FFXV 泡沫の王   作:急須

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つづくみち

「此処より先は魔が蔓延る修羅の地。覚悟は良いか。」

「なにそのRPG風のセリフ。かっこよ。」

「あー、一回やってみたかったとかいうアレ。」

「似合うな。盟主殿。」

「どっちかっていうと兄貴がラスボスっぽいけど。」

「好き放題言ってくれるなぁ。」

 

本気で勧告したつもりなのだけれど。

王都の入り口に突き立てた剣神の剣を前にし、なぜか穏やかな空気が流れている。

それだけ彼らの覚悟は硬い、と言ったところなのだろうか。

兎にも角にもこれを抜かないことには中にも入れない。

王都から出た時と同じようにその柄に手をかけ、手心を加えるでもなく力任せに引き抜いた。

 

ガシャンッ!と凄まじい音が鳴り響き、門を覆っていた結界が消え失せる。

全員が門を潜り抜けた後、剣神の剣を消しもう一度そこに刺すことはしなかった。

夜が明けるのだからもうこの結界は必要ない。

 

「これで中の連中が気づいてくれりゃあ御の字なんだが。」

 

作戦概要はいたってシンプルだ。

まず目指すは王の剣部隊が本拠地としている地下鉄拠点を目指す。

彼らに王の帰還を告げ、即座にこの地から撤退してもらわねばならない。

病の王と真の王の戦いは小規模でありながら絶大な余波を発する。

訓練されていたとしても、その影響は計り知れない。

 

「車で行くか?」

 

地下拠点までの道のりをどうするべきか悩んでいる間に、グラディオラスが車を回してきた。

王都内を走行するために用意した装甲車のようなものだ。

実際軍が使用していた装甲車を回してもらっているのだが、アレに乗って移動するのが一番手っ取り早いだろう。

 

「そうだな。徒歩で行っても良いが、かなり時間がかかる。地下鉄も完全に制圧したとは言えないからな。いつも通りの道のりをその車で行こう。」

「んじゃ運転誰にする?」

 

五人で顔を見合わせる。

車の運転は十年前から何度もしてきたが、一人だけ寝こけていたおかげ十年ぶりの運転であろう誰かさんが居た。

本人を除いた満場一致でその肩に手を置く。

 

「親愛なるお兄様はノクトを指名しておこう。」

「賛成!」

「いいな、それ。」

「そうだな。」

「よし。決まり。」

「俺の返事聞かねぇし。こんなゴツイの運転したことねぇぞ。」

 

文句を言いながらも運転席へ座る。

助手席にメディウムが乗り込み、後部座席に皆が乗り込んだ後、ノクティスは思いのほかスムーズに車を発進させた。

彼にとって十年などあっという間の出来事で、実際寝て起きたら体が老け込んでいた様なものだ。

車の運転方法も別段衰えることもなく示された道を進んでいく。

ふと、何かを思い出したかのようにノクティスはメディウムに問いかけた。

大切だった父親の愛車であり、自らが継ぐ予定だったあのレガリアの事だった。

 

「…レガリアはどうなった?帝都にまだあるのか?」

「ああ。何とか回収したよ。帝都にも一応調査に入ったんだが、その時に。シドにすこぶる叱られた。」

「だよな。ぶっ壊しちまったもんな。」

「でも、喜んでいた。レガリアは立派にお前達を希望の先へ届けたんだって。」

 

十年前の記憶でも、誇らしげなシドの顔が目に浮かぶようだ。

きっとしわが増えたことだろう。

彼の孫、シドニーはどうしているのだろうか。

 

「シドもシドニーもハンマーヘッドを離れなきゃならなくて落ち込んでいたが、レガリアの修理を頼んだらだいぶ元気になっていた。…あの人は、長生きしてくれるといいな。」

「だな。シドニーとは連絡とってんのか?」

「あ…あー…ああ…まあ…うん…ちょいっと俺は控えてるかなぁ。なぁ?プロンプト・アージェンタム。」

「ええ!?そこで俺に話振ってくるの!?」

「だって…なぁ?」

「そうだな。プロンプトに聞くのが一番だな。」

「十年で一番変わったのはそこだよなぁ。」

 

