FFXV 泡沫の王   作:急須

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前話にノクティスサイドが追加されています。
まだそちらを読んでいない方は先にそちらをご一読ください。

読み終えた方はどうぞ。


叫び声

陽が沈む夕方頃。

再びレスタルムへとやってきたノクティス達の目に赤いオープンカーが映る。

見覚えのある車と兄の失踪にどう考えても関係性しか見出せない。

つい先程派遣した王の剣からの連絡では、大きな荷物を抱えて何者かから逃げるように忽然と姿を消した兄はまだレスタルム内にいる。

複数の王の剣達が、人が進める道を見張っているからだ。

もちろん魔法なんて使われたら人知れず逃走が可能かもしれないがメディウムにそんな余力があるとは思えない。

買い物をしているのがいい証拠である。

このままレスタルムのリウエイホテルに泊まる予定なのだろう。

そしてそこには兄を呼び出した"上司"とやらがこのオープンカーの主と共にいる。

 

まさか上司があのおじさんとは毛ほどにも考えていない。

初対面を装っていたのが功を奏でたのだろう。

彼らの中で上司とおじさんのイコール式は立たなかった。

 

一番の問題はどの階に泊まっているかなのだが、兄との話し合いの余地があると想定して堂々と真正面から行くことに。

無理ならば力尽くになる。

だがホテル事態に迷惑はかけられない。

とにかくまずは交渉。

必ずノクティスのもとに帰って来ると約束してくれれば弟としては満足であった。

兄は一度も約束を破ったことがないからである。

 

一応亡国の王であるノクティスが先陣を切るのは憚られ、まず斥候として一般市民のプロンプトと交渉役のイグニスが出向く。

ホテルの入り口が見えるところで私服に着替えた王の剣が待機し、そのさらに少し離れたところにノクティスと護衛でカエムの岬からきたニックスが待機。

兄王子捕獲作戦は少数精鋭で実行に移された。

 

 

 

 

 

イグニスがロビーに話をつけて、最近チェックインした人物を呼び出してもらうと予想通りの人物が降りてきた。

 

「あれ?なんで君達がここにいるのかな?」

「それはこっちのセリフだ。なぜ貴方がレスタルムにいる。」

「俺はディアと仕事中だからね。レスタルムはたまたま寄っただけだけど。」

 

怪しすぎて全てが嘘に聞こえる。

しかし、あながち全てが嘘でもない。

帝国の仕事であるのは事実で、ディザストロと共にいると言われればそのとおりであり、レスタルムに寄る予定がなかったのも本当である。

メディウムが魔法の使用頻度を今よりも格段に下げていれば治療をする必要はなかった。

ジグナタス要塞から離れて二、三週間経ったか経たないかであそこまで損傷できるのはもはや才能。

献身と犠牲の権化といっても差し支えないレベルである。

 

イグニスからしてみれば今すぐこの場でとっ捕まえてやりたいところだ。

しかし、法を犯したわけでもなく自ら誰かに手を下したわけでもないアーデンを帝国の宰相という理由で捕らえるのにはいささか問題がある。

国が崩壊寸前の状態で帝国軍と全面戦争は避けたい。

 

不穏な空気が流れ続ける中、アーデンは口を開いた。

 

「で?俺はなんで呼び出されたわけ?」

「俺たちの仲間を探している。情報によればここにいるはずだ。」

「それ、俺に関係ないよね?」

「探しているのはメディウムだ。たしか貴方のご子息と友人関係では?」

「あらら。バレてるし。」

 

なんでもないことのようにアーデンは態度を崩さず、階段の上を指す。

ニタリと笑って答えを提示した。

 

「いるよ。今治療して保護してる。」

「引き渡しの意思は。」

「無いよ。聞けば傷の原因は君達だっていうじゃ無いか。わざわざ保護したのに元凶に返す馬鹿がいる?」

 

プロンプトとイグニスにかけた盗聴魔法で話を聞いていたノクティスは目を伏せる。

兄をあんな姿にしてしまったことに関しては言い逃れができない。

イグニスとプロンプトも返す言葉がなく、交渉の余地がないのかとアーデンを睨みつけた。

 

「こわい顔。別に俺は引き渡す気ないけどメディウム君が帰りたいっていうなら返してあげるさ。今傷心中だから一人だけ部屋に通してあげる。どう?」

 

アーデンが合わせてくれないかと思ったがメディウムへの直接交渉が認められた。

一人だけでも通してくれるならばいいと、イグニスは受け入れすぐにノクティスを呼ぼうとするがアーデンに止められた。

兄弟喧嘩で傷心しているのに間を空けずに会ったら帰る意思がなくなるかも知れない、と。

一理ある。

 

では誰が行くのかという話で従者の偏見が入らないプロンプトに白羽の矢が立った。

 

「行けるか、プロンプト。」

「説得できるかわからないけど、行ってみるよ。話さなきゃわかんないこともあるし。」

 

メディウムもいるならばプロンプトに危害を加えることはないだろう。

いつになくやる気のプロンプトは、アーデンに連れられて部屋へと通された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てな訳で連れてきちゃった。」

