綾と榎並 清瀬の関係はどうなるんでしょうか。
「・・・一之瀬、十倉、彼女達は知り合いか?」
清瀬はちらりと花名と栄依子が喋っていた志温と綾を見て聞いてくる。
「あ、はい、私の従姉でてまりハイツの管理人の京塚 志温ちゃ、さんと同じアパートに住んでいる神城 綾さんです。」
花名が2人を紹介すると清瀬は志温には軽く会釈をするが、綾に対しては目を細めてじっと見つめる。
「神城 綾・・・ねえ?」
1年2組の様子を見に来た清瀬はそこで自分の教え子である花名の知り合いに会った。
管理人であり従姉の女性については花名の母親に会った時に話しは聞いていたから問題はなかった。
だがもう1人の方は・・・神城 綾と紹介された女性は違った、それは彼女が清瀬にとって忘れる事の出来ないある人物に面影がとても似ていたからだ。
「はじめまして、京塚 志温と申します、花名ちゃんがお世話になっています。」
志温は何時もと変わらないにこやかな笑顔で清瀬に挨拶してくる。
「ええと・・・初めまして、神城 綾です、その・・・」
それに対し綾は視線を清瀬と合わせ様とせず、後頭部に手を当てて落ち着かない様子だった。
そっくりだな彼に・・・神城 薫に・・・面影だけで無く慌てると出るその癖とか、と清瀬は思った。
神城 薫は榎並 清瀬にとって忘れられない相手だった。
その性格ゆえ他人と距離を取られがちな清瀬に薫は適度な距離感で接してくれた奇特な人間だったからだ。
放課後の図書室で1席開けた椅子に座り、閉館まで本を読むと言う事を清瀬が卒業するまで続けた。
会話も読んでいる本や作者についてが多く、年頃の男女にしてはおよそ色気の無いものだったが、清瀬にとってはこれ程心休まる存在は初めてだった。
だからこそ卒業後も学校に足を運び清瀬は薫に何かと絡んだりしたのだ。
だがそれもある日突然終わってしまった、薫が学校で倒れ入院し、そのまま療養と言う理由で清瀬の前から姿を消してまったからだ。
もちろん消息については彼の周りの者達に聞いたのだが、誰も知らなかった。
「京塚さんですね、話しは一之瀬の両親から聞いてます、担任の榎並 清瀬です、こちらも一之瀬の事を色々と見守って頂けている様で助かってます。」
淡々とした話し方で聞きようによってはドライに聞こえるが志温はちゃんと察して微笑んで頷て見せる。
「ところで神城さんだったな、君に神城 薫という知り合いは居るか?」
そのストレートな問いに綾は内心苦笑させられる、中学時代も気になる事があれば真正面から切り込んでいく所があったからだ。
「えっと・・・し、知り合いには居ないと思います・が・」
綾の言葉が尻すぼみになってしまったのは、清瀬の視線が鋭くなって来たからだった。
明らかに綾が嘘をついている事を清瀬は確信する、まあこれも彼女の演技が下手糞だったからだが。
「・・・分かりました、失礼な事を聞いて済まなかった神城さん。」
「いえ別に気にしていませんから。」
更に追求が来ると思っていた綾は清瀬の言葉に安堵の表情を浮かべる、これでばれずに済むと。
だがその綾の反応が清瀬の質問に対して答えを与えた事に気付いていなかった。
「それではお2人共楽しんで行って下さい、一之瀬、十倉後を頼むぞ。」
「はい先生。」
それに対して花名は素直に答えるが・・・
「あの榎並先生、先程の神城 薫さんって?」
清瀬に対しある感情を抱いている栄依子にしてみれば先程の彼女の問いが気になって仕方が無いらしい。
「なあに昔の話さ・・・薄情な友人殿のな。」
一瞬睨まれた様な感じがして綾は硬直してしまう、清瀬はそれを見て意地の悪い笑みを浮かべて去ってゆく。
「友人の?薄情な・・・」
「栄依子ちゃん?」
複雑な表情を浮かべて考え込む栄依子を見て花名は首を傾げる、まあ彼女は事情を知らないから当然だが。
一方綾は何とか追求を逃れらた安堵しえ座り込みそうになりそうなところを耐えていた。
しかし綾は忘れていた、清瀬が自分が抱いた疑問をけっしてそのまましないと言う事を、どんな手段を用いても答えを見つけ出そうとする事を。
その後、微妙な空気をたまてや冠が消してくれたお蔭で、この話しは終わったのだと綾は思ったのだが。
花名達の和風喫茶を出た後、志温と綾は他の展示などを見て周った。
そしていざ帰ろうとしたところで、志温が花名に渡すものがあった事を思い出し、彼女は1年2組に慌てて向かっていった。
最初綾も一緒に行こうとしたのだが、志温は「迷惑を掛けられませんから。」と言って、屋上で待ってくれる様に言われてしまったのだ。
こうして綾は星尾女子の屋上、通常は閉鎖されているが、文化祭の時は開放される、に1人でいた。
周りには星尾女子の生徒や来客者もおらず静かな夕日に包まれて幻想的だった。
こやって夕日を見るのが綾は好きだった、それは今も昔も変わらない事だった。
「相変わらず夕日を見るのが好きらしいな、まったく私には理解出来ん、何が良いんだか。」
「何が良いかって・・・先輩はこんな幻想的な瞬間を見れる事が素敵だと思わないんですか?」
そう言えば中学時代、こうやって夕日を見ていると、よく先輩にこう言われたものだと綾は思い出す。
そこで綾は気付く、自分は今誰と会話しているのかと、悪寒に襲われ慌てて振向いた先に居たのは・・・
中学時代、飽きずに夕日を見ている薫に呆れた様にそう言って声を掛けてきた榎並 清瀬先輩だった。
綾にとって残念な事にこの話しはまだ終わっていなかったのだった。
TSにおける過去(男だった頃)との対峙は結構シリアスな話しだと思います。
まあ自分は暗い話しは嫌いなのでそうするつもりはありませんが。
それでは。