FFXV 泡沫の王   作:急須

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Chapter08 魔法と三人旅
休暇


ラバティオ火山攻略後はその足でいくつかモブハントをこなし、一旦カエムの岬に戻ることとなった。

 

大まかな理由は二つ。

一つは全員で心身ともに安らぐため。

五人で旅するのも十分楽しいが、家という囲われたプライベート空間で休むことも大事だ。

いくら気を許しているとはいえキャンプやモービル・キャビンでは十全に休めはしない。

同じ部屋でもベッドで眠り、朝食をとり、他の誰かとも会話をすることが重要なのである。

 

もう一つはグラディオラスを送り出すため。

コルの準備が整い、いざや修練の道へ。

ノクティス達には誤魔化すためにコルとの修行ということで説明した。

彼らも共に修行をしたいと不満を漏らしたが、ダメだと却下。

その代わりにメディウムと本気で戦いたいというノクティスの妥協案が受け入れられた。

激しく面倒臭いメディウムは絶対に嫌だと断固拒否したのだが、妥協案が受け入れられぬ場合是が非でも付いてくるという。

修練の道は王がいたらなんの意味もない。

致し方なく。

誠に遺憾だが頷いた。

 

 

 

 

 

割とすぐ近くのカエムの岬に三日ぶりに帰ると、駐車場にてイリスとコルが出迎えてくれた。

嬉しそうに全員の無事を確認したイリスは、コルから聞いたのかグラディオラスに頑張れとバシバシ背中を叩く。

コルの隣に外の世界の車があることから、すぐにでも出られるのだろう。

 

「メディウム様。少しばかりお話が。」

「わかっている。四人は隠れ家に行っていてくれ。」

「兄貴も早く来いよ。コル、グラディオをよろしく頼むわ。」

 

引き止めるコルの言葉に足を止めたメディウムはイリスを含める四人と一旦別れる。

おもいおもいにしばしの別れを惜しみ、応援する仲間達の言葉を聞き届けグラディオラスもコルに近づく。

 

「修練の道は挑む者によって姿を変える。一歩間違えれば容易に命が散る場所だ。覚悟はできているか。」

「行くなとは言わないのな。」

「メディウム様のご命令だ。」

「そういうこと。ありがたく思えよ?意外とあそこに行く手続き大変なんだからな。」

「手続きなんてあるのか。」

「一応メルダシオ協会が管理しているんだ。定期的にシガイ狩りも。試練が正式に始まる場所より手前までだけどな。」

 

無念にも敗れた挑戦者達の亡骸がホラーだが、ルシス王家の私有地扱いでもある。

いちいち管理もしていられないのでメルダシオ協会にお金を払って委託。

中の英霊達のおかげなのかシガイが漏れ出てくるのも稀で、月一に見回り程度なのでメルダシオに払う管理費もたいして嵩まない。

シガイ退治より一般人が迷い込まないように監視する意味合いの方が強い。

 

ルシス王家がゴタゴタしていても監視役は続けてくれているようで、ファントムソード回収はメルダシオ協会側に許可を取る期間でもあった。

因みに、委託を提案したのはメディウムである。

発見当初はルシス王家が管理していて、王の剣が遠征に出ていた。

少数精鋭の軍隊から一々人材を引き抜くなど戦争している自覚はあるのかと重鎮達に怒鳴って以来、自らの力でメルダシオ協会と交渉し委託時の報奨金の交渉も勝手にした。

確かにそちらの方が楽で戦争での人材が増えるので重鎮達も文句は言えなかったという。

 

閑話休題。

 

「覚悟ならとっくにできてる。早く行こう。」

「そうか。ではメディウム様。責任持って指導致します。」

「頼んだ。くれぐれも死なせるなよ。クレイラスさんやイリスちゃんに顔向けできない。」

「善処いたします。」

 

必ずしもとはいえない場所の為、コルは厳しい顔で頭を下げる。

イージー以下の難易度でしか踏破したことがないメディウムはその厳しさはわからないが、死ななければそれでいい。

逃げ帰ったらグラディオラスは納得できないだろうが、生きていることが何よりも重要なのだ。

 

