FFXV 泡沫の王   作:急須

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一ヶ月ほどお待たせいたしました。


コースタルマークスタワー

「ここでは俺の指示に従ってもらう。中は迷宮だから、最短ルートで行く。」

「いくつかの条件をクリアしなきゃいけないのよね。」

 

このコースタルマークスタワーは四つのルートに分かれているが正解は一つだけ。

四つの分かれ道にたどり着くまでにこちらがその道を通るに値するかを見極めるのだ。

最悪の場合、同じ的に三度当たってやっとボス戦などと言うこともありうる。

一度踏破しているディザストロがいるのは幸運なことだ。

 

「今回の目的は最深部にいると予測されるジャバウォックの討伐。くれぐれも余計なことはしないように。」

「まるで軍隊だな。」

「前口上が丸々軍隊だよね。」

「ディアは軍の施設で育てられたから身に染みてるんでしょう。」

 

好き勝手に言われているが、ディザストロにとってジャバウォック討伐は任務である。

これはあくまで仕事なのだ。

このタワーで厄介なのは狭さ。

狭いダンジョン内にシュラプネルが何匹も出現し、自爆するとサンダーボムを生み出し、さらにサンダーボムも自爆し…と惨状が繰り広げられる可能性が高い。

割とそれで多段ヒットする。

 

一度倒して仕舞えばシガイの数は減るが、それでも厳しいぐらいだ。

フェニックスの羽根が必須である。

ハイポーションも忘れずに。

最深部に着く頃には経験も大分つめることだろう。

 

「何を言っても構わないが俺の指示に背くことだけはやめろ。時間が無駄にかかるだけだ。」

「なんか言い方に棘があるけど…まるで俺たちが言うこと聞かねぇ問題児集団みたいじゃねぇか。」

「殆ど似たようなものだ。子供のお守りを任されているのだから多少のお茶目な発言は見逃してくれ。」

「お茶目とかの次元じゃねぇな。」

 

それでも迷いたくはないらしく、遺跡内部に侵入してからは素直に従うと渋々頷いた。

 

「ではまず、今日遺跡に入るか否かが問題になる。プロンプト、行きたいか?」

「え!?俺に聞くの!?俺すごい行く気満々だけど…?」

「よし、では進もう。」

「は!?なんなんだあいつ。」

 

それだけ言ってディザストロはスタスタと先を歩く。

謎の質問に全員が顔を見合わせ、ひとまず付いて行くべく階段を降りた。

 

降りた先は円形状の広間でエントランスホールのようなものだろう。

どんどん先を行くディザストロを囲うようにシガイが構えている。

怪我人があの状況はまずいのでは、と四人が慌てるがアラネアは今は近づかないほうがいいと止めた。

蜂の巣にされても文句を言えないから、と。

 

「え、それってまさか。」

 

突如、背に背負ったアサルトライフルを持ってぐるりと一周回り始めた。

聞きなれない発砲音が夥しい数鳴り響き、慌てて耳を塞ぐ頃には全てが片付いていた。

蜂の巣になったシガイ達がドロドロと闇に飲まれて行く。

 

呆気にとられた四人に振り返ったディザストロが、さっさと先に行くぞと次の部屋に入ってしまった。

 

「ディア!一人で先行かないの!」

「えっげつねぇ…。」

「本当に怪我人か?」

「俺にはそう見えねぇけどな…ほらおいてかれるぞ。」

「あ!待ってー!」

 

スタスタと先を行くディザストロを五人は走って追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後もいくつかの場所でグラディオラス、イグニス、プロンプトに問いかけたり自らが判断したりアラネアの勘で避けて通ったりと下へ下へと進んでいった。

気がついた頃には広すぎる四角い部屋へと辿り着いていた。

シガイもいない、何もないようなだだっ広い部屋のある一点でディザストロが止まった。

この時点でかなりクタクタだが、ポーションを飲んでなんとか全員生き残っている。

 

コツコツと地面を蹴ってディザストロが包帯だらけの顔を歪めた。

 

「四分の一の確率だったが、引き当てたようだな。」

「あ?なんの確率だよ?」

「君たちの狙うジャバウォックに出会える部屋への道が開く確率だよ。そろそろネタバラシと行くか。」

 

コースタルマークスタワーは仲間たちの助言に従うか従わないかによって最後の四つの道のうちどれが開くかが変わる。

全てに従えば良いというわけではないのだろうが、仲間を尊重すればするほどポイントのようなものが蓄積し、ルートが解放される。

そのためにわざわざディザストロが仲間たちに問いかけたのである。

 

ルートは全部で四つ。

そのうち三つがボスではない代わりに体力が異常に高いシガイが待ち受ける部屋。

そのシガイを倒せても一番奥の仕掛けで入り口まで戻される。

もう一度一から下に降ってまた開かれた別の道に進まなければならない。

場合によっては三つの道全てを解放しなければボスに挑めないパターンもあった。

 

「じゃあこれは正解ルートなんだね!…道どこ?」

「これだ。」

 

