FFXV 泡沫の王   作:急須

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※ショッキングな表現が多いためご注意ください。

あけましておめでとうございます。
今年も泡沫の王をよろしくお願いいたします。


王の初陣と兄王の献身

水神リヴァイアサンは実に気性の荒い神だ。

 

――神、万物を司り。

――愚劣なる種、万物の石片なり。

 

仰々しい声が響く。

意味を理解するものはこの世に三人しかいない召喚獣の言葉は耳によく響く。

愚劣なる種とは神以外の生命の総称とも言えるが、この場合人間のことを深く指している。

頭を大きく振り祭壇の石柱を破壊したリヴァイアサンにメディウムとルナフレーナは動じない。

ルナフレーナを狙ったその鼻先をクラレントで弾いてみせた。

 

「聖石に選ばれし王は星の闇を払う。よもや水神ともあろうお前がしらぬとは言わぬよなぁ。リヴァイアサン。」

 

煽るようなメディウムの言葉。

煩いとばかりにリヴァイアサンが水の龍を仕向ける。

剣神による加護を持ったクラレントはいとも容易くそれらを切り裂く。

 

――万物、守護聖神たる我なくして塵と化す!崇めよ!

 

「人はその慈悲故に神を崇める。神は人に慈悲を与えてこその神。崇めるだけの万物など神ではない!」

 

――神の御前に石片如き愚。"王"の愚劣。我に抗する慢心の凶。

 

大口を開けたリヴァイアサンにルナフレーナの力を感じ、メディウムは一歩下がる。

神凪の力の範囲内に収まった瞬間二人を飲み込むように祭壇にかぶりつく。

一瞬神凪の力と魔法の力が爆発する。

 

「「聞け!!」」

 

二人の力強い言葉と力に弾き飛ばされたリヴァイアサンが苦悶の声を上げる。

神と対話し神に勝ち得る神凪と王族を舐めすぎである。

 

「我が弟は!我らが王は神に必ずその証を示す!」

「聖石に選ばれし王は我らが光!」

 

嫌そうな気配がリヴァイアサンから感じ取れる。

 

――証なき時、我は食す。

――愚劣なる種を万物の石片を"王"を食らう。

 

妥協案のように提示された。

最初からそう言えばいいのだ。

崇めよだとか万物だとか今はどうだっていい。

万物でさえ成せない病の死滅を代行する為に愚劣なる種が努力するのだから素直に"手伝ってください"ぐらい言えないのか。

恩着せがましいにもほどがある。

 

――誓約を行う。

 

 

 

 

 

 

 

 

水神リヴァイアサンの出現と共にニフルハイム帝国軍も作戦展開を開始した。

街全域に魔導兵と准将達が己の任を果たしている。

知り合いであるアラネアとビッグスにウェッジには人命救助の支援と命ある兵の舵取りを任せている。

細かい指示に従えるのは自律する人間だけだ。

このような鉄火場なら単純な命令と数で押せる上に損害が少ない魔導兵が適任と言える。

 

人命救助を何かと信頼できるアラネアと共に行えればイグニス、グラディオラス、プロンプト達によるノクティスへの加勢が早くなる。

手出しのできない神凪はこの場で祈る他ない。

本来なら安全な場所に避難してもらいたいところだが、共に戦いたいと願うルナフレーナの意思を汲み取ってメディウムが護衛役へとついた。

無論、思惑はそれだけではないが。

 

「水神の名が聞いて呆れるな。あれじゃただの厄災だ。天変地異。」

「荒ぶる神の名としてはまさしくと言ったところでしょうか。」

 

古の約束を果さんとする神凪と対峙している最中に、喧しいとパックリ食べようとするほど大馬鹿である。

ルナフレーナに弾かれて少し懲りたリヴァイアサンは神凪に突っ掛かるのを止め、己を倒せるほどの強き者以外は認めないと水都オルティシエで大暴れする気である。

試練というよりイライラを発散する子供の、神の癇癪だ。

 

「さてさて近づくのも恐ろしく大変だろうな。どうやって向かうつもり…わぁお。」

 

