飛行船支援母艦若宮   作:h.hokura

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ブルーマーメイド強制執行課保安即応艦隊の宗谷 真冬が登場します。
若宮と強制執行課との共同作戦の結果は?

なお強制執行課と宗谷 真冬に対する設定は私の勝手な設定ですのでご了承下さい。



ブルーマーメイド強制執行課1

「強制執行課の支援ですか?」

若宮の副長は艦長である綾の言葉に繭を顰めて聞き直す。

「ええ、安全監督室情報調査室が内偵をしていた密輸組織の拠点が見つかったらしいですねそれで・・・」

支援任務を終え横須賀基地へ帰港中だった若宮にそんな命令が入ったのだ。

「副長の言いたい事も分かります、ですがこれも任務ですから。」

「それは承知しているつもりですが・・・」

何時もは任務に真摯な副長が見るからに気が進まない表情には理由がある、ずばり強制執行課絡みだからだ。

強制執行課、正式名はブルーマーメイド強制執行課保安即応艦隊。

その名の通り、任務は犯罪者相手の強制執行、制圧し逮捕を行う、ブルーマーメイド内でもその荒っぽさで有名な艦隊だ。

安全監督室から要請があれば即座に現場に急行、必要とあれば強力な火力とスキッパーによる突入部隊で相手を瞬く間に鎮圧する、その為一部の者達には海賊戦法と揶揄されているのは有名な話だ。

その為か隊員達も気性が激しい者が多く、他の艦と組むと必ずと言うほど双方の間に軋轢が生まれると言われているのだ。

だから一緒に行動する事になる艦艇の艦長はその扱いに苦労させられるらしく、それがあって誰も強制執行課との共同作戦を歓迎する者は居ないと言われている。

「副長、べんてんとの会合ポイントへ向かいます、航海科に指示を。」

「了解です艦長。」

だが何時もと変わらない綾を見て、うちの艦長なら大丈夫だろうと確信し副長は敬礼して答える。

 

会合ポイント・洋上

『艦長、べんてん到着します。』

見張り員の声が艦橋に設置されたスピーカーから響く。

「モニターを作動状態に。」

綾の指示で艦橋前面に設置された大型モニターが点り、接近してくるべんてんが写しだされる。

その艦体は通常の白と赤のブルーマーメイド艦とは違い漆黒だ、これもあって他の者達から余計畏怖される原因にもなっている。

この漆黒は相手を威嚇する意味と共にレーダー探知を妨害する為だとは、ブルーマーメイド内でよく噂される話で綾も聞いた事がある。

そんなべんてんを見つめていると艦長席に据え付けられた艦内電話がコール音を鳴らす。

『艦長、べんてんの宗谷艦長から通信です。』

「繋いで下さい。」

『了解です、暫らくお待ち下さい。』

無線室からの連絡に綾はべんてんとの通信を繋ぐ様指示する。

『ザァ・・・』

回線を繋ぐ雑音がした後、威勢のいい声が綾の耳に飛び込んでくる。

『べんてん艦長の宗谷 真冬だ、若宮の神城艦長か!?』

宗谷 真冬、苗字で分かる通り名門宗谷家の次女だが、その言動から彼女だけ別の遺伝子が入っているとブルーマーメイド内では有名な女性だ。

何しろ艦長である真冬が率先して突入部隊を率いるものだから、海賊船長との二つ名が有るくらいだ。

ちなみに彼女の姉、宗谷家長女の宗谷 真霜は安全監督室情報調査室所属の優秀な隊員で、綾にとっては後輩に当たる。

その関係で何度か真霜と会った事があるが、確かに姉とは全く似ていないと綾は内心苦笑する。

ちなみに真冬も階級は同じだがブルーマーメイド内では綾の後輩の筈なのだが当人は忘れているらしくため口だった。

まあ綾は気にする様な性格では無いのでそのままだ、ただ隣に控えている副長は漏れ聞こえて来る真冬の声に不服そうだったが。

「はい若宮艦長の神城 綾です、初めまして宗谷艦長、今回は宜しくお願いします。」

『・・・おお、こちらこそ宜しくな神城艦長。』

何故か勢いが少々弱くなった真冬の様子に綾は不思議そうな表情を浮かべる。

気を悪くする事でも言ったのかと綾は思ったのだが、真冬がそうなったのはそう言う事で無かった。

と言うのも真冬が宗谷家と強制執行課の人間の為か、相対する側は露骨なおべっかいを言ってくるか嫌味な態度を取る事が多いのだ。

だが綾はそのどちらでもない事に真冬は一瞬戸惑ってしまったのが原因だったのだ。

もっとも直ぐに面白い奴だなと、ある意味先輩対して失礼な事だとは思わず真冬は内心にんまりと笑うと何時もの調子を取り戻す。

『それじゃ早速作戦の説明に入るぜ神城艦長。』

「分かりましたお願いします。」

この時点で真冬は綾の事を気に入り始めていたのだが、当人はまだそれに気付いていなかった。

 

作戦はそれ程複雑な物では無かった。

若宮が飛行船を使い空から密輸組織の拠点を偵察し、規模や人数を確かめた後べんてんを接近させ、火力で抵抗する意思を奪い、その後執行部隊をスキッパーで突入させて制圧する。

まあ強制執行課が何時も使う常套手段、そう海賊戦法そのままだったからだ。

一方飛行船支援母艦である若宮にとっては普段の任務とさほど違わない単純なものだった。

「・・・とは言え、そう簡単に進んでくれるのなら良いんですが。」

真冬との通信を終えた綾に副長が気掛かりそうに話し掛けてくる。

それは強制執行課と作戦を行なうと、必ずと言っていいほど予想外の厄介事が起こると言われているからだ。

「副長が心配する気持ちは理解しますが、まだ起こっていない事を心配しても仕方がありませんよ。」

綾もそう言った強制執行課絡みの話しは聞いていたが、まだ起こっていない事を気にしてもと思い、副長を諭す。

「そうですが私としては・・・」

副長が言いかけた同時に艦内電話がコール音を鳴らす。

「はい、艦橋です。」

『こちら無線室です、べんてんの宗谷艦長から緊急の連絡が入ってます。』

それが綾と若宮乗員達にとって厄介事の始まりだった。

 




宗谷 真冬の様な姉歩肌のキャラは結構好きですね。

それでは。

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