魔法科高校の劣等生~双子の運命~   作:ジーザス

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第四十四話 厄介事

「やれやれ四葉君何があったの?」

 

俺が香澄と琢磨を風紀委員本部に強制連行してきた後千代田先輩が機嫌悪そうに聞いてきた。

 

「自分も最初から見ていたわけではないので詳しくは分かりませんが…。」

 

そう言って俺は意識を事件発生時の頃に戻しながら話し始めた。

 

 

 

俺が部活連の副会頭として巡回していると遠くで人だかりができていたので何事かと思い向かうと香澄と琢磨が言い争っていた。突如二人がCADを取り出し魔法を放とうとしたので止めに入った。

 

「二人ともCADを降ろせ!」

「そこの二人何をしている!」

 

同時に反対側から俺と同じように引き留める声が聞こえ香澄は操作を止めたが琢磨は制止を無視し魔法を放った。俺は振動魔法『耳鳴り』で起動式を展開しかけていた琢磨の三半規管を揺らし魔法式を強制停止させる。

 

俺の魔法発動速度は校内で三年を含めてトップを誇る。故に師補十八家の息子であり首席入学した琢磨の後から発動させても先に行使することが出来る。それによって琢磨は脳震盪を起こし地面に片膝をついていた。

 

「『神速』…。」

 

香澄が俺の二つ名を呟いたが俺はそれを無視した。

 

「一年A組 七宝琢磨並びに一年C組 七草香澄、部活連副会頭の権限を以て連行させてもらう。風紀委員会本部までご同行願うが妙な行動をすればその時点で停学処分とする!」

 

克也の言葉に香澄は固まり動けなかった。

 

「香澄。」

 

振り返りながら自分を見る克也の眼は失望の色に染まっていた。

 

「克也兄…。」

 

香澄が俺の名前を呼びながらうなだれるのを見てため息をつきたかったが連行するのが先だったので飲み込んだ。

 

「森崎、二人を俺に任せてもらえるか?」

「構わない、止めたのはお前だからしたいようにしてくれ。」

「すまない。」

 

案外聞き分けの良い森崎に謝罪し立ち尽くす香澄の肩を優しくたたき付いてくるように促す。付いてきているのを確認しながら七宝の状態を確認する。

 

「立てるか?」

「…ええ、大丈夫です。」

「そうか、なら俺の後に付いてこい。みんな自分の仕事に戻ってくれもう群がる必要は無い。」

 

七宝が返事をしたのでギャラリーに部活動に戻るよう説得した後二人を連れて風紀委員会本部に向かった。

 

 

 

「という経緯です。」

「はあ、早速やらかしてくれたわね二人とも。特に香澄、貴女は風紀委員でしょ何をやっているのよ。」

 

俺の説明にため息をつきながら香澄を叱る千代田先輩に俺は{貴女も人のこと言えませんよ}と心の中で呟いたが口にした瞬間魔法が飛んできそうなので口にはしなかった。たとえ飛んできても無効化させれるので問題ないが…。

 

「香澄はCADを使おうとしただけですから罰則を受けるだけで済みますが問題は七宝ですね。魔法を放ったので停学は確定で退学処分の可能性があります。七宝、お前は俺と森崎の制止が聞こえなかったのか?『風陣(ふうじん)』を発動させてもし俺の対処が遅れて香澄だけではなくギャラリーまで巻き込んでいたらどうしていた?お前だけの責任ではなく親にまで被害がいっていたんだぞ。」

 

最初は騒動を聞いてやってきた達也と執行部の十三束、風紀委員長の花音に説明しその後は七宝に向かって話していた。克也の言葉を聞いて自分がしたことの責任をようやく感じてくれたらしく反省した表情をしていた。

 

「で、原因は何?二人とも正直に言いなさい。」

「七宝君に侮辱されました。」

「七草から許しがたい侮辱を受けました。」

「はあ、四葉君これどうしたらいいと思う?」

 

自分で聞いときながら相手が悪いと張り合う二人にうんざりして俺に問題を投げつけてきた。まあ、騒動を鎮静化させたのは俺なのだから無責任に千代田先輩に押しつける気はなかったので文句を言わず答えた。

 

「一番手っ取り早いのは決闘させ勝負を付けることですね。自分が正しいと思っているなら勝つという気持ちが誰より強いですから負けるのを覚悟で臨んでもらうべきだと思います。二人はどうしたい?」

