FFXV 泡沫の王   作:急須

7 / 111
長いので誤字脱字があるやもしれません。
(短くてもあるけど。)
チャプター間違えとるやんか...修正しました。


それぞれの決意

ノクティス達が王都へと向かう前。

朝日が昇ると同時に王都を抜けたメディウムはプライナの誘導でルナフレーナの元へと車を走らせていた。

日が昇るとともに降り始めた雨にげんなりとした気分になる。

先ほどまで開けていたオープンカーの天井もすでにしまっている。

 

先程、どこへ向かうか明確にするために助手席前に世界地図を広げどこに向かえば良いとプライナに質問した。

すると小さな白い足で、てしてしとハンマーヘッドを叩いたのである。

ルナフレーナは一度そちらに避難している、と言うことなのだろう。

シドニーが匿ってくれていると良いが。

 

 

 

 

 

ハンマーヘッドには早朝にもかかわらずシドニーが立っていた。

そわそわと落ち着かない様子でいたが、プライナを連れて車から降りると肩の力が抜けたように大きく息を吐く。

 

「よかった。無事だったんだね。」

 

プライナに向かっていっているようだ。

 

「俺の心配は?」

「メディも心配していたよ。まさか王都に帰っていたなんて。」

「あ、そこからなのか。」

 

思えばいつもはこのアーデンの車を借りて来て、ハンマーヘッドで給油をしてから王都に向かう。

しかし今回は調印式のことがあったため飛行戦艦に乗ってやって来ていた。

恐らく、ラジオで流れているルナフレーナと王族の死亡説のことで心配していたのだろう。

 

「ここにお姫様が来てないか?プライナのご主人様とも言うが。」

「いるよ。タッカのところでじいじと一緒にご飯食べてる。」

「シドのじいさん美人と朝飯なんてちゃっかりしてんな。流石に歳離れすぎじゃねぇ?」

「メディ...。」

「冗談だよ。冗談。」

 

呆れたようなジト目をされてしまったが、眉間によっていたシワがいくらか和らいでいる。

その様子に幾分か満足である。

 

「俺も飯食いに行く。ついでにお姫様を迎えに。また後でな。」

 

急かすプライナの後を追ってすぐ隣にあるダイナーへと向かう。

シド・ソフィアが昔拾って来た男が、経営しているレストランなのだが味も悪くない。

あの宰相と共に過ごしていると高級品の味もわかるようになるが、どこにでもあるような味が一番好きだ。

 

早朝でほとんど人のいないレストランへと足を踏み入れると、扉から一番遠いテーブル席に二つの影。

店の主たるタッカに軽く手を上げてその席へと向かった。

 

「ご無沙汰しています。シドのじいさん。ご無事で何よりです。ルナフレーナ様。」

「メディウム様!」

「悪運だけは強いやつだな。メディウム。」

 

ルナフレーナからレギスの最後を聞いていたというシドはどこか悲しげだが、いつかそうなると思っていたと首を振る。

最後に一回ぐらい顔を見に出向けば良かった。

そうこぼすシドにメディウムは深く頭を下げた。

 

三十年前に共に旅をしたシドはレギスと喧嘩別れをしている。

その喧嘩自体はすでに和解という決着をつけているのだが王として忙しいレギスとは三十年前から一度も顔を合わせてはいない。

 

しかし、メディウムはレギスの家臣として頭を下げた。

手紙でのやり取りとはいえ親友という存在は王としての責任に追われるレギスを大いに支えた。

主人を支え最後には悲しむ友がいた。

天寿を全うできなくても少しでも良かったと思える人生を送れていたのかもしれない。

 

「それにしてもお前さん、ひでぇ格好だな。」

「...お姫様をお守りするのは骨が折れまして。」

 

襲撃者から逃げる際に所々破けてしまったドレスを脱ぎ、神凪の正装へと着替えていたルナフレーナ。

対する自分はあり合わせのケアルでなんとか治療したは良いが、だいぶ破けた服を着ていた。

これで外を歩くのは憚られる。

これは早めに着替えたほうがいいかも知れない。

 

