魔法科高校の劣等生~双子の運命~   作:ジーザス

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第四十三話 実験効果

数日後の夜、克也は自室で四葉の秘匿回線を使い亜夜子と話をしていた。

 

「今日はどんな話題を持ってきてくれたんだ?」

『単刀直入ですね克也さん。それでは結婚相手が見つかりませんよ?』

「…それ達也が叔母上に言われてたよ。双子だから仕方ないと思ってくれ。」

『構いませんわでは本題に入りましょうか。四月二十五日、来週の水曜日に一高へ国会議員が視察に訪れます。』

「民権党の神田議員かい?」

『よくお分かりですね克也さん。』

「意外性と面白みがないからがっかりだよ。」

 

予想通りで言葉通り落胆した表情で俺は答え訪問理由を考えていた。

 

「目的は生徒が軍と癒着していることを確認したいんだろうね。亜夜子なら分かっているだろう?」

『…お褒めの言葉として受け取っておきます。』

「事実褒めているんだけど。」

『分かってやっていますか?』

「どういうこと?」

『…何もありません。取りあえずお伝えしました。』

「ありがとう参考になったよ。」

『ではお手並み拝見させていただきますね。』

 

俺は電話を切り就寝準備に入った。

 

 

 

翌日四月二十日始業前に達也、深雪、五十里先輩、中条先輩を呼び出し昨日もらった情報を話した。

 

「神田議員が来るのは面倒くさいことになりかねんな。」

「四葉君その情報はどこから?」

「実家からです。母も俺がいる学校に反魔法師キャンペーンに関わっている国会議員が来るのは許容できないのでしょうね。」

 

もっともらしい嘘をつき黒羽家のことは話さないようにした。あの二人が四葉家の分家であることを公にするのは次期当主候補から次期当主を決定し当主の座を継承した後になるだろう。公にしないこともありえるがそれを決めるのは次期当主だ。俺が考えることではない。

 

「おそらく彼らは魔法科高校が軍事教育化していると世論に訴えたいのではないでしょうか。高校が軍と癒着し学校側が軍属するよう強制していると示したいのでしょう。」

「なるほどね、そうすればその情報を公開した自分達に資金が入り動きやすくなるからかな。」

「ええ、それで今回これを逆に利用してやろうと思いまして少し派手なデモンストレーションをしたいと思っています。」

 

俺はそう言いながら設計図と説明書を全員に見えるように出した。

 

「これが…?」

「少し…?」

「これは…。」

 

五十里先輩、中条先輩と達也は呆れながら呟いた。驚くのは普通であり平常心でいられる方が不思議だ。克也の出した設計図は加重系魔法三大難問の一つ『常駐型重力熱核融合炉』に近い装置だったのだから。

 

「効果は抜群だろうけど出来るのかい?」

「現段階では無理ですが達也の目標にも繋がり当校に訪れる国会議員を驚かせさらには生徒の意識向上に繋がると考えています。費用は多少かかりますがこれだけのメリットを無視してしない手はないと思います。」

「四葉君の心意気は理解できました。疑っているわけではないですけど本当に成功できるんですか?」

「我が校の生徒が協力すれば一時的とはいえ短時間なら実験炉を動かすことは可能だと思います。」

「僕は賛成だ。神田議員を追い返す力にもなり自分の勉強にもなるこれはやるべきだね。中条さんはどう思う?」

「私も賛成です。一高生徒会長としてではなく一人の魔法師として興味があります。」

「俺も賛成だな。自分の目標に繋がることを除外しても面白そうだ。」

「私も賛成です。」

 

全員が賛成してくれたことで後は職員の許可をもらうだけだ。

 

「参加メンバーは俺と達也で考えますので放課後またここにお願いします。ご足労をおかけしました。」

 

先輩二人に礼を言い三人で教室に戻った。

 

 

 

放課後、職員に条件付きで許可をもらい生徒会室に向かった。

 

「条件付きで許可をもらいました。」

「条件とは?」

「廿楽先生が監督として参加されます。」

 

