キャラ崩壊や御都合主義などが一層濃くなりますがあらかじめご了承ください。
「なんだ、あれ。」
「わー、すっごいかっこいい人。」
下校時間。
高校二年生であるノクティスとプロンプトは校門前にできた人集りに圧倒されていた。
だいたいが女子の人集りの中心には苦笑いを浮かべる青年。
冷ややかな風が吹き抜ける秋らしいモッズコートに灰色のTシャツ、ジーパンと茶色いブーツというラフな格好の青年はこちらに気づくと手を振った。
なにやら呼ばれるように手招きしている。
ノクティスはその仕草で誰だか理解したのか、顔をしかめながら青年のもとへと向かう。
プロンプトも置いていかれるわけにもいかず急いで駆けつけた。
「なんで学校まで来てんだよ!」
「可愛い弟のお迎え。護衛は撒いてきましたー!」
いぇいっとVサインをする青年に、ノクティスは大きくため息をつく。
街中でシフト魔法を駆使し、人知れず裏路地を駆け巡ってここまできたのだろう。
青年、兄メディウムの常套手段だ。
数センチだけ高い身長の六歳年上の兄は滅多に帰らないが昨晩、明日帰省するというメールをもらっていた。
「ノクトの…お兄さん…ってことは王子様!?」
「ノクトのお友達?はじめまして。メディウム・ルシス・チェラムだ。」
「はっはじめましてっ!プロンプト・アージェンタムです!」
「プロンプト君ね。」
いつもノクティスのことは王子扱いしないくせに美しく輝きながらも怪しい雰囲気を持つメディウムに緊張するプロンプト。
王子だと知った瞬間集まっていた人もそっと距離をとった。
それに気にする様子もなく話を続ける。
「聞いて驚け。なんと今回の帰省は二日も居られる。大盤振る舞いだ。そのかわり仕事も山積みだ。最悪。」
「あっそ。」
「二日ノクトのマンション泊まるから。」
「はぁ!?」
いつも一日足らずで帰り、からかって去っていく兄が二日もいるという事に内心嬉しくも恥ずかしくて表に出せなかったノクティスは素っ気なく返事をする。
そこは予想の範疇だったらしく、ニヤニヤと笑いながら爆弾を投下した。
「なに驚いてんだよ。」
「兄貴は一応重役だろ!?何かあったらどうすんだよ!城に部屋あるし!そっち泊れよ!」
「王子のマンションに何かある方が問題だ。そもそも王の剣による警備まで付いててルシスの王族二人いる時点で相手が瀕死間違いなしだろ。」
確かにその通りである。
魔法が使える人間が二人もいれば普通の生身の人間など障害にもならない。
なによりメディウムは外の生活で戦闘経験が豊富だ。
王の剣を撒いてここまで来るぐらいには機動力がある。
「それに今まで城の方じゃなくて王の剣の施設で泊まってたんだよ。」
「はぁ!?」
初耳である。
王子が城ではなく王の剣に与えられた訓練所で寝泊まり。
一晩だけとはいえ流石にそれは。
いや護衛がそこら中にいると思えば安全な場所なのか。
「流石にそれは看過できないだろうし、王の剣達も二日連続ピリピリしてられないだろ。新兵もいるって話で。城は無理。てな訳で妥協案。ノクトのマンション。」
「どんだけ城が嫌なんだよ。」
「いやはや、王様のところに家臣が泊まるって難しい心情で。」
「王子だろ。」
えへへっと曖昧な苦笑いしかしないメディウムに再びため息をつく。
隣のプロンプトがどうしたらいいかわからずおろおろしているのも流石に可哀想になってきたノクティスは渋々受け入れた。
兄が泊まりに来ること自体は嬉しくてたまらないのだが、素直ではない性格ゆえの反論だった。
結局受け入れるのだが。
「…今日入れて二日だろ。明日、俺学校だけど、昼間はどうするんだよ。」
「クレイラス宰相との鍛錬と軍事会議。グラディオラスとも手合わせ願われたし、イグニスに国政の指南もあるな。新兵の激昂のためのエキシビションマッチにコル将軍とも一戦。あとは明日のお楽しみが一つ。ノクトは強制連行で夕方マンション集合ね。」
