飛行船支援母艦若宮   作:h.hokura

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知名 もえか編4話です。
彼女の苦悩に満ちた初航海もこれで終わりです。



知名 もえか4

「艦長、晴風が、晴風が接近して来ます!?」

「ミケちゃん・・・」

晴風は一度武蔵と交戦状態になったが、ブルーマーメイド艦隊(平賀の率いる別動隊)の接近で退避していた筈だった。

「どうして・・・」

もえかは呆然と呟く、今の戦闘を見ていなかったのか?それともブルーマーメイドからの命令なのか。

「・・・晴風に発光信号『接近を中止されたし、武蔵は未だに弾薬豊富なり、自艦の安全を優先されたし。』、急いで。」

兎に角晴風の接近を止めさせなければならない、このままでは明乃や晴風が危険だともえかは考えた。

乗員の1人がもえかのメッセージを送る、だが帰って来た返事は・・・

「『我これより救援に向かう、もかちゃん必ず助けるから待っていて、明乃。』との事です艦長。」

帰って来たメッセージを聞いてもえかは嬉しさと、そして自分にとって大切な明乃を危険に晒してしまう恐怖の二つに襲われていた。

「やっぱり駄目よミケちゃん武蔵は・・・」

歴戦のブルーマーメイド艦隊さえ退けたのだ、まして晴風単艦では自殺行為だともえかは思った。

だが通信を送る以外にもえか達に出来る事は無かった。

そしてもえかの思った通り、武蔵の圧倒的な火力の前に晴風は追い詰められて行く。

「もう良い、もう良いのミケちゃん・・・逃げてお願い。」

ぼろぼろになってゆく晴風を見てもえかは叫ぶ、私は両親だけでなく、大切な幼馴染も失ってしまうのかと理不尽さに震える。

その時だった、武蔵の周りに多数の着弾の水柱が立つ。

「え!?」

晴風では無かった、第一単艦では考えられない数と、その中には大口径のものも含まれている事にもえかは気付いたからだ。

「艦長、後方より接近中の艦影あり、識別信号は・・・これって!?」

モニターシステムを見ていた乗員の娘が驚いた声を上げる。

「横須賀女子海洋学校のてんじんに比叡、舞風、浜風それにこれってアドミラルシュペー?」

「えっそれは・・・いえてんじん以下の艦艇は分かりますが、何故アドミラルシュペーがここに?」

アドミラルシュペーがヴィルヘルムスハーフェン校所属な事を知っているもえかだが、ここに居る理由が分からなかった。

まあこれは女子海洋学校側が内密にしていた為だが、この時点でもえかに分かる訳が無かった。

混乱するもえか達を他所にてんじん以下の艦艇群は武蔵への攻撃を続ける、兎も角これが晴風を援護する為だとは何とか理解出来たが。

これによって晴風は体勢を整えると、予想だにしなかった行動に出る。

発射された噴進弾、どうやら攻撃では無くその噴煙で視界を遮る事が目的だったによりもえかが晴風を見失った直後、武蔵の側面に現れると急激なターンをやってのけそのまま強行接舷してきたのだった。

不意を衝かれもえか達は衝撃により床に倒れこんでしまう。

そして艦内各所で晴風と武蔵の乗員達の戦闘が起こり始めるのがモニターシステム上で見て取れる。

異様な戦闘力を発揮する武蔵乗員達相手に心配するもえか達だったが、晴風側は対処方を用意していたのか、意図も簡単に鎮圧している様だった。

「艦長、外に誰かが来ている様です。」

乗員の声に机などで封鎖したドアを見るもえか、確かにドアを叩く音と共に声が微かに聞こえてくる。

「・・・も・・かちゃ・・・ん・・・」

「ミケちゃん!?」

聞き覚えのある声にもえかは思わずドアに駆け寄り物を退かして行く、すると声と叩く音が鮮明になる。

「もかちゃん・・・そこに居るの?もう何で開かないってきゃあ!!」

物を退かした所為でドアはあっけなく開き、結果的に明乃は勢い余ってもえかに衝突してしまう。

「ミケちゃん、良かった。」

もえかは衝撃など気にする事無く明乃を抱きしめる。

「もかちゃん?もかちゃんなんだね、うんうん良かった良かったよ!」

一瞬驚いていた明乃だったが、直ぐに相手がもえかだと分かり抱きしめ返してくる。

それから暫らく2人は人目を気にする事無く抱き合い、涙を流し続けた。

『思いっきり泣いて、辛い事や悲しい事を全部涙と一緒に流してしまったら、また笑顔で・・・』

幼い頃出会った少女の言葉通り、この後笑顔で語り合う為に。

 

知名 もえかの長かった初航海はこうして終わりを告げたのだった。




スロウスタートもそうですが、原作のあるものを書くのは色々大変ですね。
今更ながらに実感しています。

取りあえず知名 もえかの話しは次で終わりの予定です、ようやくこちらの主人公をだせます。

それでは。

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