なお、合同演習は私の勝手な想像なので予め了承願います。
まあ同じ海で働く者を育てている学校同士、こう言う交流もあっても良いじゃないかと。
「本当にこの格好で合同演習期間を過ごすんですか薫?」
「そうよ綾、貴女は合同演習が終わるまでその姿で居る事、もしろん彼らとの長時間の接触も厳禁、あと常に私か航空科の娘と行動する事。」
薫は真剣な表情で綾に言う、周りを数人の女子生徒達と綾を囲みながら・・・
『皆さんもご存知の通り、本日より東舞鶴男子海洋学校の生徒を迎えての合同演習が始まります。』
武蔵艦内に艦長の声が流れる。
『皆さんにおいては様々な思いがあると思いますが、横須賀女子海洋学校の生徒として恥かしくない言動を取る事を望みます。』
東舞鶴男子と横須賀女子の合同演習、環境の異なる者達が交流する事によって見聞を広め、未来のブルーマーメイドとホワイトドルフィンとしての意識を高める。
そんな意義が込められた合同演習だが、大半の者達はそんな事より異性との出会いが一番の感心事なのは敢えて言うまでも無いだろう、何しろ年頃の少年・少女達なのだから。
艦長からの訓示が終わった後の武蔵艦内が騒がしいのはその点仕方が無い話かもしれない。
もちろんそんな浮ついただけでは無い真剣な者達も居るし、東舞鶴男子との合同演習に嫌悪感を感じている者達も半数はいる。
そしてある生徒を巡って別の意味で真剣な者達も居たのだった。
「と言う訳で皆、合同演習期間中どんな手を使っても守らなければならない事は理解しているわね。」
「もちろんよ薫。」
「ええあらゆる手段を講じてもね・・・」
「絶対に連中に手出しさせないわ。」
「うん!」
武蔵食堂の一角、航海科所属の薫を中心に女子生徒達が集り決意を固めていた。
そこに集っているのは大半が航空科の生徒だが、薫の様に他科の者達も居た。
果たして何をそんなに熱心に話しているのかと言うと。
「あの・・・薫、それに皆さん一体何をしようと言うんですか?」
生徒達の中心に座らされている綾は心中疑問で一杯だった。
その日の実習を終え、部屋に戻ろうとしていた綾は航空科の生徒達に拉致同然に此処に連れてこられたのだ。
「待っていたわ綾。」
親友である薫や顔見知りの他科の生徒達が集合しているこの場所に。
そして突然始まる決意発表?に綾は困惑するしかなかった。
「簡単な事よ綾、今日から始まる合同演習中の対応、貴女の保護についてよ。」
「保護ですか?一体何から私を・・・」
さっぱり訳の分からない綾は薫に聞き返すのだが、次の瞬間薫や他の女子達から一斉に睨まれる。
「綾この際だからはっきり言わせて貰うわ、貴女無防備すぎるのよ年頃の女子としてね。」
指を綾に突きつけ薫は言う、周りを囲む生徒達もその言葉に深く頷いている。
「無防備な事は無いと・・・」
「無いとは言わせないわよ綾。」
綾の弁明を遮り薫は他の生徒達に視線を向ける。
「証人前へ。」
「はい検察官。」
これは裁判ですかと綾は突っ込みたくなった。
「被告人は半月前の艦上運動の際、事もあろうか下着を付けず参加し、危うい姿を一般人に晒す所でした。」
「あ、あれはついうっかりして・・・」
艦上運動と言うのは実習中に運動不足になるのを防ぐ為に行われる物で、艦上を何周も走ったりする。
綾はその艦上運動に参加する際に下着、ブラを付け忘れてしまったのだ。
言っておくが他意は無い、本当に忘れてしまったのだ、女子になって1年以上経つが綾は未だにやってしまう。
だが状況が最悪だった、まず上に着ていたのがよりによって布の薄い白のシャツだったのだ、しかも当日は気温が高く汗ばむ気候だった
そんな状態でブラ無しで走れば結果は言わなくても分かるだろう、綾の大きくは無いが形の良いものが露わになってしまったのだ。
そして武蔵がその時横須賀女子海洋学校の桟橋でなく、一般の港の桟橋に停泊していたのだ。
周りには一般の船舶も停泊しており男性の船員も数多く居る状況に係わらず綾は意識していなかった。
幸い他の生徒が気付き、武蔵艦内に連れ戻された綾は薫から1時間近くも説教をされる事になったのだ。
「うっかりで済まないわ・・・それに貴女にはまだまだ余罪があるんだから。」
これってやっぱり裁判じゃないかと綾は言いたかったが、薫を始めとした生徒達の迫力に黙るしかなかった。
「それでは次の証人前へ。」
薫達の綾への弾劾(?)は続くのだった。
この話しは最初はブルーマーメイド編で書こうと思ったのですが、女子になったばかりの綾が起こしてしまう騒動として書いた方が面白いかなと思い横須賀女子海洋学校編にしてみたのですが。
自分の魅力に気付かず、周りを振り回すTS主人公と言うのは好きな話なので。
それでは。