7/31 ご指摘があったので晴風の主砲を12.7cm単装砲に修正しました。
「皆さんは来週から乗艦体験学習をしてもらいます。」
陸での講義に明け暮れていた晴風の乗員達は臨時の教室である会議室で指導教官である古庄 薫から告げられる。
「あの・・・古庄教官、乗艦体験学習ですか?」
困惑する皆を代表して艦長である岬 明乃が質問する、あまりにも唐突だったからだ。
海洋学校の学習項目に乗艦体験学習は確かに有ったが、入学時に貰った予定表ではそれは大分先の事だと明乃を始めとした晴風の乗員達は思ったからだ。
「ええ、これは実習予定の都合で急遽決まったの岬艦長。」
質問してきた明乃を見ながら古庄教官は答える。
「晴風の復帰にはもう少し時間が掛かります、だからその後の実習予定を考えると、前倒し出来る項目は行なうと言う事になりました。」
晴風は武蔵と一戦で帰港直後沈没してしまった、その後サルベージされ現在修復中だった。
その間当然海洋実習は出来ず、明乃達は陸上で講義を受ける形となっていたのだ。
「分かりました古庄教官、岬 明乃以下晴風の乗員は来週より乗艦体験学習に入ります。」
明乃がそう言って敬礼すると、他の乗員達も立ち上がって同じ様に敬礼する。
「結構です・・・まあ困惑する気持ちも分かりますが、見聞を広める為と思って下さい。」
答礼しつつ古庄教官は明乃達を見ながらそう説明する。
「それで古庄教官、私達が体験乗艦するのどんな艦なんですか?」
明乃の質問に古庄教官は普段彼女達が見た事のない得意げな笑みを浮かべて答えた。
「飛行船支援母艦若宮よ。」
「飛行船支援母艦若宮、元はイギリスのユニコーン型飛行船支援母艦、イギリスとの協定により日本に引き渡され若宮と改名。」
講義が終了後、晴風の乗員達は今度乗艦体験する事になった若宮について、ココちゃんこと納沙 幸子が解説してくれるのを聞いていた。
「飛行船の母艦として運用されると共に他艦の飛行船の補給や修理、整備を支援する飛行船工作艦ですね。」
「工作艦って明石みたいな艦って事か?」
そう聞くのはメイちゃんこと西崎 芽依水雷長だった。
「そうですね、ただ明石は艦艇、若宮は飛行船と言う違いがありますが。」
幸子はそう解説しながらタブレットで明石と若宮の画像を表示させ皆に見せる。
「通常の飛行船支援母艦には無い、飛行船修理施設と補給部品の保管倉庫を持っています、だから主に他の艦艇の後方支援が任務ですね、まあその他に飛行船や補給物資、人員の輸送もやっているみたいですね。」
「そうか、多くの任務を請け負っている訳か凄いな・・・」
そう感心するのは副長兼クラス副委員長である宗谷 ましろ、なおシロちゃんと明乃に呼ばれるが本人は受け入れていない。
「・・・まあそうとも言えますが、えっとこれって?」
幸子がましろの言葉に苦笑しつつ画面をスクロールしていて何かを見つけたのか驚きの声を上げる。
「ココちゃん?」
「あ、すいません実は任務記録を見ていたのですが、若宮は半年前に武器密輸組織が立てこもる小島に艦砲射撃をした事があるみたいです。」
明乃の問い掛けに幸子がタブレットから顔を上げて説明する。
「へっ若宮は支援母艦だよな、それが艦砲射撃したのか?なあ普通そんな事するかタマ?」
その説明に芽依は驚き、隣に居たタマちゃんこと立石 志摩砲術長に聞く。
「・・・聞いた事無い・・・若宮は・・・」
「確かにそうだね、第一若宮が積んでいる艦砲って・・・」
志摩の言葉を聞いて明乃が幸子に問い掛ける。
「近接防御用ですね・・・10.2cm、後は機関砲位ですか。」
ちなみに晴風の主砲は12.7cm単装砲だ、つまり若宮のはそれより威力や射程距離の小さな砲と言う事になる。
これではかなり至近距離に寄らないと艦砲射撃を出来ない事になる。
しかも晴風より大きな艦体でだ、艦砲射撃に詳しい志摩や芽依が驚くのも無理は無いだろう。
「それ以外にも島に突入する強制執行課のスキッパー部隊を発進させたり・・・若宮って色んな事をさせられている見たいですね。」
苦笑いしながら幸子が説明すると明乃も同じ様に苦笑を浮かべる。
「その若宮ことは大体分かったけど・・・艦長さんってどんな人なのかな?」
そう言って聞いてきたのは、航海長であり航海委員を勤める知床 鈴、通称リンちゃんだった。
鈴としては多少改善したとはいえ、まだ晴風の乗員以外との接触は慣れていないからだが。
「えっとですね、艦長は神城 綾二等保安監督官・・・年次的には古庄教官と同期の方ですね。」
「古庄教官と?」
明乃が幸子の説明に驚きの声を上げる。
「はい、しかも同じ武蔵に乗艦されていた様です。」
つまり成績優秀な生徒だった訳だ、まあ艦長をしているくらいだから当然かと皆思ったのだが。
幸子は更に情報をスクロールしながら先を読み進んでいく。
「武蔵では飛行船オペレーターとして優秀な成績を、あ、それ以外にも飛行船の指揮や整備でもですね、それがあって卒業後に若宮の艦長候補の1人に選ばれたみたいです。」
「なるほど・・・飛行船全般の運用に長けていると言う事で艦長候補になった訳か。」
ましろが更に感心した様に言う。
「1年間の選考期間を経て正式に艦長に就任、艦艇の指揮についても優秀な成績を残していますね。」
「そうだったんだ。」
「うんそれは凄いな・・・尊敬をせざるをえないな。」
「それって・・・凄いんだよな?」
「・・・うぃ・・・」
「うう・・・どんな女性なんだろ?」
感嘆する明乃達艦橋要員の中で鈴だけは相変わらず心配げだった。
「うんっと・・・有りました神城艦長の写真が・・・」
そこで何故か固まってしまう幸子に周りの者達、特に鈴が不安そうに見る。
「どうしたのココちゃん?」
「いえ・・・これは見て頂いた方がよろしいかと思います艦長。」
明乃の問い掛けに幸子はタブレットを皆の方に向けて見せる。
「「「「・・・・・・・・」」」」
その場にいる者達はタブレットを見て言葉を失ってしまった。
何故ならそこに写っているのは、美しい黒髪を肩まで伸ばした美人だったからだ。
「もしかしてこの女性が?」
震える様な声で明乃は問い掛ける。
「はい、若宮艦長の神城 綾二等保安監督官です。」
それが明乃達晴風乗員が初めて神城 綾艦長を見た瞬間だった。
公式のキャラを出すのは色々大変ですね、口調とか性格とか。
てはいえ今後ともこちらの主人公とは絡ませいきたいところですが。
それでは。