「シド、唐突で申し訳ありませんがお下がりなどありませんか?」

「その気色悪い敬語をやめろ。服なら作業着でも来てな。レスタルムまで行きゃあ売ってんだろ。」

「私のせいで...。」

「ルナフレーナ様のせいではございません。貴女が無事であるならば何よりでございます。」

 

声には出さないがウェッと顔をしかめるシドを無視し、自分のせいだと攻めるルナフレーナに笑顔で首を振る。

ルナフレーナに敬称をつけるのは一国の王子という立場的にまずいのだが気分的にそうなってしまう。

帝国にいたころはルナフレーナ・ノックス・フルーレ様ということの方が多かったし。

 

「建前はそんくらいにして本題に入れ。飯頼んで来てやっから。」

 

席を立ったシドがさっさとその場を離れる。

タッカと話し始めたのでしばらく戻る気はないのだろう。

シドの座っていた場所に腰をかけ目の前に座るルナフレーナを見る。

悲壮感はかけらもなく使命を果たさんとする顔。

自分と同じ、人の喜びを捨てた者の顔だった。

 

「改めて自己紹介を。メディウム・ルシス・チェラムと申します。訳あって王家から長らく離れておりました。ルナフレーナ様のことはノクティスから聞き及んでおります。停戦はもはやありえませんがご婚約は継続されています。未来の妹君、ということになりますね。」

 

ボフっと音でもなったかと思った。

未来の妹君という言葉に顔を真っ赤にし、もじもじし始める。

前言撤回しよう。

人の喜びを持ちつつ強い信念で使命を果たさんとする乙女だ。

ノクティスにはもったいない女性であろう。

 

「さて、ここからが本題だ。いきなりで申し訳ないが正直に答えてほしい。ルナフレーナ・ノックス・フルーレ。神凪の使命を果たすことを望むか。人として生きるためにテネブラエへと帰ることを望むか。」

 

にこやかな接待は何処へやら。

突如雰囲気の変わったメディウムにルナフレーナは真剣な表情を返す。

 

メディウムという人間をルナフレーナはよく知らない。

ノクティスと行なっている交換日記に時々登場するメディウムという人間は自分の知るレイヴスという兄とは違う、明るく面白く、いざという時に頼れる兄という人物像。

 

しかし目の前に座るメディウムは並々ならぬ冷たさを感じる。

使命というものがどれほど重くどれほど辛いことかを知っている。

それでも果たすことを望むか。

試すような視線を意に介さずルナフレーナはまっすぐと返答する。

 

「神凪として使命を果たすことを望みます。」

「一度足を踏み込めば二度と戻れはしない。それでもか。」

「はい。」

 

意思は固い。

ならばいうことはない、と静かに目を閉じる。

ルナフレーナは強い。

己が使命を告げられた時、世界そのものに絶望した。

クリスタルを恨み、神々を嫌い、王に、父に背を向けた。

 

しかし、ルナフレーナという一人の人間は真っ直ぐと立ち向かっている。

定められたことに真っ直ぐと。

ねじ曲がり擦り切れた自分とは違う眩しさだった。

 

「では、使命を果たすために同行しよう。だが旅をする上でまずはやることが一つ。」

 

それぞれが背負う使命は重い。

ならば少しでも楽しかったと思えるたびにしよう。

美味しそうな匂いをさせる食事を運んで来たシドを指差してニヤリと笑う。

 

「腹ごしらえだ。」

 

もっと大事なことでもいうのかと思った。

そう言いたげなルナフレーナを笑い、シドに礼を言いう。

腹が減っては戦はできぬ。

 

「ほら、腹に押し込め。太るほどカロリーをとれ。何をするにも腹膨れてなけりゃやる気も起きねぇよ。」

 

