FFXV 泡沫の王   作:急須

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※本編とは全く関係ないルシス王国とニフルハイム帝国での話。
御都合主義がより一層強くなりますが予めご了承ください。
なお、エピソードアーデンのネタバレが多く含まれております。
ほぼエピソードアーデンネタです。

未プレイの方、途中の方などネタバレになってしまう可能性があるためご注意ください。


番外編 14 建国記念日

一日華やかに行われるルシス王国建国記念日。

初代国王であるソムヌス・ルシス・チェラムの像がお披露目される、年に一度の記念日。

たとえ外が戦争中でもこの日ばかりは無礼講。

他国との戦闘だって忘れ去った一日の安寧の日。

 

「今年は順調に行えそうでしょう。」

「ああ。メディウムも、突然の召還命令にも関わらずよく戻ってきてくれた。」

「可愛い弟の為ならば何処へなりとも駆けつけますよ。」

「うっせ。親父が呼ばなきゃ今年も帰れるか怪しかったくせに。」

「はっはっは。」

 

人々が沸き立つ中、国王であるレギスは王城から街へとレガリアに乗り込む。

その後ろに高校へ入学したばかりのノクティスと副官の仕事を死に物狂いで片付けて今年の帰還の日をもぎ取ってきたメディウムが続く。

 

「兄貴、外に出てからその後は一回も建国記念日に帰ってきてないだろ。第一王子がいつも見当たらないって不満の声が結構上がってる。」

「うげっ。俺のことなんか忘れて楽しめばいいのに。」

「民達も皆、あの日のことを忘れていないのだろう。それも含めてもう一度参加してほしいのだろうな。」

「…あの日ねぇ。」

 

自然とレギスとメディウムの目が数年前に新調された魔法障壁増幅装置に向く。

ビルの屋上などの高いところに設置されたソレは何年か前にとある人にぶち壊されたことがあった。

 

ーーそれは四歳を迎えて間もないメディウムはよく覚えていない日。

 

シガイ化したイフリートを従えた"アダギウム"と言う名の禁忌。

真の名をアーデン・ルシス・チェラムがルシス王を屠らんと迫り、初代ルシス王を眠りから呼び起こさんと大暴れした日。

あの一日の出来事をメディウムはっきりとは覚えていない。

ただメディウムはシガイ化の"向こう側"を見る力があった。

 

魔法とシガイの合わせ技である完全に他人に化ける術。

魔法とシガイという時点で行える人は一人しかいないのだが、その時点ではメディウムはまだ王位につく可能性があった。

たとえその正体が暴けたとしても優先的に避難を促され、致し方なく従った覚えがある。

 

「え?兄貴なんかやらかしたの?」

「やらかしたのはニフルハイム帝国の方だ。…アダギウム確保に至らなかったのが大きな打撃です。」

「今尚沈黙を貫いているのが気になるが、帝国の手に渡っているのは確かだな…。」

 

どうせ使命はもう確定してしまっているのだ。

ノクティスの為に生まれたアーデン。

アーデンの為に生まれたノクティス。

その二人の為に生まれたメディウム。

中間の名を冠するに相応しいと嘲笑ったのは誰だったか。

 

「そういえば、おじさんを初めて見たのはあの日だったか…。」

「は?おじさん?誰だそれ。」

「外の友人か?」

「いえ、まあ。お世話になった人です。外で生活をしている方なのですが今もお世話になっています。」

 

その逃げたルシスの禁忌が今の義父だとは言えず、メディウムは口をつぐんだ。

あの時のアーデンはまだ弟のソムヌスに執着していた。

婚約者であるフルーレの神凪の仇であり、玉座からアーデンを追い落とした元凶だと。

 

しかしアーデンが神に指名された時点でもはや救いようのないほどシガイに侵されていたはずだ。

シガイを吸収し、体を侵食されて尚陽の光を浴びていたのがいい証拠だ。

クリスタルに弾かれるのも、もはや道理というもの。

逆恨み、とは少々違うかもしれないけれど結果的に己の決断で王位から転がり落ちたのは間違いない。

 

