綾は久しぶりあの人と会います。
「あれ・・・此処は?」
志温と花火を鑑賞した後、帰宅する事になったのだが。
鑑賞中ずっと手を繋いでいた為、熱を冷ます意味もあって暫らくその場所に留まったのだ。
志温には先に降りてもらい鳥居の所で待ってもらっている。
そしてようやく熱が下がったので、綾も鳥居へ向かおうとして降り始めたのだが。
どこかで道を間違えたらしく、見覚えの無い場所に出てしまったのだ。
そこはちょっとした広場で、ベンチが数脚ある、薄暗い場所だった。
綾はそこで1人ベンチに座っている顔見知りの女性に遭遇する。
「何だ綾か・・・どうした?」
かっての中学生時代の先輩、榎並 清瀬だった。
「清瀬先輩?」
意外な人間に意外な所で出会い綾は驚きの声を上げる。
「清瀬先輩も祭りに来たんですか?」
「・・・違う、これも仕事だ・・・ったく十倉達に同じ事聞かれたぞ。」
綾の質問に清瀬は機嫌悪そうに答える。
「栄依子さん達も来ているんですか?」
「ああ、一之瀬や百地、千石も居たぞ。」
花名達4人で来ているらしい、まあ彼女達なら当然かなと綾は思った。
「それじゃ清瀬先輩は何かの用事で?」
「地域貢献の一環だよ、子供が多いからな、安全確保の為に近隣の教師なんかが借り出された。」
そう言う事かと綾は納得出来た、まあブルーマーメイドも海上で行なわれる行事などに隊員がボランティアで警備や救護役で参加する事があるからだが。
「・・・ここに来た理由は分かりましたが、こんな所いて仕事になるんですか?」
綾の疑問に清瀬はそっぽを向いてしまう、さぼりらしいと綾は察し苦笑いを浮かべる。
「先輩らしいですね。」
「ほっとけ。」
清瀬の隣に座り綾が半ば呆れた様に言う、まあ昔から気が進まない事には、徹底的に手を抜くのが多かった彼女らしい話しだが。
「そう言えばあの時に栄依子さんに送ってもらいましたが、大丈夫でしたか?」
休暇で陸に戻って来た綾に清瀬から突然「飲みに行くぞ、拒否権は無い。」と連絡があったのだ。
別に予定の無かった綾は清瀬らしい誘い方だと思いながら参加したのだ。
しかし飲みに誘ったわりに清瀬は酒に弱かった、あっと言う間に泥酔状態になってしまった。
その為綾は清瀬の友人で飲み会に参加していた西村基と彼女を自宅マンションまで連れて行こうとしていたところで、栄依子に出会ったのだ。
その直後、基と綾に連絡が入り、基の方は店に忘れ物取りに、綾は一旦横須賀の基地に戻らなくてはいけなくなったのだ。
困った二人に栄依子が「私が送って行きましょうか?」と申し出てきてくれたので頼む事にしたのだ。
幸い清瀬のマンションが直ぐ近くだった事もあって。
「だ、大丈夫に決まっているだろうが。」
珍しく動揺している清瀬に綾は首を捻る、何か問題であったのかと思って。
実はあの後、酔っぱらっていた清瀬が栄依子と朝まで一緒に居たのだ、しかも手首を縛って。
何だか危ない話だが、別に何かあった訳では無い、とは言え教師としてはばつの悪い話しなのは確かだ。
「そ、そうですか。」
何だか触れない方が良いと判断し綾は話しを打ち切る、もっとも後日栄依子から聞かされるのだが。
「ああそうしてくれ・・・それにしても綾、その浴衣姿似合っているじゃないか。」
動揺したのも僅か、清瀬はそう言って綾をからかってくる。
「え、いやそんな事は・・・」
「相変わらずの美人ぶりだな。」
何時もの調子を取り戻した清瀬に綾は溜息を付くしかなかった。
「ところでお前さんも此処で何してるんだ?」
清瀬の問いに綾はようやく自分が道に迷っていた事を思い出す。
「・・・艦長がそんなんで船は大丈夫なのか?」
綾から理由を聞いた清瀬は呆れた様に言う。
「いえ海の上では迷ったりは流石にありませんよ。」
艦には優秀な航法システムに専門の乗員が居る、艦長が方向音痴でも問題は無い・・・筈だ。
「鳥居に行くなら、ここを出て左の道を行け、後は一直線だから綾でも迷わないだろう?」
悪戯っぽい表情を浮かべながら清瀬は道順を教えてくれる。
「・・・ありがとうございました、それじゃ先輩また。」
何となく悔しいが迷っていたの事実だったので綾は礼を言って志温の元へ向かった。
「おお、借り一つだ綾。」
それは後が大変そうだなと綾は溜息を付くのだった。
綾が去った後、清瀬は夜空を見上げて呟く。
「さて何をしてもらうか・・・楽しみだな。」
その後綾は迷う事も無く志温と合流し帰宅したのだった。
夏はまだ続く・・・
この話しはSTEP.11トマトのまつりつりを元にしてますが、一部にSTEP.07ぐるぐるのてくびの話を入れてます。
ところで、STEP.07に登場した榎並 清瀬の友人である西村基さん、女性の名前にしてはと思っていたら、女○キャラだったと最近しりました。
奇しくも女○キャラとTSキャラの競演となりました(笑)、いや書いている時点では知りませんでしたが。
私は女○キャラも好きなので(自分のHPでも小説を載せています)、何時か2人の話を書いてみたいと思ってます。
それでは。