魔法科高校の劣等生~双子の運命~   作:ジーザス

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四葉継承編開始です。


10章 四葉継承編
第五十四話 連動


「それではご唱和下さい。メリー・クリスマス!」 

「「「「「「メリー・クリスマス!」」」」」

 

エリカの音頭でグラスを突き上げ一斉に声を上げる。克也達は今年も『アイネブリーゼ』を貸切にし一日遅れでクリスマスパーティーを開催していた。

 

水波と香澄は別に開かれている一年C組のクリスマスパーティーに参加しているため自然といつものメンバーとのパーティーになっていた。

 

ちなみに泉美はこちらに来たがっていたのだが香澄に連行されここにはいない。三人のことを気にせず気軽に話せるため名前を出すような真似は誰もしなかった。

 

「あと一日早く開催したかったよな~。」

「仕方ないさ昨日まで生徒会も事務処理が忙しかったし俺とエリカ、美月は大会とコンクールがあったからね。」

「そうだね~。あ、そういえば美月入賞おめでとう克也君も優勝の立役者だねおめでとう。」

「ありがとうエリちゃん。」

「サンキュー。」

 

美月は美術展に絵を出展し見事入賞を果たし克也はバレーボールの関東大会に一高エースとして出場し優勝に貢献した。エリカはテニス部の幽霊部員なので大会には出場していないが応援に行っていたため昨日はパーティーを開けなかったのだ。

 

「そうだね、二人ともすごいよ。」

「幹比古、それ以上褒めてやるな克也はともかく美月の精神状態がもたんぞ。」

 

達也の言葉通り美月は褒められすぎて顔を真っ赤にして俯いていた。美月を除くメンバーの笑い声が『アイネブリーゼ』店内に響いた。

 

 

 

「今年も色々あったな。」

「そうだね、吸血鬼とかほのか&ピクシー事件とか。」

「雫やめてよ!」

「それは横に置いとくとして、今年も去年同様忙しかったのは事実だ。気を抜く暇がなかった。」

「横浜事変よりマシだったんじゃないかな。」

「これ以上の厄介事はごめんだ。」

 

レオの言葉を始まりとして話題が盛り上がり達也のもうたくさんという意味合いのある言葉でさらに笑いが起こる。

 

「来年は何も起こらずに卒業したいものだな。」

「そっか、もう一年しかないんだね。なんかあっという間だった気がする。」

「エリカに同感だね。」

「あら、ミキが同調するなんて珍しいじゃない。」

「僕の名前は幹比古だ。珍しくもないだろ小さいときからたまに意見合ってたじゃないか。」

 

エリカと幹比古の楽しげな言い合いを残りのメンバーが苦笑いしながら見守っていた。

 

 

 

「達也さん、来年もみんなで初詣に行きませんか?」

「日程は?」

「一月二日です。」

「すまない、俺と深雪は外せない用事があるんだ。」

「そうですか…。克也さんはどうですか?」

「すまない、俺も本家に帰らないと行けないんだ。」

「え?克也君帰ってなかったの?」

 

俺の微妙な言葉にエリカはドストレートに聞いてきた。

 

「『母上』に無理して帰って来なくても電話してくれればいいって言われてたからね。それに達也達と正月を過ごしたかったから。」

「なるほどね、気持ちはわかるよ。でもなんで今年は帰るの?」

「わからないんだ。ただ、『母上』に今回は帰ってこいと言われてるから逆らえないだけ。」

 

エリカと会話している最中深雪が無理して笑顔でいることに気付いたメンバーは克也と達也以外にいなかった。

 

 

 

メンバーと別れ家に帰っても血行が悪いかのように深雪は青ざめたままだった。

 

「深雪、今日はもう休め。あとは俺達に任せて寝なさい。」

「しかし!…いえ、分かりました。」

 

深雪は反論しようとしたが深雪がなんと言おうと拒否する眼をしている克也と達也に見つめられては引き下がるしかない。深雪は素直に寝室に向かった。

 

 

 

「達也、深雪は大丈夫かな?」

 

リビングに俺が煎れたアイスコーヒーのストローをコップの中で回し氷のぶつかる音を聞きながら達也は答えた。

 

「初詣という言葉に引っ張られた結果だろう。一時的な精神的な疾患だからすぐに治るさ。」

「…ほのかの言葉と連動して『慶春会』を思い出したんだね?」

「ああ、叔母上がどのような判断をするかはわからないがほぼ確定で深雪が選ばれることを深雪自身が一番分かってる。それが余計にダメージを与えているんだろう。」

 

四葉家次期当主は次期当主候補から選ばれることが定められており今回の当主候補は五人いる。

 

