魔法科高校の劣等生~双子の運命~   作:ジーザス

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第六十二話 結束

選定会議が行われていた会議室が謎の爆発によって襲撃された頃、第一高校は二限目と三限目の間の休み時間だった。克也は深雪達と実習室に向かっている最中懐で緊急信号が鳴り情報端末を取り出し開くと顔色を変え深雪も同じように情報端末を見て血の気を失ったように真っ青になっていた。

 

「ごめん先に行く!」

 

ほのかと雫を置き去りにして深雪の手を引いてかけ出した。

 

 

実習監督の教員に事情を伝え校門で達也を待っていると水波と香澄、泉美を引き連れた達也が珍しく血相を変えてやってきた。

 

「達也、水波、香澄、泉美お前達にも来たということは誤報じゃないな。」

「克也早く向かおう。ここでちんたらしてられない。」

「ああ、急ごう。」

 

克也と達也は四人を引き連れて足早に駅に向かった。

 

駅員に事情説明し特別に大人数用のコミューターを準備してもらい可能な限りの速度で会議場に向かいながら車内で俺は友人に電話をしていた。

 

『克也か!?ということは誤報じゃないんだな!?』

「ああ、七草家の双子にも来ているから間違いない。どのくらいで着く?」

『二時間ほどだ。』

「こっちは二時間半ほどかかりそうだ。もっと早くに着きたいからヘリを準備して欲しいところだがないものねだりというやつだ。」

『ヘリか?そうだその手があった!俺は今すぐ家に帰ってヘリを呼んでから向かうからお前も早く来い。遅れるなよ!』

 

一方的に電話を切られ独り言を呟いていた。

 

「こっちは準備できないっての。」

「克也兄少しいい?」

「香澄どうした?」

 

婚約を勝手に突きつけられ迷惑している二人に俺は文句を言えなかった。二人が望んで婚約を破棄させてきたなら俺は同じコミューターにも乗らなかったし関係を断絶していただろう。

 

「僕達の家にヘリがあるからそれで向かおうよ。方向はこっちだしもうすぐ見えるから。」

「分かった感謝する。」

 

香澄に礼を言いコミューターの目的地を七草邸に変更した。

 

 

 

現場に到着したのは爆発があってから一時間後のことで将輝は俺の着いた数分後に到着した。

 

「俺に遅れるなと言ったのはどちらさんだったっけ?」

「操縦士が俺が帰るまで寝てたんだよ!俺のせいじゃない!」

「命令しときながら遅れるとは何かしてもらわないとな。」

「何をさせるつもりだ!?」

「何かだけど取り敢えず今はここで終わっとこう。」

「そうだなこんな状況で言い合いなんてしている暇はない。」

 

将輝を含めた七人で当主達が集まっている場所に向かう。

 

「あれは刑事?何で!」

「泉美待ってよ!」

「あの馬鹿!」

 

泉美が走り出しそれを追うように香澄が走り出したので毒づきながら追いかける。

 

「お父様達は被害者ですよ何故取り調べを受けなければならないのですか!」

 

案の定泉美が刑事に食って掛かっていたので遠ざける。

 

「泉美やめろ。」

「克也お兄様何故止めるのですか!?」

 

克也が泉美の左腕を掴みながら言うと泉美が腕を振り払った。その腕をもう一度掴み泉美の重心をコントロールしながら引き寄せる。泉美は抵抗する間もなくさらには痛みを覚えずダンスリードされるかのように刑事から引きはがされた。

 

「頭を冷やせ。警察の方は任務を全うされているだけだ邪魔をすればその分事情聴取が長引く離れるぞ。」

 

克也が泉美を連れ戻す様子を真夜と剛毅を除く当主達が興味深げに見ていた。

 

 

 

「四葉お前達も来ていたのか?」

「十文字先輩。」

 

