魔法科高校の劣等生~双子の運命~   作:ジーザス

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第二十三話 未遂

魔法科高校までの一本道は商店街になっておりそこには校内の購買部ではそろわない物をそろえることができる。こんなところで騒ぎを起こせばどうなるか考えたくもないのだが現実はそれほど甘くはなかった。

 

よもや同じ高校の制服を着ていたら驚くだろう。バイクの後ろからロケットエンジンで火を噴きながら遠ざかる後ろ姿を見ていた全員の脳内には

 

{何を考えてるの?}{事故ったらやばいね}{間違ってるぞ}

 

三者三様の言葉が浮かんだが困惑しているのは変わらなかった。

 

 

 

翌日の朝、教室に向かうと自分の席で美月が俯いていた。

 

「どうしたんだ?」

 

達也は美月を心配そうに見ている友人達に聞いた。

 

「視線を感じるんだってさ。」

 

代表してエリカが答えた。

 

「視線とはストーカーとかの類いか?」

「いいえ、大きな網で囲んで何かをその中から見つけようとしているそんな奇妙な視線なんです。勘違いかもしれませんけど。」

 

それだけではわからない。

 

「柴田さんの勘違いじゃないよ今朝から校内の精霊が不自然に騒いでる。まるで自分たちの知らない何かが来ていることに怯えているみたいに。」

 

幹比古が美月の言葉に上乗せして説明してくれた。

 

「幹比古それは我が国の術式か?」

「…我が国の術式じゃないと思う。」

「克也にも頼んでおいたほうが良さそうだな。」

「よろしくね達也。」

 

そう言って自分の席に戻り授業の準備をし始めた。

 

 

 

達也達が九人で下校するのは久しぶりのことで普段より空気が明るくうわついていた。それによって気付いたのはレオと幹比古、エリカ、克也、達也の五人だけだった。

 

「久しぶりに寄らないか?」

「いいね、賛成!」

「そういや最近ここのコーヒーを飲んでなかったな。」

「そうだね達也が誘うから飲みたくなったよ。」

 

エリカとレオと幹比古は積極的すぎたが雫やほのか、美月、深雪は気付かずにいや久しぶりに帰れたことが嬉しくて舞い上がっていると勘違いして『アイネブリーゼ』に入っていった。

 

 

 

コーヒー飲んでいる間にエリカとレオが店の裏に消えて行ったことに不信感を感じた女性陣はいなかった。

 

「幹比古、何してるんだ?」

 

幹比古がスケッチブックを広げているのを見た俺は声をかけた。

 

「ちょっと忘れないようにメモっておこうと思って。」

 

そう言いながらも書き続ける。

 

「見つかるぞほどほどにしとけよ?」

 

達也からも注意が放たれた。

 

 

 

翌日の昼食で待ち合わせしていると絶賛ご機嫌斜め中のエリカが達也達と座っていた。

 

「…エリカはまだ怒っているのか?」

 

エリカの不機嫌さに俺は達也に聞いた。

 

「そうらしくてな対応に困ってるんだがどうにかしてくれないか?」

 

達也も困っているらしい美月と幹比古は我関せずとしていた。レオは何故か顔の数カ所に絆創膏を貼っており機嫌が悪そうだった。

 

「深雪ここは俺が出ない方が周りのためだと思うから頼むよ。」

 

とお願いする。

 

「分かりました確かに今は女性が行くべきでしょうね。」

 

深雪は快く引き受けてくれた。

 

「エリカ、機嫌直してあげてそうじゃないとみんな落ち着けないわ。」

「分かってるんだけどねただあいつの言ってたことが信じられないの。」

「『校内にいるからって安心するな』って言われたこと?」

 

エリカの機嫌の悪い理由は尾行してきた男に逃げられたことではなく言葉の意味を理解しようとしてイライラしているらしい。

 

「エリカ、今はそれを考えたって仕方がないよ。あの男が100%信頼できるわけじゃないけどだからといって警戒しなくていいというわけではないから今は待つしかない。」

 

「…わかったわよ頑張って機嫌直すわ。美月もミキもレオもごめんね八つ当たりしてたみたい。」

 

エリカも立ち直ってくれたらしく素直になった。

 

 

 

放課後プレゼンの準備をしている鈴音の護衛中だったが壬生先輩と桐原先輩、エリカ、レオが走り始めたので嫌な感じがしたので追いかけることにした。

 

「すみません服部先輩少し抜けます。」

 

返事を待たず走り出す。

 

「え?お、おい四葉!」

 

服部先輩が声をかけてきたが無視する。

 

俺が追いついたときにはエリカが女子生徒が放ったダーツを打ち払った瞬間だった。割れて飛び散った胴体から紫がかった煙が広がる。

 

「離れて!」

 

