魔法科高校の劣等生~双子の運命~   作:ジーザス

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古都内乱編の開始です。


9章 古都内乱編
第四十八話 想定外


九校戦が終了した後、克也と達也は夏休みの残りの大半を自宅のCAD調整室で過ごしていた。ろくに睡眠も食事も取らず何かに取り付かれたかのように仕事をしていたので深雪と水波は不安になっていた。

 

だから深雪と水波は週末に客人を迎える気にはならなかった。二人が精神的に疲弊しているのを知っていたため余計に思っていたが二人が通すように言ったため仕方なく通した。たとえその客人が心を許せる人物であったとしても。

 

「文弥、亜夜子よく来たね。」

「こんばんわ克也兄さん、達也兄さん、深雪姉さん。」

 

社交辞令を軽く交わし本題に入ることにした。

 

「今回はどうしたんだ?」

「当主様から直々にお預かりしてきました。」

 

文弥は背広の内ポケットから真夜直筆の封筒を三人の前に出した。達也がそれを読むと眉をひそめ俺に渡してきたので読むと同じように眉をしかめた。

 

「…文弥はここに書かれた内容を知っているのか?」

「ええ、知ってます。」

「周公瑾(しゅうこうきん)の捕縛を『依頼』すると書かれているが?」

「僕達もそう聞いています。」

「言葉の文(あや)ではないんだな?」

「でもなんで叔母上が『依頼』するんだ?今までのように命令すればいいはずなのに。」

「その件に関しては私が伝言を預かっています。」

 

亜夜子の言葉に俺達は驚いた。書面にも残せないような重要なことなのだろうか確かにデータなどで送るよりは秘匿性が高い。

 

「今回のお仕事はお断りになっても構わないそうです。」

 

亜夜子の言葉に今度こそ驚愕する。叔母上が自分達に対してこれまで仕事は命令という形で取ってきた。それが今回は『依頼』として来たのだから驚くのが普通だ。

 

「…二人とも叔母上に『承りました』とお伝えしてくれ。」

「分かりました。」

「情報は?」

「現在京都方面に逃走したと思われます。」

「協力者は?」

「九の各家と対立関係である『伝統派』が裏に付いていると見られます。」

「ありがとう、参考になった。」

 

 

 

文弥と亜夜子を見送った後俺はソファーに座っていたが沈み込んでいくような錯覚に陥っていた。

 

「克也どうした?」

「今回の叔母上の判断が理解できない。何故『命令』ではなく『依頼』なんだ?今までのように命令すればいいはずだ。まさか四葉家が何か隠しているのか?」

「克也、それは考えすぎだ。現に四葉家は俺達の危機に手を貸してくれている。」

「それだけじゃない。何故俺には参加を認めてくれない?協力せず達也一人で追い込めというのか?」

 

真夜からの文には克也に達也との協力を禁止するという命令が来ていた。

 

「今、それを考えても仕方ない。それより生徒会選挙のことを考えるのが先だ。」

 

達也は克也の悪いループから抜け出させるために話をずらした。

 

 

 

今年の論文コンペまで残り一ヶ月と少しだが校内はそのことより生徒会選挙のことで盛り上がっていた。深雪と達也は誰を生徒会員にするか迷っていたが知り合いに毎度毎度聞かれるため少しイライラしていた。

 

「それで達也君、今年は論文コンペに出ないの?」

「別に去年も出たかったわけじゃない。今回は単に間に合わなかっただけだ。」

「どういうこと?」

「今新しいテーマに取り組んでいるんだが思いのほか難航していてな。今回は出ない予定なんだ。」

「どんなテーマなの?」

「エリカ、あまり追求しすぎたら相手の機嫌を損ねるぞ。達也はそんなことで機嫌を害したりはしないけどね。」

 

やんわりとエリカの質問を止める。今達也が取り組んでいるのは克也の新魔法だ。正確には克也が魔法式の基礎設計をするのだがまだこの段階で苦戦していた。振動魔法の設計を根本的に変えることは容易ではないことを達也は知っていたが克也が自分の限界を超えたいと思っているのをこの一年半の間ずっと感じていた。

 

克也がみんなが寝静まったあとも考え続けていたのも知っているし悩み思い詰めていたのも知っている。基礎設計が作れず悔し涙を流している姿を後ろから見ていたこともあった。そんなこともあってか達也は克也の気持ちに応えたいと思い自分の目標を一度頭から追い出し克也の魔法開発を最優先事項とした。

 

「今回サポートは頼まれてないの?」

「今は頼まれてないがこれから頼まれるだろうな。」

「達也なら引く手数多だからね。そのうち魔法に関係ないことまで頼まれるかもね。」

「おお、その通りだ幹比古。おそらく雑用だぜ?」

「レオ、お前とは一度みっちり話し合わなければならないようだな。」

「おお怖、遠慮しとくぜ。」

 

レオの本気で嫌がっている様子に昼食中にもかかわらず笑い声が響いた。

 

 

その日の夜、達也は克也に頼んである人物に連絡を取ってもらっていた。克也は協力するなと真夜に言われているが言いつけを守るつもりはない。言いつけに背いてでも達也に仕事を成功させるために克也は友人に助けを求めた。

 

「やあ、光宣(みのる)今大丈夫か?」

『克也兄さんお久しぶりです!今は大丈夫ですよ。』

「お願いがあるんだけどいいかな?」

『お願いですか?構いませんよ克也兄さんのお願いは可能な限り聞きたいですし。』

「じゃあお言葉に甘えて、閣下との面会を設置してもらえないか?」

『お祖父様にですか?何のために?』

「今は秘密。このことを知られたくないから藤林さんから伝えてもらえないかな?達也が藤林さんに頼んで面会を閣下に願ったという形で。」

『つまり四葉家に知られたくないわけですね?わかりました響子姉さんに伝えておきます。』

「ありがとう光宣そっちに行ったときに会えると良いね。その時を楽しみにしてる。」

 

