FFXV 泡沫の王   作:急須

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主人公なのに謎が深い...。


王子一行 後編

デイヴというハンターに頼まれた、様子のおかしいブラッドホーンは明らかに強かった。

 

夜が長くなるという現象が起こってから、見たことのない生物やおかしな挙動をする野獣などが発見され始めている。

その一種ではないかというイグニスに、初めての野獣退治で疲労している自分たちでは万が一の出来事があるかもしれないといわれ、一旦その日は標で一泊。

実際目で捉えイグニスの推測はあながち間違いではないかもしれないと、プロンプトが写真を撮りデイヴに報告となった。

 

レガリアの修理も無事に終わり、綺麗になったレガリアとの記念撮影もして、再びガーディナへと向かおうとしている三人をノクティスは引き止める。

シドに兄のメディウムの話を聞いておきたい。

時間が惜しいというほどでもない一行はそれぞれに気になっていたメディウムの話を聞きに行くことにした。

 

「そういや、あとで話してやるっていったか。」

 

当の本人であるシドは頭からすっぽ抜けていたようだが。

最近忘れっぽい、歳かな。などとこぼすシドは整備工場の外にあるプラスチック製であろう白いベンチへと腰掛ける。

 

「メディの何が知りたいってんだ。」

「あんたが知ってること、わかってることを出来るだけ教えてくれ。」

「そうだな、あいつが丁度六歳ぐらいの時か。」

 

ーーノクティスが生まれて何ヶ月か。

メディウムが六歳の誕生日を迎えた日に王都の外へと旅立った。

まだ幼いメディウムは護衛もなく、車ももちろんなく歩いてハンマーヘッドまでやってきたという。

シドが父王レギスの友人であることを頼りにやってきたと告げられた時にはレギスは何をしているのだと怒りを覚えた。

 

しかし、メディウムは決して父は悪くない。自分の意思でこうしている。無理を通したのは自分なのだと頑なに父王の弁明をしていた。

メディウムほどの孫がいるシドからすればそんなものは関係なく。

親は子を守るものだとメディウムになるべく優しく諭したという。

 

「親ってのはどんなに子供が悪くても良くても必ず味方になるもんなんだよ。守ってやんのが親の仕事なんだって。それを聞いたメディのやつ、なんていったと思う。」

 

接点がほとんどないプロンプトは元より何度かあったことのあるイグニスやグラディオラス、弟のノクティスでさえも全く予想がつかない。

シドは昔を思い出してか悲しそうな目で何処か虚空を見つめている。

 

「レギス王はルシスの王であり民の父であって自分の父ではない。だってよ。」

 

あの時も丁度、こんな晴れやかな日だった。

優しい風と暑苦しいほどの晴天の中で体の芯から凍えるような言葉だった。

それが当時のメディの想い。

 

表情一つ変えずに言い切るメディウムの目には後悔も悲しみも見られなかった。

ただそうであることが何よりも重要なことなのだと割り切るような目。

自らの感情を全て押し込める六歳の子供はそこらにいる野獣より、夜に現れるシガイよりもよっぽど恐ろしかった。

 

イグニスが言っていたレギスとメディウムの深い溝。

ノクティスは何か喧嘩でもしたのかと楽観的に聞き流していた。

だが、シドの言うことが本当であれば喧嘩などの生易しい決別ではない。

 

ノクティスの知る兄はいつもニッコリと笑っていた。

そうしているのが当たり前かのように自然に。

レギス父王はルシスの誇り。

ノクティスは大事な弟。

ルシス王国は家族。

口癖のように会うたびに告げていた言葉の真偽すらも怪しくなるような父王への言葉。

 

「それでも放っておくわけにゃいかねぇしよ。ガレージに泊めて王都に送り返そうとしたんだが、次の日にはいなくなってた。律儀にお世話になりましたって手紙だけ書いて。」

 

その後再会したのはそれから五年後。

十一歳となったメディウムは一人の男を怒鳴りつけながらハンマーヘッドにやってきたと言う。

 