事情聴取が終わるのを待っていると克人に声をかけられた。達也と克也は三人で話をしており将輝には水波達を任せてあるのでここにはいない。

 

「四葉と言うべきか?それとも司波か?いやそうすればややこしくなるな。」

「克也と達也でいいですよ十文字先輩。何が起こったのか教えてもらってもいいですか?」

「うむ、見ての通り当主はかすり傷以上の怪我をされていないから安心しろ。今回の爆発は詳しく分かっていないのが現状だ。だが俺は高確率でこの師族会議が狙われたと思っている。」

「十文字先輩、首謀者が誰かご存じですか?」

「ああ、顧傑というのだろうそれがどうした?」

「あいつは死者を操る魔法を得意としています。それに『ブランシュ』のような反魔法団体を組織するということは魔法を衰退させようとしているとみて間違いありません。しかし今回の爆発ごときでは十師族を殺せないことは分かっていたはずです。」

「つまり狙いは俺達ではなくこのホテルで働いていた非魔法師ということか克也?」

「それで間違いないと思うよ達也。あいつの狙いは『非魔法師を守らず自分達の安全だけを考えて逃げた。魔法師はいざとなれば非魔法師を見殺しにする』と一般人達に伝えることだと思う。」

 

俺の想像に克人と達也は忌々しそうに眉をひそめた。

 

 

克人と分かれ俺は達也と二人で話していた。

 

「克也が言ったのはあれで全部か?」

「さすがに隠せないか十文字先輩に言ったのは予想の半分だよ。正確には俺達四葉に対する復讐だと思う。自分が祖国を追われたように四葉が日本に居場所を失うよう仕向けているんだと思うよ。」

「質の悪いやり方だな正面からぶつからないとは性根が腐ってる。」

 

達也の表現に苦笑してしまった。

 

「仕方ないと思うよ。あいつの使う僵尸術(きょうしじゅつ)は前線で戦う魔法じゃない。遠距離からの遠隔操作で動かしているんだと思う。動きを止めるなら消すか心臓の破壊だな。」

「次はいつなのか分からないがしばらくは動かないだろうな。ほとぼりが冷めるまで待ってどさくさに紛れて脱出するつもりだろうがそれまでに捕まえてやる。」

 

達也の決意に俺も頷き将輝達の元に向かった。

 

 

 

事情聴取から解放された当主達は将輝の乗ってきたヘリで魔法協会関東支部に移動し会議を再開していた。将輝と香澄、泉美は別室で会議が終わるまで待つことになっていた。

 

「克也殿、今回の爆発をどう思われますか?」

 

会議の冒頭からいきなり弘一は克也に質問を投げつけた。克也がここにいる理由はUSNAとの共謀を結びつけた腕を買われた結果だ。真夜の後ろで微動だにせずに立っていた克也は真夜の横に移動してから発言した。

 

「現段階で死者十六人未発見者を含めれば二十人を超えるでしょう。世論の火を炎に変えることになるほどの被害ですからマスコミを抑えることは出来ないでしょう。しかし抑えずにいるわけにはいきません。」

「その通りですね黙っているだけでは一方的に悪者扱いされるだけですからね。」

「しかし反論しすぎて反感を買うのは論外だ。」

 

俺の言葉を引き金に当主達が互いに提案しあっているのを鑑賞してから意見を述べた。

 

「マスコミ工作を進めながら顧傑の捕縛をするべきだと思います。」

「だが我々十師族が表立って動くわけにはいかない。しかし何もせず第二、第三のテロを起こされれば十師族の権威は地に落ちる。我々でだけでなく魔法師全体に逆風が吹くことになるだろう。」

「それでも誰かが動かなければなりません。誰を探索に向かわせますか?」

「当家からは克也と達也を遣わせます。」

「では将輝にその人を与えよう。」

「私、十文字克人は当主ですが学生であることを踏まえ参加させていただきます。」

「それでいいでしょう。あとは我々が集めた情報を届ければいいと思います。」

 

