深雪と達也が呼ばれたらしく、ついて行こうとしたが行かない方がいいと思ったのでやめた。
今俺は小野先生に〈無頭竜〉の構成員とアジトを調査してもらえるようお願いしていた。叔母に頼んでもよかったのだが、対価を要求されそうだったのでやめておいた。
小野先生からすぐに連絡が返ってくる。そこには『何故その名前を知っているのか、何故そんなことを自分にさせるのか』と書いてあったが、素直に答えるつもりはなかった。
「一高が狙われているので対策を立てるために必要なんです。それと犯罪組織の名前を知っているのは実家からの情報です」と送る。
嘘をつきたくはないが、このまま放っておいて深雪に何かあれば正気を保っていられる気がしない。ならば深雪に危害を加えられる前に防ぐのがいい。相手を叩き潰すことがもっとも効率がいいが面倒くさいので他に任せたい。
そうこうしていると2人が帰ってきた。話を聞く限り、どうやら先ほどの呼び出しは摩莉の代わりに、深雪を本戦に出場させることを達也に許可を貰うためだったらしい。
深雪なら本戦でも問題なく優勝できるので、達也も拒否しなかったようだ。俺もそう思っていたので応援することにした。
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大会4日目からは新人戦が始まる。
雫やほのか、深雪、俺の出番だ。雫のエンジニアは達也で予想通り余裕で決勝トーナメント進出を決めている。午後、一高の天幕では昨日までの重い空気が一変し軽かった。
理由は女子スピード・シューティングで上位を一高が独占したからだ。真由美が達也を褒め称えているが達也はそれほど喜んでいなかった。
「独占したのは俺ではなく選手なんですが…」
「もちろん分かっているわよ。でも達也君がいなかったらこんなことは起こらなかったのよ」
真由美はご機嫌で達也の肩を軽く叩いていた。
「ちなみに一回戦で使用された北山さんの魔法は、『インデックス』に正式採用するかもしれないと打診が来ています」
「それって新種の魔法として登録されるってことなの?」
「ええ」
真由美の質問にうなずく鈴音。
「そうですか、では登録名は北山さんの名前でお願いします」
「そんなだめだよ!あれは達也さんのオリジナルなのに…」
「最初の使用者が登録されるのはよくあることだ」
雫の反論に達也は首を横に振る。また達也の悪い癖が出たなと思いながら雫に話しかけた。
「達也は自分が実戦で使いこなせないという恥をかきたくないから、雫の名前で登録してほしいんだ。分かってやってほしい」
これには雫は渋々うなずいてくれた。
「達也君、この後もこの調子でお願いね。克也君も頑張って」
「「はい」」
真由美からの応援を二人で素直に受け止める。
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午後に予定されている試合はバトル・ボードの第四レースから第六レースだ。
ほのかの出番は第六レースなので、かなり後なのだがほのかの緊張を和らげるために女子メンバーが談笑しているのをBGMに男四人は深刻な顔をしていた。
「幹比古、何かおかしなことはないか?」
「今のところは特に何もないよ」
「俺も何も感じないがこの先良くないことが起きそうな気がするぜ。誰が仕掛けてくるのか分からねえから対策の練りようもねぇよ」
「仕方ないさ、人間は万能じゃないんだから。」
そんなやりとりを交わしていた。
その後に行われた水面に光を反射させ目くらましする戦略を使ったほのかのレースは、達也の戦略(悪知恵?)のおかげで快勝だった。視界が十分でない状態でコースを走るのは危険すぎる。
始解が回復してから残りの三選手達は進み始めたが、順位を上げることのできないほどの距離がほのかとはできていた。
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大会5日目。新人戦二日目は雫と深雪、俺の出番だ。今日はアイスピラーズ・ブレイクが行われるが、深雪の優勝は確定しているに等しい。振動魔法を得意とするのでこの競技は深雪のためにあるとでも言えよう。
服装は公序良俗に違反しない範囲であれば自由に着れるのだが…。
「本当にその服装で出るのか?それに振袖邪魔にならないか?」
「もちろんルールに違反してないんだから使わないともったいないよ。それに襷を使うから問題なし」
その台詞に達也は頭を抱えたくなった。そう、雫の出場する服が振袖だったのだ。彼女の容姿と合っているので着替えろとは言えない。