廿楽が席に座り質問してきたので予定通り達也と考えた案を伝える。

 

「参加者は誰にするのですか?」

「ガンマ線フィルターは光井さんに頼もうと思っています。電磁波の振動数をコントロールする魔法に適しているのは当校では彼女だけです。頼むぞほのか。」

「頑張ります。」

 

ほのかの真剣な顔に俺は安心し話を続けた。

 

「クーロン力制御は五十里先輩に中性子バリアは達也の従妹の桜井さんに頼みます。」

「一年生で大丈夫ですか?」

 

廿楽の懸念は魔法力の不足についてではなく強力な魔法を使えるのかというものだった。

 

「大丈夫です。対物理防壁魔法に関しては自分のお墨付きです。」

「そうですか。」

 

廿楽が息を吐いたのは俺の言葉というより四葉の名前を持つ魔法師が認めたらなら大丈夫だろうという安心感からのものだった。

 

「第四態相転移は決まっていませんが重力制御は自分と深雪が担当します。」

「妥当な人選だと思います。」

 

当校で最も魔法力を持つのは三年を除き克也と深雪であると廿楽も理解していた。

 

「会長には全体を見ていてもらいます。問題は第四態相転移を誰に頼むかですが…。」

「第四態相転移を私達に任せてもらえませんか?」

「泉美、私達とは香澄と一緒ということか?」

「はい、二人でなら可能だと思います。」

「わかった、二人の阿吽の呼吸なら心配ないだろう。泉美、実験のことを達也が説明するから香澄を呼んできて欲しい。」

 

泉美が香澄を生徒会室に連れて来た後達也が概要を説明し準備が始まった。四日間という短い期間だが実験炉さえ完成すればあとは全員で魔法を互いに阻害しないように工夫するだけで終わりだ。手伝いには友人や知り合いが参加してくれたおかげで三日後にはリハーサルを終了させ本番を待つだけになった。

 

 

 

そして翌日それは魔法に関係する人物にとって好ましいことはなく招かれざる客だった。彼らはアポなしでやってきて取材の許可を求めてきた。

 

「来たか。」

「さっきのざわめきは言っていた人達ですか?」

「だろうね、じゃなきゃこんな空気にはならないはずだよ。」

「あれをしなければなりませんか?克也お兄様。」

「そのために手伝ってもらったからね。あいつが来ようが来まいがやることは変わらない。でも今は授業に集中しよう。」

 

ほのかと深雪を安心させるように言い授業に集中させた。その間雫は克也達を優しく微笑みながら見守っていた。

 

 

 

「実験を開始します。」

 

五限目、校庭に設置された拡声器から達也の声が響くと集まった生徒達が話を止めた。校舎からは学年問わずに見る生徒達が固唾を飲んで見守っていた。遠くから見ているだけでは我慢しきれなくなった生徒が校庭に集まり余計にプレッシャーがかかるが参加者は目の前の実験に集中しているため見られていることは知っていてもプレッシャーを感じなかった。

 

午後の授業を実習ではなく座学に切り替えたのは神田議員に対する抵抗ではなく実験を見たがる生徒が多いと職員が判断した結果だ。予想通り全学年全クラスが講師を含めて廊下から校庭を見ており職員判断は正しかったと言えるだろう。

 

神田議員達と生徒達が見守る中、実験は達也の声と共に開始された。

 

「重力制御。」

 

深雪が重力制御魔法を発動させ重水・軽水の混合水が中心を空洞にし水槽の内側全面に張り付く。

 

「第四態相転移。」

 

泉美と香澄が相転移魔法を発動させ液体を第四態つまりプラズマに変化させる。重水素プラズマと水素プラズマ、酸素プラズマが発生する。

 

「中性子バリア、ガンマ線フィルター。」

 

水波が重力制御魔法と第四態相転移魔法の間に中性子バリアを挿入する。更にほのかが中性子バリアと第四態相転移力場の間にガンマ線フィルターを挿入する。ほのかのおかげで発生した熱を知覚することが出来る。この魔法は発動までの工程が複雑なのでほのかのような多工程の魔法を得意とする魔法師にしか使えずしかもこの学校で最も多工程な魔法を使えるのはほのかだった。