電話を切りベッドに倒れ込む。

 

{閣下と話が出来たとしても協力を得られるとは考えにくい。光宣なら個人的な感情で動いてくれるだろうが九島家自体は難しいだろうな。}

 

そこまで考えていると喉が渇いたので水を取りに行くことにした。

 

 

九月二十八日金曜日の夜、光宣から連絡があった。

 

『こんばんわ克也兄さん。この前の件でお知らせしたくてお電話しました。』

「こんばんわ光宣。で、どうだった?」

『お祖父様は面談に応じるそうです。日時は十月六日土曜日の十八時生駒の九島本邸だそうです。大丈夫ですか?』

「ああ、大丈夫だ。俺の部活が入っているが家の用事と言えば問題ない。」

『分かりました一週間後を楽しみにしてます。』

 

光宣は嬉しそうに笑顔を浮かべて電話を切った。

 

 

「達也そういうことだけどいいかい?」

「もちろんだ助かったよ。ということで叔母上にも連絡しないとな。」

 

数分後、四葉本家に電話をかけると葉山が出たので驚いた。

 

『達也殿、誠に申し訳ないが奥様はただいま都合が悪い。』

「構いません、先日の依頼についてお伝えしていただきたいのですが。」

『伺いましょう。』

「先程、九島家と面談する許可が閣下から降りたと藤林少尉から連絡がありました。」

 

本当は違うのだが光宣にもそう伝えているから口を滑らせるようなことはないと思った。

 

『ほう、なかなか面白いことを考えましたな達也殿。独立魔装大隊の助力はいらないのですか?』

「ここで少佐の力を借りるわけにはいきません。今回は四葉家と周某の因縁です。周某は『伝統派』に匿われているのであれば敵対している九島家の力を借りるのが効率的です。」

『ギブアンドテイクということですな分かりましたお伝えしておきましょう。それから一々こちらに報告しなくても構わないと奥様はおっしゃっております。ご自分の判断で行動せよとのことです。お気を付けて。』

 

電話が切れると達也は手応えを感じていた。

 

「俺の判断で行動して良いなら克也を参加させても構わないということだ。克也手伝ってくれるか?」

「水臭いな達也は。頼まれなくてもやるに決まっているだろ?」

 

二人の仲の良さに深雪と水波は嬉しそうに見ていた。

 

 

 

九月二十九日土曜日、生徒会長選挙が行われ予想通り深雪が生徒会長に選ばれ割り当てはこうだ。

 

生徒会長 司波深雪 副会長 四葉克也 

副会長 七草泉美 書記 桜井水波 

会計 光井ほのか そして書記長 司波達也

 

この謎の役職に反対しようとした職員や生徒は少なからずいたのだが誰一人反論できなかった。何故なら予想外にそれを喜ぶ生徒がいたためである。

 

深雪が暴走した場合止められるのは克也と達也だけなのだから。克也でも止められないときがあるかもしれないので最終兵器として達也を配備しておくことを誰もが望んだ。

 

風紀委員長には幹比古、克也の代わりに雫が部活連会頭に就任した。

 

 

数日後、地下室から出てきた克也と達也は家の中をうかがう人でない何かを感じた。

 

「達也、これは化成体かな?」

「いや、人造精霊だろう。想子でのみ構成されているから簡単に消せるな。克也一匹頼む。」

「了解。」

 

達也は『精霊の眼』を使い構造を読み取ったあと『分解』を克也は『全想の眼』で照準を設定し『ベルフェゴール』を放った。二体の人造精霊はただの想子に戻り消えた。

 

「お兄様!」

「今のに気付いたか?」

「いえ、克也お兄様と達也お兄様が魔法を放ったのを感じたのでもしやと思って。」

「たぶん周某の仕事の影響だよ深雪。やつの部下か匿っている一味の仕業かわからないけど文弥達がつけられたかな?」

「文弥君達がですか?」

「二人が気付かないわけがないからたぶんわざとつれてきたんだろうな。それも本家の命を受けてね。」

 

{厄介な}と達也は思ったが仕事を受けた後であるのでどうしようもない。今断れば確実に何か制裁を加えられる達也はそう思った。

 

 

 

翌日の朝、克也と達也は九重寺に行き昨日の話をしていた。

 

「また厄介事に巻き込まれているみたいだね二人とも。」

「知っておられたのですか?」

「弟子が勝手に出歩いて確保してきたからね。少なからず彼らの素性は分かったよ。」

 

昨日の監視の敵は複数だったようだ。

 

「どんな奴らだったんですか先生?」

「彼らは『伝統派』に雇われた野良の魔法師だよ。」

「野良ですか?」

「この国にいたんですね。フリーの魔法師ということですか?」

「そうとも言うね。でもその数は少なくないと思うよ。」

「大勢いるということですか?」

「物は考え用だよ達也。去年から密入国や逃亡、亡命が増えているんだからこの国に大勢いてもおかしくはないよ。たぶんその手引きをしたのも今回の黒幕だ。」

 

達也は克也の説明に自分の知識不足を恥じた。

 

「克也君の言うとおりだと思うよ。今回は下手をすると横浜事変並の荒事になるかもしれない。」

 

八雲の指摘に克也と達也は任務の難易度を大幅に上方修正した。




最近、文がざつくなってきているのを感じ始めた作者です。何かご意見ご要望があればよろしくお願いします。


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