完全に砕けたメディウムに、置いてきぼりのルナフレーナ。

しかし、すぐに気を取り直して運ばれて来たハンマーヘッドサンドを口に含む。

ふんわりとした食感のパンによく染み込んだソース。

かみごたえがありつつもクセのない肉が絶品の一品。

思わず頬が緩んだルナフレーナに笑いながら言葉を紡ぐ。

 

食事という物は人の三大欲求の一つを大いに満たしてくれる。

 

「食欲、睡眠欲、あと俺は給料!満たせば人間なんでもできる!それと、全部終わったら結婚式を盛大にあげよう。綺麗な花嫁姿、楽しみにしてるぜ?」

 

笑いながら茶化すメディウムにルナフレーナは照れながらも納得したように笑う。

先程はさっぱりわからなかったメディウムという人間がなんとなくわかるような気がした。

ノクティスが言うように、優しく冷たい暗闇を包み込む夜空のような人なのだと。

 

お腹も一杯になり決意を新たにしたルナフレーナはメディウムが乗って来た車に乗り込む。

シドから貰った赤いジャンパーを黒いタンクトップの上から羽織ったメディウムもさっさと出発しようとするがシドに止められる。

 

「おめぇさん、弟らには連絡したのか。」

「ああ、まだしてない。昼頃に仕込みが届くようになっちゃいるがそれだけだな。じいさんとシドニーには悪りぃが黙っといてくれ。」

「たった一人の家族なんだ。早く顔見せてやれ。裏で何やってるかはしらねぇが、何も言わずにいなくなるのだけはやめろ。」

 

何も言わずに消えていったレギスを思わせるような言葉にメディウムは一瞬無表情になる。

その一瞬は誰の目にも止まることなく、苦笑いを浮かべた。

 

「そのうちな。まだその時じゃないだけだ。」

 

まずレスタルムにたどり着く前に幾らか寄り道をして帝国兵の目を欺く。

そして、居場所のわかっている巨神とおそらく祠がある雷神の誓約を済ませるべきだろう。

氷神と剣神は除くとして、その次にはオルティシエに向かう。

 

オルティシエはノクティス達が隠れ港を使うことを考えるだろうからそこに同乗することがひとまずの目標。

寄り道の間に一つやりたいこともある。

 

曖昧な返事でさっさと車に乗り込むメディウムにため息をついたシド。

カラカラと笑い声を上げ、ハンマーヘッドを去っていく赤い車。

これから来るであろうノクティス達とはまた別の使命を果たす二人の旅は、まだまだ長い。

 

 

 

 

 

 

「一つ確認なんだが。神凪について質問してもいいか。」

「はい、答えられることなら。」

 

雨が降り始めた道を、ゆったりと進める。

途中帝国軍が基地を作っていたがルナフレーナを隠す幻術魔法をかけ自分もネックレスをつけたことで顔パスだった。

ルナフレーナは疑問に思っていたが笑ってごまかした。

 

「神々と対話することはとてつもなく大変なことだ。頭が痛くなる人もいる、と言うほどな。」

 

赤毛の胡散臭いおじさんが、人を恨む神様の元へとメディウムを引きずり出したことを思い出して苦虫を噛み潰したような顔で続ける。

 

「では誓約を行う神凪の負担は。どれほどのものなんだ。」

「...それは。」

「俺の予想ではーー生命力そのものを削り取られるはずだ。」

 

隣に座るルナフレーナが俯く。

あの胡散臭いおじさんに神凪についての話も聞かされた。

生命力とは生きる力そのもの。

歳をとって衰え、衰弱死するのと同じように生命力がなくなればいずれ体は弱り眠るように逝くことになる。

どうでもいいがルシス王家に肩入れする気にくわない存在だと嗤っていたが情報は間違いではないらしい。

 

「...一度チョコボポストによるぞ。モービル・キャビンで悪いが今日のところは勘弁してくれ。」

 

すぐに話題を変え、レスタルムに向かう道から逸れる。

何がどうなっているのかわかれば、あとは簡単だ。

兄としてできることをやり遂げよう。

何やら企むように思案するメディウムに俯いたルナフレーナは気づかなかった。

 