イグニスとグラディオラスも混じり、ニヤニヤと黄チョコボを見る。

わたわたとあわてる親友をバックミラー越しに眺める。

最終決戦に相応しくないほど顔が真っ赤だ。

ははーん。

これはあれか。

 

「ほー?王様に内緒で…?」

「なんかノクトの察しがいいんですけど!?」

「あっはっはっは。まあそういうこった。今も友達付き合いしてんだけどな。…今回の戦いはシドのじいさんにメールだけ入れて出てきちまった。」

 

帰れない、なんて。

シガイのせいで両親を失ってしまった彼女には言えなかった。

実のところ、自分がシガイ化しており、人間でないことも一切明かしていない。

彼女とは仲が良かったけれど嫌われてしまうかも。

メディウムは少し残念そうにうつむいた。

 

「そういや、グラディオはアラネアとどうしたんだよ。進展したのか?」

「おいおい。俺にもその話題振るのかよ。」

「知っておきたいんだよ。家族がいるとか、愛する者がいる、とか。知らないまま戦地に行って死なせた、みたいな無責任なことは嫌だ。」

「おー。ノクト言うねぇ。で?実際のところどう?」

「親友のあんたが知らない時点でナイって決まっているだろう。」

「そいつは残念。」

 

車から見える景色は代わり映えしない。

ふざけた様な会話を続けていても、皆窓の外を見ている。

グラディオラスも、イグニスも、プロンプトも、王都へ帰還するのは十年ぶりのことだった。

数多くのシガイや魔導兵が跋扈する大通りを通り抜け、瓦礫となった街並みを過ぎ去っていく。

軽い会話は次第に小さくなっていき、車を降りる地点につく頃には無言になっていた。

 

変わり果てた故郷の姿を見れば誰でもそうなるだろう。

そして、十年の時を経てこの地は再び戦場となるのだ。

長いようで短かった旅の始まりを告げ、最後の終着点となる王都インソムニア。

その地にようやく足を踏み入れた。

 

「…行くぞ。王城までの道は確保してある。」

「兄貴は、ここに七年もいたのか。」

「故郷だからな。」

 

燎原の火とはまさにこのことか。

アスファルトだと言うのに燃え盛るナニカを通り抜け、地下通路の入り口を目指す。

最も近い入口にテレポートの魔法陣を設置しているらしい。

そこから直接、地下通路の拠点入り口まで飛べる。

 

「拠点に直通じゃなくて、入り口なの?」

「…仲間がシガイ化していることも稀にある。その際は俺が”肉体に取り込む”ことにしている。彼らの肉体は残らないから、遺品を保管していてな。世界が明るくなったら正式に墓を作る予定だ。」

 

瓦礫が除けられた道を進み、その背を追う。

肉体に取り込むのはシガイ化した本人の遺言だからだと言う。

メディウムは治療の度にシガイの寄生虫を少しずつ消費する。

それらを補うためにその辺に蔓延るシガイを狩って、たびたび補給しているのだが、王の剣達はその手助けでもしたいのだろう。

未来のためになるならこの身すらも使い潰してくれ、と。

 

それがどれほど、残酷な願いで、メディウムの心を潰しているかも知らない。

共に戦ってきた部下を己の不注意で死なせてしまう盟主の痛みは、零れる前に飲み込まれてしまうから。

焔に映った黒い瞳が少しだけ暗い色を宿す。

この身に宿した重い罪のせいで呼吸すらままならない時もあった。

それをどうにかしてくれたのは、あの”闘技場”で楽し気に笑う父だった。

 

「ここに俺がいた七年の話はコルが教えてくれるさ。」

「長い話は絶対自分でしないよな。」

「うっせ。」

 

