飛行船支援母艦若宮   作:h.hokura

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個人的には本人が望んでいないのにTS化し、翻弄される話しは好きですね。



ブルーマーメイド編
飛行船支援母艦若宮


『ワイバーン01着艦します、作業員は回収準備について下さい。』

『ワイバーン05発艦準備に入ります。』

洋上を航行するブルーマーメイド所属・飛行船支援母艦若宮の飛行甲板上で無人飛行船の発着が行なわれている。

『こちら飛行管制室より艦橋へ、11地区の捜索を完了、引き続き13地区の捜索を行います。』

若宮の艦橋で艦長席に座る女性が、座席に据え付けられた艦内通話機を戻す。

「副長、今後の本艦の進路を変更します、13地区の捜索終了後は17地区へ向かって下さい。」

「了解です艦長・・・整備局が何か?」

眼鏡掛けた切れ者といった感じの副長が、艦長の傍らに来て声を潜める。

「・・・捜索範囲をもっと広げるとの事です、明確な理由の説明はありませんが。」

美しい黒髪を肩まで伸ばした艦長は溜息を付いて答える。

若宮は消息不明となった横須賀女子海洋学校の教育艦の捜索に借り出されていた。

「どうなっているんでしょうね、海洋実習に参加した艦が行方不明になるなんて。」

本来若宮は海洋実習の支援を行なう為に出航してきたのだが、突然消息不明となった教育艦の捜索を命令されたのだ。

「分かりません、しかし参加した艦が全て消息不明というのは異常過ぎますね。」

はっきり言って前代未聞な話しだが、何が起こったのかは情報がまったく入ってこない。

最初に指示された捜索範囲も集合地点の西之島新島沖だったのに、今はもっと広範囲に広がっている。

艦長も副長も事態が尋常では無くなって来ている事を感じていたが、海上安全整備局が何を意図しているか分からないでいた。

「そう言えば海洋実習に参加している教官艦さるしまの古庄指導教官と神城艦長は同期でしたね。」

副長は艦長に顔を寄せて聞いてくる、それは個人的な会話の為だったのだが。

「・・・ええ、優秀な女性です、彼女が何かミスを犯すとは思えないのですが。」

副長に顔を寄せられ、神城艦長は何故か落ち着かない様子になる、それは神城艦長が女性とのコミニケーションに未だに慣れていないからだ。

ブルーマーメイド所属艦故乗員は当然女性ばかりだということもある。

それは何故と言われれば答えは簡単だ、神城艦長は副長や乗員達と違い生まれながらの女性では無かったからだ。

 

ブルーマーメイド所属・飛行船支援母艦若宮の艦長である神城綾。

彼女は横須賀女子海洋学校に入学するまでは、神城薫という名の男性だった。

 

神城薫が東舞鶴男子海洋学校の受験を目指していたある日、彼は学校で突然倒れてしまう。

そして病院で目覚めた薫を待っていたのは医者の驚愕すべき次の一言だった。

「君は検査の結果女性だった事が分かりました。」

要は身体は男性だったが、遺伝子的には女性、つまり半陰陽だったのだ、彼、いや彼女は・・・

本人がパニックに襲われたのは言うまでも無い、ただ母親だけは至極冷静だったが。

結局、その母の説得もあり、薫は女性になる為の手術を受ける事になった。

そして身体の調整と女性としての教育に一年間費やし、晴れて横須賀女子海洋学校に入学する。

女性となった為に・・・いくら何でも男子高である東舞鶴男子海洋学校には行けないからだが。

名前も神城薫から神城綾に変えて。

その時、初めての(当たり前だが)女子だけの生活に戸惑っていた綾をフォローしてしてくれたのが、古庄薫だったのだ。

同じ教育艦で3年間過ごし、親友と呼べる程親しくなった、少なくても神城艦長にとってはそうだった。

女性となった自分に始めて出来た友人、学業でも女子海洋学校での生活でも助けられたのだ。

卒業後、古庄薫は横須賀女子海洋学校の指導教官に、神城綾は若宮の艦長に、それぞれ進む先が分かれたが、それでも連絡や時間が合えば会ったりしたものだ。

今回の海洋実習についても、『面白い娘達が居て楽しみよ。』、1週間前に彼女から有った連絡を見て元気そうだと安心していた。

それだけにさるしまがも消息不明と聞いた時、神城艦長は酷く心配させられたのだ。

艦橋の窓から洋上を見ながら神城艦長は溜息を付く、その艦長に副長が更に身を寄せてくる。

「ふ、副長、ちょっと顔が近いですよ。」

もう顔と顔が触れ合ってしまう程の距離、良い匂いもして落着かない、いくら身体が女性になり、何年も女の世界で生きて来たとはいえ、やはり男としての方がまだまだ長かった神城艦長としては、簡単には慣れそうもなかった。

