魔法科高校の劣等生~双子の運命~   作:ジーザス

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来訪者編もクライマックスですよ~


第三十八話 討伐

克也達はエリカ達と合流し三mの塀を跳び越え演習場に侵入した。警備システムがないのは夜に野外演習場に入ることが危険なことだと知っている人間と関わりたくない人間が周辺に多いからだ。

 

侵入すると空気が張り詰めておりどうやら舞台の準備は整っているようだ。慎重に歩き奥深くに向かっていると美月とほのかピクシーに呼び止められた。

 

「現在進行方向から右手三十度にオーラ光が見えます。」

「男性二人と女性一人です。映像を転送します。」

『三体の同胞を確認。』

 

ほのかの魔法によって全員の携帯端末にほのかの眼で見たリアルタイムの映像が送られてくる。美月とほのかのおかげで即座に発見できた。

 

克也と達也が視界を広げれば可能だったが二人ほど鮮明には視えず発見も遅れていただろう。

 

「仮面の女の子が克也さん達の反対側から『パラサイト』に向かってます!」

「このスピードと殺気、まさかリーナあいつ宿主を殺すつもりか!?」

 

美月の報告通りに視界を広げると濃密な想子をまとって接近しているのが視え誰にも聞こえないように俺は毒づいた。全員に許可を貰ってから達也と二人で全力疾走で向かった。

 

 

 

ここに集っているのは自分達と今は敵である存在、そして今回のターゲットである『パラサイト』であると克也達とリーナは考えていた。

 

しかし実際には九島烈が差し向けた抜刀隊とそれを単身追走する人物という五つのグループがこの演習場に集結していた。

 

克也達は九島烈が『パラサイト』に興味を持ち利用するつもりであるなど知る由もなく自分達が知らないことを想定して行動など出来るはずがなかった。

 

 

 

森の中ほどでリーナが『パラサイト』に斬りかかるのをなんとか想子の仮想の壁で防ぐがリーナの魔法『旋風(つむじかぜ)』によって俺は吹き飛ばされた。

 

あまりの威力に予想以上の距離を飛ばされこちらに向かっていたレオに激突してしまった。

 

「うお!」

 

レオが気付いたときにはドカーン!とでも音が出そうな衝撃が二人を襲い地面に崩れてしまった。

 

「いてててて、何だぁ?」

「克也お兄様?」

「克也君?」

「いてててて、やあみんな。」

 

驚いて眼を見開いている全員に軽く挨拶する。

 

「レオ、すまん。」

「構わねえけどよなんちゅう勢いでくんだ?俺じゃなかったら死んでるぜ?」

「エリカなら避けてただろうし深雪なら慣性中和の魔法で止めてくれたさ。」

「克也君何があったの?」

「恥ずかしながらあの赤髪の仮面少女に吹き飛ばされて慣性中和の魔法使うのが遅れてここまで吹っ飛んできた。」

「…そう。でそいつはあそこね?」

 

エリカが自己加速術式で向かったのに気付いてから追いかけた。到着するとエリカが五十里先輩に作ってもらい達也に調整させた『大蛇丸』のダウンサイジングバージョンである『ミヅチ丸』を振りかぶり『パラサイト』を一閃し胴を薙いだ。

 

エリカに念動を撃とうとした『パラサイト』に達也が部分分解術式で四肢を撃ち抜き地を這わせ想子の塊を撃ち出し『パラサイト』の想子を吹き飛ばす。

 

克也と幹比古の三人で話し合った結果『パラサイト』は霊子の塊でありながら魔法を使う際に想子を消費し弱体化するのではという仮説を立てた。

 

「幹比古!」

 

通信機を使わずとも木の精霊を使って俺達を見聞きしている幹比古に合図を送る。すると雷撃が『パラサイト』を襲い皮膚に幾何学模様と文字が刻まれる。

 

もう一匹に『遠当て』を使い雷撃で封印すると近くで幹比古とは違う雷撃が走ったので見てみると『パラサイト』が黒焦げになっており本体はどこかに飛び去った後だった。

 