 

 

 

時は戻ってメディウム達が車を走らせていた頃。

ハンマーヘッドへと戻ってきたノクティス一行は厳しい顔をしつつも悲壮感のないシドニーの迎えを受けていた。

 

「おかえり。じいじがガレージで待ってるよ。」

「将軍は?」

「用事があるってもう出て行ったよ。その辺もじいじが話してくれると思う。その、なんていえばいいかわからないけど私が言えるのは帰れなくても前へ進めるってことぐらいかな。メディの受け売りだけどね。」

「そっか、ありがとな。」

 

メールに綴られていた前に進めるという言葉を改めてシドニー言われる。

励まされるというより後押しされるような言葉だが、足を止めそうになるノクティスには力強い言葉だ。

レガリアを預け、ガレージへと向かうと懐かしむ顔で金色に輝くネックレスを見ていた。

とても見覚えのあるそれにノクティスはいち早く反応する。

 

「それ、親父の...。」

「次の王の器に渡すつもりだったんだとよ。」

 

誰から預けられたのかは語らないがノクティスへ贈られたものではないのだろう。

別れの際にはすでにつけていなかったものだ。

 

「何も言わずにこれだけ渡されても王にはなれないからお前さんに渡してくれってな。こりゃあ、レギスが結婚した時に俺が贈ったんだ。巡り巡って帰ってくるたぁ奇妙なもんだな。」

 

大事そうに渡すネックレスにはルシス王家の紋章が彫られている。

レギスはノクティスが王の器ではないと思っていたのだろうか。

他の人物に贈られ、シドの手に渡り自分のところにきた父王のネックレスは小さいものなのに重さを感じる。

責任の重さを表すかのような、そんな重さ。

 

「そいつはもう一つある。銀のやつでな。お前さんの母親が持っていたんだが今はメディがつけている。王にはなれない人間がつけるにはもったいないなんていうくせに外しているとこなんて見たことねぇ。」

 

唯一持っていた家族の証はいつも服の下に隠されていた。

捨てきれない思いと捨てなければならない葛藤がそうさせていた。

シドの話に誰が預けたのか察しがついた。誰よりも頼れるあの兄だ。

 

口癖のような言葉。

ーー王になれない。

どんな思いでこれをシドに預けたのか。

ノクティスにはわからない。

文面だけの責任と重みが本物の実感と形となり、手の中で輝く。

 

「メディがなんか仕込んでたんだろ。大体は分かってんのか。」

「...襲撃の目的と帝国の狙いは。最初から、罠だって分かってたみてぇに。親父達は最初からっ...!」

 

何故自分にも戦わせてくれなかったのか。

別れの言葉も言わせてくれなかった。覚悟もさせてくれなかった。

 

シドはノクティスを暖かい目で見る。

レギスの威厳をそっくりそのまま無くしたわがままな王子だと思っていたが、やはりレギスの息子。

家族を大切にし仲間に支えられ信頼される良き王になれるだろう。

 

「連中、城で戦争するつもりだった。だが力及ばなかったってのが現実だ。」

 

変えられない未来であり現在であり過去。

外を見て、ルシスをみてメディウムは勝てないことを最初から理解していた。

それでも戦った。

メディウムは止めなかった。

 

最後まで抗うと王が言った。

どんなに家族だと叫んでも、どんなに失いたくないと喚いても、これは王の決定。

家臣であるメディウムは、止められない。

せめて未来に繋げるための最善の行動をしたのだ。

 

「オレはもう、レギスとは何年も顔を合わせちゃいねえんだ。昔の仲違いが原因でな。顔ぐらい見せに行けばよかった。...一丁前にカッコつけやがって。」

 

作業机に建てられた、少し色あせた写真を見る。

三十年前、帝国と戦いながら旅をしたというメンバーの写真。

グラディオラスの父、クレイラス。若かりし頃のシド。十五歳で旅に同行したコル将軍。

ノクティスと同じ面影のレギス。

 

