飛行船支援母艦若宮   作:h.hokura

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TS物における過去(男性時)との対峙は外せない話だと思います。
大きく人間関係が変わりますから。



星尾女子文化祭1

予定より伸びた洋上任務を終え、てまりハイツ戻って来た綾。

とりあえず着替えて風呂に入ろうかと考えていた綾の部屋に花名が尋ねて来る。

「あ、すいませんお帰りになったところだったですね、あの後でも・・・」

まだ綾がブルーマーメイドの制服姿のままだった事に気付き花名が慌てて戻ろうとするが。

「あ、気にしなくても良いですよ花名ちゃん、何か御用ですか?」

この姿になって大分経つが綾は未だに着替えについては、自分の下着姿には慣れ、女性物の服を身に着ける事自体自然と出来る様にはなったが気が重かった、だから先延ばしにしても気にはしない。

・・・この後風呂に入る為にしなければならない事を考えるとなおさらだ。

話が逸れた、だから綾は花名に話の先を促した。

「はい、実は今週うちの高校で文化祭があって、綾さんを是非ご招待したくて。」

花名の通う星尾女子高等学校で今週末に文化祭があり、それに綾を招待したくて尋ねて来た様だった。

「私をですか?まあ予定はありませんから構いませんけど、ご両親とかじゃなくて良いんですか?」

普通こういうのは親御さんや親戚、ここで言えば従姉の志温さんだと綾は思ったのだが。

「はい、お父さんとお母さんは仕事とかあって来れなくなって、志温ちゃんは大丈夫なんですけど。」

そう言って花名は顔を俯かせる、彼女がご両親を大切に思っている事を綾は知っているので落胆する気持ちは理解出来きた。

「分かりました、是非行かせてもらいますね・・・でも花名ちゃんのお母さんが来れないとなると志温さんは・・・」

「ははは・・・とても残念がってました。」

綾の言葉に花名は苦笑して答える、志温が彼女の母親である葉月に深い憧れを抱き、会うのを楽しみにしているからだ。

「とりあえず当日は志温ちゃんと一緒に来て下さい、一応承諾してくれてますから。」

既に志温の方には話が通っているらしい、綾は頷く。

こうして綾は花名の学校で行なわれる文化祭に行く事になった、だが彼女はそこで自分の過去と対面する事になるとはその時は思ってもいなかった。

 

文化祭当日

綾は志温と共に花名の星尾女子へ到着していたのだが・・・

「えっと志温さん、何か見られてませんか?」

そう校門を潜り学校の中に入ってから綾は周りからの視線が気になってしょうがなかった。

「ふふふ、それは綾さんだからでしょう。」

志温はにこやかな笑みを浮かべ答える。

「いえ、それを言ったら志温さんだからでは?」

幾ら何でも自分がと綾は考えて言うのだが。

まあ、結論から言えば2人だからと言えるだろう、ほんわかな雰囲気でたわわな胸部装甲を誇る志温と美しい黒髪で清楚な雰囲気の綾。

星尾女子の生徒はもちろん来賓の人々の視線を集めるのは当然と言えるだろう。

「と、兎に角約束通り花名ちゃんの所へ行きましょう志温さん。」

その視線に耐えられないのか綾は急かす。

「そうですね花名ちゃん達待っているでしょうから。」

同じ視線に晒されている志温だがこっちはまったく動じていない、性格と言うより女性としての経験の差だろうか。

対称的な対応の2人は花名の1年2組へ向かう。

和風喫茶椿

1年2組の出入り口にそんな看板が掲げられている。

「ここですね、でも和風喫茶って?」

その看板を見て綾は首を捻る、和風ってメニューがそうなのだろうかと疑問に思ったのだ。

「入ってみれば分かりますよ綾さん。」

志温はそう言って入り口ののれんを通って中に入ってゆく、綾も慌てて後に続く。

「あらあら。」

「なるほどだから和風喫茶と言う訳ですね。」

中の様子を見て2人は納得する、内装はもちろん和風っぽいが、一番特徴的なのは給仕をしている娘達の衣装だろう、そう全員着物だったのだ。

「いらっしゃまいせ・・・志温さん、綾さん。」

そう言って2人を迎えたのは十倉 栄依子、大人っぽい彼女の着物姿はある意味妖艶だった。

「いっらしゃい志温ちゃん、綾さんも。」

同じく着物姿で迎えてくれる花名、こちらはまあ・・・言わないであげた方が良いかもしれない(笑)。

ある意味対称的な栄依子と花名に、綾と志温は微笑む。

だが綾は次の瞬間に掛けられてきた声に身体が硬直する様な思いを味合う事になる。

「一之瀬、十倉、様子はどうだ?」

綾の後ろから聞こえてくるテンションが低い棒読みのかってはよく聞いた声。

恐る恐るそちらを見た綾はそこに立っているボーイッシュだが見かけが暗い女性に今度こそ固まる。

「き、清瀬先輩?」

それは綾の中学時代の、いやその時はまだ男子の薫だったが、先輩であった榎並 清瀬だったのだ。

 

榎並 清瀬は神城 薫とっては2年上の先輩だった。

かなり変わり者の上級生として学校内では知らぬ者の居ない人物で、他の生徒はもちろん教師さえ扱いかねる相手だった。

そんな先輩の清瀬と薫は、本好きという意外な接点で知り合い、卒業までの間親しいと言えるか分からないが交流を重ねたのだった。

いや卒業後も、「私はOGだ、ここにいても問題は無い。」と言っては学校を訪れ、薫に絡んできたものだった。

しかしそれもある日唐突に終わってしまう、薫が身体の不調で倒れ、卒業目前で学校を去ってしまったからだ。

その理由が半陰陽だったのは言うまでも無い、まあそういった事情もあり薫は清瀬と連絡を絶たねばならなかった。

それから何年も経ち、後ろめたさを感じていた薫、いや綾だったがまさかこんな所で再会する羽目になろうとは思わなかった。

 

こうして綾は予期せぬ場所で予期せぬ過去と対峙する事になったのだった。

 




さて綾と清瀬の関係は?いえそれほど深刻なものではありませんが。

それでは。

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