飛行船支援母艦若宮   作:h.hokura

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スロウスタートのSTEP.04 2階のプレミア大会が元になってますが、かなり展開が違いってしまいました。



花名と綾2

それから綾と花名は顔を合わせれば挨拶し短い会話をするまでにはなった。

だが花名の人見知りもありそれ以上進展は無かった。

しかしある日・・・

 

綾の部屋のインターフォンを押す花名。

その時たまたま綾が外出中に荷物が届き預かったものを花名が再び届けに来ていた。

『はい。』

「あ、あのお荷物をお届けに来ました。」

『ああ、ちょっと待って下さい。』

ドアが開けられ綾が顔を出す、相変わらず美人さんだなと花名は会う度に思ってしまう。

「ありがとう一之瀬さん、わざわざ持って来てもらって。」

「いえ気にしないで下さい・・・その色々と興味があって、あいえ違います・・・」

礼を言われ思わず慌てて本音が出てしまった花名、実は綾の事が非常に気になって荷物の渡し役を引き受けたのだ。

ずばりそれは綾がブルーマーメイドの人間だったからだ。

多くの女子が憧れる職業であるブルーマーメイド、花名も幼い頃は自分もなるんだと思っていたものだ。

だが勉強の方は兎も角、運動神経の無さに気付き、早々と諦めてしまったが。

「ふふ、じゃ上がって行きますか?」

花名の慌てぶりに綾は微笑むと部屋に誘ってくる。

「い、良いんですか?」

「ええ構いませんよ、どうぞ。」

綾の誘いに花名は嬉しそうな表情を浮かべて部屋に入っていった。

「どうぞ、何もありませんけど。」

「はい、おじゃまします。」

 

玄関から入ってキッチンとテーブルの有るリビングに案内される花名。

殆ど自炊をしない花名と違いキッチンにある程度の調理器具が置かれているのは綾が料理をする為だ。

「それじゃ座ってね、ああ一之瀬さんはコーヒーそれとも紅茶、どちらが良いかな?」

テーブルの椅子に座る様に花名に促し、聞いて来る綾。

「あ、すいません、えっと紅茶でお願いします。」

椅子に座り部屋を見渡す花名、こう言って何だが余り女性らしい感じがしない、まあ彼女の所も似た様なものだが。

そして視線をテーブルに戻した花名は上に置かれている本に気付く。

それなりの装飾のなされた少し大きめの本には『横須賀女子海洋学校卒業アルバム』と書かれている。

「これって・・・?」

綾の通っていた学校の卒業アルバムだろうかと花名は思って見つめてしまう。

「気になりますか?」

テーブルに紅茶が置くと綾が聞いて来る。

「えっあ、すいません・・・その多少は・・・」

かってはブルーマーメイドに憧れていただけに、花名はその為の学校の存在は興味があった。

「ふふ・・・じゃ見ても構いませんよ。」

花名の対面にコーヒーを持って座った綾が微笑みながら言う。

「ははは・・・ありがとうございます、それでは。」

少々図々しいかと思ったものの、好奇心には勝てず花名はアルバムを手に取り開いて見る。

「あの・・・神城さんは何組なんですか?」

まずは綾の所属したクラスについて見ようとした花名が尋ねてくる。

「海洋学校には普通の学校の様な何組と言うのは無いんです、あえて言えば乗艦していた教育艦がそれに当たりますね。」

「へえそうなんですね。」

花名の通っている星尾女子高等学校と違い海洋学校のはそう言ったものが無い事に驚かされる。

「私の乗艦していた教育艦は武蔵ですよ。」

綾の説明で武蔵のページを探す花名、それは直ぐに見つかった。

巨大な船の写真の下に集合写真がある、それが武蔵に乗っていた生徒達らしいと花名は気づく。

その中に居るだろう綾の姿を探して、あっさりと見つけてしまう花名。

何しろ並んで居る生徒達の中で一際目立っていたからだ、その美しい容貌で。

自分と変わらない年頃でもうこんなに美人だった事に花名は今更ながら驚き、そして落ち込むのだった。

気を取り直しページを捲る花名、授業風景らしいものや食堂だろうか談笑している生徒達の写真が続く。

その写真を見ていた花名はある事に気付く、全てのと言う訳ではないが、大半の写真に綾が必ず写っている事に。

「あの・・・神城さんっていっぱい写っているんですね。」

花名の言葉に綾は困った表情を浮かべ答える。

「アルバム委員の娘達が面白がって載せたらしくて、私としては恥かしいんですが。」

でも分かる様な気もする花名だった、何しろこれだけ綺麗な容姿なのだからと。

そして花名はもう一つ気付いた事があった、やはり全てと言う訳では無いが、綾の隣には必ず同じ女子が写っている事だった。

時には親しげに談笑し、時にはじゃれあったり、というか一方的に綾がされている様だが、という写真が多い。

2人がかなり親しいと言う事が花名にはよく分かる風景だった。

「あの・・・この隣に写っている方はお友達ですか?」

花名の指す写真を見て綾は微笑を浮かべながら答えてくれる。

「ええ、古庄 薫さんです、私の大事な友人です。」

入学式の日に出会い、以後卒業まで親しくしていたと綾は教えてくれた。

それを聞いて花名は栄依子達との事を思い出す、同じ様に入学式の日に出会い、友人になった事を。

「その方とは今もお友達としてお付き合いを?」

「ええ、ただ卒業後は進路が別になったので学校時代の様にはいきませんが、休みが合えば必ず会いますし、連絡も常にと言う訳ではありませんが結構取り合ってますよ。」

嬉しそうに薫との事を話す綾を見て、花名は羨ましくなってしまった。

自分も栄依子達と綾と薫の様に卒業後も親しく出来たらと花名は真剣に思った。

時々会話を挟みながら花名はアルバムの最後にあるページ、卒業者名簿にたどり着いていた。

卒業者の名前、生年月日、所属科などが載せられている。

花名は武蔵の名簿の中から綾と薫を見つけて眺めている中に小さな違和感に気付く。

それは生年月日だった、綾は薫より前になっている、いや他の生徒達に対しても・・・

「これって・・・?」

次の瞬間、それが意味するものを察して花名は愕然とさせられる。

 

綾は自分と同じ境遇なのではないのかと・・・




前にも書いたのですが、花名と綾は浪人と言う点で共通があり、クロスさせて見たいと思ったのですが。
まあ綾にはそれにTSが加わるのでまったく同じと言う訳ではありませんが。

それでは。

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