「すみませ~ん店員さん試着室借りますね。」
栄依子のその言葉で早速試着が決まった花名と綾、だがその表情は対照的だった。
自分で始めて選んだ服を着る嬉しさと恥かしさの花名と、栄依子の生贄(笑)にされる恐怖と羞恥心の綾では仕方が無い話しだが。
試着室に入り試着する花名と綾、それをスマホを見ながら栄依子は待っていた。
まず花名の方だが・・・
栄依子の凄さに感服していた、自分と違いてきぱきして落ち着いてるし、花名に似合うの見付けられるなんて、もしかして本当に女子高生でなく大人?と考えて前日見た夢を思い出し再び自己嫌悪になる。
「この服似合ってるのかな・・・私なんだかちょっとだけ大人っぽくなった、ってえっ?」
鏡に映る自分の姿にそんな気分になっていた花名は突然試着室に顔を出して覗い来た栄依子に驚く。
「どう花名?」
「え、栄依子ちゃん?!」
思わず顔を真っ赤にして、両手で身体を隠そうとしてしまう花名。
「わ~、良いじゃない花名、凄く似合ってるわよ。」
その賛美を聞いてますます顔を赤くしてしまう花名だった。
そしてそんな花名をじっと見つめて来る栄依子。
「栄依子ちゃん?」
「・・・・」
沈黙する栄依子を見て花名は何だか不安になってしまう・・・やはり似合わないのかと思って。
「花名、なんか大人っぽくなったみたい。」
満面の笑みを浮かべ栄依子は花名が予想もしなかった事を言って来たのだった。
それに対し花名は思わずこう言ってしまう。
「止めて止めて栄依子ちゃん、気遣いなど無用なのです!」
某プラウザゲームに出て来る、某駆逐艦の様な口調になる花名だった(笑)。
微笑ましい笑みを浮べて花名を見ていた栄依子は次に隣の試着室で着替えている綾の方へ移る。
「さてどうですか綾さん?」
同じ様に試着室に顔を入れ綾に尋ねる栄依子に綾は慌てて花名の様なリアクションをしてしまう。
「ちょ、栄依子さん声を掛けてからにして下さい・・・着替え中だったどうするんですか?」
着替えた姿を見られない様に必死に隠そうとする綾に栄依子は目をきらりと光らせて答える。
「それはそれで・・・私としては嬉しいですね、綾さんの下・・・」
「わわわ、言わなくても良いです栄依子さん。」
これではどちらが年上か分からない、まあ何をやっても綾は栄依子には勝てないのだが。
「うん素敵です綾さん、思った通りですよ。」
「そ、そうですか・・・私には大胆過ぎる様な気がするのですが。」
前から見ると普通っぽいのだが、背中から見ると結構身体のラインがはっきり見えるのだ。
「本当だ、綾さん似合ってますよ。」
栄依子の言葉が気になり花名は試着室を出て来て、同じ様に覗き込んで来る。
やっぱり自分より大人だと、この時ばかりは花名はそう思った。
「あの2人共そのくらいで・・・恥かしいのですが。」
2人の言葉に顔を赤くし恥かしがる綾に栄依子と花名は年上ながらとても可愛いと思った。
特に栄依子は綾に対する感情が、榎並 清瀬に劣らない程強くなって行くのを自覚していた。
自分は結構気が多いのかな、栄依子は内心苦笑してしまうが、まあそれも良いかなと綾を見て思うのだった。