FFXV 泡沫の王   作:急須

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マルマレーヌの森 後編

標でアイテムの確認と装備の確認を済ませた一行は、冷たい小川を進みパワーシザーの群れを軽々撃破。

滝の横側にある進める道を敵に遭遇することなく進行した。

この先にも複数のマンドレイクやソルジャーワスプに襲われた覚えがあるメディウムは、生物が近寄った痕跡すらない奥地に警戒し始めた。

 

「パワーシザー以来、何も襲って来ないな。ここの付近に野獣は生息していないのか。」

「そんなわけないだろ。ここは森だぞ。普段人が入らない分、野獣がそこら中にいてもおかしくないぜ。」

「でも本当にいないぞ。」

「それってもしかしてヤバいってこと?」

 

四人も明らかにおかしい森の状態に不審がる。

人の手が入りにくいマルマレーヌの森最深部付近は野獣が群がるほどいても不思議ではない。

 

ふと、少し先を行くメディウムの足が止まった。

 

「兄貴、何かあったか?」

「まずい。これは非常にまずいぞ。俺の半殺しのせいか、あの野郎の悪戯か知らないが最悪だ。」

「ヤバいのがあるのか?」

「この奥には枯れ木しかないひらけた丘がある。俺が半殺しにしたボスがいる。その時は種族が曖昧な子供だったんだ。その何年かあと風の噂でバンダースナッチがこの森に住み着いているって聞いたから、てっきり"ただのバンダースナッチ"がいると思っていたんだ。」

 

ただのバンダースナッチでも十分脅威になりうるが、メルダシオ協会には目をつけられなかった。

マルマレーヌの森から出て来なかったからだ。

人に被害を与えないならば干渉せず、お互いの生活をすればいい。

そのおかげかせいなのか、誰もバンダースナッチの様子を知り得なかった。

 

幾度となくジグナタス要塞で聞いた寄生虫がはびこる粘液質な水音。

独特の悪寒。

間違いない。

 

「バンダースナッチが…。」

 

言いかけて、メディウムは止まる。

シガイは嫌光性(けんこうせい)という、光を嫌う本能があるため暗い場所から出ない。

その点バンダースナッチがいる丘は光を遮るものがないため、シガイにはいづらい場所だ。

だが、稀に獣としての基盤を有したまま力だけを手に入れる特殊な個体がいる。

そういう"才能"なのだとアーデンは語っていたが嫌光性を克服するほどの才能持ちはほとんど知らない。

 

仮にバンダースナッチに才能があるとして。

野獣達はバンダースナッチに襲われたか、異変を感じて住居を遠のかせたのだろう。

川がある場所は清らかなものがあるのか、シガイが嫌がる。

パワーシザーが生息していた地帯までが安全ならば野獣達の生息圏が奥にないことの辻褄があう。

 

「あれ。これ、コイン?」

「神凪就任記念硬貨だな。」

「またかよ。」

「また?別の場所でも拾ったことがあるのか?」

 

足を止めたメディウムの少し先、草むらの岩場の上に置かれた神凪就任記念硬貨を見つけたプロンプトは駆け寄って拾い上げる。

光に反射する硬貨は多少の期間置かれてはいたが昔からここにあるものではないようだ。

汚れこそあれども水気のある森でカビすら生えていない。

なによりも帝国軍関係者かテネブラエの上層部しか手にできない硬貨がなぜ。

またということは、今まで何度も拾っているのだろう。

 

「他のダンジョンとか、街とかで拾った。」

「行く先々にあるんだよー。」

 

それがどうした、というノクティス。

拾ったコインをイグニスに渡しながら不思議そうにプロンプトが付け加える。

神凪就任記念硬貨は帝都とテネブラエで配布されたものだが大体の硬貨をアーデンが回収していたはずだ。

ルシス国内にバラまけるほど生産数だって多くない。

嫌な予感とともに頭の中に先日聞いた言葉が蘇る。

 

ーーちょっかい出し足りないからね。ーー

 

意味深に笑った赤毛のおじさんは、まさかわざわざ種をまいて回っているのか。

 

「メディ。この先に何がいるんだ。」

 

余計なことをしてくれる、と舌打ちしたメディウムを見かねてイグニスが声をかける。

ハッと我に帰ったメディウムは一旦深呼吸をして四人に向き直る。

当初予定していたボス戦より苦戦することになりそうだ。

 