初代王ソムヌスも、恋人たるフルーレの者を切り捨てなければここまで恨まれなかっただろうに。

 

「ノクトは知らなかったな。まだノクトが産まれていない年の建国記念日の話だ。」

 

ノクティスが産まれる二年前。

ニフルハイム帝国はルシスの禁忌であるアダギウムを国内に潜入させ、民間人に怪しまれぬよう魔法障壁内部へと侵入した。

その狙いは魔法障壁の範囲と効果を増幅させる増幅装置。

いくつかある増幅装置をできる限り破壊することで外から破ろうと考えたのだ。

 

元々アダギウムの行方を追う過程で何名かの殉職者が出た王の剣では対処が難しく王都警護隊が出動する事態にまでなった。

最大の理由はシガイ化したイフリートを従えていたことだろう。

盟約により増幅装置を守護していた歴代王の守護像でさえも神には敵わなかった。

ファントムソードも備えたアダギウムはまさしく最大の敵と言えた。

 

しかし、アダギウムは弟ソムヌスへの怒りが収まらずニフルハイム帝国の作戦から離れ単独でレギス王と対峙した。

 

「親父がそのアダギウムって奴を退けたのか?」

「…陛下。言いたくなければ言わなくても。」

「いや、構わないさ。ノクト。私はアダギウムに負け、殺されかけてしまったんだ。」

「はぁ!?」

 

驚くことに王の力を持ってしても不死身のアダギウムに敵わなかった。

未だ真の王の使命を与えられた王族はおらず、メディウムもまだレギスの庇護がなければ生きていけない。

今ここで王が死んでしまえば、後の幼き王が家臣の傀儡になってしまう。

それを恐れた歴代王、最初の王ソムヌスは分厚い鎧を纏い兄を止めようと現世へやってきた。

 

「が、それもまた打ち倒されてしまった。」

「うっそだろ!?」

「本当の話だ。なぁ。クレイラス。」

「ああ。メディウム様を抱えて中心地から高いところへ逃げた時に見たよ。あれは酷いものだった。」

 

運転手をしていたクレイラスにメディウムが同意を求めると、神妙に頷いた。

あの時飲まされた苦汁はひょうきんな彼でも苦い顔になってしまうほどらしい。

クレイラスに抱えられながら周り中を王の剣で固められたメディウムが人の隙間から見た赤毛と炎だけははっきりと思い出せる。

夕陽のような凄まじい赤だった。

 

しかし残念なことにアダギウムの真の姿を目で捕らえられたのはメディウムだけであった。

その後ニフルハイム帝国の宰相が目の前に現れても、あの時の赤だと気づけた人は誰一人としていない。

既にディザストロとして帝国側にいたメディウムがわざわざ教えるのもおかしな話だ。

 

「大ピンチのレギス王を助けたのは剣神バハムート。アダギウムを退けたのは神様ってわけなのさ。」

 

見兼ねた剣神バハムートによりアダギウムは突如姿を消し、イフリートも去っていった。

外から侵攻を開始していたニフルハイム帝国は避難誘導と共に激戦を繰り広げた王の剣と王都警護隊によって撃退。

レギス王も救出され、その年の王国建国記念日は散々なものだった。

 

「あの王国記念日の目玉はソムヌス像でもあったのだけど、丁度メディウム様の初お披露目も含まれていたんだ。」

「幼いメディウムを一目見たいという民達には申し訳が立たない日だった。」

「そのあと俺も滅多に公に出なくなっただろ?民衆は俺が公に出る公務にトラウマを抱えたと思ったらしいんだ。」

 

実際本人は平然としているのに民衆も心優しいものだ。

自分達のせいではないのに子供に怖い思いをさせてしまった罪悪感が、今メディウムが建国記念日に帰還した事実につながる。

第一王子も参加するとあって例年よりも賑わっているとか。

クレイラスもコルも張り切ってしまい、メディウムの警護は王たるレギス並みに厚い。

 

少し前に別の公務に参加した時もメディウムへの警備は重く、多く動員される。

それでもレギスよりは劣っていたはずが今日ばかりは皆やる気だ。

祝日のはずが仕事をさせているだけで悪いのに更に厄介なことにメディウムを一目見ようと民衆が押し寄せるだろう。

賑やかかつ華やかなのは良きことでも何事も節度を持って、だ。

 

