もっともオリ主は最後の方で登場予定ですが。
幼い彼女は泣いていた。
川岸の草むらの中で小さな身体を震わせて・・・
ずっと耐えてきた幼い彼女だったが、最早限界に達してしまったのだ。
突然両親が居なくなり、彼女は見知らぬ大人達によって知らない場所へ連れてこられた。
そこには彼女と同じ様な子供達が大勢いた。
何故そうなったのか、周りの大人達は話してくれず、何も分からないまま彼女は過ごさなければならなかった。
ただせめての慰めは、同じ歳の友達が出来た事だろうか、彼女とっては大切な存在。
だが両親と会えない、家に帰る事が出来ない、そして見知らぬ場所での生活。
それは徐々に彼女を追い詰めていった。
ある日些細な事で彼女の限界は訪れた、そして気付くとこの場所で泣いていたのだった。
このまま消えたい、もうこんな辛い思いをすにのならと彼女が思った時・・・
「こんな所でどうかしたんですか?」
彼女は突然話しかけられる、思わず振向いた先に居たのは・・・彼女より年上の少女だった。
見知らぬ相手だったがその少女の着ている服装には彼女は覚えがあった。
それは彼女の生活している場所に時々来る少女達と同じ服だったからだ。
何でも呉にある学校の少女達で、彼女や他の子達の面倒を見る為に来ていると聞かされていた。
ただその中には声を掛けて来た少女が居た記憶は彼女に無かった。
「・・・お姉ちゃんは?」
「えっとね・・・泣き声がしたんで来てみたんだけどね。」
彼女の問いにその少女は微笑んで答える。
「辛い事があったのかな?」
「・・・・・」
顔を逸らし黙る彼女、前に泣いた時に「泣いては駄目だ。」と周りの皆に
言われたからだった。
泣いたと分かればまた同じ様に言われる、と彼女は思ったのだが。
「そうなんだ、だったら・・・思い切り泣いちゃって良いと思うよ。」
「えっ・・・?」
その少女の意外な言葉に彼女は呆けた表情を浮かべてしまう。
「思いっきり泣いて、辛い事や悲しい事を全部涙と一緒に流してしまったら、また笑顔でがんばっていけると私は思うわ。」
眩しい笑顔とその言葉に彼女の目に大粒の涙が浮かんで来る。
「わ、わああん!」
少女が言った言葉に、今まで押さえてきたものが全て溢れ出すのを止められない彼女。
泣き続ける彼女をその少女は何も言わず見守っていたのだった。
その後、彼女はその少女に連れられ帰った。
帰りを迎えた大人達は怒りはせず、微笑んでくれた。
それを見て、彼女は自分は見守られているんだと今更ながらに自覚した。
「もかちゃん!」
彼女を見ていた子供達の中から見知った娘が飛び出してきた。
「ミケちゃん。」
2人は抱き合う。
「もう何処行ったのか心配したんだから。」
目を泣き腫らした見知った娘、ミケちゃんの様子に彼女、もかちゃんには深い後悔が湧き上がってくる。
「御免ねミケちゃん。」
自分にとって大切な彼女を悲しませてしまった事に・・・許しを請うように強く抱きしめる。
一方もかちゃんを連れてきてくれた少女は大人達と話をしていた。
「それじゃ貴女は呉の学生じゃないのね。」
「はい、横須賀の所属です。」
「そうなの・・・あの娘を連れて来てくれてありがとう。」
「いえ、お気になさらないで下さい、自分の出来る事をしただけですから。」
「謙虚ね貴女、そう言えば呉に何か用事があって来たのかしら?」
「ええ、実は呉の学校に・・・」
その後、事情を説明していた様だったが、まだ幼いもかちゃんには理解出来なかった。
ただ、横須賀と言う言葉だけがもかちゃんの心の中に残った。
そうだお礼を言おう、そう思って踏み出したもかちゃんだったが、他の子供達に囲まれてしまい、それは叶わなかった、そして別れの挨拶さえ・・・いや名前すら聞けずに終わってしまった。
もかちゃんはそれを後々まで後悔する事になるが、やがてその後悔をばねにミケちゃんと共に夢を目指す事になる。
自分も亡き母親の様なブルーマーメイドになってみせると・・・
悲しみの底から助けてくれたあの少女と再会したいと・・・
それが知名 もえかの必ず叶えたい夢となった。
「艦長・・・艦長?」
揺り動かされ知名 もえかは意識を取り戻す、どうやら短い間だがまどろんでいたらしい。
「御免なさい、寝ちゃったかしら?」
頭を振って意識をはっきりさせながらもえかは声を掛けて来た乗員の娘に尋ねる。
「少しですが・・・まあ仕方がありませんよ、私達だって同じ様なものですし。」
その乗員の娘は疲れた笑みを浮かべて答える。
もえかは寄りかかって寝ていた艦橋の壁から立ち上がる。
「くっ・・・」
身体の節々が痛い、この数日間まとまな場所で睡眠を取る事が出来なかったからだ。
武蔵の艦橋にもえかと2人の乗員達が軟禁状態になってからずっと・・・
「状況に変化は?」
「ありません・・・相変わらず武蔵は浦賀水道に向かって進行中です艦長。」
「・・・」
乗員の報告にもえかは深い溜息を付く。
武蔵の艦橋に軟禁状態になってから状況は最悪の方向へ進み続けていた。
どうしてこんな事になったのか、もえかは自身に問い掛けるも、答えは出ない。
もえかを始めとした生徒達の初航海は最悪の結末を目指して進んでいた。
知名 もえかについては完全にオリジナルな設定と展開になります。
こんなのもえかじゃないと思われる方が居たらお許し下さい。
それでは。