FFXV 泡沫の王   作:急須

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釣り

ーー世界は闇に包まれようとしています。神凪の私はーー

 

「んん…違うな。もっとインパクトが欲しい。」

「難しいですね。"人々の心掴む"とは。」

 

首相官邸の一室。

一番小さな会議室を借りてスピーチ用の原稿をルナフレーナとともに書き上げていた。

事前に用意したテンプレートにルナフレーナの言葉を足していく形だが、これがかなり難しい。

人々に不安を与えるだけでは希望たる神凪として失格。

希望だけを与えてしまうと人々に現実が降りかかった時心が折れてしまう。

少なくとも実際の問題と事実を織り交ぜて、それでも立ち上がってくれないかと神凪に証言してもらわねばならない。

民達にしてもらいたいのは真の王が帰ってくる時までこの世界を保つことだから。

 

「これでもハードル自体は低いんだ。そもそもの支持率が政治家もびっくりの数値。世界のほぼ九十%がルナフレーナの味方なんだぜ?そこまでになったのは一重にルナフレーナの努力だ。あとは君の言葉を言ってくれればいい。」

「そのまま言葉を言うだけではダメなのですね。」

「当然だ。言葉は所詮言葉だ。言って仕舞えばいい意味でも悪い意味でも影響を与える。それを文として再構成することで複雑な意味と効果を発揮させるのは俺の仕事…なんだが。」

 

これがまた難しい。

ルナフレーナの言葉を文にするだけなら簡単だがルナフレーナの文にするのはすこぶる難しい。

彼女の言葉を彼女の想いとして保ったまま文にするのだ。

そこにメディウムの感情や策略、想いを乗せてはならない。

小さな綻び一つで人々に疑念を抱かせる。

支持率が高いことはいいことだがそれだけ人々にとってのイメージがある。

数多の人々にルナフレーナの文を、想いを届けなければスピーチは大失敗だ。

書き換えはご法度。

 

「俺はひねくれ者だからなぁ…こんなまっすぐな言葉で想いが届くのか不安になっちまう。」

 

言葉に言葉を重ねて何重にも意味を重ねがけしたあと精巧な道を作り上げ文と為す。

そうやってやっと偉い人々を納得させてきたメディウムには素直な言葉の羅列が少々眩しい。

見ているだけで心の汚い部分を探されている気分だ。

素直な言葉に相応しい素直な文というのは綺麗事だと一蹴されやしないか冷や冷やする。

だがたしかにルナフレーナらしいのでわざとこねくり回すのは愚策だ。

 

「では、メディウム様もスピーチされてはいかがでしょう。」

「は?俺が?帝国軍に自殺志願者だと思われるのが落ちだぞ?」

 

メディウムの捜索命令の中身は”生死を問わない”だ。

死体さえあれば出世間違いなしの獲物を狙わない奴はいない。

だからこそ雲隠れしているのに公に出て仕舞えばバレッバレもいいところだ。

メディウムには自殺志願者にしか見えない。

そこを利用するのだという。

 

「私と一緒に儀式に出れば迂闊に手を出せません。スピーチ中の襲撃もほぼ不可能でしょう。」

「確かにそうだが顔が割れる。今後の旅に支障が…いや待て、いい案かも知れない。」

 

オルティシエでの戦いが終われば帝国側はほぼ壊滅。

目立つ行為を避けようが避けまいが捜索命令はその内立ち消えるだろう。

であれば堂々と前に出て顔を売る。

先を見据えて少しでも支持率と信憑性を上げておきたい。

名声はいくらあっても困らないものだ。

 

「俺はルシスに居る同胞達に呼びかける。その方が王子っぽい。」

「それで行きましょう。ルシスが立ち上がればアコルドも自然と立ち上がり始めます。世界の終わりなど迎えさせないために。」

「存外策略家だ。食えないお姫様。」

「貴族の淑女ですから。」

 

クスクスと上品に笑うルナフレーナにあくどい笑みを返す。

スピーチの原稿は瞬く間に進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

長々と続いた原稿との格闘は夕方をもって解散となった。

今はディザストロとして街中を悠々と歩いて居る。

帝国軍の服を着ていれば全く怪しまれないのが属国の利点だ。

何もかもが顔パスならぬ制服パス。

顔が全く見えなかろうと御構い無しである。

特に予定もないのでゴンドラでいける釣りスポットへと足を運べば黄色チョコボと黒チョコボが激しい温度差を醸し出していた。

黄色チョコボも一応釣具一式構えているが一向に引っかかる気配が無い。

かたや黒チョコボはバンバン釣っている。

大漁とかそういうレベルでバンバン。

この辺一帯の魚いなくなるんじゃ無いか。

ちょっと見ていて面白い。

 

しかしここで接点を作るのはまずい。

冷や汗を流しながら別の釣り場に行こうと抜き足差し足忍び足でそろそろゴンドラ乗り場に移動していると事件が起こった。

 

「おっしゃー!!大物ぉ!!」

「ええ!!嘘!?でっかぁ!?」

 

ギャーギャー騒ぎ始めたチョコボ達は写真を撮ると喚き始め、最終的にぐるりとこちらを向いてきた。

動けないでいたディザストロと文字通り鉢合わせ。

 

「あ!」

「ああ!!」

「…げぇ。」

「人の顔見てげぇはないだろ!」

「そーだそーだ!失礼だぞ!」

 