もっとも副長の方は気にもしていない、まあ彼女の方は同性同士だと認識しているからだ。

余談だが神城艦長のこういった所が副長や乗員達に可愛いと好評なのだった。

「あ、すいません・・・でもお耳に入れて置いた方がよろしいかと思いまして。」

先程より更に声を潜め副長が言ってくる。

「整備局に居る友人が漏らしていたのですが、実習に参加している教育艦が反乱を起こした、という情報があるそうです。」

「反乱ですか?それは穏やかではありませんね。」

教育艦の乗員は横須賀女子の生徒達、神城艦長の後輩達だ、彼女達がそんな事を仕出かすとは考えたくもない話だ。

「ええ、ただ真偽の程は分かりません・・・ただ海上安全整備局がこれに対し強硬手段を取ろうとしているという話も流れている様です。」

「・・・・・・」

教育艦の反乱が事実だとしたら事は横須賀女子だけでは済まない、ブルーマーメイドの存亡にも繋がってしまう。

今頃、横須賀女子海洋学校の宗谷真雪校長は苦慮しているだろうと神城艦長は心が痛んだ。

宗谷校長は神城綾として横須賀女子に入学する際、事情を唯一知る人間として配慮してくれた人だ。

古庄指導教官と共に神城艦長にとっては最大の恩人なのだから。

そんな時だった、艦長席の艦内電話がコール音を鳴らす。

「はい艦橋です。」

『こちら無線室、救難信号を受信しました、13地区です。』

受話器を取って呼び出しに出た神城艦長に報告が入る。

「発信した相手は分かりますか?」

『船舶ではありません、低出力なので、救命ボートからだと思われます。』

ボートに積まれている非常用救難信号発信機からという事らしい。

「飛行中の無人飛行船を使って発信地点を割り出して、飛行管制室に連絡して下さい。」

『了解です艦長、20分で終わらせます。』

「お願いします。」

そして神城艦長は通話先を飛行管制室に切り替えて呼び出す。

「飛行管制室、艦長です、救難信号を受信、無線室が発信地点を計測後連絡して来ますので、飛行船を向かわせ下さい。」

『飛行管制室、了解です。』

「今回の実習参加艦のどれかでしょうか?」

指示を終えた神城艦長に副長が問いかける。

「それはまだ分かりませんが・・・兎に角、発信地点確認後、本艦も向かいます。」

「了解です艦長、救難体制に入ります、」

神城艦長が頷くの確認した副長は、艦橋後部にある艦内放送器に向かい、マイクを取り上げる。

「全艦救難体制に入って下さい、繰り返します全艦救難体制に入って下さい。」

そして艦内放送器横のレバーを倒し、アラーム音を響かせる。

 

2時間後、救難信号の発信地点に若宮は到着していた。

その前に発信地点に到着していた飛行船の映像から、それが救命ボートであり、女性らしい人影を確認していた。

ただその要救助者は飛行船の接近にも反応を示さず、神城艦長はそれが気掛かりだった。

『こちら艦首見張り、救命ボートを確認、右舷30度、距離500。』

「機関停止、救命艇の発進準備を急いで下さい。」

見張り員からの報告を聞いた神城艦長が指示する。

「機関停止。」

「救命艇の発進準備急げ。」

機関員と副長の復唱が重なる。

神城艦長は艦長席から立ち上がり、艦橋の窓に寄ると、双眼鏡を構えて救命ボートの方を見る。

洋上で波に揺られる救命ボートに若宮の救命艇が接近して行くのが見える。

どうか無事であって欲しい、神城艦長は願った。

 

『救助班より艦長へ、要救助者を収容完了、意識は有りませんが、大きな外傷は認められず。』

「ご苦労様です、要救助者の身元は分かりますか?」

要救助者を収容した救助班からの報告を聞いた神城艦長が問いかける。

『ブルーマーメイドの隊員です、氏名は・・・』

要救助者の身分証明証を救助班員が確認している様子が無線越しに聞こえてくる。

『古庄薫二等保安監督官です。』

「・・・・!?」

神城艦長は思わず艦長席から立ち上がってしまった。

「薫さん・・・が?」

唐突な再会に呆然となる神城艦長を、副長や乗員達は心配そうに見つめるのだった。

 

横須賀女子海洋学校とブルーマーメイド、そして海上安全整備局を巻き込んだ「RATtウィルス」事件の一端に神城艦長と若宮乗員達が初めて遭遇した瞬間だった。

 

 

若宮

若宮型飛行船支援母艦

(元イギリス・ユニコーン型飛行船支援母艦)

基準排水量14,950トン

全長194.9 m

最大速力24.0 ノット

搭載飛行船15隻(補用5隻)

乗員45名

イギリスとの協定により日本に引き渡され、若宮と改名される。

飛行船の母艦として運用されると共に他艦の飛行船の補給や修理、

整備を支援する飛行船工作艦。

また飛行船や補給物資、人員の輸送を担う事もある。

その為、ブルーマーメイド内では、便利屋と呼称されている。

しかしこの呼称は乗員達には不評であると伝えられている。

艦長は神城綾二等保安監督官。

 




また色々と趣味丸出しの作品を書いてしまいました。
TSとか工作艦とか・・・

出来れば寛大な目で見て頂けると助かります。
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