魔法科高校の劣等生~双子の運命~   作:ジーザス

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今回も少し長くなりました。


第五話 勧誘②

昼休み、いつものメンバーに断りを入れて生徒会室に3人で向かった。ノックをすると鍵が解除され生徒会室に入った。

 

「失礼します」

「「失礼します」」

 

深雪が一礼してから俺と達也も一礼をする。深雪の洗練された礼は俺達2人には到底真似できないもので生徒会の面々は見とれていた。俺たちが動き出すと全員我に返る。

 

俺と達也が下座に座ると、深雪は不満そうだったが今の主役は自分だとわかっていたので我慢してくれた。全員の食事の準備が整うと真由美は説明を始めた。

 

「入学式でも紹介しましたけどもう一度紹介させてもらいますね。私の隣が会計の市原鈴音通称リンちゃん」

「…私のことをそう呼ぶのは会長だけです」

 

そう反論する鈴音は整っているが、顔の各パーツがきつめで背も高く手足が長いので美少女というより美人と表現するのがふさわしい。

 

「その隣は風紀委員長の渡辺摩莉」

 

鈴音の反論を無視して紹介を続ける真由美に文句を言わないのは、日常茶飯事だからだろうか。

 

「それから書記の中条あずさ通称あーちゃん」

「会長…お願いですから下級生の前で『あーちゃん』は止めてください。私にも立場というものがあるんです」

 

童顔で幼い印象のあずさはたしかに『あーちゃん』だろう。

 

「もう一人副会長のはんぞー君を加えたメンバーが今期の生徒会役員です」

 

これも無視する真由美。

 

「わたしは違うがな」

 

摩莉が追加情報を与えてくれる。真由美の『はんぞーくん』が漢字ではなく、ひらがなで聞こえたのは気のせいではないだろう。

 

「これは毎年恒例なのですが、新入生総代を務めた生徒には役員になってもらっています。深雪さん、引き受けていただけますか?」

「承りました。未熟者ですが精一杯努力いたしますのでよろしくお願いします」

 

真由美の依頼に深雪は快く引き受けた。これで終わりかと思っていたが早とちりしすぎたようだ。

 

「風紀委員の生徒会推薦枠が1人空いているんだが、達也君ではどうかな?」

 

摩莉がよそ外の提案を始めた。

 

「ナイスよ!」

「はあ?」

 

真由美の言葉につい言葉が漏れてしまう達也であった。

 

「生徒会は1年E組の司波達也君を推薦します!」

「ちょっと待ってください俺はまだ認めていませんよ。それに俺より克也にすべきではないのですか?」

 

達也の意見に2人は耳を貸すつもりはないようだ。

 

「克也君より達也君の方が適任だからだよ」

「なんでも最初は初めてよ!」

 

何を言っても無駄のようだが、少し形だけ抵抗をしたかったが時間が来たのでできなかった。

 

「続きは放課後でいいかな?」

「わかりました…」

 

このままうやむやに終わらせるべきではなかったので、もう一度訪れることになった。

 

生徒会室を出るとき人数分の視線の中に一つだけ温度の違うものが混ざっていたが、克也は気のせいだと思うことにして忘れることにした。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

放課後、達也の顔色が悪く見えた。授業の結果が芳しくなかったかもしれないし、エリカとレオの痴話喧嘩に疲れたのかもしれない。

 

そのことは克也も達也自身ではないので本人から直接聞かない限り知りえない。双子でも自分とは性格が真反対なので、何を考えているのかわからない時がある。

 

生徒会室に入ると、昼休みにはいなかった男子生徒が窓際で3人に背を向けて立っていた。

 

「よ、来たな」

 

摩莉から挨拶があった。するとその男子生徒が俺と深雪に近づいてきて自己紹介し始めた。

 

「副会長の服部刑部です。司波さん生徒会にようこそ四葉くんもよろしく」

 

達也に挨拶しない服部刑部に顔をしかめる深雪はまだ自制してくれているようだ。

 

「それじゃあ達也君、風紀委員本部に行こうか」

「待ってください渡辺先輩」

 

達也を誘って向かおうとする摩莉に声をかける服部。

 

「一体なんだ?服部刑部少丞半蔵副会長」

「フルネームで呼ばないでください!」

 

