FFXV 泡沫の王   作:急須

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本編と関係のない、ニフルハイム帝国での昔話。
番外編02で話に出てきた迷子の内容。
キャラ崩壊や御都合主義などが一層濃くなりますがあらかじめご了承ください。



番外編 08 迷子

知っている知識と実地は違う。

 

帝都グラレアの片隅に住み着いて早数十年経つディザストロは、十九を過ぎて思い知らされた。

王都の雑然としつつも近代的な街並みとは違い、全てが合理的にまとめ上げられ区画整理されている帝都ならば地図さえ読めればどこへでもいけると思っていた。

考えが甘かった。

たとえ区画整理されていても街並みは変わる。

特に商品を扱う商店区画は顕著。

最近仲良くなった副官仲間に教えてもらったケーキ屋にこっそり行こうと思ってジグナタス要塞を抜け出せば、迷子になるという恥ずかしい黒歴史が出来上がってしまった。

 

土地勘がないと自負するディザストロは百歩譲って迷子になることを受け入れようと思う。

二十歳を超えていなければ大人じゃない。

そういうことにしておく。

しかし、どうしても譲れないのは帰れないことである。

記憶力は良い方だと自負しているため来た道を変えることなど造作もないが、迷子だと認められずに彷徨ったためちょっと道があやふやなところがある。

いや、覚えているはずなのだ。

絶対覚えているはずなのだ。

ただすこーしばかり右か左か忘れ、北か南かあやふやなところがあるというか。

 

誰も聞いていない弁明を心の中で繰り返すディザストロは、とうとう全く関係ない喫茶店の方まで来てしまった。

食品という点では間違っていない気もするが、教えられたケーキ屋では決してないだろう。

看板を見ればエボニーコーヒーで有名なエボニー社が出店する、帝都限定の喫茶店だ。

ここはここで美味しいものが食べられそうだが、別段エボニーコーヒーファンでもない。

好きでも嫌いでもないのにコーヒーに合う甘味を食べても美味しくないだろう。

ディザストロが食べたいのは胃もたれしそうなほどクリームが乗ったシフォンケーキなのである。

 

どうして迷子なんかになってしまったのか、外出禁止なのを知っておいて出て来てしまったのか、なぜアーデンの帰りを待たなかったのか。

ぐるぐると自分を責めるディザストロに、聞き覚えのある声が届く。

 

「ここで何をしている。」

「ちょうどいいところに来なすった!流石自称配下!」

「君が王になってくれれば自称などではなくなるのだが?で、なぜ出歩いている。許可が出たのか?出たなら連絡してくれ。帝都の案内でもするのに。」

「いや、完全に無断外出。あと迷子。」

「二十歳手前で迷子…。」

 

痛いところを抉られたが怯んではいけない。

なんせレイヴスは帝都の兵士用宿舎に寝泊まりしている。

生活用品などは帝都の商店区画で購入せざるを得ない。

つまりこの辺に詳しい。

土地勘があるならばケーキ屋にたどり着ける。

 

「実は、ここの店に行きたかったんだ。」

「…真反対ではないか。」

「え?マジ?」

 

レイヴスに見せた地図をそもそも逆さまに見ていたようだ。

これではいくら歩いてもたどり着けるわけがない。

似たような区画ばかり並ぶ中で、目印に指定されたスーパーは利便上様々なところに出店している。

もう一つの青果店は反対側の区画にしかないがそんなことは知らない。

土地勘がなければ間違えるのも無理はない絵だ。

書いてくれた同僚もまさか帝都出身ではない上にこの歳まで一人で外に出たことがないなど思いもしないだろう。

ディザストロも自分以外にはなかなかいないと思う。

しかし、ここでレイヴスに会えてしかも地図が読めるのだから案内してもらうしかない。

大人しく帰るという選択肢はなかった。

 

「案内を頼めないか。ついでに要塞に送り届けるーなんてことは…できませんかね?」

「しなければこのまま迷子なのだろう。」

「その通りです。帰れません。」

 

