夜空は夕日と共に
「第二回メディウム君の過去を語る会ィー!と結果報告ー!」
どんどんぱふぱふ。
セルフ歓声を入れながら眼帯を弄るメディウムのテンションに反して皆一様に暗い顔だ。
激戦の中で妹を守るために奮闘し感動の再会を果たしたレイヴスとルナフレーナはさらに落ち込んだ顔をしている。
それもそのはず。
つい先ほど鬼ごっこから撤収してきた面々は王族達にお説教をかまし、苦笑いをしたウィスカムからデリバリーの夕食をありがたく頂戴したばかりだったのだがその際メディウムが距離感を間違えてあらぬ方向へ手を伸ばす場面が何度もあった。
本人は笑いながら軽く謝るがそも片目を失った理由はルナフレーナと帝国から妹のためルシス側へと付いたレイヴスを守るためだ。
追加要求であったノクティスの命への対価でもある。
責任を感じるなという方が無理な話だった。
「だがその前に。この眼帯について説明が必要だな。」
惜しげも無く眼帯を外したメディウムに皆一様に目を背けそうになるのをこらえじっと見つめる。
ノクティスの話ではそこに眼球は無いはずだ。
しかし、開かれた片目を見た瞬間全員の顔が驚愕に染まる。
そこにはしっかりと焦点の合った橙色のような金色のような夕日色に染まる眼球があったのだ。
「じゃじゃーん!お目々バッチリでーす!」
「すっごーい!オッドアイだぁ!」
「いや感心するとこそこじゃねぇよ!?これ義眼じゃねぇよな!?目の前でくり抜かれてたよな!?何がどうなってんだ!?」
「へへーん。天才魔法使い様に不可能はないのです。ぶっちゃけなんで有るのか俺にもわからん。」
大はしゃぎのプロンプトは置いておいて、全員が眉を寄せる。
義眼は眼の組織を守るために使う医療器具で稀に動かすこともできる高性能なものがあるらしいが見えるわけではない。
それがバッチリしっかり動いていてよく見えるというのだから義眼ではないのは確定だ。
つまりこれは本物の眼であり、メディウム自身の体が再生した眼球である。
なぜ色がディザストロの色なのかは人体の神秘、否、魔法の神秘。
誰に聞いても答えの帰ってこない不思議現象である。
「カッコイイー!」
「だろー!でもこれすっごい怖がられたから普段は隠す事にしました。」
「怖がられた?」
「昨日街を歩いたんだけどね?」
は?とイグニスが威圧を放つ。
出歩かないように部屋のドアを見張っていたのにいつの間に外に出たのか。
だが無許可外出への威圧は軽くスルーされた。
メディウムが言うには起き上がったときにはカメリアからと書かれた手紙と眼帯がベッドサイドに置かれていた。
イグニスが来る前に鏡を確認し眼があることに驚いたと共に己の手に握られたメモを見て納得したのだと言う。
"魔法の神秘"と書かれていた時点で眼のことを指していると推測し、カメリアではなくアーデンが書いたことが察せられた。
鏡に映るのはアーデンと同じ色の瞳。
最初は自慢してやろうとウキウキワクワクだったがあえてびっくりさせるために眼帯をつけ、起きたところを確認しにきたイグニスには見えないと報告したのである。
眠っていたいと嘘をついて部屋を出てもらい、自分は窓から復興中の街へと逃走。
遊び場を失って意気消沈していた子供達を見かけ共に遊ぼうと声をかけたのだと言う。
「子供たちはこう言うかっこいいの好きだろーなーって片目見せたら怖いって泣かれちゃって…ガチで傷ついた…。」
「もう少し大きくなったらきっと好きになってくれるよ。具体的には中学二年生ぐらい。ノクトとか好きそうだよ。」
「プロンプト…そうだよな…まだ幼ずきたんだよな。」
「それ暗に俺が中二病って言いたいのか?」
よよよよ…なんてわざと崩れるメディウムをそれこそわざとらしく支えるプロンプトの三文芝居に突っ込みを入れて、理由はわかったと頷く。
つまり小さい子供に怖がれるのが嫌なために隠すと言う。
オッドアイを晒すより眼帯をしていた方が幾分かマシなのだとか。
おそらく子供以外にも恐れられ、気味が悪いと避けられたのだろう。
ルシス王国の兄王だと分かっていても距離を取られたりもしただろう。
それを怖がられたくないの一言にまとめられるメディウムの心は強い。
眼帯を元の位置に戻し話が進む。
「今回の一戦はそれぞれの場所でそれぞれの問題が起こったと思う。まずは戦後処理が先だ。それぞれの報告を王に。」
一瞬で家臣の顔となったメディウムが予め決められた順番通りに報告を促す。