仕事が滞っているだのなぜわざわざルシス領にくるのかだのそのダサい服をいい加減やめろだの好き放題喚く声を聞いて、あまりのうるささにシドが見に行くと見覚えのある顔。

成長したメディウムとの再会となった。

連れの男のほうはなんだか怪しい男で、黒い帽子と射抜くようなくすんだ金色のような瞳が印象的な男。

一目であまり関わらないほうがいい男だと判断したが、メディウムを放っては置けない。

 

意を決して近づこうとすると、男はこちらを一瞥したかと思うとまだ不満をぶちまけようとするメディウムにかぶっていた帽子をかぶせてさっさと車に乗り込み、一言二言なにか喋ってから車で走り去った。

呆然と走り抜ける車を見送るメディウムはかぶせられた帽子を地面に叩きつけ、迎えに来たらその車の原型が残らないくらい凹ませてやる!と恨み言をはいた。

 

初めてあった時とは全く違うメディウムに困惑したが、突然いなくなったことでかなり心配していたシドは明るくなったことに安堵し、同時に一言物申してやろうとズカズカと歩み寄った。

だが、その威勢は帽子を拾い上げるメディウムの顔を見ることで一気になくなってしまった。

 

あの時と同じような底冷えする冷たさとは違う。

全身が硬直するような無感情な瞳で王都のある方角を見つめていた。

誰かを模倣するかのように帽子を胸に当て、一礼するとこちらに気づいて歩み寄った。

不気味なほどの満面の笑みと身をつかむような優しい声。

 

ーー五年前に一晩だけお世話になったメディウムです。覚えていらっしゃいますか?ーー

 

蛇を彷彿とさせる黒い瞳は先ほど見た男と同じように濁り、それと同じだけ感情の色がなかった。

 

「そのあとあいつは王都に向かったよ。あとはお前さんが良く知ってんじゃねぇか。あいつは一年に一回顔出しに来るだけ、あの男もあれ以来一回も見ない。何やってんだかしらねぇが、仕事として何かやってんのは確かだな。」

 

話は終わりだ、とシドは目を閉じる。

それ以上知ることはないのだろう。

三人の知るメディウムは十一歳の時に帰ってきてからあとのこと。

プロンプトは一度だけ。

 

知っている顔と知らない顔は正反対といっていいほど対極にある。

それを理解するほどメディウムの情報はない。

謎が謎を呼び、疑問が不信感へと変わる。

全員の顔が暗くなる。

 

恨みでもなく、怒りでもなく王都を見つめるルシスの王子。

それがどれほどのことなのか、ルシスを大切に思う彼らにはわからない。

 

「話、終わったならちょっと頼みたいことがあるんだけど。」

 

先程から気を伺っていたシドニーが暗い空気も意に介さず話しかける。

彼女なりの気遣いを切り替えの早いグラディオラスが拾う。

 

「また何かお使いか?」

「うん。オルティシエに行くんだよね。その途中にあるレストストップに届け物をして欲しいんだ。」

「寄り道になるが...ノクト、構わないか?」

「ああ、いいんじゃねぇか。」

 

まだ兄の話の整理がつかないが、今はオルティシエに向かう旅路の最中。

結婚式を挙げて王都に戻ればメディウムに会えるだろう。

その時に問い詰めればいい、と一旦端に置いてシドニーの頼みに了承する。

イグニスが予定を省みて時間があるというならば問題ないだろう。

 

「ありがとう!...まあ、もう積んであるんだけどね。」

「ちゃっかりしてんなぁ。」

「頼んだよ。それと、さっきハンターさん達がこの辺でズーを見たって言ってたから一応知らせに。」

「ズー?野獣か何か?」

「そんなところ。おっきな鳥で襲ったりはしてこないんだけど翼を広げたらハンマーヘッドぐらいの大きさになるかも。」

 

自らの両手を広げて表現するシドニーにプロンプトは鼻の下を伸ばし、他の三人は驚きの声を上げる。

世界は広いと車を押している時に嫌な実感をしたが、まだまだ世界には知らないこともある。

襲われないならば近づかなければいいと心に留めておくことにした。

 

「それじゃ、改めて出発しますか!」

「ノクト、運転してみるか?」

「いや、イグニスに任せるわ。またここに戻る羽目になるのはな。」

 