車に乗り込んで行ってしまった二人を見送って、隠れ家への坂を登る。

少し行ったところにひょっこりと見えるトサカのような黄色い髪に、やっぱりとため息をついた。

念のためにと防音魔法をかけておいて正解だった。

茂みから見えている黄色チョコボのトサカ部分を掴み、逃げようとしたもう一人の黒チョコボの背中を足で踏みつけた。

それぞれにぐえっだのいったぁっ!?だの悲鳴が上がった。

 

「何をしてるんだ。悪ガキ共。隠れ家に行けって言ったろ。」

「だ、だって兄貴もグラディオもなんか隠してる風だったから。」

「絶対修行って雰囲気じゃなかった!戦地に行くような暗い空気だった!」

 

隠し事が多いメディウムがグラディオラスと口裏合わせて何か企んでいると踏んだノクティスとプロンプトは、事情を聞かされたイグニスの制止を振り切って盗み聞きを図った。

メディウムから教わった盗聴魔法ならぬ耳がよくなる魔法を使ってみたが全く聞こえなかったらしい。

なぜ製作者に使ってしまったのか。

自らもかからないように普通は対策をするものである。

隠し事であるならば尚更。

 

防音魔法は周囲に魔力の防壁を張って音の振動を外に漏らさないように遮断する魔法。

追加機能で口の動きが絶妙にわからなくなる認識阻害魔法がかけられている。

理論上、防壁を貫通させるほどの盗聴魔法が扱えれば聴くことは可能である。

当然だが魔法の天才にど素人が勝てるはずがなかった。

 

空気で読み取ろうとしたプロンプトの方がまだ賢い。

 

「お前らは知らなくていいことなの。」

「俺らが知らなくていいことが多すぎる!」

「いっつも俺たちだけ隠されてるじゃん!」

 

割合、うちの子の教育に悪いとイグニスストップがよくかかるノクティスとプロンプトのブーイング。

気持ちはわからなくもないが、必要なことなので漏らしはしない。

聞いたら絶対追いかけてしまうし。

こういう時は早々に話題を変えようと、首根っこを捕まえて強引に二人を引っ張る。

 

「シドのじいさんに用があるんだ。さっさと行くぞ。」

「ちょ!?首!首しまってる!」

「うぐっ息が…!」

 

己らの生命の危機に思考が強制的に切り替わった二人はズルズルと引きずられてシドのところまで行く羽目になった。

 

 

 

 

 

 

シド・ソフィアは灯台下の隠れ港から息抜きで隠れ家に来ていた。

 

シドへの要件は、長年整備があまりされていないクラレントの点検。

きちんと保管されてはいたが埃をかぶっていたのと同義の二千うん年前の剣。

それを十数、年素人ではないにしろ整備不良が続けばどうなるか。

 

「こいつはひでぇ。傷だらけじゃねぇか。」

「分かってはいたが、そんなにひどいか?」

「鍛冶屋に預けたりしなかったのか?」

「しないよ。二千年と何年の神から賜った逸話の武器をそうやすやすと誰かに預けられない。」

「そりゃわかるけどよ。だからってこれはないぜ。あと、俺は鍛冶屋じゃねぇ。車専門なんだよ。」

「武器の整備どころか改造まで趣味でやっちまうじいさんがよくいうぜ。」

 

寧ろ、神から賜った逸品であるからこそここまで持ちこたえられているのである。

かなり無茶な使い方も何度かしているが折れることなどない。

本来の持ち主である剣神バハムートの加護を持つ、メディウムが使い手であるというのも理由の一つ。

どれだけ無茶な使い方をしても剣技として成り立ってしまう加護なのだ。

 

しかし、物には寿命がある。

クラレントは長生きどころではない神話級だが整備できるならしておきたい。

ノクティス達が持つ武器はいくつかシドが改造したものが混じっている。

エンジンブレードも二段階までシドが強化していた。

今は素材を渡して三段階目の強化待ちである。

 

「なんとかできそうか?」

「できねぇこたぁねえが、ここまでくると改造しちまった方が早いぜ。」

「は?神話級を改造?じいさんの技術どうなってんだ?化石だったの?」

「馬鹿か。ここを見ろ。」

「なんだこれ。窪みが三つ?」

 