耳慣れない名称を発した摩莉に頬を紅潮させて叫ぶ副会長。達也と真由美を見ると二人の視線に「ん?」と首を傾げる。

 

まさか『はんぞー君』が本名だったとは予想外だった。

 

「名前なんて別にいいだろ?」

「まあまあ摩莉も落ち着いて。はんぞー君にも譲れないものもあるんでしょう」

 

そう言う真由美に機械の操作をしていた鈴音とあずさを含めた全員から、視線が突き刺さる。しかし真由美の笑みは崩れない。鈴音とあずさも参加したのは普段からあだ名で呼ばれているからだろう。

 

数分の間摩莉と言い合い?を繰り広げていた服部が達也を見ながら話し始めた。

 

「その二科生を風紀委員に任命するのは反対です。過去に〈ウィード〉を風紀委員に任命した例はありません」

 

服部の差別用語に眉を吊り上げる摩莉。

 

「私の前でその言葉を使うとはいい度胸だな。だが強さには色々あってな。彼には魔法式の展開式を直接読み取る技術がある」

「ありえない!基礎単一工程の魔法式でもアルファベット三万字相当の情報量があるんですよ!?そんなことが一瞬でできるはずがない!!」

 

服部の言う通り普通なら理解できるわけがない。

 

普通なら…。

 

「確かに普通なら理解できないさ。だが彼がいれば強力な抑止力になるだろう。今まで罪状が確定せず、不起訴になっていた生徒にも有効だ。そして理由はもう一つある。ニ科生が風紀委員になった例はお前の言う通りなかった。つまりニ科生に対しても一科生が取り締まってきたということだ。これは一科とニ科の溝を深めることになっている。達也君が風紀委員になればいい方向に傾くかもしれないと思っているんだよ」

 

摩莉の熱弁に気おされながらも自分の意見を押し通そうとする服部。

 

「会長ら私は副会長として司波達也の風紀委員就任に反対します。渡辺先輩の主張に一理あることは認めますが、魔法力で劣るニ科生に風紀委員は務まりません!」

「お言葉ですが兄は魔法実技の成績が芳しくありません。しかし実戦なら誰にも負けません!」

 

深雪は黙っていられなくなったのだろう感傷的になり食って掛かる。

 

「司波さん、身内を過大評価してはなりません。身贔屓に目を曇らせてはならないのです。魔法師は常に冷静でいなければなりません」

 

幼い子供に諭すように語り掛ける。だがこれはむしろ逆効果だった。深雪はさらにヒートアップしていく。俺も深雪と同意見だったので止めようとはしなかった。

 

「お言葉ですが私は眼を曇らせてはおりません。兄が本当の力を以てすれば!…」

 

すると達也が深雪を抑えて服部に近づいて行った。

 

近づいてくる二科生に服部は苛立ちを覚えていた。なぜこんな奴が風紀委員なんかに!思ったとしても仕方がないだろう。不自然に堂々と近寄ってくるのだから。

 

「服部副会長、俺と模擬戦をしませんか?」

 

突然の申し込みに目を見張る生徒会役員。

 

「思い上がるなよ。…補欠の分際で!」

 

罵倒された本人は苦笑を浮かべている。

 

「何がおかしい!」

「魔法師は冷静を心掛けるべきなんでしょう?別に風紀委員になりたいわけではないんですが、深雪の眼が曇っていないことを証明する為ならばやむを得ません」

 

独り言のように呟く達也に服部は挑発されていると感じた。

 

「いいだろう身の程をわきまえる必要を教えてやる」

 

苛立ちを抑えながら了承したいや苛立ちを超えて憤怒が含まれていた。

 

 

 

真由美によって模擬戦の許可が下り指定された場所に移動する。俺の前を真由美、摩莉、あずさと服部が歩いている。そして何故か横には市原先輩が…。

 

ちなみに深雪はCADを預け場所に取りに行く達也の付き添いだ。

 

「克也君、本当に大丈夫なの?」

 

真由美がスピードを落として、服部に聞こえないように聞いてきた。顔には不安の色が見えたが何も考えずに自信満々に答えた。

 

「もちろん大丈夫ですよ。あいつが負けることなんてありえませんから」

 

俺の微塵も揺らがない言葉に真由美は毒気を抜かれていた。そうしているうちに指定の場所に到着した。

 

 

 

試合の準備をしていると達也と深雪が到着した。達也の準備が終わるのを待って摩利は説明を始るた。

 