顧傑の捜索メインメンバーが決まり次の話題は先程の爆発のことだった。

 

「先程の爆発の起爆剤などはどうやって運び込まれたのでしょうか。」

「会議が始まる二週間前から警備は厳しくなっていますからその前に運び込まれた可能性がありますがその場合は誰かが気付いているはずですからね。」

「おそらく爆発させる前に侵入させたのでしょう。」

「克也殿それはどういうことでしょうか。」

 

俺が経験談を話すと二木舞衣(まい)が質問してきた。

 

「自分はUSNAに行ったときに操り人形と交戦しました。その時半分生きた人間に遅延発動術式で自爆させるように仕組まれていました。今回もそれと同じなのではと思いまして。」

 

ミサイルのことは黙りつつ襲撃されたときのことを話す。

 

「生きている人間と識別できないのは痛いですね。しばらくは首謀者を見つけることを優先したほうがいいようです。」

 

三矢元の言葉に全員が納得し会議は終了した。

 

 

 

克也は家に帰り達也と将輝に今日の会議内容を伝えた。

 

『つまり俺達は情報を待ちながら自分達でも動かなければならないということか。』

「今は会議が行われた場所の付近を中心に捜索しているからすぐに見つかるかもしれない。」

「とはいえ相手は『ブランシュ』の総帥だ。簡単には見つからないだろう?」

『…それ初耳なんだが。』

「そういや将輝には教えてなかったな。顧傑は『ブランシュ』の総帥で『無頭竜』前首領リチャード=孫の兄貴分だ。」

『…そんな奴を見つけられるのか?』

「見つけるんだよ将輝。じゃないと俺達魔法師にとって住みにくい国になる。ただでさえ日増しに反魔法師運動が増えてるんだほっとけるわけがない。」

『分かった俺も可能な限り情報を集める。』

 

電話を切りソファーに座る。将輝には強気で言ったが正直捕まえられるかが不安だ。ただでさえUSNAと約束を取り付けて日本に帰ってきてから一ヶ月の間奴の目立った情報が一つも見つからなかったのだから不安にもなる。

 

USNAと四葉の諜報でも何一つ手掛かりがつかめないのはさすが『七賢人』の一人というとこか。『フリズスキャルヴ』の能力によりこちらの行動が筒抜けの可能性がある以上あまり電子機器でやりとりをするわけにはいかないだろうな。

 

 

 

翌日からは普段通りに学校生活を送ろうと達也と決め今は実習を受けている最中だ。しかし実習のテストを受けている間も顧傑のことを考えてしまう。情報待ちの段階とはいえ手を拱いていられないのもまた事実。自分なりにネットを使って不審な事件などを一通り洗ってみたが何も見つからなかった。

 

行方不明事件が二月の段階で前年度の二割に上っていることが分かったがその年によって事件数は上下するためこの数は当てにはならない。俺の背中から漂う名前のつけようもない空気を深雪は感じ取っていたがどう声をかければいいのか分からずに心配そうな眼を向けてくるだけだった。

 

昼食時のニュースに全員が辟易とした。ニュースの内容を要約すると『魔法師は自分の身を守ることしか考えず一般市民を見捨て見殺しにした。魔法師の行動は間違っているためそれなりの責任を負い償わなければならない。』ということでエリカやレオ、幹比古が文句を言っていた。

 

「何で自分の身が危険にさらされているのに他人を優先しないといけないのよ!」

「そのホテルには五十人近くいたってのにたった十四人に助けさせるか?しかもそのうちの四人は学生だぜ?救えるはずがねえよ。」

「職業や地位で優先する場合もあるけどそれを当然のように言われるのは不愉快だね。」

「さっきのニュースを聞く限り救われるべき命に魔法師は含まれていない。魔法師は自分で自分を守れるから数える必要は無いと考えているんだろうな。」

 