浮遊魔法を使えないノクティスはシフト魔法で武器を投擲する他自力で近づく術はない。

しかし投擲しても届く距離ではないだろう。

そんな中水神を捉えんと射出される帝国の武器の一つに妙な動きをするものが一機見つかった。

持ち前の魔力強化された視力にチョコボと黒チョコボがちらりと映る。

おそらくアレに乗っているのが我らが王とご友人だ。

一般人も随分素晴らしい発想をする。

 

鬱陶しい機体に気がついたリヴァイアサンが水を巧みに使って撃墜を試みる。

エンジンブレードを持ったノクティスがなんとか応戦しているが何発か取り逃がしこちらに降ってきている。

 

「本当傍迷惑な儀式だな!」

 

直撃するものだけを狙ってクラレントの一閃を放つ。

真っ二つに割れた水が儀式の祭壇を砕き、削り取る。

凄まじい衝撃に足元が崩れたルナフレーナを担ぎ上げ、比較的マシな通路へと飛び移った。

 

その間にノクティスだけが水神に乗り移ってなにやら要求をしているようだ。

威嚇する水神と交渉するノクティスで小競り合いをしているようだ。

 

「落とされた!」

 

近場の地面に叩きつけられたノクティスに水神が吼える。

オルティシエを囲むように発生した水竜巻が道や建物を巻き上げていく。

マップシフトに最適だと目を細めればノクティスも同じことを考えたのか瞬時にシフト魔法で飛び移って行った。

リヴァイアサンへとエンジンブレードを突き立て、何度か切りつけた時。

かぶりを振った遠心力で吹き飛ばされたノクティスが体を強く打ち付けてピクリとも動かなくなった。

あれはきっと気絶している。

 

「ノクティス様!!」

 

駆け寄ろうとするルナフレーナの腕を引く為に伸ばした手が違うものに掴まれた。

一瞬の感触に全て悟ったメディウムは駆け寄るルナフレーナを制して前に出る。

クラレントを構えた切っ先の向こう側にはノクティスのそばに立つ影があった。

 

「やあ。御機嫌よう。兄王様。神凪様。」

「…これはこれは。宰相様。激戦の中態々お越しいただき恐悦至極。出来ればそのままUターンで帰っていただきたいのだが?」

 

ルナフレーナをその場にシフト魔法で肉薄する。

祭壇から離れた崩れた橋の上で兄王と王、病の王が対峙する。

事前の魔導兵との戦闘と強大なリヴァイアサンとの競り合いでノクティスは目が覚めても立ち上がることができない。

 

「約束は守ってあげるよ。"俺のモノ"になってくれるんでしょ。」

「あんたのモノになればルナフレーナとレイヴスは傷付けない。そういう約束だ。嘘偽りないな。」

「あに…き?なに、いって…?」

 

ルナフレーナにこちらの声は聞こえない。

困惑したようなノクティスの声は聞こえないふりをする。

アーデンという病のモノになるとはシガイになる事でも兄王から引き摺り下ろされることでもましてや死ぬことでもない。

 

メディウムにとって最低で最悪な事実を最後の家族に突きつける事である。

 

「二十年前の約束、覚えてる?」

「忘れもしない。俺があんたの"家族"になった日だ。」

「君を庇護する代わりに君をおもちゃにする。神々が決めた使命のためにね。でもそれだけでは俺は楽しくなかった。だからその時君は遊びの為にこう誓ったんだ。」

 

「「他の何を犠牲にしてもメディウム・ルシス・チェラムは未来永劫アーデン・イズニアを裏切らない。」」

 

忌々しそうに吐き捨てるメディウムと楽しげに嗤うアーデン。

冷たい空気が場を包む。

暴れるリヴァイアサンの音が遠い。

 

「君はなんでも犠牲にしてくれたね。大事にしていた筆。気に入っていた本。友達だった猫。同僚だった若者。」

 

犠牲にしたモノの名と姿が浮かんでは消えていく。

無機物から命あるもの、人でさえもその手で奪ってきた。

アーデンという家族を裏切らない為に。

彼は壊れてしまっている。

要求は徐々にエスカレートし、つい最近望んだものはメディウムを絶望の淵へと追いやった。

 

