FFXV 泡沫の王   作:急須

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本編と全く関係ない、主人公とノクティス一行の一幕。
より一層御都合主義かつ色々危ないですがあらかじめご了承ください。


番外編 07 トラウマの話

「兄貴って本当に彼女いたことないのか?」

「喧嘩売ってる?実の弟といえどデリケートな問いには容赦しないよ?」

 

カエムの岬、ノクティス一行に割り当てられた部屋。

珍しくイグニスも参戦して、アプリゲームを楽しんでいた四人とそれを絵にするメディウムの姿があった。

どこまで書き込むか悩んでいたメディウムに唐突にムカつく質問が飛んできたのだ。

いつか威張りながら彼女いない歴イコール年齢と発言したことはあるが、流石に不躾ではないだろうか。

 

咄嗟に愛剣の"クラレント"を突きつけるが、上手く躱されてしまった。

 

「悪かったって!でも兄貴だって俺に彼女いるかいないか分からなかったら気になるだろ!?」

「お前は昔からルナフレーナ一筋じゃないか。」

「ち、ちち、違げぇし!?」

「ほぉ?ルナフレーナの前でも否定できるのかぁ?彼女泣いちゃうんじゃないか?愛する未来の旦那様の否定的な発言に。」

 

強調するようにわざと後から付け足すと、ノクティスは顔を真っ赤にしてゴニョゴニョとどもる。

これだけわかりやすくて周りにバレていないと思っているのだ。

哀れな奴よの、と揶揄い甲斐のある弟を尻目に書き込む箇所を決める。

ついでにうまいこと話題回避出来たぞ、しめしめ。

 

しかし、止まっていた筆を持ち上げる前に第二の襲撃者が現れた。

 

「でもモービル・キャビンで一晩やらかしてるんだよね?」

「語弊があるぞチョコボモドキ。頭かち割られたいのか。」

「ひぃ!?ごめんなさい!!」

 

遂にチョコボ頭からモドキに格下げされたプロンプト。

容赦のない投擲で顔面横にクラレントが突き刺さった。

壁に穴は開けまいと先に造形された氷に突き刺さるという良心的な脅し。

プロンプトは頬に当たる冷たさに背筋が凍った。

 

「今のは言い方が悪かったが、気になるのは確かだ。」

「初めて聞いた時、メディは貞操観念が非常に硬いと思っていたが…覆された気分だったな。」

 

グラディオラスとイグニスも乗ってきてしまった。

四人の思考を挿げ替えられるような話題はない。

一先ず女性関係ではないことを伝えなければならない。

そういった話題をほとんどしたことがないメディウムは若干顔を赤らめながら濁して伝えた。

 

「別に誰も世継ぎ問題になりそうな方面でやらかしたなんて言ってないだろう。」

「女に手を出したって訳じゃねぇのか。」

「あー、その言い方はやめてくれ。直接的すぎる。」

「いやだいぶ遠回し、って兄貴…もしかして男のくせにこういう話題に耐性がねぇのか?」

 

ニヤニヤと弱点を見つけてくるノクティスにイラッとするが別段話題に弱いことが悪いことではない。

貞淑で品のある王子という立場上、ノクティスのように俗世に詳しい方がおかしいのだ。

一般人のような王子など歴代でもノクティスとギリギリ分類されるメディウムしかいない。

そういった話題に弱いのは当然といえた。

 

だがムカつく。

弟に負けることなど滅多にないため非常にムカつく。

 

「品も風情もない王子ではないのだよ。」

「おお?負け惜しみか?」

「多少話題に耐性があるからと調子に乗るとは小学生かね。」

「顔真っ赤にして言われても面白いだけだぜ。」

「ぐぬっ。」

 

弟にこれでもかと言い訳を並べる情けない兄のような発言で、だんだん恥ずかしくなってきた。

火照るほど真っ赤になった顔をスケッチブックで隠しながら、座っていたベッドに倒れこむ。

顔が良いためそれなりに可愛らしい挙動にみえる。

 

アーデンは無駄口を叩かない上に行動的なセクハラが多いため、話題になること自体がない。

二千とちょっとを生きてきた人間がするような話ではなかった。

アラネアとは論外で、レイヴスはお堅い。

饒舌なビッグスに、二十歳を過ぎた頃からかわれたがウェッジが無言で止めに入ってくれた。

それ以来ふざけて話題に上がることもなく、タブーになっていた記憶がある。

何より恥じらいを持つように育てられた。

条件反射なのである。

 

「仕方ないだろ。同い年との会話なんて殆どなかったし。」

「ただ恥じらうだけとか女子か。」

「しかも割とイイところの女子だ。」

「おお?お前らも喧嘩売ってるのか?特売?買うよ?」

 

スケッチブックから少し顔を出して、感想を口にするグラディオラスとイグニスにツッコミを入れる。

未だに顔が赤いため、睨みつけられても顔の良さによる愛らしさしかない。

母親イグニスは母性が刺激されたらしく、無言で眼鏡をあげた。

 

「話戻すけど、モービル・キャビンで何があったの?」

「戻さないで欲しかった。」

 

