魔法科高校の劣等生~双子の運命~   作:ジーザス

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第三十一話 後悔

「司波君ちょっといい?」

 

放課後、風紀委員本部に向かうと千代田先輩に呼ばれて近づくと仕事を押しつけられた。

 

「シールズさんのことは知ってると思うけど今日一緒に回ってくれない?」

 

{面倒臭い、また変な噂が流れるな}と思ったが拒否すると千代田先輩の機嫌が悪くなりそちらの方が面倒臭いので承諾することにした。

 

 

 

「リーナの行っていた学校ではこういう制度はなかったのか?」

 

普段仕事で巡回している道を歩きながら達也はリーナに聞いた。

 

「ええ、入れるのは二年生からで一年生は勉学に励みなさいというスタンスだったわ。」

「それはアメリカ全体でか?」

「詳しくは分からないけどそういう学校は多いと聞いたわ。」

「なるほどねリーナからしたらこれは珍しいんだな。」

「ええ、だから詳しく知りたいと思ったの。」

 

話の軸を乱すことなく会話が続くのでそういうところは鍛えられているらしい。

 

回っていると視線が飛んできたが達也の腕章を見て状況を理解したようで茶々を入れてくるような無粋な生徒はいなかった。

 

「ねえタツヤ、あなたはalternate補欠なのよね?」

「ああ、そうだ。」

「でもみんなタツヤは校内でトップクラスの実力を持ってるって言ってたわ。」

 

みんなというのが誰なのかが気になったが聞かなかった。

 

「俺は周りの人間とは違う少し特殊な環境で育ったからな。それに実戦経験が多いから戦略を練るのに慣れている。」

「年齢=経験じゃないのは理解できるわ。」

 

リーナの想子が冗談では済まないほどに活性化していた。

 

「穏やかじゃないな。」

「分かるのねすごいわ。」

 

そう言うと研ぎ澄まされた刃のような笑顔をしながら右拳底を繰り出してきたので掴み取る。指先に想子を集め放つ瞬間に手首を捻る。

 

「っ!」

 

リーナが声を上げたので捻っていたリーナの手首を離した。

 

「あんた本当に力加減がすごいわね絶妙だわ。」

 

自分の右手をさすりながら言ってきたので質問することにした。

 

「説明してくれるんだろうな?」

「ちょっと確かめたくなっただけよお許しくださいタツヤ様。」

 

リーナの言葉に苦笑が浮かんだ。

 

「何よ?」

「いや、リーナらしくないなと思ってな。」

「ワタシのどこが上品じゃないというのよ!」

「キャラじゃないだろ。」

 

達也の言葉にリーナは余計なことを言ってしまう。

 

「これでも大統領のお茶会に呼ばれたんですからね!」

 

自分の言葉を思い出し達也をにらむ。

 

「…はめたのね?」

「今のはリーナの自爆だろ?」

 

睨み付けるのを俺は無視した。大統領と直接会えるのは階級の高い人物か一定以上の魔法力を持つ魔法師だけなのでリーナがアメリでも有数の強力な魔法師だということだ。リーナが『アンジー・シリウス』という可能性が上昇したが今はどうでも良いことだった。

 

「とりあえずはリーナの好奇心で俺に攻撃をしたということでいいんだな?」

「…ええ。」

「じゃあ、説明を再開しようか。」

 

達也はそう言うと巡回路を進み始めリーナも追いかけた。このやりとりを知っているのは当事者の二人だけだった。

 

 

 

「シルヴィ、どうしたんですか?」

「カノープス大佐から緊急の連絡です。」

 

真夜中、同居人にたたき起こされ電話を取った。

 

「ベン、音声のみで失礼します。」

「こちらこそ失礼します、先月脱走した者達の行き先が発覚しました。」

「何処ですか!?」

「日本です、横浜に上陸後今は東京に潜伏中だと思われます。」

 

カノープスの報告にリーナは驚愕した。自分がいるこの東京に自国の脱走者が潜伏しているとは考えていなかったからだ。

 

「総隊長、参謀本部からの指令をお伝えします。アンジー・シリウス少佐に与えられていた命令の優先権を第二位とし脱走者を追跡後捕獲または処刑せよとのことです。お気を付けて。」

 

そう言い終えるとカノープスは電話を切った。リーナは震えていた。自分がどんな理由で震えているのか自覚せずに。

 

 

 

「達也君、昨日のニュース見た?」

 

翌日の朝教室でエリカが達也に聞いてきた。

 

「吸血鬼事件のか?」

「うん、あたしは臓器売買ならぬ血液売買だと思うんだけど。」

「それじゃあ全体の一割しか減っていないのが理解できないな。それに血を抜いた注射痕が残っていないことを考えると可能性は低い。」

 

達也の言葉にエリカはまた考え直すようだ。レオが普段より遅く登校してきたので理由を聞こうと思ったが時間的に無理だったのでやめた。

 

 

 

昼食でリーナがいないことに達也は気付いた。

 

「今日リーナはいないのか?」

「なんでも家の事情で休みだそうです。」

 

三日目で休むのもおかしな話だが国からなにかしら命令を受けたのだろうと達也は思った。

 

 

 

その日の夜、克也は真由美と克人とレストランの一室で会談していた。

 

「七草家が把握している情報では吸血鬼事件の犠牲者は報道人数の三倍、現時点で二十四人多すぎるわ。」

「つまりそれより犠牲者の数が増える可能性があるということですか?」

「ええ。」

 