「…私は正直戦いたくありません。自分が正しいと思っているのは事実ですが勝負までして決める必要は無いと思います。」

「なるほどな、七宝は?」

「俺は戦いたいです!自分が正しいと見せてやりたいです!」

「このまま話し合っても平行線を辿るだけでらちがあかんな。」

 

面倒くさいが俺が一肌脱ぐことにした。

 

「わかった、じゃあ俺が香澄の代わりに戦おう。」

「「「「「え?」」」」」」

 

俺を除く全員が同じ言葉を同時に発した。

 

「いやいやいやそれはダメだよ四葉君!二人の争いに君が関わる必要はないんじゃないの?」

「確かにそうだ俺だって自分が出る必要は無いと思っている。」

「なら…。」

「だが香澄は戦いたくないんだろ?争いたくないと言っているやつに戦わせるわけにはいかない。」

 

俺の眼の本気度に十三束も何も言えずに固まっていた。

 

「だが克也お前が本気を出せば七宝は死ぬぞ。」

 

達也の言葉に俺を除く全員が息を飲む。克也の実力を知らない生徒は一高にはおらずましてや入学して一ヶ月も経っていない一年生でも知らない生徒の方が少ないだろう。魔法を学ぶ者であれば九校戦は無視できない行事であり去年克也が大活躍したのを知らないわけがない。

 

「…分かりましたその勝負お受けします。」

「七宝いいのか?」

「ええ、俺が正しいことを証明させて見せます。」

 

十三束の心配にも七宝は耳を貸さず俺を見てきた。その眼の光は虚勢ではなく本気で戦う魔法師の眼だった。

 

「七宝、今回は特別だぞ次回からは手は貸さんからな。」

「分かっています。」

「ならいい。それとお前の勝利条件は俺にお前の力を認めさせることだ。そのためならどんな手段を用いても構わない。俺を殺すつもりで来なければお前は死ぬと思え。」

 

俺の脅しに少し恐怖した七宝だがすぐに先程の眼で睨んできた。それが心地良くにやついてしまった。

 

「委員長これに承認印をお願いします。」

 

達也が渡した書類に風紀委員長の許可を表す承認印を押し生徒会長からも承認印をもらうために克也は達也と共に生徒会室に向かう途中場所を指定する。

 

「場所は第二演習室で十五分後に開始で終了時間は開始から三十分でお願いします。」

 

そう伝えてから生徒会室に向かう。

 

 

 

「達也、ピクシーに頼んでロボ研のガレージからバイク部までの想子観測機のデータを消すようにあとで頼んでおいてくれないか?」

「構わないが七宝と何処までやるつもりだ?」

「別に頭にきたから懲らしめてやろうと思ったわけじゃない。ただあいつの心を正しい方向に戻してやりたいんだ。正義感があるのは良いことだけどねじ曲がっていたらそれは悪と大差ないし周りを巻き込んでしまう。そのことに気付いて欲しいから俺は香澄の代わりに戦うことにしたんだよ。」

「後輩思いなんだな克也は。」

「それは良い意味だよね達也?」

「それ以外にどう解釈するんだ?」

 

生徒会室に向かいながら話していると最後の方はもはやじゃれ合いになっていたが楽しかったので気にしなかった。中条先輩に承認印をもらい第二演習室に向かった。結局生徒会室にいた深雪とほのか、五十里先輩、中条先輩が参加し結果八人が俺と七宝の試合を観戦することになった。

 

 

 

第二演習場に到着し{ブラッド・リターン}が正常に作動するのを確認し七宝と対面する。

 

「審判は自分、司波達也が務めます。試合は非公式とし高校生活に影響しないことを約束する。克也が七宝を認めれば七宝の勝ち、認めさせることが出来ず七宝が戦闘不能になれば克也の勝ちとする。直接攻撃は禁止、致死性の攻撃または回復不可能な攻撃も禁止する。ルール違反すればその場で失格としそれなりの罰を与えるからそのつもりで。双方構えて…始め!」

 

達也の合図とともに七宝が脇に抱えていた本を床に落とし『雷撃波(らいげきは)』を放ってきたが俺は領域干渉でなんなく無効化した。七宝が驚いているところを見ると手応えがあったが平然としていることに衝撃を受けているか自分のこの魔法に自信があったのにあっさりと破られたことに対する恐怖だろうか。この歳で『雷撃波』を使えることには少々驚いたが威力が低いので正直期待外れだった。