釣り上げた魚を確保しながらギャーギャー騒ぎ続ける。

そんなに大声出さなくても聞こえている。

一週間足らずで再びディザストロで顔を合わせることになるとは。

釣り場に来たのが失敗だったか。

 

チョコボ達改めプロンプトとノクティスが魚をボックスに入れ、一息ついたところで寄ってくる。

 

「今度はオルティシエで仕事か?」

「宰相様がおられるのならば例え火の中水の中。馳せ参じるのが俺の仕事。」

「大変だな。副官。」

「その話の流れだとここにあのおじさん来てるってこと!?不味くない?」

「あっプロンプトお前!」

「やばっ!」

 

ジト目で見るしかない。

明らかに怪しい挙動だ。

俺が帝国に忠実で愛国心溢れる輩であれば尋問待ったなしである。

正直者というか考えなしのプロンプトはあとで説教だ。

 

「とはいえ俺は今休憩中だ。…聞かなかったことにしよう。」

「すげー助かる…ます。」

「敬語など無理に使わんでもいい。そうだな、ここはひとつ釣り仲間として雑談と興じよう。家の出や身分を気にせずな。」

「え?いいの?」

「わざわざ報告などはしない。安心しろ。」

 

予め持ってきていた釣竿を仕込む。

市販で売っている釣竿で一番安いものを選んだ。

形から入るのより実力を測ってから合うものを買う派なのだ。

ノクティス達は困惑しながらも横で再び釣竿を手にした。

 

「あんたは良く釣りするのか?」

「今日が初めてだが、釣り好きな同僚がいてな。手順は聞いたことがある。」

 

おっとりしている副官仲間の彼は釣竿を持ってのんびり川を眺めるのが趣味だと言っていた。

釣果はまあまあ。

捌けないらしく、釣りをしては捌いてくれと職場に持ってきた。

その日の昼飯はみんな揃ってディザストロの調理した魚を食べる。

 

「実際に見たことはないのか。」

「残念ながら。」

 

そう言いながらチャポンッと沈んだ浮きを見事なまでの一本釣りで引き上げる。

初めてとは思えない手さばきで楽しそうに笑った。

フードで顔が見えないが雰囲気で感じ取れる。

訝しげな表情で二人がディザストロを見る。

 

「絶対嘘だ。」

「俺は天才なんでな?」

「うわムカつくー。」

 

釣れた魚を持ってきたバケツに入れると再び竿を振る。

ゆったりと流れる凪の水面と少し遠い街の喧騒のコントラストが絶妙だ。

釣りも中々に乙なものである。

 

話題もなく緩やかな時に任せて過ごすこと数分。

全く釣れずに飽きてきたプロンプトが、ディザストロに話しかける。

 

「ディザストロさんはどんな仕事できたの?」

「ディアでいい。そうさな。宰相の付き添いもあるがちょっとばかし戦いの準備にな。」

「た、戦い?」

「ここで神様起こしておっ始めようっていう阿呆どもに横槍を入れるための…な。誰とは言わんが相当の阿呆だろう。宰相様には全て筒抜けだ。」

「う、うっそぉ。」

 

顔面蒼白なプロンプトをケタケタと笑ってノクティスにも話を振る。

 

「そこの釣り師はこの地で起こる戦いをどう見る?」

「どうって言われても。」

「勢力分布はどうなっていると思う。」

 

釣竿の先から目を離さずにしばし考えるノクティスは存外早く答えを出した。

 

「帝国軍と、その阿呆達と、宰相…かな。」

「ほぉ?」

 

二つの名が上がるのは当たり前だがよもや三つに分けるとは。

ノクティスもこの旅でかなり成長している。

少しだけ嬉しげに語尾を上げて続きを促す。

 

「帝国の指揮は宰相がとると思う。でもそれとは別に宰相自身と天才様が動く、とか。」

「なるほど。実に合理的且つ現実的だ。」

 

冗談を返すように軽く笑いながら挑発してくる王様は実に頼もしい。

もう少し奥に突っ込んでも良さそうだ。

 

「では、宰相はなぜ別に動く?」

「別の目的があるからだろ?」

「その目的とは何だ。」

 

フードから覗く橙色の瞳が怪しく光る。

全く考えたことのない問いだった。

何か企んでいる怪しいおじさんとしか考えていなかったノクティスは首をかしげる。

確かに別行動する目的があるはずなのだ。

自らが仕える帝国を裏切ってまで自分たちを手助けし、帝都へと誘う理由が。

 

「今の阿呆達にはその意味を考えるに値する。だが何かを守るには一歩足りない。」

「何かを守る?」

「そこから先は時期尚早か。忘れてくれ。」

 

再び沈んだ浮きを引き上げ、華麗な一本釣りを決めるとバケツにそのまま入れた。

ノクティス達のボックスに二匹の魚を入れて、さっさとゴンドラ乗り場へと向かう。

 

「じゃあな、阿呆共。精々親父殿を喜ばせてくれよ。」

 

凪の水面が風に吹かれて小さな波を立てた。

 




・FFXVエピソードアーデン配信後の指針について

エピソードアーデンの一部が公開されて帳尻合わせが大変だなと困惑しております。
ええ…思ってたんと違う…でも好き…おじさんカックイイ…おおおおおおおおぉぉぉぉ(自主規制)
と、荒ぶりまくりました。致し方ないね。
シナリオ展開としましては本編を最大限リスペクトして行く所存です。
つまり書き換えもあり得る。
補足説明が必要であればその都度後書きや前書きでお知らせしていきます。
取らぬ狸の皮算用かもしれませんが予めご了承ください。
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