「そういうわけで、俺にとっちゃ建国記念日はある意味特別な日…あっ。」

「ん?どうした兄貴?」

 

スルリと通り抜けた誰か。

大柄な、少し暑苦しいような服装。

しかしそれを目に止められたのはメディウムただ一人。

その意味を理解した瞬間に酷く呆れたように、うんざりしたように眉を下げた。

 

「俺が参加する建国記念日はアダギウムがいないと気が済まないのか…?」

「なにっ!?アダギウムがいたのか!?」

「一体どこに!?」

 

慌てて車を止めようとしたクレイラスを落ち着かせながら走る速度を緩める。

行き交う人に目を光らせるレギスと好奇心から外を見るノクティス。

どうせ探したところで見つけられるのは義理の息子だけだというのに。

 

「もう行ってしまいましたよ。追いかけるにも、この人混みでは捜索は難航するかと。」

「…そうか。」

 

険しい顔のまま席に座りなおし、残念そうに乗り出していた身を落ち着かせた親子があまりにもそっくりでクスクス笑う。

アダギウムなど探したところで見つけることは不可能なのだから、平和を甘受できる今を楽しむべきだろう。

ソムヌス像を見て"貌"を亡くした賢者など、誰が見たいものか。

 

「戦闘の意思はおそらくないでしょう。放っておいても問題ありません。」

「そうだと良いのだが。」

 

不安そうにするレギスを見る瞬間は実に少ない。

それほどアダギウムと言う名の脅威が強いのだろう。

晴れの日になんとも言い難い暗雲が迫れば顔が曇るものだ。

余計なことを口走ってしまったとメディウムは密かに反省する。

 

目の前には本日最初の公務であるパレードのスタート位置。

この空気のまま出るわけにはいかない。

切り替えるように明るい声で笑った。

 

「さあ、パレードの時間です。クレイラス。天井を開けて。」

 

 

 

 

 

 

 

 

夜まで続くお祭り騒ぎの王都インソムニア。

いつくか点在する高いビルの屋上にそっと降り立ったメディウムはコートとスカーフをたなびかせる大柄な男の横に立った。

ビルの縁から下はさらに小さなビル群と煌びやかな喧騒。

上から見下ろす摩天楼に視界が彩りを認識する。

 

王族の警護も街の警備もひと段落した王の剣達や王都警護隊の姿もチラホラ混じるようになった祭りの延長戦。

第一王子が城にも一人暮らしを始めた第二王子の家にもいないことなど誰も気にしないだろう。

ふらりと何処かへ消えて、また街のどこかで筆を執っているのだろうと。

まさか、ニフルハイム帝国宰相でありルシス初代国王の兄たる禁忌の存在アダギウムと面会していようとは夢にも思わない。

 

「昼間、街にいたな。初代国王の石像を見に?」

「…まぁね。」

 

隣に立ったとしても深く被られた帽子と暑苦しいぐらいに肌を隠すために着込んだ服のせいで顔も伺えない。

下から覗き込もうとしても少し上にあげたスカーフが邪魔をする。

きっと今の彼は様々な人々をシガイ化させ復讐に身をやつしたニフルハイム帝国宰相の顔ではないのだろう。

ひっそりと世から消えた"人々を救う使命"を背負ったアーデン・ルシス・チェラムの、聖王になるはずだった人の顔なのかもしれない。

 

夜叉王も街のどこかから兄を見ているのだろうか。

もしかしたら"シガイの王の贄となる使命"を持ったメディウムと"選ばれし王の贄となる使命"を持ったアーデンを見て嘲笑っているかもしれない。

結局自殺を選んだところも同じ。

神に逆らえないままなのも同じ。

人々を救える才があるのも同じ。

国を背負える万能者であるが故に蹴落とされた王。

 