達也の文句や批判では済まない辛らつな言葉で全てを丸く抑えエリカ達がそれ以上ヒートアップしないように留める。

 

 

 

二月九日の深夜、達也は鎌倉にバイクで向かい俺は家で休むように叔母に命じられていた。正直行きたかったが水波に止められては無理強いは出来なかった。達也を見送った後ソファーでブラックコーヒーを飲みながら今まで得たデータを吟味していた。

 

ブラックコーヒーを飲んでいた理由は今のブームがコーヒーなのも理由の一つだが大部分は情報から顧傑の行動を予測するために脳を強制的に起こすことが目的だった。

 

三時間ほど前にリーナと情報の交換をした際得られたのは『顧傑は西海岸にいた無国籍難民でその地域では見た目は恐ろしいが問題を起こさずむしろ怪我をした子供達を介抱していた。そして【ノーブル】の構成メンバーの大部分が忽然と姿を消し本部も慌てている。』ということだった。

 

問題を起こさなかったのは目をつけられないためでありメンバ-が姿を消したのは顧傑に操られ手駒にされているためだと予測していたが重要なのは肝心の本人がどうやってUSNAから脱出したかということだった。

 

客船や飛行機などに乗れば身分証明の掲示の際機械を通すため記録に残るがなかったため有り得ない。あるとすれば軍にいる協力者に頼み込んで中規模の船艇を譲ってもらったということだが確信は出来ない。

 

そうこうしている間に眠気に負けてそのままソファーで眠り込んでしまい帰ってきた達也に起こされるという結果になってしまった。

 

 

 

二月十日日曜日、克也は達也と深雪、水波を連れて北山家を訪れていた。なんでも雫の父親が自分達と話がしたいと言い出したらしく雫が克也達を家に招待したという経緯だった。

 

「遅れて申し訳ない。」

「いえ自分達が約束の時間より早くに来ていただけですからお気になさらないようにお願いします。」

 

克也達が早めに来た理由は雫にお茶をしようと誘われていたためである。

 

「それで今回のご用件は何でしょうか。」

「話とは魔法師ネガティブキャンペーンのことだ。私は魔法師ではないが妻も娘も魔法師である以上見て見ぬふりは出来ない。十師族の考えを教えてくれないかな?」

「我々は今回のテロを起こした首謀者を捕獲することを決定しました。マスコミの方は協会を通じて一般人を巻き込んでテロを起こした首謀者を非難するように指示する声明を出していますがマスコミが都合良く動いてくれるとは思っていませんむしろこちらを避難する記事を出すでしょう。」

「ではそれに私も参加させてもらえないだろうか?」

「…嬉しいお言葉ですがそれは承服致しかねます。」

 

北山潮の意外な提案に戸惑い返事がワンテンポ遅れたがしっかりと返す。

 

「何故かね?」

「北山さんは大富豪ですから目の敵にされるのは目に見えていますしあまり介入しない方が奥様や雫のためにもなります。」

「では事態をそのままにして被害が出ても良いと言うのかな?」

「魔法師全員をフォローするなど不可能ですし自分の身は自分で守るというのが鉄則です。一部の例外を除きますが。もし被害が出るのであればその度に改善すれば済む話です。」

「君の言いたいことは分かった。だが私も他人事では済まないから協力がしたいということを知ってほしい。それでは失礼させてもらうよ仕事が山積みなのでね。」

 

出て行く北山潮の背中に向かって四人でお辞儀をしお礼をする。

 

「ごめんね変なことを話しちゃって。」

「雫が気にすることはないよ。一家の大黒柱である父が妻や子供を守りたいと思うことは可笑しなことじゃないむしろ大切なことだ。北山さんはそれをしっかりと分かっていらっしゃるからこんな提案をしてくれたんだ素晴らしい人だよ。」

「ありがとう達也さん。」

 

その後和やかにお茶の時間を楽しみ俺達は帰宅した。

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