一番手は問題が少なかったグラディオラスとプロンプトだ。
「作戦開始後からずっと避難誘導をしていた。リヴァイアサンがヒラキにされる頃にノクトのとこまで合流できた。すでにその場にほとんどのメンツが揃ってたな。そのあとはイグニスに聞いてくれ。」
「俺は途中でノクトをリヴァイアサンまでデリバリーした!そんでそんで適当な場所に降りてなんとかグラディオと合流したよ。」
当たり障りのない報告である。
簡潔にまとめれば最初の指示である避難誘導の完遂後ノクティスの元へ走った、というわけだ。
プロンプトは途中イレギュラーを挟んだが無事だったようなのでよしとする。
二人とも目立った怪我もなく彼等とぶつかった魔導兵はことごとく破壊されたとか。
次にイグニス、レイヴス、ルナフレーナが口を開く。
「俺たちも避難誘導をしていたが途中カリゴに出会い、一戦交えることになった。…レイヴス…が助けてくれたがな。」
「ふん。我が王の命でなければ放っておいたが致し方なく手を貸した。その後二人でルナフレーナとその馬鹿王の下まで馳せ参じたわけだ。」
「メディウム様、申し訳ありません…メディウム様が連れさらわれた後ノクティス様のお側におりました。皆様が救出に来てくださるまでタイタンが帝国から私達を守ってくださいました。」
イグニスは途中ニフルハイム帝国准将のカリゴと衝突したようだがあらかじめ見かけたら手を貸すよう厳命していたレイヴスと共に切り抜けたようだ。
目の前でさらわれたにも関わらず呆然としてしまっていたルナフレーナの謝罪を手で制し、タイタンによる王と神凪防衛を聞いた。
オルティシエ自体の被害は甚大だが復興不可能なほどではなく、人々は皆無傷だ。
儀式はおおよそ成功と言えた。
概要が理解できたところで前々からうずうずしていたノクティスが手をあげる。
王なのだから好き勝手発言しても良いのに律儀な奴である。
「もう突っ込んでいいか?」
「どうぞ?」
「なんでレイヴスが当たり前のようにいるわけ!?しかも兄貴の護衛ポジション陣取って!」
「我が王の護衛たり得る人材が俺しかいないからだ。それともなんだ。守られるべきお前が兄の護衛を名乗り出るとでも?」
ぐっと押し黙るノクティスの前にグラディオラスが立ち、レイヴスが椅子から立ち上がって威嚇するように鼻で笑う。
喧嘩っ早すぎる。
元気があるのはいいが大人しくしていてくれ。
「レイヴス。座りなさい。」
「しかし我が王よ。」
「貴様の耳は飾りか?」
鋭い眼光に睨まれ静々と座る。
グラディオラスも一瞬たじろいだが、大人しくノクティスの隣へと座り直した。
彼は仕事をしただけなのだが少し脅かしてしまったことを詫びるように目を伏せておく。
「レイヴスは俺の護衛を名乗り出てくれたからそのまま採用した。幼馴染でもあるし気心知れている。」
「俺はレイヴスを信用しきれない。」
ノクティスの言葉に気を悪くするでもなく小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
煽るなと肩を軽く叩きなぜ自分に忠誠を誓っているのかの説明をしてやれと促す。
この話はルナフレーナも知らない。
「メディウム様はニフルハイム帝国によるテネブラエ侵攻でお母様を救い、処刑されそうになったフルーレ家の立場を確立してくださった恩人だ。恩を仇で返すような事はしない。」
今までの所業は謝罪しない、と付け加えてレイヴスはメディウムに傅く。
自分に仕えるなど馬鹿も休み休み言ってほしいものだがメディウムの命令を聞いてくれるならば自分の身も守れて一石二鳥だ。
何より彼は強い。
今後の旅は帝都で行われるし地理を知る彼は大いに活躍する事だろう。
テネブラエ侵攻でのフルーレ家救済の話はディザストロの手柄となっている。
先日カメリアから同一人物だと聞いたルナフレーナは合点がいったように祈るような体制をとった。
「ディザストロ様がメディウム様と同一人物なのであれば私にとっても恩人です。兄も私も思いは同じのはず。ノクティス様。どうか信じてはいただけないでしょうか。」
「ルーナ…。」
ルナフレーナも援護に入る。
兄の行動は一貫して自分のためか恩人のためかだ。
性格に難があれど戦力になるのは大きい。
イグニスやグラディオラスも同じ気持ちなのか右も左も分からないプロンプトと共に王の決定に従うつもりのようである。