「ルールを説明するぞ。相手を死に至らしめる直接、間接的な攻撃は禁止相手の体を損壊させるような攻撃も禁止。相手を気絶させる程度の攻撃は許可する。勝敗はどちらかが負けを認めるか、審判が続行不可と判断した場合に決する。合図があるまでCADの操作は禁止する。以上だ。ルールに違反した場合はその時点で失格とする。ルールに従わない者には私が力ずくで止めるから覚悟しておくこと」

 

双方の確認をすると摩莉は腕を振り下ろし合図した。

 

「始め!」

 

この勝負に瞬殺という言葉がこれほど似合うことはないだろう。それほどの時間で勝敗は決していた。服部は何をされたのか理解せぬまま気を失った。

 

「…勝者司波達也!」

 

達也は一礼するとCADをケースにしまうために動き出した。

 

「待て。今のは自己加速術式を予め展開していたのか?」

 

摩莉から疑いをかけられたが別段やましいことはないので素直に答えた。

 

「いいえ。今のは正真正銘自分の身体的な技術ですよ」

「俺も証言します。あれは体術です魔法特有の事象改変は見られませんでしたよね?俺と達也は忍術使い・九重八雲先生の指導を受けています」

 

全員驚いているようで呆気にとられていた。

 

「服部君は何故倒れたの?あの魔法も忍術?想子の波動そのものを放ったようにしか見えなかったのだけど?」

 

真由美は服部が倒れた理由を聞いてきた。

 

「忍術ではありませんが想子の波動そのものというのは正解です。あれは振動の基礎単一系魔法で想子の波を作り出しただけです」

 

達也は淡々と答える。

 

「それでは服部君が倒れた理由がわからないのだけれど…」

「酔ったんですよ」

「酔った?何に?」

 

達也は真由美の質問に流れるように答える。

 

「魔法師は想子を可視光線や可聴音波と同じように認識します。予期せぬ想子の波にさらされた魔法師は、実際に自分の体が揺さぶられたと錯覚します。その錯覚が肉体に影響したんです。服部先輩は『揺さぶられた』と錯覚し、激しい船酔いのようなものになったというわけです」

 

達也の説明に深雪は誇らしげに見つめていた。

 

「魔法師は普段から想子の波にさらされているから慣れているはずよ?魔法師が気を失うほど強力な波動をどうやって…」

「…波の合成ですね?振動数の違う魔法を三連続で作り出し、3つの波が服部君の位置でちょうど重なるように調整して、三角波のような強力な波を作り出したのでしょう。よくもそんな精密な演算ができますね」

「お見事です市原先輩」

 

鈴音は達也の演算能力にあきれているが、それを初見で見抜いた観察力の方がすごいのではないかと達也は思った。

 

しかし鈴音の疑問は別にあるらしい。

 

「それだけの処理速度があれば実技の評価が低いはずはありませんが…。座標・強度・持続時間に加えて振動数まで変数化するとなると。…まさかそれを実行しているというのですか?」

 

驚愕に言葉を失った鈴音に達也は肩をすくめながら片付けを再開した。

 

「多変数化は処理速度としても演算規模としても干渉強度としても。学校では評価されない項目ですからね」

 

未だに驚きで硬直するメンバーの後ろから声が聞こえた。

 

「実技試験における魔法力の評価は魔法を発動する速度、魔法式の規模、対象物の情報を書き換える強度で決まる。…なるほど司波さんが言っていたことはこういうことか」

 

壁に預けていた背中を持ち上げ深雪に近づいた。

 

「司波さん先ほどは失礼しました。以後このようなことがないように気をつけます」

 

服部は深雪に非礼をわびると達也に目を向ける。次は負けないという意思が伝わってくるように達也は感じた。服部は先輩方に一礼してから試合会場から出て行った。服部の愛想のない対応に苦笑を浮かべる。

 

「いろいろ予定外のイベントが起こったが、当初の予定通り風紀委員本部に行こうか」

 

摩莉の誘い(脅迫?)に困惑している達也の意思を無視しながら腕を掴んで向かった。なぜか深雪からとがめるような視線をうけた。

 

何故俺が巻き込まれなければならないのかわからなかったが、真由美について生徒会室に戻ることにした。




ようやく服部先輩が登場です。なかなか進みませんね。
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