FFXV 泡沫の王   作:急須

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Chapter12 自分という存在
転落


再び駅まで戻ってきた一行は帝都行きの列車に乗り込む。

レイヴスの要望もあって、テネブラエが次の目的地だ。

念願の帝都グラレアまで目と鼻の先。

四人席のボックスを二つ取り、いつも通りレイヴスと向かい合ってメディウムが座った。

テネブラエまでならばカルティナカ駅から一日とかからない。

 

流石に疲れた一行の中で写真を撮りたいと座っていられなかったプロンプトが列車内を探索しに席を立つ。

全員でその背中を見送り、眠気に誘われるままノクティスは眠りについてしまった。

年上四人が苦笑いでここから先の話を始める。

 

「テネブラエに着いたらどうするんだ。」

「正直どうなっているかわからん。レイヴスは今脱走兵扱いになっているはずなんだ。もしかしたらテネブラエも何かしらの処置をされているかもしれない。一先ず行ってみる価値はあると思う。」

「お母様が居ればフェネスタラ宮殿の者達は大丈夫だろう。しかし心配なものは心配だ。」

「先代の神凪はレギス様が幼少の頃から良くしてもらっていると聞く。何事もないと良いのだが。」

 

心配そうなイグニスにレイヴスが深く頷く。

先代の神凪は決して弱くはないが強くもない。

銃器を持った帝国兵の軍勢には劣勢となるだろう。

そうなる前に辿り着ければ良いのだが。

こればかりは祈るしかないことだった。

 

「行って見なきゃわかんねぇだろ。未来の王妃のためにも、心配事は少ない方がいいぜ。なぁ。」

「グラディオラス。死にたいなら素直にそう言え。」

「どうどう。落ち着け。」

 

グラディオラスの茶化しに抜刀しかけた目の前の狂犬をしっかり繋ぎ止め、席に座らせる。

家族への愛が強いのは良いことだが仲間を切らないでもらいたい。

ただでさえ戦力が少ないのに。

 

はぁ…と重くるしい溜息をついてぐったりと椅子に寄りかかったメディウムに全員が顔を見合わせる。

ノクティスが眠っているからか随分と気を抜いているよう。

珍しい脱力っぷりだ。

 

「何か心配事か?」

「まあなぁ。」

 

窓の外に視線を送り、外の雲を見る。

ここにきて異様なほど真っ黒な空が帝都から伸びてきているように見えた。

前触れを通り越して侵食に近い空が不安を更に駆り立てる。

 

あのタイミングで。

あの場で。

あの言葉。

我等が宰相様は一体いつ仕掛けてくるつもりなのだろうか。

いつ頃、ちょっかいを出して来るつもりなのだろうか。

 

 

ーー不安が不安を呼び、その予感は数分で的中する。

 

 

ガタンゴトンと揺られる列車内探索から戻ってきたプロンプトを見て固まる。

魔力の残滓を感じ、その魔力が己でもノクティスでもない事を察してしまったからだ。

青いはずの瞳が金色のように見え、目が合った。

確かに、その目線が合ったのだ。

 

「どうしたの?メディ。」

「あ…いや。何でもない。」

「そっか。ああそうだ!二号車両の方で面白い景色が見れるよ。"一人で"見に行って来るといいよ。」

「….そうか。それはとても面白そうだな。」

 

素直に立ち上がり、二号車両へ向かおうとするとレイヴスに支えられた。

しかしその手をそっと下ろさせる。

尚も付き従おうとする忠実な護衛に首を振った。

何かを察したのかそっと引き下がり、険しい顔で送り出してくれたのを横目に二号車両を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

「ノクト!ノクトッ!起きて!!」

「んあ?なんだ?」

 

必死そうなプロンプトに揺り起こされ、心地よい微睡みから強制的に覚醒したノクティスが瞳を開ける。

周りにはレイヴスもグラディオラスもイグニスもメディウムでさえもいない。

プロンプトと二人っきりの状況に首を傾げた。

 

「他の奴らは?」

「帝国軍が列車に攻めてきたんだ!グラディオとイグニスは先頭車両でッ!?」

 

言い切る直前にけたたましい音の爆音が響き渡る。

どこかの車両が爆破されたようで列車が停車したようなブレーキ音も響く。

急な停車につんのめったプロンプトを支えノクティスが先を促す。

 

「兄貴とレイヴスは?」

「メディは二号車両、レイヴスはメディを追いかけたよ!」

「最初から一緒じゃなかったのか!?」

「うん。でもきっと合流してる。みんな前方車両に避難してるんだ。俺は後方車両で逃げ遅れた人がいないか見てくる!ノクトはメディとレイヴスのところに!」

「分かった!」

 

全力で前への駆け抜けるノクティスの先に何人か走る乗客が見え、窓には飛来する揚陸艇がいくつも見える。

一体誰がこんな襲撃を。

自分達が乗っていた所為で罪のない乗客が何人死に何人怪我を負ったのだろうか。

責任の重さに唇を引き締める。

それでも体は前へと進む。

止まらないと約束した兄のために。

 