うーんと悩んでしまったノクティスに向かってメディウムは提案をした。
「まあまずは俺の二十年の話聞いてから考えるでもいいんじゃないか。長い話になるし。」
「ああ。そうする。決まりそうもない。」
「よしきた。じゃあメディウム劇場といきますか。」
はじまりはじまりーと紙芝居風に茶化しながら思い浮かべるのは忘れもしない遠い日の記憶と胡散臭いおじさんが語った出会いの日だった。
メディウムがアーデンと出会うのは必然だった。
この世界を傍観する神々が手引きをしたのだから当たり前と言われればそれまでだろう。
しかしメディウムもアーデンも野獣が
言葉にするのならば"運命"と表すのが相応しいほど互いに衝撃を持った。
本質が違うのに材質が全く同じような、まるで己の半身かと疑うような、そんな感覚。
共にあることが当たり前で共にいなければぽっかりと穴があきそうなほどパズルのピースのようにピッタリはまる。
ただの興味半分で真の王の顔と兄王子を見にインソムニアへ向かっていたアーデンは目的も忘れてその子供を、メディウムを連れ帰ることにした。
道中の飛空挺で幼い子供に問い質せば、この子供がその兄王子であり自殺未遂からバハムートとの関わりもぽろりとこぼした。
何年かに一人現れる"贄"の使命を持った子供であることもぽそりと呟いた。
興味なさげに使命を聞き流したが今までその使命を持たされた子供は散々弄んだ後ポイ捨てするか殺すかシガイにした記憶しかない。
贄に差し出されてもムカつくだけな上によく知りもしないで自分を糾弾する者達などそれで十分だと思ったからだ。
ではこの子供もそうするか?と聞かれれば間違いなく否と答える。
これほどまでに興味深い"生き物"は保護し庇護し育てて玩具にして長らく緩やかに様子を見ながら死なず壊さず戯れたほうが面白そうだった。
今までのように満足のいくまで壊すのでは勿体無いと思うほどアーデンはメディウムに興味を持ったのである。
故にアーデンは子供が逃げないように首輪をつける必要があると感じた。
しかし今までの贄のようにお遊びの契約書にサインをさせても面白くもない。
素直そうなこの子供をおもちゃにするにはもっと幼稚で縛り付けられないように見えて根深く残る鎖がいい。
見えない約束に縛られた悲劇の王子様は酷く甘美な果実の如き上質な玩具となるだろう。
考え込んで黙ってしまったアーデンを見てメディウムは無表情を崩し疲れたように揚陸艇の冷たい金属の中でも端に座る。
バハムートの言うように首尾よく進んだのは良いとしてこれからどう扱われるかはこの人間…否、シガイの采配による。
殺傷与奪はアーデンの手にあり、自分は出荷される前の子羊だ。
粗悪な牧場でろくな扱いを受けないか屠殺されるか選ぶ権利すら与えられない。
それにしても、とアーデンの顔をまじまじと見る。
ニフルハイム帝国建国の歴史を辿ればわかることだが神話の時代に存在した炎神イフリートを王とするソルハイムを人間が乗っ取り、滅ぼされたりしながらもなし崩しで建国された機械文明の発達した国こそがニフルハイム帝国だ。
自らの温床に侵略国家選んだシガイの王。
侵略者と言う意味ではこれほどにないほど似合う国を選んだものだと拍手を送りたい気分だ。
こちらの視線に気づいたのかアーデンは金のような橙の瞳をこちらに向ける。
ギラギラと獣かと疑うほどの鋭い眼光がいいことを思いついたとばかりに目尻を下げる。
あれは何か悪いことを考える人の目だ。
「ねぇ。」
ゆっくりと近づいてくるアーデンの思考にはある噂が浮かんでいた。
なまっちょろいルシス王家は腐っても王家なのだと思わされる生まれた子供にはつらい現実。
兄弟が出来てしまい弟が優秀だった場合の兄の結末。
兄王子は父王と妃に疎まれている。
最初に聞いた時はかわいそうな子だと鼻で笑ったと同時に自分と同じ捻くれ者に育っているかも知れないと興味が湧いた。
その噂が正しければ事実この子供は何かしらの暗い思いを抱えている。
この子供を。
兄王子を。
メディウム・ルシス・チェラムを。
真の王から奪ってしまいたい。
そうだ。
そうしよう。
あの愚鈍なルシスなど捨てて。
侵略などする傲慢なニフルハイム帝国へ。
敵とするシガイの軍門へ。
きっと真の王は面白い顔をしてくれることだろう。
あの時自分を処刑した。
弟のように。
