった。

そのおじさんの後ろにレイヴスを引っ張り、フードの男はノクティスへと振り返る。

 

「ごめんね。うちの将軍が。さっさと帰らせるからそれで許して。」

 

わざとらしい謝罪にノクティスは睨みつける。

帰らせるとは撤退させるという意味合いだろう。

フードの男はガーディナであった時よりも露出度が減り、顔が完全に確認できない。

前髪が赤毛であることから先日話題に上がったディザストロ・イズニアであることは確かだった。

 

「愛息子のお友達に頼まれちゃってさ。大体の軍は帰らせるつもり。だから君達もここは引いてくれない?無駄な争いだしさ。」

 

無駄な争いを引き起こしたレガリア盗難事件の首謀者であろうアーデンはさも困りましたという顔で提案する。

争いごとというより四人で戦っても勝てる見込みがないレイヴスとの直接戦闘は無茶。

ここはアーデンのいうとおり撤退するのが先決だった。

 

しかし気になるのが愛息子がディザストロだとしてもそのお友達という表現。

封鎖戦線の撤退を依頼したメディウムの発言とすり合わせると二人は知り合いということになる。

一体どういう関係で。

 

疑念の視線を一身に浴びながらも全く言葉を発さないディザストロはくるりとレイヴスに再び向き直り、本当に下がらせるのかどんどん奥へと進んでいく。

一足早く正気に戻ったイグニスの指示で渋々四人はレガリアに乗り込み撤退することとなった。

 

様々なことがわかり様々なことの疑問が増えたレガリア奪還作戦。

一様に腑に落ちない顔で長い一晩が幕を閉じた。

 

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