魔法科高校の劣等生~双子の運命~   作:ジーザス

28 / 120
第二十四話 間近

「克也、一高付近で何かおかしな想子を持つ魔法師を可能な限りで良いんだが探してみてくれないか?時間があるときに。」

「わかった、空き時間にやっておくよ。」

 

そんな話をコミューターでしていると深雪が話しかけてきた。

 

「お兄様方、今朝先生がおっしゃっていた『方位に気をつけろ』とはどういうことでしょうか。」

「俺にもそれだけじゃわからないな。とりあえず全方位を気にしていればいいんじゃないかな?」

「そうですね納得しました。」

 

深雪は達也の言葉で不安がなくなったようで先程より距離を詰めた。

 

 

 

今日は論文コンペまで残り一週間なのだが今日は学校に行かなければならない。最終調整が残っているためである。『レリック』をFLTに預けに行った後ロボット研究部のガレージで達也は作業することになった。

 

「達也、一人だけおかしな想子が頭部にあるやつがいる気をつけて。」

「ああ、わかった知らせてくれてありがとう。」

 

達也は俺にお礼を言ってロボ研のガレージに入っていった。俺は深雪と達也を見送った後二人で校舎に向かった。

 

その間俺は生徒会室におり深雪が仕事をしている横で今までの疲れが溜まっていたようで眠気に負けて眠ってしまった。

 

「克也お兄様少しいいでしょうか?…克也お兄様?」

 

何度呼んでも返事が返ってこないので兄がいる方を向くと腕組みをしながら寝ていたので私は頬を緩めてしまった。今この生徒会室には自分と兄しかいないのでこんな姿を見せている。

 

一時間ほど眠っていたが知った想子が近づいてきたので目を覚ました。俺は家にいる時以外は常に辺りを警戒している。それは睡眠中でも同じでだから今回も誰が来るのかが事前に分かった。

 

千代田先輩がやってきて挨拶した。

 

「千代田先輩こんにちは。」

「司波さん、やっほ~ところで半分寝ている四葉君はどうしたの?」

「疲れが溜まってたみたいです。」

「なるほどね。」

 

やりとりが左から右に流れている。しかし次の瞬間に俺の意識は覚醒した。

 

「千代田先輩、保安システムから異常警報です!」

「場所は!?」

「ロボ研です!」

 

嫌な予感がしたので俺も行くことにした。

 

「司波さんはここにいて、四葉君行くわよ!」

「「はい!」」

 

俺と深雪は違うお願いに同じ言葉で答えた。

 

 

 

「関本先輩何をしているんですか?」

「な、四葉に千代田。ど、どうしてここに?」

 

驚きすぎだろと俺は思ったが今はそれどころではない。

 

「その台詞は聞き捨てなりませんね。ここに私が来てもおかしくはありませんよ。」

「馬鹿な警報は切っていたはずだ!」

 

不用意な言葉を発してしまい俺と千代田先輩は想子を活性化させた。

 

「ええ、警報は自動ではなく手動で届きましたから。」

「関本先輩、警報を切ったとはどういうことですか?今ここで言えないのであれば後々お聞きすることになりますよ?厳しい罰を受けてからですが。とりあえず達也起きなよ狸寝入りはバレてるぞ。」

 

脅しで話してもらおうと思ったが逆効果だったようで口を開閉するだけで何も発しない。俺の言葉に達也は苦笑しながら立ち上がり関本はさらに驚く。

 

「馬鹿なガスが効いていないのか!?」

 

その言葉に俺はため息をついた。

 

「関本勲(せきもといさお)CADを外して床に置きなさい!」

 

そう命じながら自分のCADに想子を流し込み待機させる。

 

「千代田~!!」

 

叫びながらCADを操作するが床を媒体とした千代田先輩の振動魔法に意識を刈り取られ倒れた。

 

「とりあえずこの人を引き渡しましょう千代田先輩お願いできますか?」

「ええ、任せて。」

 

快く引き受けてくれたので仕事が楽になった。

 

 

 

花音がいなくなるのを確認した後達也に尋ねる。

 

「で、証拠はあるのかい?達也。」

「ああ、3Hに記録させておいたから役に立つだろう。あとは藤林さんに送って確保してもらうだけだ。」

 

そう言って帰宅する準備を始める達也を残して外に出た。

 

{関本勲の襲撃は予測できなかった。あの非工作員(イリーガル)が言っていたことはこのことだったのか?平河千秋の場合は自ら望んで手を結んだが今回は違う。関本勲は二科生との溝を深めず中立的な立場をとってきた人物だ。そのような人がこんな犯罪行為をするだろうか。マインドコントロールを受け操られていたのか?だがそれでは会話が成り立たなくなるはずだ。しかし先の会話でおかしな箇所はどこにもなかった。分からない藤林さんに任せるしかないか。}

 

そう思いながら雨を降らせる雨雲を見上げていた。

 

 

 

翌日、コミューターを降り学校に向かおうとすると後ろから走ってきたコミューターから降りる人物を見て俺達三人は立ち止まった。

 