帰宅できない事実はもうこの際認めざるを得ない。

ここで否定してもおじさんが闇に紛れて迎えに来る。

ホラー映画のような登場と何をされるかわからないお仕置きである。

回避の可能性は脱走の時点でない。

一体どこでバレているのかわからないが、行動が筒抜けなのだ。

まさか監視カメラ全部確認しているのではないだろうか。

…あり得そうで怖い。

 

保護者の行動が気になり始めたディザストロを察して、早めに餌を与えて檻に返してやろうとレイヴスがため息をつく。

脱走した愛玩動物を保護して返す気分だ。

早く飼い主の元に返そうと地図が指す場所への道のりを考え始めたところで、するりと影がさす。

突然現れた影に何者か理解した。

ついでに愛玩動物に合掌。

強く行きろ。未来の王。

影の主はなんてことないように会話に混ざって来る。

 

「ちなみに何を食べるのかな?」

「もちろんそれは甘くて美味しいシフォンケー…まじっすか。」

「マジですね。何さらっと脱走しているのかな?」

 

ガッチリと頭を掴まれたディザストロは冷や汗をだらだらと流す。

噂をすればなんとやら。

保護者が来てしまった。

この状況からさらに脱走を重ねるのは自ら刑罰を重くするの等しい。

弁明を図ったほうが賢明だ。

 

「これには深くてあまーいわけがあります。見逃してください。」

「見逃すならそもそも外出禁止にしないと思うのだけれど。そんなに食べたいなら帰りを待てばいいじゃないか。」

「頼めば連れてってくれるのか。」

「その代わり仕事を積むね。ただで案内役はしないよ。」

「仕事がなくて奢ってくれるなら帰りをいくらでも待つ。」

「寝言は寝ている時に言うものだよ。」

 

飴と鞭でも特に鞭上手な保護者は抜け出せない程度の強さで頭を掴む。

頭蓋骨がミシミシ音をあげている気がするがきっと幻聴だと思う。

素手で人の頭を潰せるのは人外だけだ。

あ、このおっさん人外だった。

 

レイヴスに助けを求めようと視線を送るが、視線をそらされる。

見捨てられたようだ。

お前後で覚えておけよ。

 

「ほら。行くよ。」

 

スタスタとアーデンに手を引かれる。

しかし、曖昧な記憶が正しければそちらの方面はジグナタス要塞ではない。

一体どこへ行く気なのか。

 

「帰るんじゃないのか?」

「ケーキ、食べたいんでしょ。食べてくと要塞に残してきた仕事が片付かないし、買って帰るよ。」

 

レイヴスを置いて問答無用で引きずられる。

仕事ばかりしているイメージしかないアーデンに土地勘があることに驚いたが、よく考えれば三十年近くは帝都に住んでいるはず。

全く知らない街並みではないだろう。

さらに驚いたのがケーキを買ってくれると言うこと。

脱走のお咎めより先に優しさを与えるとはどう言うつもりなのか。

 

「ケーキを買おうと言うその心は。」

「迷子で焦ってるのが面白かった。」

「み、みみ、みてたのか!?」

「新しい区画を見てきた帰り道に顔色真っ青な部下がいるから驚いたよ。」

 

そういえばそんな予定を聞いた気がする。

副官の仕事であるスケジュール管理はまだアーデン自身が行なっているため、頭からすっぽ抜けていた。

まさか自ら保護者の監視区域に足を踏み入れていたとは。

今度からスケジュール把握をして脱走をしよう。

しばらくは自粛するけれども。

 

反省の色が薄いディザストロであった。

 

ともかく、いい歳して迷子になるアホな部下を見てほくそ笑んだので一先ずお咎めなしということらしい。

このパターンは次やらかした時に加算される。

 

「恥かいた…。」

「覚えてないディアが悪い。」

 

結局、シフォンケーキを二人分買ってジグナタス要塞に帰ることになった。

置いてかれたレイヴスは当初の目的であったエボニーコーヒーを堪能したと言う。

 

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