「お楽しみ?」
「そう。プロンプト君も来るといいよ。きっと面白いから。んじゃ俺は護衛の回収して来るわ。マンションでなー。」
「え!?は、はい!?」
嵐のようにいうことだけ言って一瞬にして消えた。
ノクティスにしかわからなかったがおそらくあらかじめ置かれた武器にシフト魔法を使ったのだろう。
残像が残るはずのシフトを瞬間移動のようにその場で消えるように使えるのはメディウムぐらいしか居ない。
ぽかんとしたプロンプトの背中を叩いて、帰路を急ぐ。
昨日やってきて部屋を綺麗にしてくれたイグニスに心の中で感謝しながら。
翌日夕刻。
動きやすい服装で集合といわれ、ジャージでマンションに来たプロンプトを車に詰め込み、同じくジャージのノクティスと共にやって来たのは王の剣訓練施設。
そこで提案されたものにノクティスは疑問の声をあげた。
「鬼ごっこだぁ?」
「王の剣達とね。鬼は王の剣。シフト魔法の訓練だから新人優先でベテランと一人二組。三人組でもいいよ。ノクトはお手本に来てもらった。見学のプロンプト君ね。」
「面白いものってもしかして…。」
「ノクトの無様な負け姿に決まってるでしょ。」
「このクソ兄貴ッ!」
「悔しかったら負かせてみせろよ。シフト魔法だと剣を投げなきゃいけないが、王族に投げられないとか考えなくていい。遠慮なくぶん投げてくれ。制限時間以内にタッチできればお前らの勝ち。時間は三分ってところだな。」
つらつらと説明していく様にためらう王の剣達だが、王族同士の戦いというのは非常に興味がある。
ドラットー将軍も承知の上と言われると否やも言えない。
メディウムは帝国のグラウカ将軍とも面識があるためお互いに腹に一物抱えている爆弾扱いをしているためか向こうは探り探り受け入れていた。
彼がいることで未来がどうなるかよくわかっているメディウムだがアーデンの差し金であることも承知しているため下手に手を出せない。
彼がダメでも他を用意する可能性を考えれば今のままで放置となった。
閑話休題。
「それじゃ。プロンプト君三分測ってスタートの合図よろしく。」
「はい!」
携帯のタイマーを三分に設定して、お互いに剣を召喚する。
ノクティスは父王レギスから貰ったエンジンブレード。
メディウムはどこでも買えるブロードソードを構えた。
「よーい、どん!」
なんとも気の抜ける合図とともにメディウムが剣を投げる。
中央にそびえ立つ高い塔を囲むように円柱に作られた王の剣の施設は通り道のための穴がいくつもある。
昔の監獄を改造して訓練所にした経緯があることを知るメディウムは中央の塔の側面に剣を突き立てぶら下がった。
一秒遅れてノクティスがメディウムめがけて剣を投げるが、壁を利用して駆け上がるように一回転。
一度離した手に刺さったままの剣を召喚することで手繰り寄せ、今度は反対側の通路に滑り込む。
躱されたノクティスのエンジンブレードは壁に突き刺さり、シフト魔法を発動していたノクティスはなんとかぶら下がり間を空けずにメディウムへと投げつける。
手にしたブロードソードでエンジンブレードを弾くとそのまま壁へとバッティング。
思わぬ方向に行くこととなったノクティスは中央の塔に叩きつけられたエンジンブレードと共に壁に激突するかと思いきや瞬時に体勢を立て直して壁を蹴り、シフト魔法で空中戦を仕掛けて来る。
「おいおい!タッチすればいいんだぞ!」
「当たるまで疲れさせるのも戦法だろ!」
「荒っぽいことで!」
ブロードソードを投げて脱出しようかとも考えたが、真正面からぶつかって来る弟を避けるのは兄の矜持に反する。
エンジンブレードにシフトブレイクを仕掛け、体制が崩れたところで追い討ちの踵落とし。
背中に決まった重い一撃にそのまま地面に落下したノクティスは仰向けに体制を変えエンジンブレードをこちらに投げつけて来た。
どうやら魔力切れのようだが諦めの悪い弟に苦笑いしながらも迫って来る鋭い刃にブロードソードを思いっきり振り抜いた。