「ああ。この間は"父親と国"を壊してくれたね。俺のために。殺したのはグラウカ将軍だったけれど死体の王を俺の元へ持ってきてくれたのは君だったよね?」

「嘘…だろ?なぁ!嘘なんだろ!兄貴!」

 

噛んだ唇に血が滲む。

違うと否定することは出来ない。

それはまさしく裏切る行為なのだから。

 

「そんな君の初めてのわがままだから"父親"としては聞いてあげたいのだけれど。まだ足りないんだ。」

 

ハナからメディウムはアーデンのものだ。

今更それを改めて捧げたって命の対価には遠く及ばない。

手に持った漆黒のナイフを倒れ伏したノクティスの顔に向ける。

家族への情をぬぐいきれない漆黒の瞳が悲しげに歪んだ。

与えられた選択肢は二つ。

たどり着く未来は一つ。

 

「ねえ。壊れてくれない?」

 

振り下ろされたナイフがノクティスへと迫った。

 

 

 

 

ナニカを貫く酷い音はしても痛みはしなかった。

頬に生暖かいモノが垂れる。

目を開けたノクティスの視界いっぱいにナイフの突き刺さったメディウムの肩があった。

 

「兄貴…なんで…。」

 

ルシスにとっての裏切り者。

最初から帝国側にいた最後の家族。

クラレントを振り抜けばアーデンへの裏切りとなる。

見捨てればノクティスを喪う。

どちらをとってもメディウムが壊れてしまう最悪の選択肢の中でその兄が、兄王が、メディウムが身を呈して弟を守った。

 

三つ目の選択肢。

裏切りでも見捨てるでもない。

メディウムという存在を表す"献身"をとった。

 

「俺はどちらも裏切ってなんかない。」

 

突き刺さったナイフの刃を素手で握る。

切れた手から鮮血が流れ落ちる。

勢いよく抜いたナイフが音を立てて落ちる。

 

「俺という人間が信じる道を歩いた!ただ!それだけだ!!」

 

死んでいった人たちにとってそれが全てだとしても。

苦しんできた日々がルシスへの裏切りだったと言われても。

ルシス王国を滅ぼしたのが自分だと罵られても。

 

「壊れてなんかやらない!這い蹲っても立ち上がってやる!進んでやる!誰も裏切ったりなんかしない!」

 

拾われたナイフが左目を縦に割く。

痛みに悲鳴をあげるよりも己の意思を口にする。

目が欲しいならばくれてやる。

それで人の命が救えるなら安いものだ。

 

「俺は全部救ってみせる!俺が信じた道はそれだけだ!!」

 

瞑った片目の分も輝く漆黒にアーデンが舌舐めずりをする。

醜く這いつくばらない気高い兄王。

一貫した意思を貫き通す。

痛みにも恐怖にも屈さない。

消えゆく命さえも献身と為す。

側から見れば壊れているのはどちらだか。

 

泡沫の王。

おもちゃはそうでなくては面白くない。

 

「良かったねノクティス様。君のお兄さんに免じて君を殺すのはやめておくよ。」

 

揚陸艇へと戻っていくアーデンはわざとらしく思い出したように告げる。

 

「クリスタルは帝都にあるよ。取り戻しにおいで。これから沢山俺とゲームをしよう。」

 

帝都の方角へ指をさし顔を歪める。

メディウムの潰した目を素手で無遠慮に撫で回し、くり抜く。

悲鳴をかみ殺す仮初めの我が子を愛おしそうに包む。

激痛に意識の薄れたメディウムは尚もノクティスを庇うように覆いかぶさる。

血濡れの手を舐めとってにこやかに笑った。

 

「一つ目のゲーム。少しだけお兄ちゃん借りるね。君があの水神様を倒せたら、返してあげるよ。」

「くそっ!待てよ!!」

 

必死に手を伸ばすノクティスにメディウムが手を伸ばす前にアーデンに阻止されてしまう。

引き剥がされた兄弟はお互いの名を叫び続けた。

 

「兄貴を返せ!!」

「ノクト!リヴァイアサンが!ノクト!!」

 

ノクティスの居場所を見つけたリヴァイアサンがその身に迫る。

飛び去る揚陸艇から手を伸ばし続けても届きはしない。

首に添えられた手に苦しめられ、何度目かわからない暗転に嘆いた。

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