こうまでして同じ存在を作り上げる必要があったのかと呆れるほどメディウムとアーデンはそっくりだ。

繰り返しの世で同じ茶番劇を繰り返すならばノクティスとアーデンが消えた後、メディウムがシガイの王の後釜にでも治るのか。

それとも残った王族として玉座に座らされ、子が出来た時にシガイの王になるのか。

神にしかわからない運命が示す未来に翻弄される我々を歴代王は不憫だとは思わないのか。

 

己も振り回されたのだから甘んじて受け入れろとでも思っていそうだ。

 

「ホント、見破るの上手いよね。俺の変装。」

「本気で化けられたら見破れないさ。時折ブレて中身が見える気がするだけで、実際に全て見えてるわけじゃない。」

 

その赤毛が見えれば一発で分かるとは言わなかった。

ブレるほど曖昧な変装をする時は舐めてかかっている時だけだ。

メディウムを騙すつもりでやって来たのなら見破るなど以ての外。

ただ約束通りにアーデンの邪魔をせぬよう言うことを聞くぐらいしか出来ることがない。

 

ただその場を支配する静寂だけがこの空間が異常なのだと告げてくる。

下界と切り離されたような流れの中で静かな時をただ過ごしていく。

何者にも邪魔をされない時間の中でアーデンがスカーフを少しだけ下げた。

顔を覗こうとしたメディウムの顔面に帽子を押し付け、その腰を抱え上げる。

 

「さて。帰ろっか。」

「は?嘘だろ?弟にも陛下にも挨拶してないんだけど!?ちょっと!?」

「口閉じてないと舌噛むよ。」

「まっ!?」

 

帽子だけしっかりと握ったメディウムを抱え込むままに足がすくむようなビルの屋上から飛び降りる。

黒い粒子となって一度消えたアーデンに走馬灯が見えかけているメディウムは唯一感触のある腰に回る手を頼りに目をつぶった。

途中で放り投げられたりしたらシフトが使えたとしても骨折では済まない高さから準備もなしに飛び降りたことなどない。

 

ふわりと一陣の風が通り抜けた瞬間に戻ってきた人肌と暑苦しいコートの気配を察知し、後先も考えずしがみついた。

頭上から呆れたようなため息が聞こえたとしても手の力は緩めない。

自力で降りられる魔法があったとしてもまるで何も出来ない非力な人のように振る舞えるのはこの義父だけなのだから。

揺りかごに揺すられるままでいい赤児の気分はこの人の腕の中しか知らない。

 

頬を切っていく風とメディウムを抱え上げる人が時折高いビルの地を蹴る音だけが響く。

なんの音もしないのに浮かび上がるのはシガイの力による二段ジャンプ。

人間離れした動きを隠そうともせず駆け抜ける道は、街でアーデンを見かけた時に予めメディウムが指示しておいた誰一人として警備がいない道だ。

信頼を勝ち取った第一王子の地位はこう言う時に役に立つ。

 

「帰ったらニフルハイム帝国建国記念日の予算組むからね。」

「ヴァーサタイルのテンションが上がりそうだ。」

 

愛国心溢れ過ぎてかなり問題行動の多いマッドサイエンティストを思い浮かべ、苦笑いがこぼれた。

 

 

 

 

 

 

 

翌日メディウムが消えた王城はパニックとなり、ノクティスの元に届いたメディウムからのメールによって数刻をもって収束した。

暇が出来た夜に電話口でレギスとノクティスが顔を突き合わせ、兄に非難の声を送る。

 

「一言ぐらい言ってから帰りなさい。」

「ーーお父様が父親らしいことを。」

「忙しいのは分かっけど、ビックリするから本当やめてくれ。いやマジで。」

「ーーあー、うん。面目ない。」

 

電話口の向こう側。

少し離れたところからクスクス笑う誰かの声が聞こえる。

メディウムの笑い声にそっくりな少し胡散臭いソレに親子は首を傾げた。

誰かいるのかと聞く前にメディウムが後ろに向かって静かにしてくれと声をかけている。

 

「ーー本当に申し訳ない。今日一日そっちで過ごすつもりだったのに急ぎの用事が…ああ!もう!今話しながら書いてるんだから後ろで笑うな!」

 