その隣に所々かけている青年と少女の写真。

十六歳になったメディウムとシドニーが楽しげに笑っている。

 

「...口止めされたが、メディは一人で進んでいる。あいつは今えぐられて、斬り付けられて、殴られて、傷だらけだ。死んでもおかしくねぇのに昔っから足を止めることも誰かを頼ることもしらねぇ。呼び止めても振り向きもしねぇ。」

 

あの時、シドが無理矢理にでもレギスのところに届けていたら。

初めてハンマーヘッドにきた幼いメディウムを思い出す。

シドは後悔していた。

 

迷子のように何もない荒野をただただ走り続ける彼は悪意ある手に何度も傷つけられてきたことだろう。

震えて蹲っていれば、泣きながら引き返してくれば、迎えにきてくれる人は多くいた。

レギスもシドも何年も待っていた。

 

だが彼は足を止めない。

 

メディウム。中間を意味するその名は曖昧のようでおかしな響きだが彼をあらわす言葉。

迷子の子供は決して足を踏み外さない。

光にはならず闇にも堕ちない。

世界の境目を渡り歩き、真っ直ぐと前を見据える。

 

「俺が言えたことじゃねぇし弟に頼むことでもねぇが、見守ってやってくれ。一人で消えちまうなんて、あいつには辛すぎる。」

 

頼りになる兄が血だらけで前に進んでいる。

追いつこうとすれば遠くなる背中に残る傷跡。

時折見せた空っぽの笑顔。

先に進む兄が目を離したすきに消えてしまうかもしれない。

 

その言葉は父親を亡くしたばかりのノクティスに深く突き刺さった。

 

 

 

コル将軍は王の墓所と呼ばれる場所にいる。

 

シドより伝えられ、その場所を目指そうとレガリアに乗り込む。

先程からなにやら心配そうにしていたグラディオラスはハンマーヘッドを出たところで言葉を発した。

 

「イリスと連絡がついた。何人かとレスタルムに向かってるってよ。」

「妹さん、無事だったんだね。」

「市民は将軍たちが避難誘導していたらしい。...本当に王都でやるつもりだったんだな。」

 

彼らにはクリスタルはルシス王家にとって重要なものであり、光耀の指輪とともにあることで魔法障壁が張られていたということしか知らない。

なぜ指輪が重要なのか、なぜクリスタルが欲しいのか。

目的が分かっても理由はわからない。

 

「クリスタル、奪われちゃったんだよね。」

「...返させるし。」

 

父の命を奪い、王都を無茶苦茶にし、クリスタルを奪い去った。

その事実は変わらない。

帝国にたどり着くことさえできないがいつか必ず。

 

金のネックレスを首につけ、拳を固く握った。

 

 

 

 

 

荒野の野営地とは、ハンターたちが一時的に休むための場所。

そこからほど近い場所に王の墓所と呼ばれるものは存在する。

王家が所有する鍵が必要になり、どんな手を持ってしても開けることができず、不可侵の場となっていた。

 

しかしノクティス達が到着した時、扉はすでに開いていた。

中は暗く冷たい墓所の空気とともにどこか神聖な場を思わせる。

そこに不死将軍、コル・リオニスが佇んでいた。

コルはゆっくりと振り返ってこちらを見る。

 

「来たか、王子。」

「王として必要なものがあるって言われた。教えてくれ。なにが必要だ。」

「なにかを聞かされたのか。」

「...兄貴から。次の王を任せるって。」

「あの人はいつも先にいるな...。」

 

電話越しに聞いた何も知らない王子とは違う、王というものを実感し任された責任を戸惑いながら背負っている。

たった数時間の間に大きく変わったノクティスになにがあったのかと目を見開くがメディウムの後押しと聞くと目を閉じて微笑んだ。

 

王の墓所に来る前に要件だけの電話をしたかと思えば、どこかで動き誰かを変えている。

前へ進む彼の動きはいつもどこかで輝くのだ。

 