「本当に帰す気あるのか?」

「本当に帰る気あるの?」

「…そういうこと聞くなよ。」

 

寝室の一つ手前の部屋でプロンプトを待たせて、アーデンが流れを説明してきた。

防音魔法がアーデンによってかけられているのはわかるが自分にどうしろというのか。

おそらくここでノクティス達の元に帰りたいといえば帰してくれる。

だが、そう聞かれるとメディウムは迷ってしまう。

合わせる顔がどこにもない。

 

「今帰りたいと思わないなら、時間稼ぎするのも手だよ。俺に任せてみる?」

 

にこやかに笑うアーデンの提案にメディウムは頷いた。

彼のいう通りにすれば悪いようにことは進まない。

ノクティスを真の王にするという最終目標を決して違えたりしないから。

 

顔が見えないのは怪しいということで目隠しを外してもらい、プロンプトのいる隣の部屋に行く。

歩けはするが全身包帯だらけでとても動きづらい。

いつもよりゆったりとした歩速で正面にあるソファに座った。

まさかミイラのような包帯姿になっているとは思いもしなかったプロンプトは息を呑み、何から話せばいいかわからなくなってしまった。

 

メディウムからも話をする気が起きず、暇つぶしとばかりに買ってきた紙と木炭を浮遊魔法で呼び寄せる。

ときおり魔力が遮断されて落ちそうになるが、上手いことコントロール。

手元まで来たところでさあ何を描こうと顔を上げると脳天にチョップを食らう。

十中八九アーデンの仕業だと後ろを見ると白い外套を羽織ったディザストロが立っていた。

 

最初は困惑したが数秒後にはとあることに思い当たる。

友人設定のディザストロの方が何かと怪しさが消え、信憑性が高まるという魂胆なのか。

どちらにしろ不用意に魔法を使うなと訴えかけているのはよくわかった。

ごめんなさい気をつけます。

 

アイコンタクトで謝罪しプロンプトに向き直る。

お互い黙ったままなのもどうなのかというジト目が来たから致し方なくこちらから話しかけた。

 

「連れ戻しに来たんだって?」

「あ、う、うん。その、やっぱり、帰りたくない…よね。」

「帰りたくないな。」

 

バッサリ言い切られてプロンプトは体を小さく縮こめる。

親友であるノクティスの為に連れ戻したい気持ちはあるが、メディウムが嫌だというならばもう放っておいても良いのではないかと思っていた。

確かに家族をさらに失うことになるかもしれないが、死ぬわけではない。

今もこうして治療されていて彼には一人で外の世界を歩める力がある。

生きていればいつかまた会える。

だからこそ、今すぐ確保しなければならないと焦るノクティスの気持ちをよく理解していなかった。

交渉人の人選としては失敗だ。

 

長年の観察眼で考えが手に取るようにわかるメディウムは、一種の仮説を提示した。

 

「そうだな。帰りたくないし帝国に行こうかな。」

「へ?」

「なんでも、俺で人体実験したい科学者がいるとかで。どうせ俺が生きていても意味ないし、死ぬとか生きるとかどーでもいいし。必要としてくれる人のところにいこうかな。俺、痛いの慣れてるし。」

「それなら普通に雇うよ。君は有能だから使い潰すにはもったいない。」

「ディザストロ…ディアの部下とかいいかも。楽しそうだ。」

「え?えぇ!?」

 

突然呑気に敵国に寝返ろうかと口にするメディウムにプロンプトは大いに慌てる。

実はこの会話はプロンプトにもかけられた盗聴で聴かれているのだがそこは魔法の天才二人。

わかっていてこんな会話をしていた。

外ではノクティスが乗り込むと本気で暴れて阿鼻叫喚状態なのだが、こちらの耳には届いていない。

 

なぜそんな話になるのかわからない一般市民プロンプトが理解できるように、メディウムは一から説明した。

 

「昨日も言ったが、俺はノクトが王になる上でとてつもなく邪魔な存在なんだよ。世界が混乱状態だから見逃されてるだけだ。」

 

もし、世界がノクティスの手で平和になったら。

ノクティスが許しても周りが許さない。

王の立場を確固たるものにしようとあの手この手で殺しにくるだろう。

ならば生きられる選択をする。

それのどこが間違いなのだろうか。

 

「いいか?一般市民たちは王の名の下に生存する権利があり、如何なる状況下でも同族殺しは許されない。正当防衛を除いてな。だがここで問題だ。はてさて、王族は"市民"と数えるべきなのか?」

「で、でも、メディを殺そうなんて考える人がいるわけ…!」

「王族である限り命の危険は消えない。能ある俺より優しい王の方が何かと駒にしやすい。邪魔な奴は早々に殺すべきだ。そう考えるもんなんだよ。」

 

プロンプトは押し黙った。

自分の知っている王族は、ノクティスとレギス王は決して家族を殺したりはしない。殺させない。

民を捨て置いてまでとは言わないが出来うる限りで守ろうと全力を出すだろう。

それをメディウムはどうでもいいもののように、家族の絆などないかのように自分は死ぬのだと言っている。

 