「げ!」

「ん?どうし…。」

 

エリカの硬直に首をかしげながら視線を変えるとこちらを見てレオまで行動停止した。

 

「詳しいことは聞かないから安心しろ。」

 

俺が二人に言うとようやく動き出した。

 

「久しぶり三人ともこのことは内緒ね。」

「おっす克也、達也、司波さん。」

 

二人が挨拶してくるのでいつも通りに挨拶をしてから学校に向かった。

 

 

 

その日達也は関本さんに事情聴取をしに行きたかったのだが風紀委員である千代田先輩と生徒会長であるあーちゃん先輩に面会許可をもらえず落ち込んでいたが俺が達也の代わりに行くなら許可するらしく達也は渋々うなずいた。

 

まあ、結局家に帰れば話すのだから行っても行かなくても変わらない。真由美と摩莉と行くことになり放課後関本さんが拘留されている八王子特殊鑑別所に向かった。

 

真由美と二人で関本さんの隣の部屋から摩莉の尋問を聞くことにした。

 

摩莉が入ってくると無意識にCADが巻いてあった位置をさするがもちろんないので何も起こらない。今まで焦っていた関本さんの顔が陰り無表情になった。

 

「匂いを使った意識操作ですかこれは危険ですね。」

「克也君が見るのは初めて?」

「はい、あまり使われたくないですが。」

「それもそうね。」

 

軽い会話をした後尋問が始まった。

 

「何をするつもりだった?」

「デモ機のデータを吸い上げた後司波の持ち物を調べるつもりだった。」

「何が目的だった?」

「『レリック』だ。」

 

摩莉の質問に一つずつ答える。目的を聞いた瞬間関本さんは操られていたと確信した。論文コンペに出場できなかった悔しさをつけ込まれ利用されたのだろう。

 

気持ちは分かるが同情はできない相手の侵入を許してしまうほど関本さんの心が弱かったのだ。

 

「克也君、そんなものを持っていたの?」

 

俺が達也達と一緒に暮らしているのを一高生はほぼ全員知っているので俺に聞いてもおかしくはない。

 

「い、いえ…。」

 

そこまで話していると突然警報が鳴り出した。部屋を出ると摩莉も隣の尋問室?から出てきくる。

 

「克也君これは!」

「侵入者ですね…こちらが狙いですか。」

 

通路の奥からゆっくり歩いてくる男を視界に入れた瞬間全身の毛が逆立つ錯覚を感じた。

 

「「呂剛虎(ルウ・ガンフウ)!」」

 

摩莉と同時に名前を出す。

 

「渡辺先輩もご存じなんですか?」

「ああ、平河千秋の入院している病院で交戦した。克也も知っているのか?」

 

渡辺先輩が俺の名前を呼び捨てにするのは余程の時だけだ。

 

「ええ、『母』に大亜連合で注意すべき魔法師の一人と教えられましたから。これで関本さんを使って達也を襲わせた犯人が分かりました。関本さんの無罪は確定ですが渡辺先輩会っていたなら教えてくださいよ。そうすれば対策できたかもしれないのに。」

 

つい敵の前で愚痴ってしまった。

 

「いちいち報告はいらないだろ!というより構えろ来るぞ!」

 

その言葉通り呂剛虎は五十mまで接近していた。

 

「俺が戦いますのでお二人は離れていてください。あいつは危険です俺の力の七割を使わないと互角の戦いはできないでしょう。」

 

俺の言葉に眼を見開く二人。

 

「…いや、克也君は真由美を守ってくれあいつはあたしが倒す。シュウに怪我をさせたんだその仕返しをしなければ気がすまない。」

 

渡辺先輩の気持ちは分かるが怪我をされては困るバトル・ボードのようなことは二度とごめんだ。

 

「いいえ、これは四葉家次期当主候補である俺にとって最優先事項です渡辺先輩は七草先輩のカバーをお願いします。」

 

俺の活性化した想子に気圧され息を飲む音が聞こえたが俺の意識は近づいてくる呂剛虎の様子を観察していた。

 

「わかったならお前に任せる。」

「気をつけて。」

「ええ。」

 

二人の心配に返事をする。

 

「ふっ!」

 

小さく息を吐き出し呂剛虎に向かって疾走すると同時に向こうも動き出した。俺の頭上からドライアイスの弾丸が呂剛虎に向かって発射される。

 

位置定義を俺の頭上としているので彼我の距離が接近するほど威力が上がる。俺の頭部が急激な方向転換や角度が変わると条件が途絶えるので俺は可能な限り頭部を動かさずに左右に移動しながら接近する。

 

ドライアイスの弾丸の半数が直撃するがダメージはない。身体を覆う鋼気効(がんしごん)によってはじき返されたのだ。

 

もちろん俺も真由美もその程度でダメージを与えられるとは思っていないので驚きはしなかった。

 

想子を右拳にまとわせ呂剛虎の腹部を強打しようとしたが鋼気効によって阻まれ体勢が泳ぎ後ろに吹き飛ばされる。その瞬間を狙って呂剛虎が拳を繰り出してきた。

 

