飛行船支援母艦若宮   作:h.hokura

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花名と綾との出会い編です。
2人はいかにして仲良くなったか・・・



花名と綾1

神城 綾と一之瀬 花名、この2人がお互いを知るのに実は一年近く掛かっている。

綾がてまりハイツに入居して大分たって花名が預けられたのだが、様々な要因が重なって、一年後に2人がある事で顔を会わせるまで、お互いを知らなかったのだ。

それは花名が浪人のショックと新しい環境に馴染めず引き篭もり状態だった事に加え、綾がブルーマーメイドの任務上長期間留守にする事が多かったからだ。

ただ全く気付かなかった訳では無く、綾は志温と一緒にいる花名を見た事が度々あったし、花名も白い服を着た女性が度々出かけて行く姿を見かけてはいた。

だがその程度の認識で終わっていたのだった。

2人がお互いの事を本当に知るのは花名が星尾女子に入学して一月ほどだった時だった。

 

その日、本屋に参考書を見に行っていた花名がてまりハイツに戻り、夕食の為志温の部屋に入った時。

花名は玄関に置かれている紙袋や荷物に気付く、興味をもってそれを覗き込んだ目に入って来たのは、多量の郵便物と宅配便だった。

志温宛かと思って宛名を見た花名はそこに『神城 綾』と書かれているのを見る。

「神城 綾さん?」

聞いた事の無い名前に花名は首を捻る。

志温の知り合いなのだろうか?それにしても何でこんなに大量に?

数々の疑問が沸いた花名は聞いてみようと思いキッチンにで料理中の志温の元に向かった。

キッチンでは志温が鼻歌を歌いながら唐揚げを調理していた。

「志温ちゃんただいま、ねえ玄関にある手紙とかなんなの?」

戻って来た花名の問い掛けに志温は何かを思い出したのか慌て始める。

「あ!忘れてたわ!留守中にお預かりした神城さんの郵便物と宅配便!」

「神城さんって誰?」

やはり志温の知り合いだったのだろうかと花名は思い聞いてみた。

「2階のお部屋の人なの、急いで行かないと!あぁでも唐揚げが・・・」

準備して置いてすっかり忘れていたらしい、しっかりしている様で志温は結構抜けている所がある。

「じゃあ、私が行って来ようか?」

そんな志温を見かねて花名が申し出て来る、日頃何か手助けがしたいと思っていたから。

「え?花名ちゃんが?大丈夫?」

志温はそんな花名からの申し出に驚く。

「うん!大丈夫。」

小さなガッツポーズをして花名が答える。

志温は感激していた、あんなに人見知りだったのに・・・成長したのね花名ちゃん、と。

「じゃ行ってくるね。」

張り切った様子で花名は向かう、まあそこまでは良かったのだが・・・

「志温ちゃん!チャイム鳴らしてから何て言ったら良いか教えて!なるべく細かく!詳しく!」

慌てた様子で戻って来て聞いて来る花名に志温はただこう言うしかなかった。

「花名ちゃん・・・」

 

その後、郵便物と宅配便を持って、綾の部屋の前に立つ花名。

しかし到着してからインターホンを押すまでにまた時間が掛かった。

「えっと・・・えい!」

ようやくインターホンを鳴らす事が出来た花名。

『はい。』

インターホンから流れる声に花名の緊張が高まる。

花名「あ、あの、管理人の者ですが、ふ、不在時にお預かりしてた郵便物と宅配便をお渡しに参りました、です!」

緊張して詰まったうえに語尾が可笑しくなってしまう花名。

『あ、はいお待ち下さい。』

するとドアが開きが黒い髪を肩までのばした女性が顔を出した。

「あの・・・貴方は?」

「・・・あ、管理人の者です、が・・・」

花名は出てきた女性を見て後に続く言葉を失ってしまう。

それが花名がその女性の美しさに思わず目を奪われてしまったからだ。

従姉の志温とは違った美人さん、清楚な雰囲気を身に纏ったその女性に花名は何て言っていいか分からなくなったのだ。

「管理人、さんですか?でも貴女は・・・その若すぎませんか?」

その女性は戸惑った様だった、確かに突然花名が自分が管理人ですと言えば当然そうなるだろう。

本当は『管理人の代理の者です。』と言うべきで、志温もそう教えた筈なのだが、当然の如く緊張し過ぎて花名は忘れてしまったのだ。

「あ、違い、いや違わなくて、志温ちゃんのって、あああ。」

自分の言い間違いに気付き慌てて訂正しようとして花名は、結果的に手に持っていた郵便物入りの紙袋を落としばらまいてしまう。

「す、すません、って痛い・・・」

パニック状態になった花名は抱えていた宅配便を自分の足に落としてしまう。

「大丈夫ですから落ち着いて下さい・・・て危ない!」

「へっ!?」

落ちた宅配便を拾おうとして、花名は開いていたドアに頭をぶつけてしまう。

「・・・!?・・・」

花名の酷いパニック状態は、騒ぎに気付いて志温が駆けつけてくるまで続いた。

 

それから30分後、花名と綾は何故か志温の部屋で向かい合って座っていた。

山盛りの唐揚げを前にして。

「改めて紹介するわね。こちらは202号室の神城 綾さん。」

唐揚げが乗ったテーブルに着いた二人に志温がそれぞれの紹介をする。

「神城さんは何と・・・ブルーマーメイドで艦長さんをなさっているのです。」

何故か志温がどや顔で言う。

「そしてこちらが、私の従妹の一之瀬 花名ちゃん。」

緊張した面持ちで綾の対面に座る花名。

「近所にある星尾女子高校に今年から通っているぴっちぴっちの女子高生なの。」

普通従妹の事を紹介する時には使わないだろう言葉を使う志温。

「初めまして、神城 綾です。」

時々見かけていた娘が管理人さんの従妹だったと知って綾は驚いていた。

それにしても1年近くもすれ違ってたとは綾は驚きを超えて呆れてしまっていた。

「こ、こちらこそ初めまして、い、一之瀬 花名です。」

一方の花名も時々見かけていた女性が同じアパートの住人でブルーマーメイドだった事に驚いていた。

つまりあの白い服はブルーマーメイドの制服だったんだと合点がいく花名だった。

 

こうして綾と花名のファーストコンタクトはなされたのだった。

 




同じ境遇は絆を深めると思います。
アニメに於ける花名と万年 大会さんの様に。
まあこちらでは綾ですが。

それでは。

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