ガサカザ紙を乱暴にめくる音と遠い笑い声とキーボードを手早く叩く音。

ニフルハイム帝国の諜報活動で常に気を張っているのかと思えば存外楽しんでいるようだ。

騙っているのか黙っているのか知れないがいずれ裏切るかも知れない友人なのか。

 

兎にも角にも誰かに肩入れすることは好ましくないが誰とも関われないのも問題だ。

いずれにせよ親として悲しむべきか国王として喜ぶべきか複雑である。

深く考えないノクティスは呑気なもので、兄は国際交流においてのコミュニケーション力も高いのだと嬉しそうだ。

 

「ーー……だよ。………に……通り……。」

「ーーは?嘘だろ?ここも訂正?首脳部本当なにしてんの?てか!喧しい!電話!電話終わってから!すみませんお父様!弟!何かあったらまた電話かけてくれ!会うのはまた来年!」

 

ガタガタ言い合うバックヤードと慌てたように電話を切られた。

身元を隠すために名前を呼ばなかったようだが、後ろにいたのはいったい誰だったのか。

 

「兄貴、忙しそうだったな。」

「ああ。政府首脳部に潜入しているらしい。ノクトも勉学に励みなさい。」

「うげぇ…。」

 

ルシス王国の建国記念日は今年は滞りなく終わりを迎えられた。

 

 

 

 

 

 

「えー、本日はお日柄もよく、建国記念日たる今日にふさわしきーー。」

 

重鎮が座る防弾ガラスが完備された来賓席。

イドラ皇帝のすぐ後ろに控える宰相アーデン・イズニアの隣に当然のごとくディザストロ・イズニアが控える。

建国記念日にはアコルドからの使者やテネブラエから女王陛下が訪れ、今年も実に賑やかになりそうだ。

 

例年通り当たり障りのない挨拶の言葉をつまらなそうに聞く国の実質最高峰の相手もいつも通りだ。

 

「暇。ディア、一発芸して。」

「今スピーチなされているのは貴族階級でも高い権力を保有しています。つまり後で俺の首が飛びます。嫌です。」

「じゃあお茶飲みたい。紅茶。レモンティー。ミルク不可。」

「我儘を言う暇がありましたら話を聞いてください。後でごますりに来て対応できなくても知りませんよ。」

「ディアこそ。こっち構ってないで話聞いてあげたら。」

「宰相副官としてなに不自由なきよう補佐するのがお仕事ですので。」

 

イドラ皇帝の耳に入らないように防音魔法を貼りながらコソコソと押し問答。

不審人物極まりない顔の見えないディザストロとアーデンの小芝居は最早名物だ。

誰も知らない内部事情とはいえ生まれ育った国でもないニフルハイム帝国の建国記念日に参列すること自体にここまで興味がないのはいかがなものだろうか。

もう少しばかり関心を持った方が良い程適当だ。

 

「ルシスの時はあんなに大人しかったのに。少しぐらい大人しく出来ないのか。」

「別に俺大人しくしてないし。暴れてたし。」

「そんなところ主張しないでくれ…ください。」

「敬語に戻したって読唇術使えるのは俺とディアだけだし意味ないよ。」

 

呆れて敬語がすっ飛んだディザストロを揶揄うアーデンをあしらいながら、挨拶を終えた貴族を見る。

こうして皇帝陛下と宰相閣下ご臨席の上挨拶を述べるのは良いのだが、聞いている側はとてつもなく眠い。

どうでもいい話や貴族の自慢話など聞いても何の役にも立たない。

 

そんな事のために予算を組んでいるのではない!と叱りたい気分になる。

どうせ伝えたってまともに聞いてもらえないのだから骨折り損のくたびれもうけだ。

 

「ほら、後二人だから。ちゃんと座ってください。」

「はいはい。」

 

足を組んでずり落ちそうなほど腰を落とすアーデンの肩を軽く叩いてきちんと座らせる。

ずっと立っていなければならないディザストロより遥かにマシなはずなのに贅沢なものだ。

 

「これ終わったら街に行くからね。」

「何処へでもお供いたしますよ。宰相閣下。」

 

この会話の約五分後にアーデンは爆睡した。

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