それは虎の顎(あぎと)に見えたが俺は焦らずドロップキックを呂剛虎に喰らわせるために仮想の足場を想子で左足の近くに形成し慣性と重力、回転の威力によって三重のブーストを付けた攻撃は鋼気効を砕き呂剛虎の右肩を直撃した。

 

「があぁぁぁぁ!」

 

叫び声を無視して右肩を蹴って距離をとる。

 

想子を踵部分にまとわせていなければ鋼気効を砕いたとしても右肩にはそれほどダメージを与えられずに俺の右の踵は粉砕されていただろう。

 

強固なものだと生半可な攻撃では貫通できないと分かっていたがここまで堅いとは思わなかった。

 

{このままじゃやばいかもね二人を守りながらじゃ満足に戦えないし魔法を使えばここを全壊とはいわないまでも半壊させそうだ。さてどうしたものかな。}

 

そこまで考えているとようやく呂剛虎が荒い息をふき右肩を抑えて立ち上がる。予想よりダメージがあったようだ。

 

呂剛虎が真剣な表情をしながら猛スピードで突っ込んできた。

 

{自己加速術式を使わずにここまでの速度が出せるのか!}

 

そう思いながらも俺も構えるが肉薄された瞬間、呂剛虎が消え直感で右を振り返ると壁を蹴る音が聞こえた。俺と先輩方の距離は十mもない。

 

魔法を選択している余地はなかったので想子を可能な限り圧縮し一つ撃ち出しすと呂剛虎の鋼気効と左脇腹を貫通した。

 

「グアァァァァ!」

 

かなりの量が出血しているがそれでも前に進もうとしている。

 

「委員長!」

「わかってる!」

 

俺の叫びに渡辺先輩は答えながらCADを操作して気流を起こした。呂剛虎の動きが止まったかと思うと上体を崩しうつぶせに倒れた。

 

「…渡辺先輩今のは催眠系の香料を使ったんですか?」

「…ああ、少し分量を間違えてしまってかなり強力な睡眠剤を処方してしまった。目を覚ますまでにどれくらいかかるのやら。」

 

摩莉のボヤキに苦笑し真由美に聞いた。

 

「七草先輩、怪我はありませんか?」

「ええ、大丈夫よ。警備員呼びましょうかこのまま放っておくわけにもいかないし。」

「お願いします。」

 

俺が頼むと壁に備え付けられた緊急用固定電話に向かった。

 

{これが噂の『人喰い虎』呂剛虎か…。思ったより強敵だったな鍛え直す余地がありそうだ。}

 

俺は電話をする真由美の横でそう思った。

 

 

 

帰宅すると二人に心配されたが怪我をしていないことを告げると安心してくれたので叔母上に連絡すると言って自室に戻った。

 

『…そんなことがあったのそれは大変でしたね。』

 

叔母上は俺の報告に真剣に答えた。

 

「恐るべき技量でした。呂剛虎があれだけの実力だったとは自分の未熟さを痛感させられました。」

『白兵戦では無類の強さをほこりますから落ち込む必要はありませんよ。直接対峙して怪我をせずに退けたのは称賛に値すると思いますけど。』

 

おどけているのか本気なのかはわからない。褒め言葉なのだが落ち込むことはないと言ってくれているのだ俺は素直に受け取ることはできなかった。

 

「しかし先輩方がいなければ協力者は殺されていたでしょう。」

『かもしれないわねでもあなたの魔法を使えば苦戦することはなかったはずですけど。』

 

真夜は『ヘル・フレイム』を使えばよかったと言っているのだが俺は反対だった。

 

「確かに使えば楽でしたでしょうけど女性の前で人が燃える光景を見せたくなかったものですから。」

『甘いわねそんなことを言っているといずれ大切なものを失うわよ。』

「肝に銘じます。」

 

真夜の言葉は本気だったので素直にうなずいた。

 

『論文コンペ頑張りなさいと達也さんに伝えておいてねそれじゃあまたね。』

「お休みなさいませ叔母上。」

 

それきり電話は切れた。

 

{今のは気をつけなさいってことだよな?}

 

そう思いながらリビングに向かった。

 

 

 

「叔母上から伝言どう解釈すればいいのかわからないけど伝えるよ『論文コンペ頑張りなさい』だって。」

「そのままでいいんじゃないでしょうか?」

 

深雪は深く考えずに答えた。

 

「いや深雪、事件が起こるのは一度に一回限りじゃない。平河先輩の妹といい関本先輩といい関係者を使って失敗しているんだ次は自分達から動くだろうだが今は論文コンペのことを考えるのが先だ。」

 

達也の言葉にうなずいた二人だった。

 

「それに藤林さんからの報告だがほぼ全部のスパイを拘束したらしい。隊長の陳祥山(チェンシャンシェン)は逃がしたが克也が呂剛虎を確保してくれたから満足したってさよかったな克也。」

「ああ、これで達也が集中できる。」

 

俺はそう思った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。