エリカが叫ぶが桐原先輩は間に合わず吸い込んでしまった。ふらりと身体を揺らしたかと思うと膝をつく。

 

{神経ガスか!}

 

あまりの用意周到さに驚くがレオのおかげですぐに解決した。レオがタックルをかまし気絶させてしまったのだ。レオを見るエリカの眼が力量を推し量っているそんな眼だったのだが何を考えているのかまではわからなかった。

 

 

 

騒ぎを聞きつけてかけつけた千代田先輩にため息をつかれた。保健室で治療を受けている先輩達と一年生を見ながら言ってきた。

 

「市原先輩の護衛を放ってどっかに行ったと思ったらあんた達やり過ぎよ。」

「俺は何もしてないんですけどそれに倒れた桐原先輩を担いで返ってきたのは俺なんですが。」

 

念のために反論しておくがしない方が良かったと後悔した。

 

「確かにあんたがいなかったら桐原君を連れて帰ってこれなかったけど護衛を放っていったことは間違いないでしょ。」

 

ぐうの音も出ないとはこのことだ。

 

「安宿先生、お手数ですがこの子が目を覚ましたら連絡してください。」

 

そう言って元の場所に戻っていくので俺も後を追う。

 

 

 

 

仕事をそれなりにしていると安宿先生から連絡があった。

 

「千代田先輩俺も行きます今回は何を言われても引きませんよ。」

 

そう言って保健室に向かう。

 

「一昨日は大丈夫だった?」

 

花音の言葉に少女は驚いていた。駅前で追いかけてきた相手が花音だと今更ながら気付いたらしい。

 

「なんでデータを盗み出そうとしたの?」

「私の目的は盗む事じゃありません。データを書き換えようと思っただけです。」

「プレゼンを失敗させたかったの?」

 

よりによって幼馴染の晴れ舞台の邪魔をしようとしたのだから感情が沸騰しても仕方ないだろう。

 

「失敗させたかったわけじゃありません。あいつが少しでも困惑している顔を見たかっただけです。」

 

その言葉に俺は怒りそうになったが抑える。

 

「それだけであんなことを?事によれば退学になってたかもしれないのよ?」

「それでも構いません!あいつがいい顔しているのを見てたら…。」

 

その言葉に花音が困惑したらしく五十里が代わりに話し始めた。

 

「平河千秋君(ちあき)君は平河小春(こはる)先輩の妹さんだね?」

 

五十里の言葉に嗚咽で震えていた肩が止まった。

 

「あの事故が起こったのは司波君のせいだと思ってる?」

「だってそうじゃないですか!あいつは分かってたのに何も言わなかった。それで小早川先輩を見殺しにしたんです。その所為で姉さんは責任を感じて…。」

 

また泣き始めたが五十里は話し続けた。

 

「あの事故は司波君の所為じゃないよ。気付けなかった僕たち技術スタッフ全員の責任だ。」

「笑わせないでください。」

 

その言葉に千代田先輩が怒り立ち上がるが俺と五十里先輩で抑える。

 

「あいつだから気付けたんです。五十里先輩にわからなかったのに他の人に分かるはずがないじゃないですか。」

その言葉に俺は我慢できなくなったので言いたいことを言うことにした。

 

「五十里先輩失礼します。君に言わせてもらうけど達也なら何でも知ってて何でも解決できるとでも思っているのか?」

 

俺の声音に普段から優しい笑顔を絶やさない安宿先生もさすがにひくついていた。

 

「あんたは?」

「失礼、自分は1-Aの四葉克也だ。」

 

名前を聞いて千秋の顔が恐怖で覆い尽くされる。

 

「話を戻すけど達也なら可能だと思うのかい?」

「…ええ、思うわ!だってあいつなら分かったでしょ!何を仕掛けられていたのかがね!」

「君は馬鹿なのか?」

「なっ!」

 

俺の言葉に詰まる千秋。

 

「本来この世界に完璧な人間なんていない人間は何かしら欠陥を抱えて生きているんだ。自分に足りないものを相手が補ってくれるから生活できている。君には欠陥がないとはっきり言えるのか?十師族だって不得意な魔法もあるんだ。自分のことを棚に上げて自分より才能のある人間を逆恨みするなどおこがましいとは思わないのか?」

 

俺の言葉に五十里先輩と千代田先輩も何も言うことはできない。

 

「君は自分にないものを達也が持っていることに嫉妬しているんだ。その感情を理解しているのに姉の復讐だと偽って関係のない人間を巻き込んでいるんだぞ!そんなことを小早川先輩や小春先輩が望んでいると思っているのか!?」

 

俺が声を荒げたことで感情に想子が反応し異常なプレッシャーを全員に与える。

 

「四葉君そこまで…。」

 

千代田先輩の言葉を五十里先輩が止めた。

 