次の車両への扉を開けた時。

前方へと走り続けるノクティスの数歩前。

"元凶"と思わしき人物が悠然と立っていた。

 

「あれ。ノクト。起きたんだ。」

「てめぇ…ッ!!」

 

兄を二十年も苦しめ続けた元凶。

死にかけた兄を救ってくれた忌まわしき恩人。

自分達の国を壊した張本人。

倒すべき、敵。

 

「アーデン!!テメェッ!!」

「アーデン?何を怒ってるのノクト。アーデンなんてここには…。」

「ごちゃごちゃうるせぇ!!」

 

心底意味がわからないかのように狼狽えるアーデンにエンジンブレードで斬りつける。

こいつのせいで何千と何万と言う人が死んだ。

こいつのせいで国王たる父親が死んだ。

こいつのせいでメディウムは平和な未来で生きることを諦めた。

 

「なにもかもお前の所為で!!」

 

振り抜いたエンジンブレードから逃げるようにアーデンは前方車両へと走る。

追いかけるために何度もシフト魔法で肉薄するが、その度に上手くかわされてしまう。

 

「逃げんな!」

「待って!本当に!話し合おう!絶対おかしいって!」

「今更なにを話し合うってんだ!!」

 

車両を繋ぐ接続部分の突出によろけたアーデンがまたもエンジンブレードをかわす。

痺れを切らせたノクティスが無茶苦茶に振り抜くと、急いでまた前方へと逃げた。

締まっていく扉を勢いに任せて掴み、勢い良く開く。

 

その先にアーデンの姿はなかった。

 

「ノクト!」

「…プロンプト。」

 

入れ替わるようにやってきたプロンプトが心配そうにこちらを見てきた。

ゆるく首を振り後方車両に逃げ遅れた人がいない報告と、先ほど見たアーデンについての情報交換を行う。

 

「進んでれば、きっとちょっかいかけてくるよ。それよりみんなと合流しよう。」

「ああ。早くアイツらの安否確認しねぇと。」

 

黒幕を追いかけるにも止まった車両は一本道だ。

周囲はなにもない荒野の中。

逃げも隠れもできない。

ノクティスが乗っていた後方車両から中間まで来た。

仲間の元までもう直ぐだと思った瞬間。

 

激しい爆発音とともに目の前の車両に爆撃。

横へ殴りつけるような凄まじい衝撃に揺られ、座席に捕まって必死に揺れを逃す。

収まった頃に窓の割れた扉を開けると車両に大穴が空き、いくつもの揚陸艇から飛び降りてきた魔導兵に囲まれていた。

 

爆撃の元凶は自爆特攻を仕掛けてくる魔導兵のようだ。

次から次へと厄介ごとが舞い降りる。

休む暇など与えられない。

 

「うわっ!あんな高いところにも沢山揚陸艇が!」

「うじゃうじゃ虫みてぇに集まりやがって…。」

「どうしよう。」

「銃撃ちゃいいじゃねぇか。」

「あっそっか!」

 

いつにも増してトンチンカンなプロンプトの肩を叩き、大穴から一度外へ出る。

ギギギ…と不気味な音を立てて一斉に向けられる赤い視線にファントムソードを纏った。

 

「ソッコーで片付ける。」

 

 

 

 

 

 

 

地上の魔導兵が収まったところで上空の揚陸艇を何とかするべくノクティスは船から船へとシフトブレイクで乗り移っていく。

起動していない魔導兵は爆発する揚陸艇と共にどんどん撃墜されていった。

 

「うわぁあっぶね!」

 

爆発寸前の揚陸艇から逃げるように別の揚陸艇へ飛んでいく。

急いで列車に戻らなければ。

 

ノクティスが上空にいる間に列車は動き出し、最後の一つを落としたと同時に列車の上へと舞い戻ってきた。

 

動く景色の中、風に煽られないようにプロンプトを探す。

まだ列車の屋根の上にいるはずだと探すと、アーデンに銃を向けられているところを見てしまった。

この距離ではシフトブレイクで届かない。

慌てて届く限りエンジンブレードを投げ込み、転がるようにアーデンに体当たりをかました。

 

ーーはずだった。

 

「うわああぁぁぁぁあ!?」

「プロンプト!?」

 

何故か落ちたのはプロンプトの方。

猛スピードの列車から落下した彼はあっという間に見えなくなってしまう。

では先ほど銃を向けられていたのは誰だったのか。

ゆっくりと後ろを振り返る。

 

爛々と輝く橙色の瞳と黒曜の瞳がこちらを見据えていた。

 

「兄…貴…?」

「ごめんな。ノクト。」

 

兄の体がゆっくりと傾いていく。

全身で叫び声をあげてその手をつかむ前に、するりとその体が消え失せた。

空を切る両の手が行き場をなくして虚しく舞う。

 

「ねぇ。いつからだったと思う?」

 

背後に聞こえたあの忌々しい声とともに視界が暗転した。

 

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