先ほどより少しずらして、ディザストロが地面を蹴る。

ゴゴゴゴと重い音を立てて人が収まるぐらいの穴が空いた。

移動式の壁を利用した古代遺跡の迷路。

ずいぶん大掛かりな仕掛けである。

 

「このマップではシガイが湧かないが、回復だけしてさっさと進もう。こんな陰気なところで休んでも大した回復は見込めない。」

「同意するわ。早くボス倒しちゃいましょ。」

「異議なし。」

「狭い迷路内でもシガイが湧く。幸いなことに迷路に入ればボスまでの道は簡単だ。しっかりついてこい。」

「あんたこそ誤射すんじゃないわよ。」

「プロンプトもな。」

「俺たちも切りつけないように気をつける。」

 

軽々と開いた穴に飛び降りたディザストロを追いかけてアラネアが軽口を叩きながら飛び出し、グラディオラスが尻込みするプロンプトとともに降り、イグニスが眼鏡をかけ直しながら短剣を構え、ノクティスが最後に降りた。

さらに重苦しい音を立てて動いて行くブロックに揺られてわりと面倒臭いコースタルマークスタワー名物の迷路を堪能する時間がやってきた。

 

 

 

 

 

迷路内には小回りの効くシガイたちがうじゃうじゃと現れ、誤射をしないように近接組を中心になんとか対処をして抜けられた。

迷路を進んでたどり着いたのはかなり大きめのエレベーター。

ボス戦前なのは一目瞭然。

各々が支度を整えてお互いに顔を見合わせる。

 

「ここのジャバウォックはあまり情報がない。ヒットアンドアウェイを心掛けろ。」

「ディアは絶対前にでちゃダメよ。プロンプト君もなるべく後ろに。」

「俺とイグニスでなるべくこちらに視線を向けさせる。ノクトは様子を見ながら遊撃してくれ。」

「了解。最初から本気で行くわ。」

 

ピリリとした魔力の波動に、包帯が少しだけ浮いたような感覚がする。

頬を切るような鋭い魔力ではあるが魔法の天才からしたらひよっこ程度だ。

だが、少しは扱いに慣れてきたと褒めるべきだろう。

心の中で弟の成長に寂しさと嬉しさを感じながらエレベーターに乗り込む。

 

ガコンッと音を立てて動いたエレベーターは遺跡とは思えない滑らかな動きでコースタルマークスタワーの最下層を目指す。

 

数分も経たずに見えた下には巨体を揺らめかせるジャバウォック、だけではなくいつか見た蔦のようなものがシガイを侵食していた。

 

「あれってマルマレーヌにもいた…!」

「また厄介なことになってんな。」

 

プロンプトが悲鳴のような声を上げてグラディオラスが冷や汗を流す。

メディウムがいることでどうにかなったあの蔦のシガイと最悪な形でご対面。

ジャバウォックの半身を青い蔦が覆い隠し、うねうねと躍動している。

棘と言うよりは毒針のような節々がグロテスクに映る。

今度はどう対処するべきかとアラネアに相談するべく後ろを向くと、崩れ落ちるように膝をついたディザストロを介抱するアラネアの姿があった。

 

「あぁ…アァ!グゥッ!?」

「ちょ!?ディア!?ど、どうしたのよ!」

 

悲鳴をあげるディザストロは冷や汗をかきながら両手で頭を抑える。

何が起こっているのかわからないが既視感のある光景にノクティスは嫌な予感を感じた。

 

「アァァァ!クソッ!頭が割れそうだ!!」

 

蹲ることしかできないディザストロをどうしたらいいかわからないままエレベーターは最下層へとたどり着く。

まるで六人を待ちわびていたようなジャバウォックは一目散にこちらに突進してくるが、それよりも早く毒々しい蔦がディザストロのその身を捉えて壁に叩きつけた。

言いようのない嫌な音を立てて背面を強打したディザストロは痛みでどうにか意識を保っている。

 

「兄貴の時と同じだ!あいつ狙われてる!」

「何が原因なんだ!?共通点なんてないだろあいつら!」

「ちょっと!考察は後でいいから!私がディアを助けるからジャバウォックなんとかして!」

 

まさかディザストロとメディウムが同一人物だと知らない彼らはなぜ狙われるのかの原因がわからない。

とにかく助けないと未だに蔦に絡まれているディザストロが死んでしまう。

ギリギリと身に青い棘が刺さり行く様に我慢がきかなくなったアラネアが、槍を構えて蔦に突き立てる。

しかし、蔦とは思えないような金属のようなガンッという音を立てて槍が弾かれてしまった。

 

魔導ブースターで距離が短いながらも加速した槍を弾かれるとは思わなかったアラネアは急遽間合いを取る。

蔦はそれよりもディザストロにご執心。

眠るように意識のないディザストロを全身で搦め捕っている。

 

「ディア!意識あるの!?ないの!?返事しなさい!!」

「…うっせ…!俺は…姉ちゃんじゃ…ねぇ!!」

 