腑抜けになりかけているプロンプトの背中を思いっきり叩くグラディオラスの掛け声を背に運転手の交代を提案するが、昨日散々な目にあったノクティスは確実性のあるイグニスに任せることにした。

ここまで押して戻って来るなど御免被る。

グラディオラスやプロンプトもその通りだと頷く姿に小さくため息をつき、イグニスは運転席へと座った。

 

 

「ハンマーヘッド...いい店だったね。...旅終わったらもう行けないよね。」

「別に行けばいいだろ。」

 

吹き付ける風に髪を揺らしながら寂しげなプロンプトにノクティスは呆れたようにいう。

ハンマーヘッドというよりそこで働くシドニー目当てだろうが彼の恋路をいちいち指摘するほど野暮な人間はいない。

 

「車持ってないしなぁ。」

「じゃぁそんときゃレガリア貸してやる。」

「レガリアのおまけになっちまうな。」

 

整備工場だけではなくレストランもあるため、立ち寄ること自体難しくはないのだがプロンプト自身が車を持っていない。

ならばレガリアを貸してやろうと笑うノクティスに、レガリアの整備を楽しそうにしていたシドニーを思い出したグラディオラスが軽口を叩く。

あながち間違いでない。

 

「うーん、あ!俺王都帰ったら車考える!」

 

楽しそうに未来像を想像するプロンプトによって和やかな雰囲気が車内に満ちる。

もし恋愛関係に発展したとしてもシドニーがハンマーヘッドから動くことはないだろう。

王都から通いながら遠距離か中距離の恋になりそうだ。

 

 

レストストップ・ランガウィータ。

シドニーのおつかいはここのモーテルの店主への届け物。

レストストップ自体はいたるところに点在し旅行者やハンターの一時的な休息の場となる。

ルシスでメジャーなファストフード店、クロウズ・ネストも多くはレストストップに存在する。

 

今日中にはガーディナ渡船場へと着きたいイグニスがモーテルの店主と何やら話し込み、クロウズ・ネストにてグラディオラスが情報収集をしている最中。

イグニスを待つためプロンプトと会話をしているところにわんわんっと犬の鳴き声が響き渡る。

そっと足元を見ると、先ほどまでいなかった黒毛の子犬が行儀よく座っていた。

 

「あれ、アンブラじゃん。」

 

見覚えのある子犬の名はアンブラ。

帝国の属国となったテネブラエに住む婚約者、ルナフレーナの愛犬。

幼き頃から続けているルナフレーナとの唯一の交流を支えてくれる賢い友である。

その背にくくりつけられた手帳を、ノクティスが取りアンブラを撫でる。

 

「ありがとな。」

「アンブラじゃねぇか。よくここがわかったな。」

「いっつもどうやってきてんのー。」

 

情報収集を終えたグラディオラスがアンブラの存在に気付き感嘆の声を上げる。

プロンプトも常々不思議に思っていることをアンブラに聞くがくりくりとした目で見返されただけだった。

 

六神二十四使。世界を守護すると言われている六柱の神。

その神に仕える二十四柱の忠実な下僕。

 ルシス王家に由来する歴代王の魂が眠るとされる光耀の指輪や王家の力である魔法や武器召喚などといったものは全て六神より賜ったものであるという言い伝え。

 

そしてノクティスの婚約相手であるルナフレーナはその六神と対話が行える神凪の一族。

現代においても六神は依然として実在し、彼らに仕える二十四使もまた実在する。

ルシス王家と神凪一族との関わりも深く、神凪一族の故郷であるテネブラエでは一人の二十四使が滞在しているとすら言われている。

 アンブラはその二十四使が使役している使い魔の一人、いや一匹なのである。

 

そのアンブラが届けてくれた手帳の中を開くと最初のページに鮮やかな青を魅せるジールの押し花が目に入る。

 

十二年前。

ノクティスが八歳の頃、テネブラエ近くでシガイに襲われて大怪我をしたことがある。

レギスにより一命はとりとめたが歩けるようになるには時間が必要なほどの重傷で、とてもではないがルシスまでの長旅ができる容態ではなかった。

 