薄ら笑いを浮かべて抵抗もしないメディウムの手を取ったアーデンはまず見えない首輪をかけた。
「俺と家族になろう。」
「…は?」
呆然としたメディウムを置いてニフルハイム帝国でアーデンの子として戸籍を作ること、衣食住を困らない程度に提供することを約束した。
王族に必要な教育以上を受けているのは目に見えてわかる少年に仕事が手伝えるほど優秀になる教育を施すことも誓った。
ジグナタス要塞クリスタルルームのすぐそばにあるアーデンの居住区に大人になっても住めるメディウムの部屋を設けることも提案した。
広さは一般的な家庭ほど。
二階建てを平家にしたようなものだがむき出しの鉄骨の部屋が嫌なのであればフローリングにだって大理石だってできる。
だから。
「俺が父親で君が子供。君は何不自由なく生活できる。俺はいずれ仕事がはかどる。何一つ悪いことないでしょ。」
「待て。いや待て。どう聞いても俺にメリットしかない。名前だって誤魔化しようがない!」
「新しくつければいいのさ。」
絶句してしまった子供への名前はもう決まっている。
あとは彼に聞く覚悟と受け入れる了承があればこと足りる。
小さな頭で様々な可能性を考えているようだが知識も経験もない温室王都育ちの子供がアーデンのドロドロの思惑に気付くはずもなく。
改めて受け入れるしか自分に選択肢がないことを悟って子供にしては強すぎる力を宿した目をアーデンに向けた。
「そこまでするって約束させて対価が"はい何もありません"ってのは俺自身が信用できない。俺はあんたの贄だからあんたに誓う。」
立ち上がった少年はしゃがんだアーデンと全く同じ目線だ。
小さな体で己の運命を全て受け入れている。
なんとも気高き兄王子は自らを糧として新しい何かを掴みとろうとする。
自己犠牲の自己満足。
人間の業を振りかざして自らを縛り付けている。
この子供は自分の命をなんとも思っちゃいないのだ。
「他の何を犠牲にしてもメディウム・ルシス・チェラムは未来永劫アーデン・イズニアを裏切らない。誓うよ。忌々しいけど神でも王でもなんでも名を騙って。」
なんとも欲深い自己犠牲か。
なんとも美しき自己満足か。
なんとも儚き愚かな王子か!
この子供は知ってか知らずかメディウムから何もかもを奪おうとした男に抵抗しないと誓ったのだ。
全てを受け入れ全てを差し出すと言ってしまったのだ。
口約束なんぞ守られる方が少ないのにこの子供は本当に未来永劫自分を裏切らないと確信してしまう。
ハッとして顔を胡散臭い笑みで塗りたくる。
悦びを顔に出してはいけない。
この子供はこれから自分の家族として長く、長ーく縛り付けるのだから。
まだまだたっぷり遊ぶ時間はある。
悦に浸り、歓喜するのはそれからでいい。
「じゃあ、君に名前を与えよう。」
ディザストロ・イズニア。
ルシスに厄災をばら撒き己が厄災となりいずれ破滅する愛しい愛しい哀れな我が子。
借り物のイズニアの名前で縛り付ける遠い親戚の子供。
かの素晴らしき誓いに敬意を評して君にもう一つ、特別にいいものを贈ろうと思う。
「君を一人きりにはしないよ。寂しくなったら俺の名前を呼んで。」
いつだって駆けつけてあげるから。
そこからメディウムからディザストロとしての生活が始まった。
はじめの何年かは監禁による高度な教育だったが不自由はしなかったし一般家庭のような生活ができた。
監禁が終われば名前だけ学校に在籍していることにしてアーデンについて回った。
わがままだって言えたし大抵の要望は通してくれた。
アラネアと出会いビッグスとウェッジにいたずらを教わってテネブラエ侵攻の後レイヴスと親友になった。
年に一度の帰省だって望めば時間調整もしてくれた。
厳しかったのに甘やかされて育ったと思えるほどたくさん目にかけてくれた。
そして何よりもディザストロが、メディウムが嬉しかったのは。
名を呼べば、いや呼ばなくても想えば。
何度だって駆けつけてくれたことだ。
「これが俺と育ての親の、アーデンの出会いと二十年。」
長く語って疲れたようなメディウムはゆっくりと近くのベッドにもたれ込んだ。
想像に難くない悲惨な拷問のような日々や人とは思えぬ非道は一つたりとてなかった。
寧ろ大事に囲われていたような。
王城で育ったノクティスよりも愛に溢れて育てられたような。
もしやニフルハイムの技術で記憶を塗り替えられているのでは?とハラハラしたがレイヴスにこの目で見てきた故に嘘ではないと否定された。