俺の質問に真由美は深刻そうに頷いた。

 

「被害に遭っているのは七草家の関係者か?」

「半分正解ね正確には当家と協力関係にある魔法師よ。」

「つまり敵は魔法師を狙っているということですか?」

「でしょうね。」

 

ため息をつきたくなるがこらえる。

 

「四葉、留学生は怪しいと思うか?」

「怪しいとは思いますが彼女は犯人ではないでしょう。むしろ処理する側ではないかと。」

「その情報は実家からか?」

「いえ、俺の想像ですリーナが来てからこの事件が発生しているのでタイミングが良すぎると思いました。それにあの魔法力を考えれば未知の敵に対処するためだと考えることが出来ます。」

 

俺は自分の考えられる限りの可能性を話した。

 

「なるほどなだがこのことを解決するには四葉家の手を借りるべきだが。」

「それはほぼ不可能ね父が余計なことをしたせいで四葉家とは実質的に冷戦状態だから。ごめんね克也君迷惑をかけて。」

「いえ俺はどうでもいいので何も文句はありませんし言うつもりはありません。それに俺はまだ次期当主候補の身ですので俺は協力させてもらいますよ知り合いに被害が出てからでは遅いですから。」

 

真由美の謝罪を受け入れる。

 

「ありがとうこれで七草家と十文字家は共闘し克也君も参加すると。案外簡単に解決するかもしれないわね、それと克也君今日のことはお二人には内緒でね。」

「分かってますよ知られたら俺の首が飛びます特に深雪によって。」

 

そう言うと二人は想像できたのか苦笑した。その後俺は家路についた。

 

 

 

克也の家に凶報が届いたのは家を出る直前だった。俺と達也が険しい顔をしていると深雪に声をかけられた。

 

「どうされました?」

「レオが吸血鬼に襲われたらしい。入院しているらしいが命に別状はないから見舞いは放課後にしよう。幹比古と美月も誘って行きたいから連絡しておいてくれないか?」

「「わかった(りました)。」」

 

 

 

「酷い目に遭ったなレオ。」

「見苦しい姿見せちまったな。大丈夫なんだけどよ力が入らないから立ち上がれねえんだ。」

 

レオの入院している病院の一室で達也の問いかけにレオはベッドに横たわったまま返事をした。

 

「で、何があったんだ?」

「それが良くわかんねえんだ殴り合っている最中に突然力が入らなくなってな。白い仮面をかぶっていたがやり合った感じ女だったぜ。」

「素手でレオと互角かそいつがもしかしたら吸血鬼なのかもしれないね達也。」

 

レオの言葉から俺はレオが吸血鬼と出くわした可能性があると思った。

 

「それよりなんで夜中に歩いてたんだ?」

「エリカの兄貴の捜査に参加してたんだよ。この前歩いてるときに話しかけたら連行されて話を聞いたときに俺が参加するって言ってな。」

 

どうやらエリカの兄の責任はそれほどないらしい。

 

「最初から人間じゃなかったということもありえるよ。」

「幹比古それはどういう意味だ?」

 

達也の問いかけに幹比古は真剣に話し出した。

 

「レオが遭遇したのは『パラサイト』なんだと思う。寄生虫という意味じゃなくてPARANORMALPARASITE(超常的な寄生物)略して『パラサイト』。人間に寄生して人間以外の存在に作り変える魔性のことだ。古式魔法の中でもマイナーだから現代魔法を使うみんなが知らなくてもおかしくはないよ。」

 

幹比古の説明に全員が恐怖した。

 

「レオ、君の幽体を調べさせてもらっていいかい?」

「ゆうたい?」

「幽体は精神と肉体をつなぐ霊質で作られた器だよ。人の血肉を糧にしている魔物は同時に精気を取り込んでいると考えられているから身体と同じ大きさをしている幽体を調べれば原因が分かるかもしれない。」

「分かった任せるぜ幹比古。原因が分からなかったら処置の方法もわかんねえからな。」

 

幹比古の説明に納得したレオは二重の意味で許可を出し頼んだ。

 

克也や達也が見たことのない伝統呪法具と由緒正しい墨で書かれた札を用いてレオの状態を視て驚愕していた。

 

「…克也や達也も大概おかしいと思ってたけどレオ君は本当に人間かい?」

「…なかなかの言いぐさだな幹比古。」

 

レオはしみじみと呟かれ気分を害していたがそれに気付かない幹比古は驚き続けていた。

 

「これだけ吸われていたら普通ならこうやって話せないはずだよ。」

「幹比古どうしたんだ?」

「ごめん、今のレオには常人が意識を保っていられないほどの精気を奪われているのにこうやって話しているから驚いてるんだ。」

 

幹比古は説明を続け教えてくれた。

 

「そりゃあ俺の身体は特別製だからな。」

 

それでも笑い飛ばすレオは本当に心優しい少年なのだろう。本気で自分をけなしているわけではないことを分かっていたので怒ったりはしなかった。しばらく話をしレオの体調を考え変えることにした。

 

 

 

 

「幹比古、何故『パラサイト』は血が必要だったんだ?精気を吸うだけなら必要ないはずだろ?」

「うんそれは僕もおかしいと思ったんだ。」

「他に理由があるのかもしれませんね。」

 

深雪の言葉に全員が頷いた。

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