コツン、と少し開けた通りの真ん中で足を止める。

魔法陣と思わしき蛍光色のものが薄っすらと描かれていた。

その中心へと立ち、四人に向きなおる。

一瞬の眩いほどの光に包まれたのもつかの間。

数舜後には強固な扉の前に立っていた。

何度か扉をノックし、自らが持ち合わせた鍵をその扉へと挿す。

カチリと音がし、難なく開いた扉の先には野戦病棟と見紛うような景色が広がっていた。

 

怪我をした者、看病をする者、武器を整備する者。

多種多様な兵が各々の仕事をこなしている。

その空気に圧倒されていると、五人の前に見知った影が差した。

 

「お帰りなさいませ。メディウム殿下。…ノクティス陛下。」

「ただいま。コル。」

「この時を一日千秋の思いで待ちわびておりました。」

 

深く頭を垂れたコル・リオニスは十年前と変わらぬ姿でそこに立っていた。

コルの一言に、その場で忙しく動き回っていた兵達が顔を上げる。

立てる者は立ち上がり、皆ノクティスを見る。

この時を待ち望んだのは彼らも同じだ。

 

「コル。ノクティスに色々と話してやってくれ。私は少し準備をしてくる。」

「はい。くれぐれも無理をなさらぬように。」

「はいはい。」

 

唯一、メディウムの為だけに用意された個室へと入り、そっと戸を閉めた。

彼らが話をしている間に、仕上げをしなければならない。

 

「さて、始めようか。」

 

幾枚も散らばる失敗作の魔法陣を除け、六歳で旅立つ時に母がくれた銀のネックレスを置く。

このネックレスに魔法を込めるのもこれで最後だ。

 

――どうか、立派な子に育ってね。運命なんかに負けないで。

 

母の言葉など、母の顔など、とうに忘れたはずだった。

余りにも深い心の溝が三十六年もたてば、自然と小さく見えてくる。

決して些細なことではなかったけれど、あれほど忌み嫌う理由でもなかった。

 

「墓参り、今年はいけなかったなぁ。」

 

世界が闇に沈んでも、一年に一度必ず花を添えに行った。

シガイだらけで並大抵の努力ではたどり着けない苦難の道のりだったが、どうしても行きたかったから。

今年はいろいろなことが重なり、結局まだいけていない。

少しだけ心残りだ。

 

「頼むぜ。古代魔法。」

 

失われた古代魔法レイズ。

一世一代の大博打に選んだ駒は、人の命を蘇らせる禁忌の魔法だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空気を読んだ仲間たちは周囲へと散り、ノクティスとコル・リオニスだけが残される。

彼が語った七年は筆舌に尽くしがたいものだった。

壮絶な戦いの果てに得たのは、地下拠点と王城への道のみ。

襲撃時は無事であった市街地でさえも、今は見る影もないという。

犠牲になった兵も大勢いた。

彼らには今も墓はなく、遺品だけが整然と並べられている。

 

いずれ光が灯る日が来る。

そう信じて疑わないメディウムの意向だ。

彼らを光届かぬ地下に置いては行けない。

撤退の際はこの場にあるもの全てを積み込んでハンマーヘッドに向かう作戦で話がついた。

 

「メディウム殿下から闘技場の話は聞いたか?」

「いや。なんだ、それ。」

「我々も実際にどんなことが行われていたかは分からないが、シガイの王と賭け事をしていたそうだ。」

「賭け事?」

「安寧をもたらす黄昏の時を賭けた熾烈な争いだ。」

 

コル本人は一度だけその内容を見たことがあると言う。

王城の前にある広場に大きな結界が張られ、メディウム一人で強大なシガイに立ち向かうといったものだ。

必ず掛け金は自身に賭ける。

勝てば黄昏と安寧だが負ければどうなるかまでははっきりしていない。

 