クラレントの鍔の部分にもともとはめてあったクリスタルの反対側に何かをはめる部分が三つある。

クリスタルは本当にあのクリスタルのかけらで魔法の威力を強める力があるが、他のくぼみの意味がわからない。

じっと見つめていると、窪みの底に何かの残滓がみえた。

 

氷のかけらと炎の暖かさと雷の光。

エレメントの残りカスのような物が見える。

まさかこれを改造できる枠だなんていうつもりなのか。

そもそも見えてるのか。

エレメントは普通の人にも見えているが馴染みが薄い人には、これだけ細かいものは見えないはず。

シド・ソフィア、恐ろしい人。

 

「やっぱあんた化石なんじゃ。」

「歳食ってるとわかるようになんだよ。見えてんじゃねえ。逆に若え奴はお前さんらみたいに日常で使ってないと分からん。見えるお前さんが異常なんだよ。」

「うっそだ。ノクト、見えるよな。」

 

同じく魔法に馴染みがあるノクティスに同意を得ようとクラレントを近づけるが、老眼のように目を細めてムムムッと唸るのみ。

首を傾げつつも微妙な顔で答えた。

 

「あー、なんとなく感じるけどなんも見えねぇ。感覚はわかるんだがな。」

「俺にはただのくぼみに見えまーす!」

 

エンチャントもあまりしないプロンプトには雰囲気さえもわからないが、流石にノクティスは感じるらしい。

年の功で感じるシドとは違い、慣れがあるようだ。

見えるのが一人だけとなると、自分がおかしいのかと心配になってきた。

 

しかし、見えているものは仕方ないので何故それが改造の余地なのか聞くことにする。

 

「こいつはエンチャントに使われる属性玉をはめる窪みだ。」

 

魔法が使えない王都外の人々は日々、野獣やシガイを恐れて生きている。

作物の被害や人々への被害も懸念されるため討伐しなければならない時もある。

そこで敵の弱点を突くために敵の素材を集め、属性を理解することで迅速に対応できるようになった。

属性玉とは、武器に取り付ける簡易エンチャントのようなもの。

エレメントそのものを使うためほとんど使い捨てである。

 

属性玉をただはめる窪みならば三つもいらないと思うし、クラレントを賜った時代にはそんな便利物なかったはず。

では一体これは何のために。

 

「しかも特別製のやつだな。メディ、お前さんが作らないとダメだ。」

「属性玉を?俺が?」

「玉を作るのは簡単だが、はめるのは難しい。マジックボトルと同じ要領で込める玉用意してやっから、今度使って見ろ。」

「それ何の効果があるんだよ。」

「いろんなもんの補助になるし、一個武器保護魔法込めた玉をつけときゃクラレントの損傷は薄くなる。刃を研ぐのと補修はしといてやっから、改造はお前さんがやんな。」

「うわっ。」

 

渡された三つの玉は何の気配もないがマジックボトルと同じようにエレメントに準じたものを込められるようだ。

なぜシドがそんなものを持っているのはかは置いておいて、いいことを聞いたかもしれない。

属性のエンチャントをいちいちしなくても玉を付け替えればいい。

魔力の消費も抑えられるエコな剣クラレント。

魔法を多用するメディウムとはとことん相性がいいようだ。

 

「俺のエンジンブレードは?」

「そっちはもう少しかかる。その間にでも例のやつを取りに行ってこい。」

「あー、ミスリルか。めんどっちーんだよなぁ。」

「え?ミスリル?」

「何の話だ?」

 

何のことだかさっぱりわからない二人にミスリルが希少鉱石であることと、ヴェスペル湖にある遺跡でしか採取できないことを教える。

へー、とよくわかってなさそうな二人だが簡潔にダンジョン探索しなければならないとまとめると嫌そうな顔をした。

難易度が低いとはいえ二つほど探索後。

行くにしてもきちんと休んでからである。

 

「では、グラディオの修行中に俺たちも修行をするか。」

「スチリフの社でか?いい経験にはなるだろうが戦力減ってるぜ?」

「それも一つの経験だろう。グラディオがどのような役割を担っていたのか理解するには実地あるのみだ。理解すればするほど立ち回りも分かりやすくなる。」

 