息も絶え絶えながら何か意味のわからないことを呟いている。

兎に角意識はあるようだ。

グラディオラスとイグニスがマルマレーヌの森と同じようならばジャバウォックは別個体だと推測し、急いでヘイトを取ろうと猛攻を仕掛ける。

プロンプトが後衛で援護に回り、遊撃のノクティスは人命に関わる蔦の対処に回った。

ファントムソードを解放するにはまだ少し時間が足りない。

 

「ディザストロの様子は!」

「意識はあるけど、相当キてるわね。蔦を剥がそうにも弾かれるわ。」

「俺たち、前にも似たようなシガイにあったことがあるんだ。その時は今みたいに別のシガイに寄生していた。」

「じゃあ、ジャバウォックを倒せばあの蔦と自然と弱まるかもしれないのね?」

 

簡潔な情報だけで今するべき最善手をアラネアが判断する。

エレベーターによる逃走は蔦のシガイの射程とジャバウォックの速度を考えれば不可能。

狭い円形状のこの戦場でどちらも倒さねば全滅だ。

元々怪我人のディザストロが瀕死だがこれ以上手がない。

 

ファントムソードを使用でき次第ジャバウォックに向かうが、その前になんとか蔦を剥がせないかノクティスが攻撃を続ける。

アラネアは攻撃が弾かれてしまうので、悔しいことこの上ないがジャバウォックを早々に討伐しに向かった。

 

「ディア!死ぬんじゃないわよ!」

 

全力の蜘蛛が駆け抜けていくのを尻目にノクティスは剣を突き立てた。

 

 

 

瀕死のディザストロはいつかのように個体との会話を強いられていた。

 

ーーナカマ?ネエチャン?ーー

またか!俺はシガイじゃない!姉ちゃんでもない!

ーーサイノウ?ーー

俺に才能なんてない!

ーーデモ、ネエチャンノニオイ。ーー

 

青い個体は姉を探すようにグネグネとディザストロの体を這いずり回る。

この個体の言う姉とはマルマレーヌの森にいた赤い蔦のことだろう。

この蔦は、否、この少年はジグナタス要塞で行われていた人間をシガイ化する実験の完成形である。

 

「あぁ!こんなところで!命の責任を問われるとは…なぁ!」

 

自分はまさしく死にかけだ。

青い蔦は麻痺の毒が生成されているのか体がろくに動かない。

天罰なのか自業自得なのか。

合法とは言えど倫理に則れば、犯罪の片棒を担いだようなディザストロにツケが回ってきたか。

こんな命がけのツケは御免である。

しかし、ここで倒れるわけにもいかない。

 

「悪いな!少年!罪は全部終わってからまとめて償う!!お前の姉ちゃんを殺したのは俺だ!」

 

ーーコロ…シタ?ーー

 

ゾワリと、蔦が膨れ上がるように蠢く。

身の毛もよだつような殺気とともに容赦のない叩きつけがディザストロに襲いかかった。

避けることもできず、着込んだ鎧でなんとか衝撃を和らげるがそれでも骨の一本がイカれた。

おそらく肋骨のどれかだろう。

言いようのない痛みに耐えながらも一時的な魔力の暴発で蔦から抜け出す。

 

決死の抵抗をしていたノクティスが急いで駆け寄ってきた。

 

「ディザストロ!」

「さっさとジャバウォックを倒せ!蔦は俺がなんとかする!」

 

口から血を垂らしながらディザストロは足の魔導ブースターを起動する。

蔦との命がけの鬼ごっこが始まるのだ。

 

ギリギリ使えるファントムソードを身に纏いながらノクティスは言葉通りジャバウォックに全力の攻撃を打つ。

壁を駆け抜けていくディザストロを蔦が追うように次々に壁に巨大な穴を開けていくのを横目に見ながら全てのファントムソードによる神をも地に伏せさせる襲撃。

アラネアとグラディオラスやイグニスのおかげでだいぶ減っていた体力が全て持っていかれたジャバウォックはばたりとその巨体を地に伏せさせた。

それと同時に蔦もばたりと地に堕ちる。

 

壁を走り抜けていたディザストロが五人の元に近寄ってきた。

 

「ゴフッ…ゼェ…マジで死ぬかと…思った…。」

「重症ね…早く衛生兵に治療してもらいましょう。病院に行く前に血が足りなくなりそうだわ。」

「あっぶねぇな。」

「無事でよかった。」

「目的の品は?」

「あ!あれじゃない!」

 

各々が安否を確認している中、消えて行くジャバウォックの中にチェーンソーのような剣があらわれる。

あれが目的の覇王の大剣である。

予想以上に苦労したコースタルマークスタワー。

ノクティスは急いで回収し、皆が安心しきったその頃。

 

 

モゾリと動いた消えかけの蔦がその鋭い先端でディザストロの脇腹をごっそりと貫いた。

 

 

「…!!」

「ディア!!」

「なっ!?」

「あいつ!まだ生きてるのか!」

 

声にならない悲鳴をあげながら崩れ落ちるのと血に塗れた蔦が消えて行くのはほぼ同時。

意識が薄れて行く中、必死の形相のアラネアに手を伸ばしてディザストロは倒れ伏した。

 

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