思っていたものとは明らかに違う。
聞いていた面々はメディウムがアーデンを慕う理由はなんとなく理解できた。
硬く強い絆よりも強固なもので二人は親と子は繋がっているのだろう。
それが世界の定めにより歪んで捻れてしまった。
守るべき真の王がノクティスで討つべきシガイの王はアーデンだ。
クリスタルを取り返し光耀の指輪の力を持って歴代王と共にシガイの王を討ち果たす弟。
二千年余の恨み辛みを抱えて奪いながら苦しみながら歩を進める父親。
どちらを取るのかと究極の選択を迫られているメディウムの苦悩は計り知れない。
ノクティスは唇をかんだ。
自分が結婚式のために旅立っていたお遊びの頃から王都を蹂躙したニフルハイム帝国との戦いになり、このオルティシエで世界の闇との戦いに変わった。
全ての成り行きを裏からも表からも見守っていたメディウムは幾度も辛い思いをしたはずだ。
自分がその立場に立たされたら全身をかきむしって叫び出したいほど狂ってしまいそうだ。
それを二十年も耐え続けてここに立っている。
茨の道だと知りながらも強き信念を貫いたまま。
「俺はあの人を裏切れない。国を、王都を滅ぼした時のように命令されたらお前らにも剣を向ける。」
動揺の声は出なかった。
メディウムならそうするだろうと誰もが納得したからだ。
「言い訳なんかしない。約束の言い出しっぺは俺だしな。だからその時は。」
お前らで俺の運命を決めてくれ。
その時が必ず訪れると信じて疑わないメディウムの言葉を全員が受け入れた。
誰も否定と賛同もしない。
ただそうすると頷いた。
空気を入れ替えるようにパンっ手を叩く乾いた音が響きレイヴスの処遇をどうするか改めてノクティスに問うた。
心は決まったようでノクティスはまっすぐレイヴスを見る。
「兄貴とルーナをよろしく頼む。」
王と認められないであろう自分たちを守るのではなく恩義を感じているかメディウムと妹のルナフレーナを守るように頼んだ。
お互いにとってそれが最良の選択。
レイヴスの力がこちらで必要になったらその時は別に頼めばいい。
ふんっと鼻で笑って当然だとそっぽを向いたレイヴスに皆苦笑いを浮かべこれからの話をすることにした。
なかなかに大人数になった面白パーティーはこのまま進むのだ。
「オルティシエから列車を使って最後の王の墓へ行く。その後はテネブラエに寄って最後に帝都グラレアだ。」
気を抜くなよ、と発破をかけながら出立は二日後と決めその日は解散となった。
各々が部屋を出て行きノクティスとメディウムだけになった場所に静寂が訪れる。
兄弟が何を語る必要もない。
ただそうして二人並んでいることに意味があるのだから。
暫しそうして窓から吹き込む潮風を感じていると不意にメディウムが一本の剣を召喚した。
アーデンから受け取った父王の、レギスの剣だ。
ノクティスは何も言わなくとも傅いてその剣を賜るように受け取る。
儀式のような光景の中でいつの間にか手にあった金色のネックレスをノクティスの首にかけ、さらに王の証である王冠を頭につける。
皆を集めて話し合う前にこの一連の行動は決めていた。
レギスの剣を渡そうとしたところノクティスが王になる覚悟を示すためにそうしたいと願ったからだ。
自分よりも王にふさわしいその人から渡される王位と言うものは重く辛くそれでいて誇りに思えるものなのだと。
「第百十四代ルシス国王。ノクティス・ルシス・チェラム。」
すっとメディウムの夜空のような美しき黒が光に照らされる。
日が落ち始めた夕日に反射して星を映しているようだった。
もう王は迷わない。
犠牲も過酷な運命も覚悟の上だ。
全部揃えて仲間に支えられながら前に進む。
まだ何かを抱え込む兄がいつか全てを語ってくれる日まで。
「俺は、兄王はいつまでもお前の味方だからな。」
敵の味方であり自分の味方でもある。
矛盾をつくような野蛮なことはしない。
兄が決めた選択肢を王は受け入れた。
※アーデン視点で語られる出会いの話を何故主人公が知っているのか。
それは後にその時の気持ちを打ち明けてくれたからです。
「うわなんだこのおっさんきもっ!」
とか聞いた時に思ってしまった主人公ですが大人なってそれがアーデンにとっての家族に求める形なのだと知るのです。
今語る時は自分もそんなように求めていたのかもしれない、なんて付け加えながら弟達に話をしたのでした。