「居るのがバンダースナッチなのは間違いない。ただし強さは格段に上がっている。」

「色々聞きたいが理解した。では作戦を立てよう。」

 

バンダースナッチ。

恐竜のようなモンスター。

巨大な牙と長い尻尾が特徴。

神話に登場するが種としての生存を確立できなかったため、現在確認されて居る個体は二体ほど。

効果がある武器は槍、マシンナリィ。

雷属性が有効。

攻撃の一つ一つが強力なため、ヒットアンドアウェイ戦法が推奨される。

 

「この場合、プロンプトはマシンナリィ。ノクトと俺とメディが槍を持って雷のエンチャントをするべきか。」

「その前に初撃でかなり弱らせたい。全員でサンダガのマジックボトルを投げ入れるのはどうだ。ちょうど採取したばかりのマンドレイクの花が二つある。」

 

一つの花で三つはボトルが作れる。

レシピに関しては魔法の才があるメディウムに一任された。

必ずや最高の爆発をお届けする、と素晴らしい笑顔でエレメントを詰め込む作業に入ったため警戒しながら装備とアイテムの確認を行う。

買い込んだハイポーションが数十個、ポーションが数個、状態異常回復系が五つずつ。

バンダースナッチの強さは計り知れないが、単独で動けるルシス王族が二人もいれば撤退は余裕だろう。

 

それぞれがすぐ回復できるようにいくつかのポーションを持ったところで五連サンダガが完成した。

一つずつマジックボトルを持って、森の最奥地へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

ひらけた丘の上に枯れ木が数本生えた最奥地の真ん中に、ボスは悠々と待ち構えていた。

 

半身はバンダースナッチの身のまま保たれ、半身は無数の紅い花のような棘に包まれている。

恐らく、半分シガイに負け半分才能が勝ったのだろう。

こちらはすでに発見されているが襲ってくる様子は見えない。

しかし、このまま放置もできない。

シガイ化してしまえば脅威としていずれ何者かに討伐される。

今か先かの違いであれば勝算のある今が優先だ。

 

先を行くイグニスの合図で全員が一斉にサンダガのマジックボトルをバンダースナッチに投げつける。

避けることもしないバンダースナッチを不審に思いつつも距離を取り、ノクティスとメディウムがマップシフトで取り囲むように両脇に構えた。

 

五つのマジックボトルは空中で弾け、落雷もたらす。

一つ一つが轟音とともに地面を焦がしバンダースナッチを切り裂く。

合計二十五回も喰らえばよろけるだろうと遠慮なくエレメントを詰め込んだ。

読み通り一発も外れることなく命中したサンダガにより、多少よろけたバンダースナッチだが思うより体力は削れなかった。

枯れ木にぶら下がったままのメディウムが持ち替えたドレインランスを投げつけようとしたその時。

 

「ぐぁっ!?」

 

突然襲った耳鳴りと頭痛に呻き、枯れ木が揺れる。

呻き声に反応したバンダースナッチは煙が舞う爆心地からのそりと顔を出す。

守るように巻きついていた赤い棘が、蔦のように伸びメディウムに襲いかかった。

ギリギリのところで別の枯れ木に短剣を投げマップシフトをし、刺さったままのドレインランスを消す。

 

獲物がいなくなった枯れ木をなぎ倒した蔦はしばらくその場をウヨウヨと漂った。

 

シフトを多用することでヒットアンドアウェイ、雷のエンチャントによる効果で素早く移動しつつ同じように攻撃を繰り返す四人は蔦を避けたメディウムの様子がおかしいことに気がつく。

ぶら下がりながら片手で頭を抑え、歯をくいしばる姿は明らかに具合が悪そうだ。

獲物を見失っていた蔦が、再び小さく呻いたメディウムを見つけ襲い掛かる。

避けるのが遅れ、咄嗟の判断で召喚した盾ごとメディウムは地面に叩きつけられた。

 

一番動けるノクティスは空中である以上バンダースナッチの注意をひく役目を担っているため、身軽なプロンプトがメディウムに駆け寄る。

 

「メディッ!」

 