そのため彼はしばらくテネブラエ領の神凪の一族が住まうフェネスタラ宮殿で療養生活を送っていたのだ。

この手帳はほとんど怪我も治りかけ、もうすぐルシスに戻るという時にルナフレーナより受け取ったもの。

ステッカーや押し花といったものを貼り付けて一言書くという簡単な交換日記のようなものだが、今でも続けられている。

 

昔のことを思い出して懐かしむように次のページをめくると、見開きいっぱいの幼いノクティスとルナフレーナ。その足元に眠るアンブラとアンブラと同じ存在であるプライナが淡い水彩画で描かれている。

ノクティスは知らなかったが当時十二歳だったメディウムが、テネブラエ侵攻という最悪の事態の被害を最小限に抑えるべく奔走している時にディザストロ・イズニアとしてフェネスタラ宮殿に訪れたことがあった。

 

平和的に解決すべくなんとか落としどころはないかと交渉しにくれば弟が怪我をして父王と滞在中。

バレてはまずいが様子は気になる、とルナフレーナの私室に潜入した時に幸せそうに眠る二人を目撃。

もうすぐこの幸せは奪われることに何を思ったのか近くに置かれていた手帳を手に取り、密かに趣味としていた水彩画を描いたのだ。

端の方にメディウムというサインを残し、そっと部屋を出たという話があるのだがルナフレーナもノクティスも真相は知らない。

メディウムの謎の中でも暖かい謎として二人の秘密になっている。

 

その後結果的に言えばテネブラエは帝国の属国になってしまうのだが幸か不幸か死者は出ず、無血とまではいかなかったが帝国の侵略行為の中でも平和的な部類となった。

神凪の一族も帝国の貴族としてそのまま保持されレイヴスは事の次第を理解しメディウムに密かに感謝している。

真っ先に逃げたノクティスとレギスを嫌うなというのは難しいが助けようと奔走したメディウムがいるのも事実であるとルシスに対するあたりはそこまで強くなかったりする。

閑話休題。

 

ーー久しぶりに会えるな

 

ハンマーヘッドの店で買っておいたステッカーを手帳に貼り一言を書き記す。

神凪としてすでにルナフレーナは多くの人々に慕われている。

それに自分が釣り合うかと言われれば頷くことはできないが、久々に会えるという事実へと高揚感が勝っていた。

そっと手帳を閉じて再びアンブラに預けてひと撫で。

 

「気をつけて帰れよ。」

 

優しいノクティスの声に嬉しそうにわんっと鳴くと小さな足で懸命に走り去っていった。

遠くなる黒く愛らしい背中を見ながらプロンプトが口を開く。

 

「たぶん答えないと思うんけどさぁ。」

「じゃあ聞くな。」

「それって何してんの。」

 

無言。

婚約者との交換日記などいつの時代の貴族のなれ染めだろうか。

昔メディウムに見られ、爆笑された思い出が蘇る。

実際は微笑ましい弟の姿を純粋に愛でているつもりなのだが、感性の方向が煽りに特化しているメディウムは爆笑してしまった。

 

気恥ずかしさと忘れもしない忌々しい笑い声がこだまする。

まさか自分の書いた絵がその交換日記にあるなど思いもしていないだろう。

 

「だよねぇ。」

 

さっさとレガリアに乗り込んだノクティスにやっぱりという顔をして諦めたように助手席へと乗り込む。

届け物を終えればオルティシエまでノンストップ。

今の時刻からみれば夕方ごろにつくことになるだろう。

気分を変えたプロンプトは向かう先の楽しみを語る。

 

「海かー!ガーディナ渡船場といえば、やわらかーいベットとマッサージ!」

 

いつか王都でみたガイドブックを思い出し、嬉しそうな声を上げるプロンプト。

夜の出航はないだろうから結局一泊することになるのだが果たしてホテル代はあるのか。

 

「海か、海釣りできっかな。」

「そっか。お前らあんま海知らねぇのか。」

 

釣りが趣味というノクティスは王都では釣れない魚を想像して少しそわそわし始める。

王都に海がないことを思い出したグラディオラスは感慨深げに呟いた。

ノクティスとプロンプトがみたことあるのは定期的に送られるメディウムの写真の中にある海だけだ。

三者三様に楽しみにしているところで、お財布の管理をするイグニスが悟ったような顔をしていたのはご愛嬌である。

 