「アンジー・シリウス、頼むから封印前に殺さないでくれないか?後始末が面倒くさい。」

 

声をかけるとその場を去ろうとしていたリーナが立ち止まり返事をしてきた。

 

「私には関係ない。」

「シリウスの任務か、それは重々承知の上でのお願いだ。」

「それは任務には含まれない。脱走兵であろうがそうでなかろうが私の任務は処刑だけだ。」

 

それだけ言い残し森の中に姿を消した。

 

「今のはリーナだよね?姿、声は別人だけど。」

「分かるのか?」

「なんとなくだけどね、仕草が似てたから。」

 

エリカの言葉に驚くが同時に納得もする。エリカのように相手の動きを観察する戦闘スタイルの人にすれば相手の癖を覚えるのは当たり前のことだろう。それでも『パレード』を使って偽装しているリーナを一目で見抜く眼力は恐るべきものだ。

 

「リーナに言ったのもエリカにも当てはまるぞ。」

「それは難しいお願いだね克也君。」

「可能な限りでいい。不可能であれば殺しても構わない。」

「オッケー。」

 

 

 

達也はリーナの後を追い俺達は少し遅れて走っていた。すると突然俺は立ち止まりレオと深雪、ピクシーもほぼ同時に立ち止まると真剣な顔をしていた。

 

「囲まれているというよりそう思わせているみたいだなどうする克也?」

「潰そうか、邪魔されるのは嫌いだしどんな目に遭うのかを教えてやる。深雪、達也の元に迎え。」

「分かりましたお気を付けて。」

 

想子を活性化させ{ブラッド・リターン}をホルスターから抜き出す。深雪が走り去るのと同時に戦闘が始まった。

 

「装甲(パンツアー)!!」

 

レオが音声コマンドでCADを操作し敵と交戦し始める。『偏倚解放』でまとめて五人ほど戦闘不能にさせ横を見た。すると殴り合っていたレオが敵の攻撃をよけた瞬間足を滑らせた。

 

体勢を立て直したばかりのレオに襲いかかる人影に向かって剣筋が襲いレオのフックアッパーが直撃し吹き飛んだ。

 

「克也君、達也君が合流しろだって。」

「じゃあ、任せる。気をつけろよ。」

 

エリカからの言付けをもらいその言葉を残し向かう道中リーナが二体『パラサイト』を殺すのを視てため息をつく。どうやら言葉通り処刑だけを目的しているようで容赦なく行っている。

 

{やれやれ本当に言葉通りにするとはね。後で苦労するだけだってのに。}

 

そう思いながらも足の回転を速め達也の元に向かった。

 

 

 

達也の元に到着するとひどい有様だった。克也達は知らないが地面に倒れている男達は九島家の息がかかった部隊の戦闘員達で十人中八人が死亡しており残り二人も立つことの出来ない重症何があったのか想像も出来なかった。

 

「深雪これは?」

「今、リーナと対峙している『パラサイト』のせいです。」

 

深雪の言葉通り達也とリーナは六人の『パラサイト』と戦闘中であった。既に片付けた人数と比べるとピクシーに聞いた数より増えている。

 

「リーナ待て!」

 

俺の制止を無視して魔法を放った。その半分は達也によって無効化されたがリーナの攻撃を受けた三体の『パラサイト』は絶命し達也の魔法によって貫かれた三体の『パラサイト』が自爆した。

 

 

 

「レオ気をつけて!」

「エリカちゃんそっちに『パラサイト』の本体が!」

 

突然幹比古と美月から二人に緊急通信が入り同時に驚愕していた。

 

「次兄上、『パラサイト』がこちらに向かっているようです!」

 

先程まで気持ちの上で剣先を向けあっていた兄に伝えると修次はあまり『パラサイト』について知らないらしく首をかしげていたがエリカの言葉に緊張感を抱いたのは抜刀隊だった。

 