一度だけメディウムが負けた試合があった。

前日の市街地への進軍作戦で負った怪我が祟ったのだろう。

シガイに引っ掴まれ、左足をあろうことか前方へと折られてしまったのだ。

その気の悲鳴を聞いていた女性兵士が焦燥状態に陥り、しばらく武器も持てなかった。

今思えば、魔力の篭った叫びだったのだろう。

 

そのまま闇の中へと引き摺られ、一週間後に解放された。

なんとか救出しようと広場への潜入を試みた兵が路上で倒れ込んでいるのを発見したのだ。

その時は既に足は完治し、外傷も見られなかったが二週間目を覚まさなかった。

 

「そんなことが…。」

「…あのお方はまだ隠し事を?」

「多分な。全部明かしてくれてると思いたいけど。…少なくとも兄貴の今までの言動に嘘はなかった。何か言ってねぇような雰囲気はあった。思い当たることはあるか」

 

目を瞑ったコルは何も言わずに周囲へと視線を巡らせる。

誰も彼もが首を横に降る様を見て、頼り無さげに肩を落とした。

思い当たるのは一つだけ。

 

「"お守り"がなにか関係しているかもしれない。」

「それも聞いてねぇ話だな。」

「そりゃそうだ。お守りはこれから渡すんだからな。サプライズを話してどーすんの。」

「兄貴…。」

 

奥の個室から現れたメディウムの手には銀色のネックレスが握られていた。

彼の大切なお守りであるソレは鈍い輝きを放っている。

相当大事にしてきたのだろう。

細かな傷はあるが、汚れは見当たらない。

彼が未来のために旅立ってから三十年あまり、常に側にあり続けた大切なものを惜しげもなく差し出してきた。

 

「ほら。お守り。特別な魔法を込めた。我が可愛い弟に何かあれば、きっと護ってくれる。」

「いいのか?これ、母さんの形見なんだろ?」

「ノクトにとっても母親だろう。そんな他人行儀なこと言うな。…これから大変な思いをするのはお前の方なんだから。持っておきなさい。」

 

首にかけられたネックレスはずっしりと重い。

質量の話ではなく、何か大いなるものに触れたような、そんな重さだ。

この凝り性の兄がやることだからきっと凄い魔法でも込められているのだろう。

それがなんなのかまでは分からないけれど。

 

「ありがとな。」

「それと、これ。緊急であつらえたルシス王の礼服のままじゃ、決戦!って感じしないからな。」

「これ…兄貴が?」

「いいや。イリスに頼んだ。彼女に感謝しろよ?」

 

さらに手渡されたのは、在りし日の父が身に纏っていた衣服。

選ばれし王の衣装だった。

その上には冠が載せられている。

ノクティスは王冠を手に取らず、衣装だけを受け取った。

 

「戴冠式、前王に冠をもらわないとダメなんだろ?」

「…前王は亡くなられたじゃないか。」

「だから兄貴がやってくれよ。第百十五代目の王様が眠ってる間に戴冠した第百十六代目の王様。」

 

だから頭に乗せてくれ、と言わんばかりだ。

仕方なくその手に王冠を取り、頬をかく。

 

「なんだそりゃあ。順番真逆じゃないか。俺も正式じゃねぇし。」

「歴史書にはちゃんとそう書かせる。真実を伝える。都合よく書き換えたりしない。絶対。これ王様命令。」

 

ノクティスの意思は強い。

クリスタルの中で"星と二千年前の真実"でも知ったのだろう。

何も知らないような顔をして焦りと困惑の中、クリスタルにのまれた十年前とは違う。

確かにその先に敵を見据え、為すべきことを知っている。

そこに決意はあれど、恨みはない。

 

だから、だろうか。

どうしても聞きたくなってしまった。

 

「アイツを、恨むか?」

 

例えそれが彼にとっての優しさだったとしても。

ルシス王家を、世界を救おうとした結果だったとしても。

恨みが混じればいずれ目的も理由も不明瞭になり、ただ感情だけが先行する。

これから打ち倒す存在は、その最たる例だろう。

 