 

 

 

 

ガーディナ渡船場。

ルシス国内にある唯一の港であり、アコルド政府自治体へ向かうための便が出ているルシス国内でも屈指のリゾート地。

青い海、白い砂浜、小洒落たレストラン、素晴らしい夜景のリゾートホテル。

今まさに目の前にある夕焼けもまた絶景であった。

 

「夕焼けの海もすごいねぇ。」

「まさにリゾート地だな。」

「釣具屋!」

「船の時間を確認してからだ。」

 

素直じゃない性格などなかったかのように釣具屋に走りそうなノクティスを引き止め、イグニスは眼鏡の位置を直しながら港の方に向かっていく。

すると港の方から出てきた一人の男がノクティスたちに声をかけた。

 

「残念なお知らせです。」

「はぁ?」

 

小洒落た服装を着こなす長身の男がごく自然に近づいてくる。

ノクティスを守るようにグラディオラスとイグニスが構えるが男は胡散臭い笑みを浮かべてかぶっていた帽子を何かにかぶせる。

動くものを目で追ってしまう生物の習性に従いその先を見ると、ほとんど気配の感じない真っ黒な男がいた。

 

軍師として、王の盾として、ルシスの王族として幼き頃から訓練されてきた三人が全く気づかない存在。

膝下まで伸びる革のコートとフードから少し出た赤毛しか特徴のない男の顔はフードと帽子の二重で全く見えない。

ノクティスより少し小さいか同じぐらいか。

体格的とおった袖から覗く腕が鍛え抜かれた男性であることを物語っている。

警戒度を上げた三人は長身の男以上に黒ずくめの男に意識を向けた。

 

「船、乗りに来たんでしょ?」

「そうだけど...。」

「うん、出てないってさ。今日は調印式だし。停戦の影響かなぁ。」

 

ここへ来る目的は観光か船か。

目的は絞られるにしても当たり前のように船に乗りにきたと断言する男を鋭く睨む。

プロンプトの素直な返事を突っ込む余裕はない。

 

二人の男は四人とすれ違いながらなおも言葉を重ねていく。

 

「待つの嫌なんだよねぇ。帰ろうかと思って、さ。」

 

言い切る前に何かを投げつける。

ノクティスを守るようにコインをとると、聴くものを黙らせる力ある声に抗うように軽口を叩く。

 

「停戦記念のコインでも出たか?」

「え?そんなの出るの?」

「でねぇよ。」

 

「お小遣い。」

 

なにがしたいのかがわからない男と不気味に佇む黒い男。

グラディオラスは一歩前へと出る。

 

「おい。あんたなんなんだ。」

「見ての通り。一般人。」

 

絶対に一般人ではない。

全員の心中が一致したところで代弁するかのようにノクティスが声を上げた。

 

「「ねーわ。」」

 

それと同時に、黒い男も全く同じ発言をした。

ノクティスが男を凝視する。

どこかで聞き覚えのある声だった。

懐かしいような鬱陶しいような、そんな声。

たが、知り合いにこんな怪しい男はいない。

どういうことだと尚も見ていると、いつのまにか遠のいていた長身の男の声が響く。

 

「なーにしてんの。おいてくよ。」

 

声の方向に顔を一瞬だけ向け、なにやら迷うように向き直った。

フードから覗く、白い肌と淡い唇が音を奏でる。

 

 

「...船、乗りたいなら船着き場にいる男の人、頼りな。何か頼まれるだろうけど、話はしてくれる、かもよ。」

 

たどたどしいというより、注意するようなゆったりとした口調。

聴くものを押さえつける長身の男とは違い聴くものを納得させるような声に、ノクティスは既視感を再び感じる。

それを問うべきか迷ったが、それだけ告げると黒い男は走り去っていってしまった。

 

「なんだったんだ...。」

「助言...なのかな。」

 

緊張感が途切れ、去っていく二人組を睨みつけるようにみる。

困惑しながらも先ほどの船に乗るための助言がしっかりと頭に残っている四人は確認をするべく船着き場へと急いだ。

 

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