司波深雪 黒羽文弥 津久葉夕歌(つくばゆうか) 新発田勝成(しばたかつしげ) 四葉(司波)克也

 

このうちの誰かが次期当主候補から次期当主に選ばれるが『最も強い魔法師』が次期当主になるのではなく『最も優れた魔法師』が次期当主になる。そのことは深雪も克也も分かっているが受け入れられないのだ。分家が達也に向けるあの視線は二人にとって耐え難いものである。二人のどちらかが次期当主になり達也に向けられる視線を変えられるのであればなってもいいと思っている。

 

そして『最も優れた魔法師』は深雪であると誰もがそう思っているし深雪自身も理解している。魔法力が強くても中身が備わっていなければ当主にはふさわしくない。逆に魔法力が平均ほどでも人を動かす『何か』を持っていれば当主になることは可能ということだ。深雪にはその両方が備わっているため四葉家次期当主確実と言われている。

 

「達也、水波を迎えに行ってくる。深雪が何か言いたげだったら聞いてあげて欲しい。」

「分かった。」

 

ヘルメットを二つとコートを一枚余分に持ちバイクにまたがり一年C組のクリスマスパーティーが開かれている会場に向かう。

 

 

 

到着したのは終了予定時刻の十五分前でまだ生徒達は和気藹々と楽しんでいた。想子の動きを加速させ暖を取る。想子を活性化させると街角の至る所に設置されている想子観測機に検知されてしまうが魔法を使っていないため補導されることはない。

 

十分後、パーティーが終了したらしく参加していた生徒達がぞろぞろと出てきた。ほとんどの生徒が俺に気付き挨拶してくるので軽く手を振り挨拶を返していると水波が泉美と香澄と一緒に出てきた。

 

「あ、克也兄。」

「え?あ、克也お兄様。」

「克也兄様。」

 

三人が俺に気付き小走りで駆け寄ってきた。

 

「どうされたんですか?ここは一年C組のクリスマスパーティー会場ですよ?それに克也お兄様は『アイネブリーゼ』で開いていたはずではなかったのですか?」

「水波を迎えに来たんだ。それにパーティーは一時間前に終わってて十五分前に来たばかりだ。達也は深雪と家でお留守番だ。」

「…十五分も待つのはきついと思うけど?」

「『幼馴染』の従妹が襲われるよりはマシだろう?それに迎えに行くという約束をしたのに遅れて少女を待たせるのは男としてもあまりにも情けない。」

 

俺の説明に香澄は納得したらしい。一方水波は『幼馴染みの従妹』と言われむずがゆさを感じていたが克也は水波の心情に気付いていなかった。

 

「俺は水波を連れて帰るが泉美と香澄はクラスメイトと帰るのか?」

「いえ、七草家の使用人が迎えに来る予定ですのでそれに乗って帰ります。」

「なら俺も来るまで待っておこう。二人だけ残して帰って拉致されたらシャレにならん。」

 

二人を傷つけることより真由美に怒られることが恐ろしいと思ったが故の行動だった。

 

 

 

二人を迎えに来た使用人と軽く挨拶をして見送ってから水波と帰る準備をする。

 

「水波、これを着ろ。」

「これはコートですか?」

「ああ、いくら防寒しているとはいえ見ている方が寒くなるからな。それに俺が何より安心できる。」

「…ありがとうございます。」

 

自分が何気なく発した言葉に顔を赤くする水波を見て首をかしげた。

 

{俺、何かおかしなことを言ったのか?}

 

自分のしたことのある意味重大さに気付いていない克也は乙女心を理解できていない『朴念仁』であった。

 

俺は水波がバイクにまたがり自分の腰に手を回したことを確認してエンジンをかけてバイクを発車させる。

 

{人の体温は暖かい。それも好きな人の体温であればなおのこと。この時間はかけがえのない大切なものですね。}

 

水波はそう思いながら克也の腰に回した腕に力を込め落とされないようにしっかりと掴む。克也は腰に回され自分の体に水波の体が密着していることに気付いていたが「バイクに乗るのだから体が密着してもおかしくはない」というとんでもない勘違いをしていた。

 

水波が至福の笑みを浮かべて抱きついていることに克也は帰宅しても気付かなかった。

 

「密着」と「抱き締める」は体がくっついていることに変わりはないのだが水波の場合は甘えるという意味合いが強いだろう。

 

 

 

帰宅すると達也はおらずおそらく地下室にいるのだろうと思った。

 

「水波、風呂に入って体を温めておいてくれ。俺は達也のところに行ってるから何かあれば連絡して欲しい。」

「わかりました。」

 

水波が着替えを準備しに自室へ向かったのを確認した後地下室に向かった。

 