 

「重力制御。」 

 

克也が重力制御魔法を発動させたことで全ての魔法が安定し魔法発動が楽になる。水槽の赤道部分にはめられた金属環は球形水槽に存在する物質を計測しその結果をデータとして達也の隣に置かれた機械に送られる。その機械がデータを起動式として深雪と克也に送られるため微妙に変化する対象領域内の質量に対応した重力魔法を発動できる。

 

「クーロン力制御。」

 

達也の言葉に五十里がクーロン力制御魔法を発動させ物質の化学反応を促進させる。それにより淡い光が発生し数分間輝き続け生徒達がどよめく。可能な限り球形水槽は頑丈な材料を使ったがやはり耐久力不足だったようで形が少しずつ崩れ始めていた。

 

「実験終了。」

 

達也の言葉に克也と五十里が第二の重力魔法とクーロン力制御魔法を解除すると容器内の光は消えた。

 

「ガンマ線フィルターと重力制御解除、中性子バリアは継続。」

 

魔法を解除するとほのかはほっと息を吐いた。どうやら彼女でもこの魔法は発動継続が難しく長時間使用すると疲労を引き起こすらしい。『癒し』をほのかに施しながら最後まで実験の様子を見守る。

 

ロボ研が操るアームが容器の頂上に設置された空気穴にダクトを繋ぐ。ダクトの先にはガス成分分析機が付いており蓋を開けると気圧差で容器からガスが吹き出し分析機に流れ込む。

 

「気体成分、水蒸気、水素、重水素、及びヘリウム。トリチウムその他放射性物質の混合は観測されません!」

 

高らかに分析機の前に陣取った少年から簡易測定の結果が伝えられた。簡易とはいっても成分比が計算されないだけで存在する物質を測定できないわけではない。そしてその声の少年の名前は隅守賢人(すみすけんと)。

 

達也が入学式の日に誘導した少年でありロボ研での一騒動の原因でもあった少年だ。今回は彼が実験の概要を知り合いから聞いて達也に参加を懇願したという経緯であり魔法工学の知識が豊富だったため達也も特別に許可していた。

 

「注水を開始してください。中性子バリア解除。」

 

別のダクトから水が注水され容器が水に満たされると水波が中性子バリアを解除する。ついでに水波にも『癒し』を施す。その様子を見守っていた生徒達は実験結果がどうだったのか早く聞きたくてうずうずしていた。

 

達也が全員を労いながら意思を確認し最後に五十里先輩と頷きマイクを中条先輩に渡す。首を振って受け取らない中条先輩に俺と深雪が笑顔で脅すと観念してマイクを握った。

 

「じょ、『常駐型重力制御魔法を中核技術とする継続熱核融合実験』は所期の目標を達成しました。実験は成功です。」

 

最初言葉が震えていたのは俺と深雪の脅しのせいだったかもしれないが中条先輩の報告に校内の生徒全員が歓声を上げた。それは一高全体が震えたかのような錯覚を俺達に与えた。

 

 

 

翌日、克也達が行った『実験』がニュースサイトにアップされ参加したメンバーより見守っていた生徒達の方が喜んでいた。その『実験』の評価が思った以上に高いことと好意的な意見と否定的な意見が半々であると考えていたが予想より好意的な意見が多いことに克也達は驚いていた。

 

そして最も脅かせたのはローゼンの日本支社長が高評価を与えたことであった。エリカと幹比古は微妙な顔をしていたが。

 

しかし喜ぶ生徒の中に混ざれない生徒もいたのも事実だと言うことを忘れてはならない。その『実験』が一騒動起こすとは克也と達也、深雪は思いもしなかった。




隅守賢人(すみすけんと)・・達也に憧れて一高に入った男子生徒で髪はプラチナ瞳はシルバーという北方白人人種の血を受け継いでいるように見える。

次話でダブルセブン編は終了です。
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