メディウムが生きるためにはノクティスと道を別つしかないのだと。

 

「ひどいよ、そんなの。ノクトはメディと一緒に過ごすのを楽しみにしてるんだよ?過ごせなかった二十年分、楽しく、笑って!」

「無理だ。」

「なんで!ノクトならメディを守ってくれるよ!家族としていっぱい!」

「無理なんだよ!!なにもかも!!最初から決まってんだ!!」

 

使えない魔法の代わりに手に持ったペンが折れる。

破片が手に刺さり、包帯に血が滲んだ。

冷静に誰かを諭すにはメディウムは疲れ過ぎていた。

思い通りにいかない未来も、どうしようもない現実も、叶えられない夢も。

たった数週間。されど数週間。

色々なものを見て色々なことを思って色々な未来を願った。

 

その全てが、叶わないことを知っていて。

 

心が疲れていた。

笑う顔にヒビが入りそうだった。

守りたいのに守れなくて。

伝えたいのに伝えられなくて。

叫びたいのに叫べない。

積もりに積もった本心が掠れるような弱々しい声で部屋に響く。

 

「どうしようもねぇんだよ。二十年も使った。俺の今までの人生のほとんどだ。その結果どうだ?変わったのか?なにが変わったんだよ。俺はいつになったらこんなふざけたことやめてもよくなるんだ。誰か、教えてくれよ…。」

 

砕けたペンは握り込むメディウムの手を抉り続ける。

そっとディザストロに扮したアーデンがその手を撫でた。

痛みも苦しみも悲しみも怒りも、ずっと見てきたアーデンの手は酷く冷たい。

それでいて、妙に優しかった。

 

此の期に及んでも流れない涙に奥歯を噛み締め、困惑するプロンプトに冷たく告げた。

 

「俺は帰らない。お前らの好きにしてろ。」

「だってさ。」

「で、でも。」

「帰れ。これ以上居座るならメディはニフルハイム帝国に連れ帰る。」

 

冷たい目線の脅しに、プロンプトはたじろいでそっと部屋を出た。

何度かメディウムに振り返ったが言葉が出なかったのかなにも言わなかった。

 

その頃盗聴で聞いたメディウムの吐露にノクティスは激しく後悔した。

兄の想いの片鱗だけでも今すぐ会いに行って謝り倒したい気分なのに、まだまだ抱えている想いがあるのだ。

早く会いたい。

会いたいのに会えば逃げられる。

イグニスとニックスに押さえ込まれながら悔しさでプロンプトのいるであろう階層を睨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

戻ってきたプロンプトは交渉できなかった旨を伝えたが今回は致し方がないと、全員に肩を叩かれた。

一番気にしているだろうノクティスもゆるく首を振るだけにとどめた。

プロンプトを責めるべきではない。

 

これからどうするべきかの話し合いをしようとイグニスが口を開く前に、階段から降りてきたアーデンがニックスを含めた四人に声をかけた。

ディザストロの変装は既に解けている。

 

「交渉決裂だって?残念だったね。」

「…兄貴を保護してくれたこと、感謝する。一応。」

 

保護していると言われた時に言わなければならなかったセリフを今更ながらノクティスが言う。

敵側で安全確認もできなかった状態で言う言葉ではなかったため先送りにしていたが、きちんと治療も施されていた。

素直に感謝し軽く頭を下げた。

王たるものそうやすやすと下げるべきではないとイグニスに注意されたからである。

目を細めたアーデンは感謝の言葉を受け入れ、一つアドバイスを残した。

 

「メディウム君は嫌がってるけど君達が自分のやるべきことをきちんとこなしてれば気が変わるんじゃないかな。」

「やるべきこと?」

「それができたらもう一度ここにおいで。今度は全員会わせてあげる。」

 

それだけ行ってアーデンは上へと戻って行った。

四人は顔を見合わせ、やるべきことを思い浮かべる。

最初にやるべきことは元々の目的であるあの場所。

 

ヴェスペル湖のスチリフの社に向かうべく三人は頷きあう。

護衛役のニックスとはここで別れ、三人旅。

気を引き締めてやるべきことをこなさなければ取り返しがつかないことになる。

メディウムも、戦闘でも。

先を急かすノクティスに続いて三人はスチリフの社を目指した。

 

 

ーー先へと進む三人の足取りを寝室の窓越しに眺める。

自分の言葉に嘘はないがなぜあんなことを言ってしまったのかとメディウムは溜息をついた。

しかし、また塞がれる視界でできる限り仲間たちの背中を追いたい。

陽の光に当てられて黒から橙色に映る瞳で三人を見続けた。

 




読まなくてもいい訂正やら。


ここまでの話で誤字報告をいただいた中に"オリハルコン"と記述したものは実は"ミスリル"であると言うものがありました。
その通りです。作者はキングダムなんとかの素材回収やり過ぎです。あほす。
今後は"ミスリル"と記述します。
そして誤字報告ありがとうございます。
たくさんあってはならないのですがありがとうございます!
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