彼は昔から、たった一つの目標を掲げている。

ただ、世界を救いたい。

その願いだけで苦しみに耐え抜いてきた。

裏切り者の所為でこんなことになってしまったのだ。

もし二千年前に神々が彼を受け入れていたら、こんなことにはならなかっただろうに。

 

否、これは近くで見てきたが故の同情だ。

一方的に仕掛けられたノクティスにとっては生温い情を沸かせる相手ではない。

けれど、ノクティスは朗らかに笑った。

 

「恨まない。兄貴を大事にしてくれた奴を恨めねぇよ。アイツの言い分も、理解できないほど的外れじゃないしな。」

 

救えるのなら救いたい。

嘘偽りない微笑みに、心が苦しい。

二千年前の兄弟はお互いの理想の違いに嘆き、ぶつかり合い続けていた。

それがどうだ。

二千年後の兄弟は同じ目標を掲げ、同じ手段を取ろうとしている。

たった一つの椅子に翻弄された二千年前が嘘のようだ。

 

あの兄弟と自分達は違う。

彼等とは違う未来を歩ける。

そんな気がした。

 

「…アイツは、父さんはな。俺達も救う気でいるんだ。神様に翻弄されて、満足に生きられずに死んで、クリスタルの中でその時を待つしかない王家を。魔法なんて、王族なんて要らないって。こんなチンケな椅子一つで幸せもつかめないのなら、全部壊してしまえって。」

 

王家を徹底的に潰す。

それは二度と王家が再建しないようにすることであるのは確かだ。

しかしそれは同時に、生贄を二度と出さないための最短の手段でもある。

どこまでが本来の目的でどこまでが感情の矛先なのか。

もう本人にすら分からないだろうけれど。

 

「今なら俺が真の王に選ばれなかった本当の理由が分かる。…俺は父さんの考えを否定できない。それが間違ってるって思えない俺は、真の王様失格だ。」

 

神々が欲したのは都合のいいスケープゴートだ。

何も知らない顔で言うことだけを聞いていればいい傀儡が欲しかったのだ。

その役目すら果たせない面倒な者は神々には必要ない。

手に持つ王冠が酷く重いのに、軽いような不思議な感覚だった。

命の重さと価値の軽さがあまりにも歪だ。

 

「兄貴はさ、それでいいんだ。」

 

王冠を持った手にノクティスの手が触れた。

暖かい手が優しい。

お互いに年をとったのに、肉体年齢はメディウムの方が一つ下だ。

ガタガタに歪んだ世界と同じようにチグハグな存在を繋ぎ止める家族の暖かさが、酷く嬉しい。

 

「全部受け入れて、全部見つめて、自分が生きたい場所を選ぶ。それが兄貴だろ。常に胸を張って生きろ…その言葉が一番似合うの、兄貴だと俺は思ってる。」

 

だから背を丸めるな。

自信を無くしたように下を向くな。

前だけを見つめて突っ走れ。

弟からかけられる言葉と共に、脳裏に浮かぶのは育ての親の顔と本物の父親の顔だ。

 

――君は起き上がってくるのだけは早いよねぇ。

 

呆れたように言ったのは育ての親だ。

 

――辛くなったら戻って来なさい。時々振り返ることも前に進むために必要なことだ。

 

優しく頭を撫でてくれたのは本当の父親だった。

どちらも似たようなシワを作って最後にこういうのだ。

 

――俺の大事な息子。

――私の大切な子。

 

おちゃらけた様に帽子をかぶせてくる父さんと優しく抱きしめてくれるお父様。

なんだ、そっくりじゃないか。

 

「やりたいこと、成し遂げたいことを兄貴はしてくれ。俺も…なんかこう、頑張る。」

「そこはきっちり締めてくれよ!」

 

締まらない言葉にメディウムは涙を浮かべて笑った。

恥ずかしそうに頬をかく弟、想いのままに抱きしめて。

その頭に王冠をかぶせた。

心の何処かにあった迷いが吹っ飛ぶ様な、晴れやかな気分だった。

 


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