隠れ家の台所でモニカと昼食を作っていたイグニスが、会話に入ってくる。

グラディオラス不在でダンジョンに行くことは予め考えていたが、軍師はさらに深く物事を捉えていたようだ。

別段そこまで厳しくいくつもりはないが、パーティー内での役回りの理解も一つの成長になるだろう。

 

「一理あるな。明日にでも行くか?」

「えー!?まだ戻ってきたばっかじゃーん!」

「もう一日ぐらい休ませろよー!」

「クラレントの整備に時間かかる。明後日には終わるが、明日行くなら代わりの武器でいけよ。」

「冗談だって。クラレントなしはきつい。」

 

あまりにも唐突なメディウムの発言に二十歳二人は抗議の声を上げる。

もちろんそんなすぐに行く気は無い。

愛剣クラレントなしでの攻略は、人外行動ができないため戦闘の幅が大いに狭まる。

ギリギリの隙間をシフト魔法で抜けたり、崩れ落ちた足場をシフトで回避したり、敵の上から失礼したり。

大抵武器を投げている気がする。

そんな使い方するものではないはずなのだが。

 

片手剣って投擲武器だっけ。

 

「出立は明後日、ということでいいな。」

「あ、ああ。ノクトとの手合わせも明日にしよう。流石に火山後で疲れた。」

 

四人行動の間のやることが決まったところで二階の扉が開く。

タルコットとジャレット、ついでにニックスとボードゲームをしていたルナフレーナが出てきた。

ほとんど男ではないかと思うが、子供とその保護者なのでノーカウントなのだそう。

ジャレットが目を光らせればニックスも余計なことはできない。

最初のうちはイリスも参戦していたらしいし。

 

戻ってきた四人を発見したルナフレーナは真っ先にノクティスの元へと駆け寄った。

微笑ましい限りだ。

嬉しげに会話をする二人をニヨニヨと見ているとニックスがこちらによってきた。

椅子に座っていなかったメディウムの後ろ側に回ってなぜか背中を支えている。

 

「ひどい顔ですよ。」

「弟の幸せを噛み締めてるんだよ。」

「まずは自分の幸せを噛み締めてください。」

「弟の幸せが俺の幸せなの。」

 

なんだか会話が噛み合っているようで微妙に噛み合っていないらしい。

ニックスが盛大にため息をついてそっと支えていたメディウムを離す。

すると、ぐらりと身体が傾き地面に激突する前にニックスに受け止められた。

ぐったりと支えられるがままにされたメディウムに気がついたノクティスがルナフレーナとの会話を切ってメディウムに駆け寄る。

倒れる事件は二回目である。

 

「兄貴!?どこか悪いのか!?」

「え、いや。俺倒れてんの?」

 

全く自覚がなさそうだが眼球が揺れて焦点が合っていない。

よく見ればカタカタと震えものすごい汗が出ている。

明らかに異常である。

すぐにニックスに二階の寝室に運び込むように指示し、診察ができるジャレットに診てもらうこととなった。

 

メディウム本人はなぜベッドにいるのかもわからないままジャレットにあちこち触られ、ぐるぐるする思考の中で何が原因なのか一生懸命探る。

しかし、思い当たる節があまりない。

診察を終えたジャレットにも分からず、ひとまず過労という診断が出た。

一日絶対安静だという。

 

結果的にノクティスとの手合わせが流れてしまい、謝るがそんなことより寝ていろと怒られた。

ついでに、限界が来たならば言えと無言の圧力を過保護ノクティスとお母さんイグニスから受ける羽目になった。

ただでさえ傷だらけで身体の機能が下がり、虚弱体質一歩手前なのに不用意にダンジョンに立ち入るからだ

とジャレットも少し怒っていた。

こればかりはどうしようもない。

 

カエムで楽しく過ごそうと思っていた一日は、岬の住人に看護される一日になった。

 




武器選択画面からクラレントの属性変更が可能。
威力は二百五十とまあまあ。
所持できるのは主人公のみ。
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