「教えよう。王に必要なものの一つだ。」

 

一振りの剣を抱えた王の棺の前に立ち、ノクティスを見る。

 

「亡き王の魂に触れることで、ルシスの歴代王の力の一端が新王に与えられる。」

「親父が使っていた力か?」

 

テネブラエを訪れた時にシガイに襲われたあの事件。

怪我で朦朧とした意識の中、透明でありながら青く輝く武器を操りノクティスを守った父王の姿。

 

「そうだ。歴代王の力は他にもある。これらを集め、民を守る力を蓄えて欲しい。」

「民を守る、か。俺は王子じゃなくて民だったのか?」

 

ポツリと言葉が漏れた。

目の前にある力が民を守るために王が持つ力ならば、真っ先に外へと逃がされた自分は民と変わらない。

 

「...陛下もメディウム様もお前に託したいからこそ、そうした。」

「分かってる!!でもっ!」

 

コルの言葉を聞いた瞬間、ノクティスは弾かれたように声を上げ力なく項垂れた。

頬には今までこらえてきたものが雫となって落ちる。

 

「納得できねぇよ...!」

 

分かっていても、納得できなかった。

父は兄を王の器だと認めていた。

王位継承権がないだけで、王族としての力も王家の人間としての自覚もある。

それでも無理だと言った彼を王になど自分には言えない。兄が決めたことに口出しできるほど世界を知らない。

 

だがせめて家族として。

 

「なんで、兄貴も親父も...何も言わないんだよ...。」

 

旅立ちの朝。

家族として朗らかに微笑み、優しい手でノクティスの肩を叩いたレギス。

にこやかに冗談ばかり口にした、心の葛藤も未来への悲しみも隠したメディウム。

言えないものだったのかもしれない。

伝えられないことがあったのかもしれない。

それでも。

 

「いっぱい...話したいこと、あったんだよ...。」

 

二度と話すことの叶わないレギス。遠い場所で振り返らないメディウム。

ノクティスの言葉に三人はかける言葉がなかった。

 

滅多に帰らない兄と多くは語らない父と王子らしくない自分と、いつか三人で笑いながら家族で話せたら。

旅に出る前に、叶わない夢かもしれないがいつか、と話していたことを思い出させる。

本当に、叶わない夢となってしまった。

 

「ーーすまない、王子。」

 

コルは頭を下げる。

 

「なんで将軍が謝るんだよ。」

「あの日、陛下は家族としてお前を送り出したかった。メディウム様も笑って弟を送り出したかったそうだ。俺や王の剣が陛下を守りきればこんなことにはならなかった。俺たちの力が足りないばかりに、陛下を死なせてしまった。」

 

彼らは勝つつもりで戦った。

彼らは全力を尽くしていた。

だからメディウムも何も言わなかった。

ただ一人、最悪に備えて奔走した。

王の敗北はいかなる理由があろうとも、仕える者は責任を感じなければならない。

守るべきだと誓ったのならば、尚更。

 

ーー見守ってやってくれ。ーー

 

沈黙の中シドが言っていた言葉が浮かぶ。

王都の戦いでは見守ることさえ許されなかった。

それはなぜか。

 

自分が守られる側のままで力などなかったからだ。

今までにいる兄の隣に立てる力が欲しい。

先で自分のために傷つき続ける兄と並べるだけの力が。

王として認められ家族が守らんとしたものを守れる力が。

 

居なくなってしまうかもしれないという言葉は棘となってノクティスを突き刺すと同時に力となって心を動かした。

 

ノクティスは王家の棺に手を伸ばす。

棺が抱えていた剣が空中に浮かび上がり、迷うことなくノクティスに突き刺さった。

刃はノクティスに刺さった瞬間に弾け、ノクティスを守護するように彼の周りを回る。

 

王の覚悟とは言えないかもしれない。

けれど誰かを守りたいと思えるならば今はよし。

そういうようにくるくると周り、剣は弾けた。

 

