花名の初めての服選びとそれに巻き込まれる綾と言った所でしょうか。
てまりハイツの一室で花名が泣き声を上げていた。
「わ、私・・・いらない子になっちゃったのかな・・・」
その日自室で本を読んでいた花名の元に志温が尋ねて来た。
「葉月さんからお届けものよ。」
「わぁ!もしかしたら新しいお洋服かな?」
母親である葉月はよく花名宛に洋服を送ってくる事がある。
「あれ・・・志温ちゃん荷物は?」
だが志温が持って来たの一通の封筒のみだった。
「それが花名ちゃん宛てには、この封筒だけだったの。」
志温にも訳が分からなかった様で首を捻りつつ封筒を花名に渡す。
渡された花名が中身を確認して見ると・・・現金が入っていた。
「は、花名ちゃん!?」
急に泣き出す花名に志温は慌てるのだった。
『いやだからね、別に花名の事を見捨てた訳じゃなくて、花名も高校生なんだし私が選ぶより自分で選びたいかなと思ったから。』
急遽連絡をしてきた花名に葉月は困惑しつつ答える。
「ねえお母さん、私って見捨てられちゃったの!?」
葉月が電話に出た途端、花名がそう言って泣きついてきたからだ。
別に葉月は花名を見捨てた訳では無かった、当たり前だが。
ただ今度は花名の方が困惑する事になった。
「自分でって急に言われても・・・」
『花名も自分で好きな服あるでしょ?』
もちろんそうだが、何時も買ってもらってる服に不満がある訳でも無い花名としては悩んでしまう。
『どんな服選んだか後で写真送ってね。』
だが葉月はそんな花名の悩みなど気にせずに言って来る。
「そ・・・そんなお母さん!?」
『楽しみにしてるわね、それじゃあね花名。』
通話が終わった携帯を花名は呆然と見守るだけだった。
なお、花名と電話終了後の一之瀬家で葉月が夫である健に「はーちゃんの選ぶ服何時も花名に似合ってるからな。」と誉められて喜んでいたのは余談である。
結局花名はどうすれば分からないまま学校に行く羽目になったのだが。
悩んでいる事に気付いた栄依子達のアドバイスもあり、4人で花名の服を買いに行く事が決まった。
あと皆でパフェを食べるおよパフェ(花名の服を選びパフェを食するコース)も。
翌日買い物に行く約束をして花名はてまりハイツに帰って来た。
自分の事を心配して色々考えてくれる栄依子達の事を思うと嬉しかったが、服選びはやはり悩む花名だった。
そんな花名はてまりハイツの2階廊下が騒がしい事に気付く、女性2人の声、1人は志温の様だがそうするともう1人は綾だろうか?
予定では今日てまりハイツに戻って来る事を花名は思い出す。
そのまま自分の部屋に戻ろうした花名だったが、2人が何をしているのかと好奇心が沸いたので2階に上がってみたのだが。
「えっ・・・」
そこで見た光景に花名は固まる。
「大丈夫ですって綾さん。」
「何が大丈夫なのか判りません志温さん。」
綾の部屋の前で押し問答する綾と志温、珍しい光景だが花名が固まったのはそれが理由では無かった。
綾と志温が何故か制服姿だったからだ、それもどう見ても女子校生が着る様な・・・
まあ志温が自分の通っていた高校の制服姿をするのは花名も何度か見た事がある。
『ふふふ、似合ってるかな花名ちゃん。』
だから花名が固まった一番の理由は、綾もまたセーラー服姿だった事だ。
そのセーラーカラーと袖に青いラインの入った白のセーラー服と、裾に白いラインの入った青いスカートに花名は見覚えがあった。
横須賀女子海洋学校の制服だった筈だ、前に卒業アルバムで見たから間違いないと花名は思った。
「!?花名ちゃんこ、これは・・・」
「あらお帰りなさい花名ちゃん、あ見て綾さんの横須賀女子の制服姿。」
花名に気付き顔を青くして弁明しようとする綾と、嬉しそうにその制服姿を見せようとする志温。
てまりハイツの2階廊下は混沌とした状況になっていた。
「つまり綾さんのお母さんが仕立て直した横須賀女子の制服を送って来て、それをどうしようかと悩んでいる所を志温ちゃんに見られたと?」
綾からの説明でようやく事態を飲み込めた花名だった。
「こんなに素晴らしい姿なのに隠すなんて、もったいないですよ綾さん。」
「いえ私はこんな姿を他人に見せたくはありません。」
まだ押し問答を続ける2人を見ながら花名は心底こう思った。
何でこの大人2人は、高校時代の制服を着ているのに違和感がまったく無いのだろうかと。
もちろんこれで女子高生ですと言っても誰にも信じないだろが、その歳でそんな制服姿をしているのに2人からまったく痛々しさと言うものを花名は感じられないのだった。
そう2人共似合いすぎているのだから始末が悪かった。
美人はどんな格好しても様になるんだなと花名は溜息を付くのだった。
最後の方でどんでもないものが・・・(笑)
でもアニメで志温の女子高生の制服姿を見て、本当に違和感を感じなかったので。
うちの綾にもやってもらいました。
それでは。