 

深雪達は七宝が高等魔法をなんなく発動させたことに驚き半分関心半分の表情をしていたが克也が無効化すると「さすが」という顔と「でしょうね」という納得の顔に別れていた。正確には同級生が前者、上級生が後者である。克也の領域干渉を貫通するのは並大抵のことでは不可能であり完成してしまえば深雪でも解除できないほど強固になる。それを知らない下級生からすれば現実逃避したくなるだろう。現に香澄は魂が抜けた表情で試合を見ていた。

 

七宝は圧縮空気弾を何十発と撃ち出しているが一向に領域干渉が緩む気配がしないので焦っていた。『雷撃波』が領域干渉で無効化されたことにより余計に精神的ダメージを受けていた。精神的ダメージの蓄積は魔法発動の妨げになる。魔法を普段発動させるだけで精神には負荷がかかり疲労が溜まるが恐怖や緊張は余計に精神を疲弊させる。それが顕著に琢磨に現れ始めていた。しかし琢磨は精神的ダメージの蓄積による魔法発動の阻害によるものではなく焦りによるものだと勘違いしていた。

 

{くそ!なんで圧縮空気弾が生成できないんだ!焦りによるものではないのか?ならどうすれば発動させることが出来る?もうあれを使うしかないのか!?いやあれは俺の切り札だ。それを今出せば手の打ちようがなくなる。だが出し惜しみをして負ける方がださい!使うなら今だ!}

 

琢磨は一度深呼吸し両膝を床に付き本を一度閉じ再び開くと全ページが紙切れとなって克也に向かって襲いかかる。七宝家切り札の一つ『ミリオン・エッジ』を発動させた。

 

克也は琢磨が両膝をつくのを見た瞬間笑みを浮かべていた。

 

{ようやく使う気になったかな。出したくなかったけど出し惜しみで負けるのは恥ずかしいと思ったんだろうな。さすがにこの量じゃ領域干渉では防ぎきれないから魔法を使わせてもらうよ。}

 

俺はそう心の中で呟きながら{ブラッド・リターン}をホルスターから瞬時に抜き出し照準を定め『ベルフェゴール』を放つ。CADの抜き出しが見えたのは達也だけだっただろう。残りの全員が眼を丸くして驚いている。それは抜き出しのスピードだけではなく魔法の発動スピードと照準スピードも含まれていただろう。

 

『ベルフェゴール』によって自分の切り札を無効化され『ミリオン・エッジ』が燃えるのを知覚し呆然としている琢磨に向かって圧縮想子弾を五つ撃ち出した。圧縮想子弾は琢磨の領域干渉を貫通し脳天と四肢を直撃し気を失わせた。

 

これは達也が服部先輩との試合で使用した想子の波の合成を応用したものだ。魔法師が想子を可聴音波や可視光線と同じように認識するなら『攻撃を受けた』と錯覚させ『痛み』を引き起こすのではないかと仮説を立てたのだ。実際に使用するのは初めてだが七宝が気絶しているところを見ると仮説は正しかったようだ。

 

「勝者、四葉克也。」

 

達也が宣言し試合は終了した。

 

「さすがだね四葉君。」

「驚いたよ四葉君はパワースタイルだと思ってけど僕の勘違いだったみたいだ。」

 

五十里先輩と十三束の称賛に軽くお礼をした。

 

「香澄、これでいいか?」

「いいですけど、すみませんでした。克也兄の手を煩わせてごめんなさい。」

「気にしないでくれ香澄。これは俺が言い出したことだし七宝に気付かせるのが目的だったから。」

「目的?」

 

香澄は言葉の意味が理解できないという風に首をかしげていた。

 

「俺は七宝に気付いて欲しかったんだ。一匹狼にならずに周りと協調し困難に立ち向かうことが必要だってことを。才能だけじゃいつかは限界が来る。努力が実を結べば才能に勝る力を持つことがあるということを知れば七宝も小さなことでいざこざを起こさずに済むってことをね。」

 

壁際に背を預けて気を失っている琢磨を見ながら克也はこの試合の目的を香澄だけでなく集った全員に話した。

 

 

 

その日の夜、達也は用事があると言い出て行ってしまった。夜も更け入浴し寝るだけの自由時間に四葉からの秘匿回線の呼び出し音で俺は暫しの幸福な時間を奪われた。

 