「啓…。」

 

千代田先輩も幼馴染の行動の意味が理解できないわけではないのでそれ以上何も言わなかった。

 

俺は深呼吸して自分を落ち着かせる。千秋が寝ているベッドの横に置いてあるいすに座り千秋の手を握りながら話した。

 

「達也だってあんな風に生まれたかったわけじゃない普通に生まれて普通に生きたかっただけだ。それでも達也は魔法師として生きることを決めた。そして魔法の技能を補えるだけの知識を取り込み魔法社会からはじき出されないように必死であがいているんだ。君はまだ自分のやりたいことが決まらずに手探りしている状態だと思う。でも君だって誰かに必要とされる日がきっと来るいやもう既に来ているはずだよ。」

 

千秋は理解できていない顔を向けてきた。俺は穏やかに微笑みながら伝える。

 

「君の両親やお姉さんや学校の友人達だよ。君が大切だから君に危険な目に遭ってほしくないからお姉さんは君を守ろうとしてるし千代田先輩や五十里先輩もテロリストから引きはがそうとしてくれてる。この二人だけじゃないさっき追いかけてきた壬生先輩や桐原先輩、エリカ、レオだってきっとそう思ってるはずだ。だから復讐なんて小さな事にこだわらずに自分がやるべき事を見つけなきゃ今の自分に何ができるのか何をすべきなのかしっかりと考えてくれ。」

 

言い終えると俺は保健室を出た。

 

「啓…。」

 

「わかってるよ花音。四葉君は僕たちの気持ちを代弁してくれたんだ壬生さんや桐原、西城君や千葉さんの心もね。安宿先生彼女をお願いします。」

「ええ、彼女は大学付属の病院で預るから貴方たちは戻ってプレゼンの準備に戻りなさいもうあまり日がないのだから。」

 

その言葉に五十里はうなずいて花音を連れて戻っていった。

 

 

 

「…ということだったよ達也。」

「なるほどそういう動機だったか。」

 

俺の報告にうなずく達也はそれほど気にしていなかった。

 

「それってただの逆恨みじゃないですか!」

「というより八つ当たり?」

「八つ当たりせずにはいられなかったんだろうね。」

「お姉さんのことが大好きだったんでしょうね。」

 

ほのか、雫、幹比古、美月の発言だが一科と二科で見事に意見が分かれたのに驚いたが口にしたのは別のことだった。

 

「誤解は解消済みだからもう大丈夫だと思うよ。それに周りをうろちょろしてるのは彼女だけじゃないし。」

 

そう言うと全員が納得してくれたのでその話はそれ以上話題にはならなかった。

 

 

 

 

翌日昼食の席に行くとエリカとレオの姿がなかったので聞くことにした。

 

「二人はどうしたんだ?居残りか?」

「いや、二人とも今日は休みだよ。」

 

以外なので驚いてしまった。

 

「珍しいね、このグループで一番病気にならなそうな二人だと思ったんだけど。」

「俺もそう思ったさ。なんとなくだが二人とも病気じゃない気がするな。」

 

幹比古が達也に聞き始めた。

 

「どういうことだい達也?」

「そう思っただけだよ幹比古。仮定の上に想像を重ねた意見だけど案外レオがエリカにしごかれているんじゃないか?」

「何故そうお思いになられたのですか?達也お兄様。」

 

深雪もよく分からないようだ。

 

「レオの潜在能力は一級品だからな。エリカならあいつを鍛えそうな気がするし硬化魔法は剣と相性が良いからね。」

「達也さんどういうことですか?」

 

ほのかも食事の手を止め会話に参加してきた。

 

「硬化魔法は九校戦で説明した通り物体の相対位置を固定する魔法だから刀などの刃の部分に使えば技量にもよるけど普通に使うより何百倍も刃こぼれを抑えることができる。」

「達也さん物知り。」

 

説明を聞き終えた後雫がぽそっと感想を言った。それはここの全員の内心を代弁したものだった。

 

 

 

今朝も克也達三人は九重寺にやってきていた。普段とは違うメニューを三人が終えた後八雲が庫裏(くり)で突然切り出した。

 

「珍しいものを手に入れたみたいだね。」

「…預かり物ですが。」

 

達也はワンテンポ遅れながらも答えた。

 

「だったら然るべき場所に移すべきだ。」

 

いつものひょろひょろとした雰囲気ではなく臨戦態勢に近い空気を発して話す八雲に克也達は気持ちを引き締めた。

 

「狙われているとは知りませんでした。」

「なかなかの手練れだからね。ついでに忠告しといてあげるよ敵を前にしたら方位に気をつけるんだよ?」

「方位ですか?」

「これ以上は高くつくよ?」

 

俺の復唱に八雲は別種の嫌な空気を発しながら答えた。

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