掠っただけとはいえ棘だらけの蔦を盾で捌ききったメディウムは放心状態で地面に転がる。

焦点の合わない目で玉のような汗を流す姿は異常だ。

何かしらの状態異常かとも思ったが、錯乱状態という方が近い。

蔦は叩きつけたメディウムに追い打ちをかけようともせず、本体に戻ろうともせずメディウムのそばで静止した。

 

「どうしたの!?ええっと、ポーション!?万能薬!?」

 

お前が落ち着けと突っ込まれそうなプロンプトの慌てぶりに、少し落ち着いてきたメディウムは動揺しながらも体を起こす。

今も三人と激しい戦いを繰り広げる本体とは全く別の生き物のようにうごめく蔦を、信じられないものを見る目で見ていた。

 

この時メディウムはとある個体と会話をしていた。

蔦の"元"であり種としての本質を同じくするもの。

ジグナタスで管理されていたシガイ達の中でもアーデンしか知らなかった二個体の一つ。

 

ーーナカマ?ーー

違う。シガイじゃない。

ーーサイノウ?ーー

侵されれば化け物になるだけだ。

ーーデモ、オナジ。ーー

 

メディウムが呻いた時、蔦は頭痛とともに言葉を届けた。

"ナカマ"と叫びながら捕まえようと迫ってきたのだ。

その言葉に脳内で否定をし、人間であると訴え続けている。

しかし、問いが何度も巡るばかりで会話が成立しない。

意志がある蔦はメディウムに理解してもらおうと言葉を重ねる。

 

ーーイル。ーー

何がいるってんだ。

ーートクベツ。オウサマ。ーー

王様?シガイの?

 

棘の蔦は、メディウムの左足から左腕に巻き付く。

近場で見なければわからない、うごめくような赤黒い棘に一瞬たじろぐが傷つけようとする悪意は感じられない。

棘は解けるようになくなり、メディウムの左腕を蔦の先が撫でる。

 

ーーオナジ。ーー

 

堂々巡りの問答に戸惑う。

このまま繰り返しても埒が開かない。

バンダースナッチとの戦闘は継続している。

戦うと決めた以上、戦線に復帰しなければ。

 

「大丈夫?」

 

蔦が怖いのか、控えめな声で確認するプロンプトに礼を言い、クラレントを召喚した。

蔦を剥がしうねうね動くそれを見る。

この特殊な蔦もシガイだ。

意思疎通が図れてもシガイ。

化け物でしかない。

 

「お前が何言っているのかはさっぱりわからない。俺は人間だ。仲間じゃない。」

 

はっきりと言葉にする。

蔦はうねうねと動いて残念そうに巻きついたままの左足からメディウムを勢いよく持ち上げた。

逆さまになったメディウムはクラレントで足の蔦を剥がそうとするが、ビクともしない。

 

ーーザンネン。ーー

 

心底残念そうな言葉とともに、地面へと叩き付けられた。

 

「兄貴ッ!」

 

クレーターができるほどの強さで叩き付けられたメディウムは土埃をあげながら倒れ臥す。

手から離れたクラレントはクリスタルのように砕け、消えていった。

意識がなくなった場合、武器召喚された武器は強制的に送還される。

ピクリとも動かなくなった姿にノクティスは青ざめ、シフト魔法で助けようと近くの地面へと降り立った。

 

蔦はメディウムに巻きつき、何かを探すように蠢いていた。

 

「兄貴から離れろ!!」

 

巨神の時にのようにファントムソードを全身に纏う。

いくら硬い蔦でも歴代王の武器の威力には勝てず、メディウムから剥がれていく。

棘が這いずり回ったため、体はボロボロになっている。

衝撃により意識はなく慌てて体を確認するときちんと胸が上下していた。

 

ひとまず安堵はしたが蔦は執拗にメディウムを狙い続けている。

このままではジリ貧だ。

案外軽いメディウムを担いでノクティスはイグニスの下まで下がることにした。

蔦に怒りを感じているがそれよりも兄の安全が最優先である。

 

人を抱え上げたままのシフトなどしたことがないが、同じ王族のためかなんの抵抗もなく発動できる。

追いかけてくる蔦をシフトでかわしながらなんとかイグニスの下までたどり着く。

バンダースナッチは既に虫の息だ。

もしかしたら、蔦が栄養を吸っているのかもしれない。

 

「イグニス!兄貴の意識がない!」

「まずいな…応急処置をしたいが、この状況では不可能だぞ。」

「蔦ってバンダースナッチと繋がってるから、バンダースナッチ倒せば倒れてくれるんじゃないかな?」

 