回転しながら勢いよく落ち、ノクティスの顔の横側に刺さったところでアラームが鳴った。
「あぁー無理。魔力量で既に勝てねぇし。」
「惜しかったなぁ。ほら立てるか?」
倒れ伏したノクティスに手を差し伸べ起き上がらせると三分の間に起こった壮絶な手加減の戦いに理解が追いつかない王の剣達に声をかける。
「今は戦ってたが戦法としてありって事で!新人にはできないだろうしやる時は気をつけろよ。そんじゃ誰からやる?」
シフト魔法も覚束ない自分達にできるわけがない光景を最初に見せられるとは思わなかった王の剣達は顔を見合わせる。
自分達と同じように王族も、最初は扱えなくて苦戦すると聞いていたが生まれた頃から使えるとここまで戦力の差は広がるものなのか。
借り物の魔法のため確かにそもそもの使い勝手の幅がちがうが彼らは借り物の範囲で戦闘をしていた。
宣言通りシフト魔法しか使っていない。
怖気付き始めた王の剣の中でも一等強く"ヒーロー"とからかわれる男が手をあげる。
それに同調するように同じ出身地の男と女が手を挙げた。
「その刺青はガラードの奴らか。名前は?」
「ニックス・ウリックです。」
「リベルト・オスティウムだ。」
「ちょっと、リベルト!クロウ・アルティウスです。」
ニックス、リベルトと名乗った二人の男はルシス領内に存在する小さな諸島、インソムニアと同じ地方に属するカヴァー地方ガラード地区でよく目にする刺青が所々に見受けられる。
どこかフランクなリベルトを諭したクロウという女性は少ないが同じくガラードの刺青があった。
同郷で三人組という事らしい。
「ほほう。シフトが得意なのと異常に魔力が多い魔法使い?いや生まれつきの特殊能力がうまく噛み合ったってところか?あと小技が得意そうだ。いいね。魔法が当たってもタッチって事にしよう。プロンプト君頼んだ!」
言い当てられて少しだけ眉が動いた三人だが敬礼は解かない。
一目見ただけでそれぞれの特徴を見抜いたメディウムは三人に合わせたルールに変更し、安全なところからノクティスと見守るプロンプトに声をかける。
三人相手でも余裕そうにブロードソードを構え直し、笑う。
ノクティスの時とは違い全く警戒していない。
特にニックスは見向きもしなかった。
シフト魔法は王の剣の中で一番上手く戦闘技術も頭一つ抜けたニックスを見向きもしない事に驚いたがそれだけ自信があるのだろうと三人はより警戒した。
「よーい、どん!」
またも気の抜ける合図で始まったがメディウムはその場から動かない。
動かないならばとニックスがシフト魔法で壁を伝って背後を取り、リベルトが前から突撃。
後ろでクロウが魔法の詠唱を始めたがやはり一歩も動かない。
このままなら簡単に触れるとニックスとリベルトが剣を持たない手を伸ばしたところで、メディウムが消えた。
「ほい。」
「なっ!」
「うわっ!?」
正確にはニックスの後ろに剣を投げ、空中を飛ぶ剣にシフト。
体の重さで飛行を止め落ちる剣の勢いのまま持ち手部分をニックスに叩きつけた。
勢いそのままリベルトと衝突したニックスに詠唱してしまったクロウの火球が飛び込む。
二人に当たる前にメディウムの氷魔法が炸裂し、火球は跡形もなく消えた。
すかさずクロウの背後にシフトし、こめかみを叩いた。
軽く脳震盪を起こすためにやったので意識が朦朧としてる事だろう。
その間わずか十秒。
初撃を思いっきり外し、カウンターを見事に決められてしまった。
「ニックスだっけ?シフトが得意とは感心だけど甘いね。シフトがあればすぐ取れると思って後ろ回ったでしょ。あれ、達人なら先に読んで今みたいにカウンターされるよ。」
顔面衝突で頭が揺さぶられていたニックスにメディウムの言葉が届く。
あらかじめ魔力を通した武器を感知してその方向に魔法を放つシフト魔法は非常に便利だ。