嫌な思い出というよりかは、どうしようもない記憶だ。

言ってしまえば酷い汚物である。

それはもう有害物質と同等だ。

相手はおっさんで二千といくつかの年齢。

パワーワードしか並ばないおっさん相手にあんな狭いモービル・キャビンで。

 

サァッと顔が青くなり、口元を押さえて嗚咽を漏らす。

思い出したにしても吐きそうになる程酷い記憶とは一体なんなのか。

過保護ノクティスのスキル"保護本能"が発動し、問い詰める前に慰める作業に入った。

 

「俺たちが悪かった。そんなに酷い思い出なのか。」

「うえっぷ…いや、俺からすればトラウマなだけで側からみれば大したことはない内容だ。」

 

字面だけ見れば上司と部下の関係上、どうしても通らねばならない道だった。

若干の捏造を加えながらメディウムは問題のない範囲で一晩の出来事を語った。

 

「あれは一人のおっさんとお泊まり会をしなければならない状況に陥った、二十歳の夏でした…。」

「待て。既におかしい。」

 

グラディオラスのツッコミは的確。

そのおっさんが何者なのかの説明もなければ一体何があってそんな状況になったのかの解説もない。

話したくないのはわかるがそこからお願いします、とグラディオラスが苦笑いで頼んだ。

嫌々ながらも要望に応えたメディウムは若干の補足を付け足す。

 

「戦闘訓練の為に、メルダシオ協会のモブハント巡りをしてたんだ。ついでに王の墓所捜索も。おっさんは戦闘指南役兼保護者。外で得た伝だ。」

 

おっさんの正体は分からなかったが、状況からすればメルダシオの回し者だろうか。

状況から考えうる見当違いなあたりをつけたグラディオラスは上手く会話に誘導されていた。

これで帝国軍関係者である可能性が無くなり、アーデンへと辿り着く可能性が格段に減った。

この程度の会話誘導で自然に騙されてくれるなど脳筋と青二才だけである。

 

「話を戻すと、ルシス領の外はキャンプかモービル・キャビンが一般的だろう。」

「外に出て初めて知ったよね。」

「例に習って、その時モービル・キャビンで泊まるのが決定したんだ。」

 

あのアーデンおじさんは外が嫌いとかいう理由でキャンプをさせてくれなかった。

なぜ嫌なのかと聞くと、嫌光性(けんこうせい)を理性で制御して人の世界に溶け込んでいるのにわざわざ"元"の状態に戻りたくはないと。

嫌光性とは、シガイが光を嫌う本能のことを指す。

そのおかげで人はまだ生存できているのだが、それはさておき。

何千か何百年前かまでは他のシガイのように遺跡に潜っていたらしい。

 

それも相まって暗がりの外で寝るのは昔を思い出すとかで嫌がられる。

 

「当時は良かったんだ。金はあっち持ちでさ。ベッドもあったし夏の間はほぼ毎晩そういう生活だったし。だが、問題は最終日に起こった。」

 

奢りでモービル・キャビンに泊まるおっさんに既視感がある。

しかし、あの宰相との接点があるか微妙なため一先ず流された。

何より話が気になる。

 

「シャワーを浴びてたんだ。そこまでは覚えてる。覚えてるんだが…。」

「え、そこから記憶がない感じ?」

 

その晩は戦闘三昧から買い放される喜びで、近くの店から酒を購入していた。

さらに言えば果実から作るものではなく、雑穀類を蒸留したアルコール濃度が高い類を飲んだ。

飲酒など人生初で、アーデンにニタニタ笑われながら飲んだ記憶がある。

食事もあらかた終わり、変な酔い方をした当時のメディウムは寝るためのシャワーで記憶を飛ばした。

 

血行が更に良くなって酔いが回りきってしまったのだ。

飲酒後の入浴は危険行為なのでやってはならない所業なのだが、初飲酒後で判断力のないメディウムが分かるはずもなく。

記憶がない間にシャワー室で倒れそうになったメディウムを察知したアーデンが回収して、お腹だけを温めて体の火照りを冷ます処置をしたのが事実である。

その際、服を着ていると処置が面倒なので全裸で横に寝かせた。

そしてなぜか自分も下着だけきて寝た。

 

「朝、起きたら、全裸で寝かされてて…と、隣のベッドに…ほぼ全裸のおっさんが…。」

 

ルシス王家特有の自動ケアルで二日酔いなどなかったメディウムの視界には反対側の寝台でスヤスヤと眠るほぼ全裸のおっさん。

推定二千何十歳。

そんな奴を襲うことなど理性がなくてもしたくないメディウムは絶対に自分が引き起こした事案ではないと言い聞かせたが、起床したアーデンは意味深に笑うのみ。

それ以来、酒は飲んでも飲まれるな。

むしろ飲酒禁止と場所で思い出されるためモービル・キャビンはトラウマとなった。

 

少し大人になって、状況的に襲われたわけではないことは分かっている。

後でアーデンにも確認をとった。

奴は嘘はつかない。

誤魔化しはするが。

過保護ノクティスが暴走しないように、応急処置をとったために起こったトラウマであると訂正してからメディウムは死んだ魚の眼でこう締めくくった。

 

「若気の至りさ…。」

 

ノクティス達はこれからの旅でどんなに疲れていてもモービル・キャビンを使わないと誓った。

 

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