FFXV 泡沫の王   作:急須

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戦況

「ほーら、思った通り。人類の味方をしたって良いことなんて何一つありはしない。君はシガイ側なのになーんで人間の味方なんかするかな。無様で愚鈍で救いようのない痴れ者達だよ?」

「生まれた責任がある。剣を取った義務がある。ここに立つ理由がある。戦うための覚悟がある。生きる術がある。理由はこれだけで十分だ。」

「ほんと。馬鹿者だよね。」

「どうとでも言え。失踪しやがった黒幕野郎。」

 

ルシス王国王都インソムニア市街地。

轟々と炎が揺らめく中、王と代理が邂逅を果たす。

インソムニア攻略作戦開始から一年。

アーデン・イズニアとメディウム・ルシス・チェラム、実に四年ぶりの再会となった。

 

町中に張り巡らされ、バリケードと言えるシャッターが多く点在する地下鉄。

そこを拠点とする王の剣達をつき従えず、メディウムは一人外へと出た。

王城方面は強力なシガイが多く、市街地側には雑魚が蔓延っている。

比較的容易な市街地を攻略すること一年。

徐々に活動範囲を広めている最中に起こった思わぬ出会いだった。

 

「あんた、こんなところで何してるんだ。」

「さ、ん、ぽ。メディウム君こそなんでこんなところにいるの。」

「掃討作戦中だ。数年単位の大仕事だよ。」

「へー。外の情勢なんてこれっぽっちも興味ないけど、わざわざインソムニアまで来るってことは余裕なのかな?」

「…ジリ貧だ。」

「ま、君の姿みてればわかるよ。派手に使われてるね。」

 

市街地に置かれたベンチの上でアーデンは寝転がる。

人間だった頃は一つの怪我で騒いでいたのにシガイになった途端放任主義ときた。

どうせ自己再生するから気にしても仕方がないと思っているのだろう。

 

「神凪の一族はもう力がほとんどなくても、君が生きているから三十分ぐらいは黄昏の時が残るよ。良かったね。」

「何にも良くねぇ。三十分じゃあなんもっ…ゲホッゲホッ…。」

「え。なに突然むせてるの。」

「久々にっ…こんな、喋った…ゲホッ…。」

「あーもー、ほら、座りなよ。」

 

突然むせたメディウムを宥め、先ほど座っていたベンチへ座らせる。見た目よりも明らかに強靭になったはずの肉体は酷使され過ぎて形がぐちゃぐちゃだった。

アーデンだからこそ分かる。

シガイが再生され過ぎて担当箇所のシガイが迷子になっているのだ。

 

「…自分で制御できてないの?」

「は?制、ぎょ?」

「あー、分かった。なんでもないよ。」

 

メディウムが咽せている理由は喉にいるシガイが若干ずれているからだ。

様々な内臓があるところになかったりないところにあったり。

元の位置に戻ろうと蠢く時もある。

死ぬ事はなくても人間に擬態するにはかなり厳しい状態だ。

 

相変わらず手間のかかる子だ。

アーデンは軽くため息をつきながら、座るメディウムの肩に手を当て治療を行う。

何も難しい事はなく、単に自分の持ち場を教えてやるだけでシガイは勝手に肉体を形成する。

また迷子にならないようにしっかり教えてやらねばならないのが面倒だが。

 

「なんか、体が軽い。」

「今まで重すぎたんだよ。結構余計なのもいるなぁ。シガイから吸収すれば治るだろうとか思って同化したりしてないよね。」

「あー…。」

 

気まずそうに視線をそらすメディウムに全てを察した。

彼はシガイを取り込む能力がある。

故に倒したシガイを一時的に取り込めば足りなかった部分を足す事はできるだろう。

根治には至らずともその場しのぎにはなったはずだ。

お陰で迷子が発生しているのだけれど。

 

さらに数年に渡って使用する事なく溜め込み続けた魔力に押しつぶされ、常時破損が激しい。

常にどこかしらの内臓が破壊されている状態だ。

こうまでして魔力を貯める必要がある魔法とはそれこそ奇跡に等しい魔法だろう。

魂すらも、賭ける程なのだから。

 

「君の見立てでは、あと六年はこの状況を保たなきゃいけないんでしょう。アテはあるの?」

「今のところもってあと三年だ。攻めの一手に転じても状況は好転しなかった…それもこれもあんたが原因なんだけどな。」

「どこにもちょっかいはかけてないよ。俺は。」

「死者が出始めてる。あんたが手を出さなくても事実、犠牲なしで物事が成り立たなくなった。」

 

言葉は悪いが、人類は繁殖せねばならない。

死ぬ分だけ生きる分を量産する。

今最も必要でありながら原始的な、種を保存するための手口である。

綺麗な言葉を使うのなら"未来に命を託す"だろうか。

 

「…犠牲を出したくない、なんて甘えた考えなんだろうな」

「別に君はまだ人間なんだからそう思ってもいいんじゃない?」

「そういうもんか?」

「そういうもんだよ」

 

為政者の言葉ではないけれど。

そう付け加えたアーデンは小さな子供にするように、ぐじゃぐじゃになった頭を撫でた。

赤毛が多く混じり始めたのは分け与えたシガイの影響だろう。

ノクティスがシガイを討つ者として選ばれたソムヌスの生まれ変わりだと言うのなら、メディウムはシガイを束ねて死ぬ者の生まれ変わりだ。

どちらか片方が死ぬことは許されず、二人揃って死んでいく。

 