エリカの背後の土がめくれ上がり人影が飛び出したのとほぼ同時に抜刀隊の後ろからも同じように人影が現れた。エリカの背後に現れた人影はエリカに跳びかからずピクシーを狙っていた。

 

鉈を硬化魔法で防ぎ跳ね上げるがレオの筋力でもそれだけでは間合いを十分に取ることは出来ない。もう一度振り下ろそうとする襲撃者の胸から刀の先が突き出ており動きを止めた。

 

エリカは「しまった」という表情をしていた。どうやら克也の注意を思い出したようだが時既に遅しでありどうしようもなかった。

 

抜刀隊の後ろから現れた襲撃者は修次の綺麗なフォームから繰り出された前蹴りによって吹き飛ばされ慎重に近づいてきた修次の目の前で破裂した。霊子の塊が抜け出したことにその場にいた誰もが気付かなかった。

 

「ごめん克也君、一体殺しちゃった。もう一体は自爆したみたい。」

「気にするなエリカ。二人とも怪我がないならそれでいい。すまないがピクシーをこちらに合流させてくれ。」

「わかった。ピクシー克也君が合流しろだって。」

『了解しました。』

「幹比古、ほのかピクシーのフォローを頼む。」

「わかった。」

「わかりました。」

「それとエリカ、レオお前達はそこを動くな。その場にいる全員に伝えてくれ。」

「了解。」

「わかったぜ。」

 

そう伝えて音声にユニットの通信を切る。どうやら『パラサイト』は俺達が思っているより用意周到のようだ。正直、対応策が見つからないので対処が遅れ後手に回ってしまう。だがここで仕留めなければもはやどうすることも出来ないだろう。

 

 

 

この世界に引きずり込まれた『パラサイト』は十六体。内一体はピクシーの中に二体は先程の戦闘で封印済み。そして六体はリーナに一体はエリカに宿主を殺され本体を解放。残り四体も自爆し本体を解放。

 

合計十一体が宿主を失い、仕留めなければならない相手だ。ピクシーに引かれ集まった彼らは元は一つの存在。よって一つの存在に戻り敵を排除しようと合体していた。

 

十一の頭を持つ大蛇のような存在『十一頭竜(といちずりゅう)』をその眼で見た克也達はピクシーに食らいつこうとしている場所に向かった。それはそこに「ある」と認識できるほど鮮明に視えた。

 

「あれは何!?」

「視えるのか?」

「見えてはいないけどそこに何か『力』が集まってるのがわかる。あれは一体何なの?」

「あなたがお兄様方の言うことを聞かなかった結果よ。あれだけ殺すなと言ったのにどう責任を取るつもり?」

 

リーナの質問に底冷えするような声音で答える深雪に俺は恐れを感じていた。

 

「脱走者を処断することそれがワタシの存在意義よ!ならワタシが倒すわ!」

 

リーナが『パレード』を発動させ接近すると『十一頭竜』がリーナに狙いを変えたのを克也と達也は視た。二人でリーナに放たれる攻撃を全力で相殺させた。

 

一体でも厄介な敵が十一体も集まっているのだから全力を振り絞らなければならないのは当然だろう。むしろたった二人で十一体もの攻撃をすべてはじくことを賞賛するべきだ。

 

「幹比古、こちらの状況は見えているか?」

 

魔法で攻撃を防ぎながら音声ユニットで連絡する。

 

「見えているけどどうしたの?」

「数秒でいい、動きを封じれないか?」

「…無理ではないけど五秒ももたないと思うよ?」

「それだけあれば十分だ、頼む。カウントはそっちでいい。」

「わかった、いくよ。3、2、1、今!」

 

合図とともに対妖魔術式『迦楼羅炎(かるらえん)』が放たれ『十一頭竜』と互いを食い合うように巻きつくのを眼ずに達也と背中合わせで立ち右手を左手を突き出す。

 

残り四秒。

 

魔法演算領域を達也の規模に合わせて魔法式を構築。俺が視ている状況を達也に送り込み達也が視て照準を定める。一高での戦闘とは違い少ない規模で構築される。それでも一人では処理できないほどの情報量が二人の魔法演算領域を往復する。