「叔母上どうされたのですか?」

『昨日のことを話にね。ところで達也さんは?』

「用事があると言ってどっかに行ってしまいました。」

『あらあら、女性とでもどこかに行ったのでしょうか。』

「…叔母上滅多なことをおっしゃらないで下さい。」

 

真夜の言葉を真に受けた深雪が周囲を凍てつかせ始めたので『癒し』で深雪を抑えながら叔母に抗議した。

 

『冗談ですよ克也。では本題に入りましょうか昨日は大活躍でしたね。』

「ありがとうございます叔母上。亜夜子の情報が無ければ手も足も出ませんでしたが。」

『そうですね今回ばかりは亜夜子さんにお礼をするべきかもしれませんね。でも同時に克也の友人達の魔法力には驚かされたわ。特にガンマ線フィルターを使ったお嬢さん。』

「ええ、彼女はおそらく一高でトップの多工程魔法を使用できると思います。この一年の騒動や事件は無駄ではなかったようです。彼女だけでなく吉田家の次男も千葉家の娘も硬化魔法を得意とする友人も有り得ないほど魔法力を伸ばしています。」

 

克也の言葉通り幹比古、エリカ、レオもかなり実力を伸ばしている。その結果が幹比古の一科への転科である。

 

『そうね、でもそれはあなた達にも当てはまるのではなくて?』

「そうでしょうね俺も達也も深雪も去年よりはるかに成長しているのが自分達でも分かるほどですから。本来言うべきではないですが言わせていただきます。吸血鬼がやってきたおかげで俺達は実力を伸ばすことができました。そこは感謝してもいいかもしれません。もし来ていなければ今回の実験は成功しませんでした。」

『それは言うべきではありませんが事実ですから仕方ありませんね。その通りかもしれませんからそこだけは感謝してもいいかもしれません。あの【実験】の評価を見て百山先生が野党に対して抗議文を送りました。その結果反魔法師運動はしばらく自由に活動できなくなったようです。』

「つまり都合よく利用されたということですか?」

『ええ、でも生活しやすくなるのであればいいでしょう?それじゃあまたね。』

 

真夜との電話を終えソファーに座る。叔母上との会話は精神力を大幅に使うのであまり頻繁には連絡したくないが叔母上から来るのは仕方ない。ソファーに背を預けてリラックスしているといつの間にか寝むってしまった。

 

「克也兄様コーヒーをお持ちしました。克也兄様?」

 

自分の問いかけに答えないので前に回り込むと眼を閉じ眠っていた。

 

「深雪姉様どうされますか?」

「眠らせてあげましょう。今日は短時間とはいえ戦闘をしたのだから。」

「かしこまりました。」

 

深雪姉様の言葉を聞いてもう一度克也兄様を見ると幸せそうに寝ているので思わず頬を緩めてしまう。克也兄様は普段からソファーが好きなのでわずかでも時間があると座って眠ってしまう。

 

克也兄様曰くソファーは『人を悪くする物だ』と口癖のように言っていましたけどそれを達也兄様と深雪姉様の三人で「それはない」と反論しましたが一向に応えた様子はなくむしろ『この気持ちを知らないのはもったいない』と言い出す有様でしたねと思い出す。

 

ソファーで寝ている寝顔は自分と同じか年下のように見えて普段とのギャップでドキッとしてしまう。

 

水波はそれが一種の恋であると気付いていない。普段とのギャップがありすぎるからそう感じているだけだと思い込んでいた。

 

 

 

達也が帰宅する頃には克也は眼を覚ましていた。

 

「今日の用事はなんだったの達也?」

「七宝に余計な知識を与えあんな性格にした人を少し脅してきただけだ。独立魔装大隊の力を借りてなんとかしたけど謎の奴らに狙われていた。」

「謎?」

「テレビ番組の飛行船がハイジャックされていたし調べる前に消してしまった。」

「なるほどねじゃあ仕方ないや。そろそろいい時間だし寝ようか。」

 

俺の就寝合図に三人が動き出した。




ダブルセブン編も最終話です。続くスティープルチェース編もよろしくお願いします。



神速・・克也の二つ名。魔法発動速度が速すぎることから付けられた名前で誰が言い出したのかもわからずどこまで腹構っているかもわからない。

ミリオン・エッジ・・紙片を操り相手を切り裂く魔法で七宝家の切り札の一つ。
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