武器さえ通れれば体もそれについていく、ワープのようなもの。
奇襲にはとても向いている魔法だが真正面からだと武器の動きで読まれてしまう。
生身の人間ならば背後を取りそのまま戦えばいいのだが同じシフト魔法の使い手だと魔力を宿した武器を感知できてしまう。
借り物の彼らには自分達のしかわからないだろうがメディウムにはすべての魔法を通した武器の位置がわかっていた。
「リベルトとやらは真正面から突撃するときに若干エンチャントもしてたね。でも弱すぎかな。」
起き上がってきたリベルトのククリ刀をみてそういうと自身のブロードソードに輝くほどの雷を流す。
少し帯電していた程度のリベルトのククリ刀とは全く別物。
揺れていた意識から復帰してきたクロウに向き直り、メディウムはアドバイスを続ける。
「あとクロウとかいう魔法使い。魔力効率が最悪だ。感覚でできないのはわかるが詠唱が長すぎだ。詠唱と一緒に魔力を垂れ流し。無駄すぎる。詠唱を減らして魔力を凝縮できれば今の火球十発打てる。」
アラームがなった。
アドバイスで三分使い切ってしまった。
あまりの一瞬の出来事にそれなりに強いと自負していた三人は項垂れる。
戦闘経験の差だけで言えば戦場に出ている王の剣達の方が王族より多いと思っていた。
高校に通うノクティスを基準に、メディウムを見ていたが蓋を開けてみればとんでもない化け物だ。
シフト魔法二回で王の剣三人が伸されるなど。
「コル将軍の方が化け物じみてた。魔法とシフトが使えるからって強いわけじゃないな。」
「兄貴、将軍とやり合ったことあるのか?」
「怪獣大決戦?」
「プロンプト君面白いこと言うな。まあ、去年帰ったときに。武器召喚しかできないのに剣の太刀筋だけで魔法をいなして来るんだ。あの人が一番化け物だな。本気出さないと勝てなかった。」
「勝てたのかよ!?」
「ノクトのお兄さんつよー…。」
完全に戦意喪失し始めた王の剣達を置いて、王族二人と一般市民の会話が続く。
ルシス三強に数えられるコル将軍に勝つなど人間じゃない。
他のルシス三強は王の盾クレイラス・アミシティア、ドラットー将軍と錚々たる面々である。
「コル将軍とも鬼ごっこしたんだが、タッチ出来ずじまいだった。俺が手加減したにしても指一本でも触れれば将軍が褒めてくれるかもな。」
「え、うそマジ?」
「マジマジ。プロンプト君やる?」
「戦えないです!」
コル将軍が褒めてくれるかもしれない。
王の剣の中でも憧れの存在であるコル将軍が褒めてくれるという言葉に何人かの新人が釣られた。
熱狂的なファンのベテランも。
次々に上がる手に作戦成功と笑ったメディウムが剣を構える。
訓練はまだまだ続く。
余談だが一時間後には立つこともままならない王の剣の姿があったという。
映画では亡くなられたクロウ・アルティウスは極秘任務中に裏切り者に殺められてしまうのですが、その極秘任務自体がなくなります。
軍を操作していた主人公が気づいて阻止していたからという事で。
そのかわりネックレスに発信機が付き、道中光っているのに気づいたニックスが…とそこから映画通りとなります。
王の剣として未来の王のために命をかける映画とは違い、主人公と共にグラウカ将軍を打ち果たしシガイから逃げおおせます。
巨大なシガイはアーデンによって吸収され王都にはいないという設定。
映画通りルナフレーナを託されて逃げたリベルトは王都から逃げ果せコル将軍の指示で避難誘導に混じっていたクロウと共に戻ってくるニックスを迎えます。
リベルトは一度王の剣を脱退するのですがそこは映画と同じく。
クロウの死ではなく王に対する不信感で脱退しますが城で戦争しようとしたレギスの話を主人公に断片的に聞かされ少しだけ考え直し、故郷の様子を知りたいクロウと共にガラードに一度帰ります。
ニックスはコル将軍の下で亡きレギスへの恩義で働き続けています。
以上、我がイオスでのキングスレイブ主要キャラ裏話でした。