 

三秒。

 

魔法式が起動式として展開される。

 

二秒。

 

想子が活性化し俺達の右手と左手に集まる。

 

一秒。

 

『迦楼羅炎』が消え始める。

 

ゼロ秒。

 

十一頭竜がリーナを無視して魔法力の高いこちらに向かってくる。そこを目掛けて魔法を発動させる。

 

『焔解散(ラハブ・ディスパージョン)』

 

克也と達也が八雲にヒントを貰い新しく考案した精神干渉魔法。八雲は二人のどちらかに魔法演算領域を合わせると言ったが規模の大きい方か小さい方かとは言わなかった。威力は落ちるが二人の負担が激減すると判明したので達也に合わせることにしたのだ。

 

『焔解散』は克也の眼で存在を認識し達也の眼で魔法式を照準させる。『焔解散』が『十一頭竜』の精神に作用し霊子情報体を全て燃え散らした。

 

「リーナ、今見たことは他言無用だ。」

 

少し疲弊しながら達也はリーナに話し掛けた。

 

「いきなり何?」

 

深刻な表情に声音で言われたら誰でも動じるだろうそれも克也であれば尚更。

 

「その代わりリーナが『アンジー・シリウス』の正体であることを話さないと名前に誓おう。これはこの場にいる全員が対象だ。」

「いいわよ。ワタシにとっても悪い話じゃないしカツヤとタツヤのことは内緒にしてあげる。」

「ありがとうリーナ。」

 

その言葉を残し俺達は二体の『パラサイト』を置いてある場所に向かった。しかしそこには先客がいた。

 

 

 

「これは九島閣下お目にかかれて光栄に存じます。私は黒羽亜夜子と申します。今回は黒羽家の使いとしてではなく四葉家当主の使いとしてやって参りました。」

「四葉家の代理の方か、なるほど道理で若さの割にしっかりとした心をお持ちのはずだ。」

 

二人の空気は敵対してはいなかった。友好的とも言えない空気である。何故ならそう話す少女の眼は強い光を放ちすぎていたから。

 

九島家の一団は少なからず敵意を抱いていたが四葉家の一団は敵意どころか感情を表していなかった。興味なしとでも表した方が的確だろうか。その理由は亜夜子が敵意を示していないのが大きいだろう。

 

「お互い時間があまりないようですので交渉しませんか?閣下。ここには二体の封印済みがあるのでそれぞれ一体ずつ持ち帰るのは如何でしょう?そちらも欲しているようですしこちらの当主も望んでおられるので。」

「いいだろう。もらえるのであればそれで構わない。」

 

二人は部下に回収させ背を向けて闇の中に消えていった。

 

 

 

克也達がその場に着くと何もなくすると音声ユニットが鳴ったので出る。

 

「すみません達也さん。」

「ごめんなさい達也さん。」

「二人とも気にするなそもそも見張りを置いていなかった俺達が悪い。それに後のことを考えていなかったしな。」

 

美月とほのかにそう伝えてから音声ユニットを切る。

 

「達也これはまさか。」

「断言は出来ないだがおそらくそうだろうな。」

 

森を抜ける風に紛れて鴉の羽が飛んでいくのを克也と達也は捉えていた。そしてそれがある人物からのメッセージであることにも気付いていた。

 

 

 

克也達がエリカとレオに出会った頃には修次と抜刀隊が撤収していた。互いに労い幹比古達と合流し校門を出た時間は二十一時を過ぎていた。守衛から不審な眼を向けられたが深雪の笑顔に引き下がった。




原作とは違いパラサイトを増やしております。次話が来訪者編最後です。


旋風(つむじかぜ)・・オリジナル魔法。強烈な風圧で相手を吹き飛ばす魔法。

焔解散(ラハブ・ディスパージョン)・・オリジナル魔法。克也と達也が今回のために新しく完成させた精神干渉魔法。ラハブはアラビア語で炎を表す。
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