まあ、そのおかげかはわからないが雫が登場すると歓声が漏れた。雫は《共振破壊》の応用をなんなく使いこなし勝利した。流石一科の上位者なだけはあると思った達也だった。
深雪の登場はよりすさまじかった。神々しいと表現するのが妥当な佇まいなほどに。CADの代わりに鈴などを持たせば、巫女と呼べるそれだけの存在感だった。
深雪は開始直後に《
相手の精神的ダメージが気になったが深雪の魔法力に相変わらず驚かされた。《氷炎地獄》は、A級ライセンス試験で度々課せられる魔法で受験者に涙を流させる。深雪からすればこの程度は朝飯前だ。恐ろしいと思ってもいいだろう。
ようやく克也の出番が来た。雫や深雪の試合を見て早く戦いたいとうずうずしていた。順当に行けば決勝で一条将輝とぶつかるだろう。
そこが本番なのでそれまでの予選は軽い準備運動のようなものだ。決勝までは汎用型で遊び観客の驚く顔を見ることにした。
克也が登場すると女子生徒から黄色い声援が聞こえた。今の克也の服装は、明治維新の頃のものだ。四葉家に頼んで特注してもらったのだが、普段は目にすることができない服装と端正な容姿で女子生徒を虜にしていた。
「…あの容姿にあの服装は反則でしょ。相手も気合いを入れてきたみたいだけど完全にのまれてるよ…」
「確かに、僕でも気負いするね…」
「…ある意味凶器だな」
「似合いすぎですね…」
「…絵になる」
「かっこいいです!」
「私でも惚れてしまいそうです克也お兄様」
「相変わらずだな」
エリカ、幹比古、レオ、美月、雫、ほのか、深雪、達也の順の感想だ。それだけの威力があった。
同じ頃3年の場でも話題になっていた。
「何なんだあの魅力は?確かに市原を落とすだけの威力はありそうだが…」
「…私も驚いたわ、まさかここまでとはね」
「…」
カシャ!
摩莉と真由美が感想を綴っていると、隣からシャッター音が聞こえた。横目で見てみると情報端末で克也を撮った鈴音がいた。
「…市原、お前何をしているんだ?」
「絵になっているので写真を撮っただけですが何か?」
真顔でしれっと語る鈴音に摩莉は脱力する。
「…こいつは克也君が関係すると別人だな」
摩莉の独り言に顔を真っ赤にしてうつむく鈴音であった。そんなことが観客席で起こっているとは露程も知らず克也は構えた。
合図とともに両陣地に魔法が発動するが、俺の陣地はぴくりとも動かず反対に相手の陣地の氷柱は高温で溶け始めていた。自陣の氷柱に〈情報強化〉をかけ、相手の魔法の侵入を防ぎながら魔法を行使する。
《
「…これは《ヘル…ヘイム》か?こんな高等魔法を一年で使えるというのか…」
「…流石四葉家の直系ね。こんな魔法を当たり前のように使えるなんて、3年生になったらどうなるのかしら」
摩莉も真由美も驚愕している。
《ヘル・フレイム》は深雪の使う《インフェル》と違い、A級ライセンス取得時に課せられることはない魔法。だが使えるのはごく少数で日本に1人、世界でも10人しかいないので目にする機会はない。使用された瞬間を撮影した映像の粗いもの以外には俺が使う以外に目にすることはできない。
試合は10秒で終了し、俺は着替えた後一高の天幕に呼び出された。そこには一高の首脳陣が集まっていた。
「克也君あなたいったい何者なの?あの魔法が日本で使う人は1人だけだって言われていたけど、それがあなただったなんて…」
「黙っていたのは悪かったと思っています。しかし『母』から許可するまで使うなと言われていたので話せませんでした。お許しください」
叔母のことを「母」と呼んだのは設定を疑われてはいけないからだ。
「四葉、顔を上げろ。俺たちはお前を責めるために呼び出したのではなく優勝してもらうために呼んだのだ。そんなに思い詰められるとこちらが困る」
顔を上げると十文字先輩は穏やかな表情をしていた。強面なのは変わらないが…。他の先輩方も恐怖を浮かべている様子はなくむしろ前向きな表情をしていた。特に服部先輩は不適な笑みを浮かべていた。
「四葉、必ず優勝しろお前にはそれだけの力がある。おそらく決勝は一条家の跡取りだろうが今のお前なら敵にはならないはずだ。お前のやりたいようにやれ。これは〈十師族〉十文字家代表代理としてではなく、一高の先輩としてだ」
「ありがとうございます期待に応えられるように全力を尽くします」
俺は十文字先輩の言葉に強く応えた。
天幕を出た後達也達の元に向かうと質問攻めに遭い、達也に「助けて」とアイコンタクトを送ったが、「人気者は仕方ないさ」と返されしばらくの間拘束された。
ようやく原作とは違う話が書けました。この先どうなるのでしょうか。
《