「ノクト!大丈夫!?どっか痛いとかない!?」

「変な、感じだ。」

 

いきなりの出来事に驚いたプロンプトが心配そうに言うがノクティスは生返事をする。

溢れる力が大きい。

一つ、力を借りた。

自分のものではない力にたしかに認められた感触。

 

「これからお前たちは王家の力を集める旅に出るんだ。国を取り戻すならばそれしかない。」

「ああ。」

「まずは近くのキカトリーク塹壕跡を目指す。力を得る王家の人間を試す意味合いがあり、大半が危険な場所にあるということらしい。」

 

これからの旅の目的が定まる。

どれほど集めればいいのか、コルへとイグニスが問う。

 

「王家の力は全部でいくつほど存在するのですか?」

「メディウム様が知っている限りではルシス国内に十箇所、国外に一箇所だ。」

「兄貴が?」

「あの方が外の世界に出たのはお前とは違う使命のためだ。その過程で王家の力を手にしている。」

「王家の力は同時に二人もてるのか?」

「偽物だ。」

 

コルの言葉に全員が首をかしげる。

偽物、とはどういうことなのか。

 

「メディウム様が語らない出来事の一つだ。彼の方は使命も口にはしない。」

「知ってるのでいい。教えてくれ。」

 

ノクティスの真剣な顔に、コルは一度目をつぶり重々しく口を開く。

 

「メディウム様は、正式に王家の力を持っているのではない。王家の武器を模倣した魔法の剣を自らの力として振るう。」

「魔法で作った偽物ってことか。」

「そんなことが可能なのか...?」

 

グラディオラスとイグニスが渋い顔で考える。

荒技に近い方法だ。

歴代王の力自体、扱えるのは王族だけ。

察するに恐ろしいほどの力と共にとても扱いづらいものだろう。

それを魔法で模倣するなど

 

それは、王家の力ではない偽物。

何年か前に一度ルシスに帰ったとき、力を見たいと手合わせを頼み込んだ。

その時にメディウムが使用した赤い武器が目に焼き付いている。

 

意のままに操られ舞う、紫に輝く十一の武器。

一つ一つの特性を理解し剣技のみで逃げ惑うコル将軍を訓練場の壁際まで追い詰めた。

まさに暴力といって差し支えないその力は、無理な魔力消費をするため振るうたびに彼の体を蝕んだ。

 

治療のために脱がれた上半身に残る痛々しい痣や傷跡、左半身から火傷の跡が心臓に向かって伸びていた。

この火傷が全身に広がった時、力は消え体も死ぬ。

身も残さず燃え尽きて灰になるだろ。

力を無理矢理借りる代わりに命を差し出した。

その決意は並のものではない。

 

「…俺はこんなに簡単に手に入れたのに。」

「メディウム、様はどうしてそこまで…。」

 

プロンプトの疑問はコルも知りたいことだ。

ノクティスは兄が王になれないと言っていたのはこれか、と激しく後悔する。

何か考えがあるのだろうと今まで深くは聞かなかった。

兄が教えないならば知らなくていいことなのだろうと。

 

これは知らなくていいことではない。知らなければならないのに兄が隠してきたことだ。

民を守る力を扱えないから王にはなれない。

だが兄は何かを守るために命を差し出してまでその力を手に入れた。

 

「俺が伝えられるのはここまでだ。知りたいのなら直接聞け。メディウム様は先でお前達を待っている。」

 

早く、会わなければならない。

会ってきちんと話さなければならない。

なにも言わないまま消える家族なんてもうこりごりだ。

 

「将軍、そのキカトリークってとこはどこにある。」

 

真っ直ぐとコルを見るノクティスは強い意志を宿していた。

 




裏設定。
赤は胡散臭いおじさん、青はルシス王家。
間は紫では!?という安易な考えと共に王家の指輪をはめた時の青紫色の炎を参考にしました。
蝕んだ跡が火傷なのもそのせい。
詳しくはエピソード・イグニスか映画のキングスレイブを見よう。(販促)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。