蔦は完全にメディウムのみを狙っているのか、プロンプトはなんなく戻ってきた。

周囲をよく見るプロンプトは蔦がバンダースナッチを弱らせていることに気づき、栄養元を断てば運が良ければ一緒に倒される。

そう上手くは行かなくても力が弱まることだろう。

一人でバンダースナッチを引きつけているグラディオラスは会話が聞こえていたのか大声で叫んだ。

 

「早くこいつ倒しちまえばいい!あと一撃あればいける!」

「マジックボトルがメディのポケットに残ってないか?」

 

イグニスの提案にすぐさまメディウムの服のポケットを探す。

蔦の棘に見舞われても運良く爆発しなかった危険物のサンダガをプロンプトが掲げる。

もし運が悪かったらと寒気がしたが、今はそれどころではない。

 

「あった!」

「おっし!投げろ!どんとこい!」

 

引きつけていなければ的が動いてしまうためグラディオラスが盾を構えてマジックボトルの襲来を待つ。

放射線を描いて飛んだマジックボトルは五つの雷を伴ってバンダースナッチに直撃した。

ドッジロールで距離をとったグラディオラスは若干射程内だが上手いこと逃げ切れたようだ。

度重なるノクティス達の攻撃と弱点属性の雷による魔法で小さく咆哮をあげたバンダースナッチはドサリと倒れ伏した。

 

メディウムを探して彷徨っていたところで異変に気付いた蔦がバンダースナッチの元へズルズルと戻ってくる。

明らかに挙動が遅くなっている蔦はやがて地面に落ち、シガイのように黒い液体を撒き散らして消えていった。

その際メディウムがパッチリと目を覚まし、起き上がろうと呻く。

 

大変な戦いというより不思議な戦いだった。

 

「大丈夫か?どこか痛めているはずだ。」

「悪いイグニス。背骨がやられたがケアルで修復した。魔力切れで他の場所は治せない。」

 

切り傷が多いメディウムにハイポーションを渡し、飲ませる。

ノクティスがさらにケアルをかけるが傷は消えたようだ。

それでも痛むのか、立ち上がれず心配したノクティスが一番背の高いグラディオラスに背負ってもらう方がいいと提案した。

流石に嫌がったがイグニスやプロンプトも心配していた手前、無下にはできず立てない事実も相まって大人しく背負われることになった。

 

「うわっ軽っ!」

「すげぇ軽い。筋肉付いてんのに軽い。」

「ええ!?嘘!グラディオがゴリラだからじゃないの!?」

「誰がゴリラだ!…ゴリラってなんだ?」

 

突っ込んでおいてなんのことだかわからないグラディオラスに苦笑いしつつ、消えていった蔦が最後に残した映像を思い返す。

ジグナタス要塞のシガイを管理する檻の中で少年と会話をする少女の姿。

それを観察するアーデン。

少女の右腕には先ほど見た棘だらけの蔦が守るように絡んでいた。

恐らく蔦は少女だったのだろう。

ジグナタス要塞で行われていた"人間をシガイ化"させる実験の成果。

そのうちの一人が先ほどの蔦だったのだ。

 

才能のあるバンダースナッチに移植したのは、完全なシガイになるため。

少女だけでは栄養が足りなかった。

文字通り根を張ってとり憑いていた。

書類業務の中に似たような実験結果を目にしたことがある。

何も知らない少女は誰かの試験管ベビーと記載されてはいたが実験の片棒を担いだ者として責任を感じた。

命を守ったからには人として生きる権利はあったはずなのに。

 

グラディオラスに背負われたまま暗い顔をするメディウムが気になりはしたが、丘の奥に王の墓所を発見し四人はファントムソードを手に入れることを優先した。

 




主人公の仲間コマンド「Art is an explosion(芸術は爆発だ)
敵の弱点属性に対して威力や効果をランダムにマジックボトルを投げる。
ショボいのから巻き込まれるとヤバイものまで気分次第。

主人公の特殊スキル「病の呼び声」
事前に察知することでシガイとの遭遇率が若干下がる。
洞窟などそこら中にいる場所に関しては効果がない。
夜の探索などで効果的。
使用するごとに経験値がたまり、徐々に効果が増す。
虫除けスプレーみたいなもの。
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