兄は死の王に、弟は光の王に。

分かたれる運命を背負った王家に、未来などあるのだろうか。

王族ばかりに責務を背負わせ、逃れられぬ場を作る。

最も身分の低い生贄をわざと最も高い身分に据え、贄だと気付かせずその一生を終わらせる。

鳥籠を自分で作らせ、神々に飼育されるだけの存在。

 

考えずには居られなかった。

こんな戦いになんの意味があるのだろうか。

ルシスに始まり、ルシスに終わる。

たったそれだけの神々がイオスを守る為だけに勝手に始めた身勝手な取り決めに従って。

何一つ産まない奪い合いになんの意味が。

 

「はっ…何考えてるんだ、俺。疲れてんのかな…。」

「疲れてるんじゃない?シガイ化してるとは言え活動限界はあるものだよ。」

「便利だが万能じゃないな。」

 

ずり落ちてきた王子の証である小冠をもう一度留め直す。

王冠はいずれ戻ってくるノクティスの為に大切に保管されている。

今メディウムが着ているのは新しく作り上げた盟主の戦闘衣である。

世界を背負う者として、最終決定権を持つ証とも言える。

 

不思議なことだ。

あの日、炎に包まれて死ぬつもりだった自分は今や戦火に包まれながら世界のトップに立っている。

負った火傷が生き様のようにメディウムの後をついて回るのだ。

消えることなく、いつまでも。

 

「アンタは今どこで生活しているんだ。」

「王城、君達の生まれ育った家だよ。壊れているところもあるけれど殆ど無事だからね。快適そのものさ」

「うわ狡い。一人だけいいところ住みやがって。」

「シガイの王様だし。」

 

そして君は人間の盟主だ。

 

たった一言に長年の日々が分かたれたような気持ちになる。

シガイの蠢く音と焼け焦げる匂いに鼻を覆いたくなるこの地はお互いにとって始まりの場所であり、終わりの場所でもある。

生まれ出で、死ぬ程奔走し、目覚め、壊した場所。

 

同じようにシガイになったにもかかわらず、メディウムのことを人間だと宣う。

それはまるで、人であって欲しいと願う愚かな願望のように。

 

「…なあ、親父殿。一つ提案がある。」

「どうせ"人類の為"でしょ。」

「他に理由なんかないさ。当然だろう?」

 

黒と金の瞳がうっそりと笑う。

どうせロクでもない提案だ。

またこの子が犠牲になるような、しかし確実に利益になるような、そんな提案。

アーデンは心得たように、提案の内容を聞くこともなく承諾した。

 

 

 

 

 

 

「闘技場…ですか?」

「正確には王城前の広場を使用した賭け事だ。こちらが勝利した場合、その日は一日中黄昏の時になる。一部ではあるが外の強力なシガイも退けてもらう。」

「シガイの王とそんな交渉を…?シガイに王がいるのか…?」

「それを討とうなどと考えるのは浅はかだ。奴を殺せるのはルシス王のみ。我々では手出しが出来ぬ。交渉出来ただけ儲けと思ってもらいたい。」

 

提案したのは一種のデスマッチ。

参加者はメディウムとシガイのみという限定されたゲームである。

メディウムが勝ち星を挙げた場合、一日限定で黄昏が続く。

つまり、シガイが動かない日が訪れるのである。

 

まだ皆に伝えることはなく、将軍であるコル・リオニスにその概要を伝えた。

 

「敗北した場合は一週間程、私は闘技場に閉じ込められる。無論、脱出は不可能だ。」

「殿下が亡くなられたら世界が崩壊します。そんな危険を冒してまで行うなど言語道断かと。」

「聞け、コル。私はほぼシガイと変わらない。さらに神の加護もある。一週間程なら死ぬことはない。かの王は退屈している。戯れのためなら多少の慈悲もあろう。」

 

納得のいかない顔をするコルを宥め、これはもはや決定事項なのだとメディウムは伝える。

やらない、という選択肢はないのだ。

 

「私は民に半分でも陽を見せてやりたいのだ。」

「それは…。」

「この四年で生まれた子もいる。我らの知る本当の陽を、我らの知る安寧を、安らかな心地を、知らぬ子供達がいる。私は少しでも未来に遺せる物を遺したい。」

「不吉なことを言わないでください。殿下。貴方は私よりも遥かに若い。まだ未来は、貴方に導いて貰いたい先が沢山あるのです。」

 

なんと甘美な言葉だろうか。

美しい言葉を選ぶものだと、メディウムは自分の脳を罵りたい気持ちだった。

 

彼はただ、忘れたいのだ。

盟主であることも、王子であることも、二十年の苦しみも、今も続く激痛も。

ただ無邪気に死と生だけが支配する戯れに身を投げることで、全てを忘れ去りたい。

そこに理由を求めるのは今までそうして生きてきた故の呪いなのだろうか。

口をついて出る優しい言葉に吐き気すら催しそうだ。

 

「コル、私を止めないでくれ。」

 

(メディウム)が壊れてしまうから。

その前に楽しい遊び(逃げるための痛み)を。

 




どうでもいい反省会後書き。

生きとったんかワレェ!
どうなってるんですか!!(投稿期間の空きを見ながら)
サクサク進むなんて大嘘じゃないですか!
これには海よりも高く山よりも深い事情があるんだろうなぁ!?

_人人人人人人_
> 深度ゼロ <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

…というしょうもない反省は隅に置いて。
大変長らくお待たせいたしました。
次こそは早めに投げつけたいところ…!(フラグ)
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