「達也、何をしてるんだ?」

「克也かお帰り、新しい魔法を発動させるためのCADの最終調整に入ったところだ。ところで水波は?」

「ただいま、もうすぐ完成か待ち遠しい。水波は風呂に入らせてるよ。深雪はどんな状態だ?」

「早く完成させたいものだ。ここまで一年かかっているんだからその気持ちは理解できる。…まだ少し精神的な疾患は残っているが気にならない程度だし今は眠っている。かなり深い眠りだから明日にはすっきりして起きられそうだ。」

 

達也は焦点の定まらない眼で深雪の寝室辺りを見上げる。『精霊の眼』で深雪の精神状態を理解する能力は弟だけが使える異能とでも呼べる力だ。俺と深雪のみに適用される達也のこの眼は俺達がどこにいようと何が起きようといつも視ている。

 

無意識に使っているとでもいえるこの能力を達也は自分の精神と魔法演算領域に負荷を与えていることを知らない。俺達二人は知っているが達也に知らせてもやめさせることは出来ない。これは達也に残された『家族愛』という感情の副作用であるためやめさせると達也の精神は大きく乱れ最悪の場合命を落とすことにもなる。

 

使わせると精神と魔法演算領域に負荷を与えやめさせると精神が乱れるどちらにせよ達也を苦しめることになるため俺達は悩み続けている。

 

「そうかなら明日俺達が家を空けても大丈夫そうだな。」

 

そんな悩みを抱えていることを感じさせないよう自然に答える。

 

「ああ、早くこれを完成させて慶春会で叔母上に報告したい。」

 

克也の気持ちに気付かずに達也は嬉しそうに答えた。

 

 

 

翌日、俺と達也は家に深雪と水波を残しFLTに向かった。晴れておりバイクで向かうことが出来たので交通機関を使用すると二時間かかるところを一時間で到着した。

 

「牛山主任、今回は製作したいものがあって来たんですが。」

「おお、克也さんあなたからのお願いですか。我々から要望することは何度かありましたがそちらからあるとは珍しいですね。」

「珍しくもないですよ。二ヶ月前にも特注してもらってますから。」

 

第一会議室で今日の予定を話す約束をしていたので単刀直入に会話をしても話がこじれることはなかった。牛山やその他の研究者達は克也の知識が達也ほどではなくても驚かされている。第三課の収益を二人で半分を克也はその中でも四割ほどの利益を上げているため尊敬している。達也が開発した飛行術式も克也がソフトを作り小学生や中学生のための『安全第一』を掲げたCADを開発したことで牛山でさえ頭を垂れることがある。

 

克也の名前は公表しておらず{トーラス・シルバー}という名前で発表している。つまり{トーラス・シルバー}はミスタートーラスを牛山、ミスターシルバーを達也と克也が担っているということである。

 

「やめやめ、討論で御曹司や克也さんには適いませんぜ。それよりどんなものを作るんですかい?」

「今回はこちらを作りたいんです。」

 

頑丈にロックされたアタッシュケースから設計図を取り出し牛山にも見えるように広げる。牛山は一通り目を通すと厳しい顔をした。

 

「これは少々厄介ですな。なんせこれほど大きなCADを作るのは初めてですから時間がかかりますぜ?」

「ええ、それは理解の上です。しかしこの第三課の技術力があれば問題なく作れます。」

「そうですな、これほど高度なCADを作れれば今より更に高見へ上ることが出来ます。名声もポーンと跳ね上がりますぜ。」

 

どうやら牛山主任もやる気になってくれたようだ。

 

「しかし、この銃身が長いのはどういうことですか?」

「それは遠隔照準補助システムを内蔵するためです。露出していると万が一狙撃などによる攻撃で破損させられるかもしれませんから。」

「なるほど、一度見ただけですが御曹司の{サード・アイ}は露出していましたからね。露出していれば攻撃された際に被弾する確率が上がりますが照準性能は上がりますし遠隔照準補助システムを内蔵すれば逆になりますから今回の作り方も納得できます。しかしそれでいいんですか?これだと遠距離とはいえども二十km程先しか狙えませんが。」

「それでいいんです。達也ほどの遠距離攻撃を想定して作っていません。いざとなれば達也の力を借りるだけです。」

 

達也は俺の言葉に頷きながら牛山の反応を待っている。牛山はしばらく吟味した後答えた。

 

「分かりました、まずは試作機から作りましょう。完成は未定ですが必ず作って見せます。」

「「よろしくお願いします。」」

 

克也と達也は牛山の腕を信じて握手をした。もちろん彼らもアシスタントとしてソフトやハードの作成を手伝うのだが材料の調達等は成人している牛山に一任されている。克也の夢は一歩ずつ確実に実を結んでいた。

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